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第1部  柔軟性のある研究体制への指向
  むすび

現代は「不確実性の時代」と呼ばれている。様々に変化する内外の社会経済の要請に対し,我々は不可避的に対応していかなければならない。社会経済の重要な基盤づくりの役割を果たしている科学技術も,同様に避けては通れない道にある。かって貿易赤字に悩みながらも外国の優れた技術を導入し,育成し,いまや我が国は世界でもまれな産業構造転換と経済成長を果たし,多くの矛盾をはらみつつも繁栄を謳歌してきた。この繁栄を誰が予想しえたであろう。この間,我々は衆知を集め多くの制約条件を克服しつつ社会経済の要請にこたえてきた。科学技術とて例外ではない。

石油危機によって,すでに顕在化していた環境・安全問題とともに多くの課題が投げかけられている。エネルギー,食糧をはじめ鉱物,水,木材等各種の資源の制約の克服であり,過密・過疎の国土利用と社会資本の充実であり,保健・医療・福祉等の要求の充足などである。一方,経済は新しい安定成長期に入りつつあり,社会は高齢化時代に向ってたゆみなく進んでいる。

このような時期に我々は科学技術を通じかっての変化に対応したように,更に英知を結集し,社会経済の多様化する要請にこたえていかなくてはならない。

石油危機後の科学技術研究活動は,懸念された研究投資の減退が回復基調にあるとはいえ,研究活動を質的にみると高度成長期とは違った変化が現れている。すなわち,我が国の研究活動の多くを担い,科学技術の成果の社会への具現化を果たし,産業構造の変化の原動力となった民間企業における基礎研究投資の大幅な縮少傾向とともに,我が国の基礎・応用研究において大きな役割を果たしている基礎・応用研究組織の基礎・応用研究投資の横ばい傾向が続いていることである。これは,技術開発の根源であり基盤ともいうべき基礎研究,応用研究活動の停滞を意味する。また,研究者数の増加率の高成長から低成長への移行とともに研究者一人当たりの補助者数の大幅な減少がみられ,研究者の能力と創造性に多くを負っている研究活動の環境の悪化を示している。

このように,我が国経済が安定成長期に移行しつつある今日も,我が国の研究活動は依然として厳しい環境に置かれており,国全体として研究活動の充実と効率化が望まれる状況になっている。

このような研究活動の制約下にあるなかで,社会経済の要請が今後も増加し,変化し,多様化し続けており,科学技術がその役割を果たすためには,それらの要請に速やかに対応して技術的成果を社会に受け入れられるものとしなくてはならない。社会経済からの複数の要請は技術的に相容れない場合もあり,また,その解決は世界に先がけて行わなければならない場合も多くなっている。成功した技術開発例にみたようにこの要請に柔軟にかつ速やかにこたえるためには,数多くの分野にまたがる技術的シーズが必要であり,多くの部門の協力のもとでそれらを蓄積し,発掘し,育成することが重要であることを強調したい。

このため,第1に技術的シーズは多くの分野の基礎・応用研究の成果であることが多いので,これら基礎・応用研究の充実とその成果の蓄積が必要である。第2に国全体として基礎・応用研究組織において蓄積された知識・経験の有効な活用が必要であり,具体的には,連携の阻害要因を克服しっつ研究費及び研究者の交流を通じて,各研究組織間における科学技術の成果の不断の交流を図る必要がある。

研究資源の制約が憂慮される厳しい状況のもとで,社会経済の多様化する要請に速やかに対応しうる官・学・民それぞれの役割に従った柔軟性のある研究体制が必要であり,一層効率的な実りある研究活動が望まれる。


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