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第1部  柔軟性のある研究体制への指向
第2章  多様化する要請への対応
第2節  柔軟性のある研究体制への指向
4  基礎・応用研究組織と開発研究組織との連携強化


今後我が国経済が安定成長へ移行し,研究活動への投資も大幅な増加を図ることが厳しい状況のもとで,科学技術は経済成長の原動力のみならず,省資源,省エネルギー,環境保全,安全確保など多様化したニーズを充足する手段として,ますます重要性を増している。このような状況のなかで,国全体としてより効率的な研究活動が望まれているが,特に基礎・応用研究組織と開発研究組織との間で,それぞれの目的や特性を十分生かしながら技術的交流を有機的に行わなければならなくなっている。

第1-2-29図 今後の連携の必要性

第1-2-29図 は,科学技術庁が行った「研究開発における官・学・民の連携に関する調査(昭和53年度)」のアンケート結果である。各組織とも,今後連携による研究開発の必要性がますます強くなると答えたものが多く,その理由を 第1-2-30図 に示したが,「研究開発の内容が学際的・総合的になることに対処して,適切な人材や技術を集中する必要があるため」及び「我が国で自主技術開発を進める必要が高まり,国内で技術のシーズとかニーズをつくり上げ,それを醸成する必要が高まったため」などの理由が多い。

第1-2-30図 連携の必要性が高まるとした理由

しかしながら,我が国においては伝統的に組織間の交流が閉鎖的で,一組織の枠を越えた流動が少なく,また,交流が行われていても大学は大学間,国立研究機関は国立研究機関間,民間企業は民間企業間といった類似組織どおしの交流が比較的多いのが特色となっている。

第1-2-31図 は,連携による研究開発の相手組織を,国立研究機関,大学,民間企業の3組織に限定して,研究費の交流,研究者の交流,技術交流又は情報交換の3項目について,結びつきの強さをみたものである。研究費の交流では,国立研究機関は大学との結びつきが強く,大学は大学及び民間企業と,民間企業は民間企業どおしの結びつきが強い。研究者の交流では,国立研究機関は大学との結びつきが強く,大学は大学どおしの交流が強く,民間企業は大学との結びつきが強い。技術交流又は情報交換については,国立研究機関は国立研究機関及び大学がほぼ同じで,大学は民間企業と,民間企業は民間企業どおしとの結びつきが強い。

以上から,全体を通じて特徴的に言えることは,1)国立研究機関から大学への結びつきは強いが,大学は国立研究機関より民間企業への結びつきが強いこと,2)民間企業は大学や国立研究機関との結びつきが弱く,特に国立研究機関との結びつきは弱いこと,3)類似組織間の結びつきは比較的強く,特に民間企業どおしの結びつきは強いことなどが挙げられる。

以上各組織の連携について研究費の交流,研究者の交流,技術交流又は情報交換の3項目についてみてきたが,このうち研究費の交流と技術交流又は情報交換について更に詳細にみてみることとする。

第1-2-32図 は,各研究実施組織が内部で使用した研究費に占める外部からの受入れ研究費の割合とその資金源についてみたものである。

同図に示すとおり,会社,公共企業体,国・公営研究機関及び国・公立大学においては,外部組織から受け入れた研究費の割合は極めて小さく,ほとんどを自己資金により研究開発を行っている。私立大学は,公共資金の受入れ割合が15%ある。一方,鉱工業技術研究組合法に基づく技術研究組合等を含む民営研究機関や日本原子力研究所,宇宙開発事業団等の特殊法人研究機関は,目的指向的な研究開発を行うために設立されたものが多く,研究費支出額の大部分を受入れ研究費によっている。

また,受入れ研究費の資金源をみると,大学,特殊法人,国・公営研究機関は,ほぼ公共資金のみ,民営研究機関は,受入れ研究費の約8割が民間資金,残りの2割が公共資金となっている。

以上のように,民間企業と国・公営研究機関及び大学については,研究費の交流も非常に少ない状況にある。

第1-2-31図 連携による研究機関の結びつきの強さ


第1-2-32図 他組織からの受入れ研究費の割合(昭和52年度)

次に,開発研究組織である民間企業と基礎・応用研究組織との技術交流又は情報交換について特許,ノウハウの交流,技術指導,研究開発シーズ,情報交流の5項目についてみてみることとする。

第1-2-33図 は,民間企業と国立研究機関及び大学との技術交流又は情報交換実績とその内容を調査した結果である。技術交流又は情報交換の実績では,資本金10億円以上の研究開発実施企業447社が,昭和50〜52年の3年間に,国立研究機関及び大学に対し1社が複数交流を行ったものも含めて,最も多い技術指導でも国立研究機関に対しては延べ67社,大学に対しては延べ125社と,民間企業の基礎・応用研究組織に対する交流が非常に少ないことがわかる。

第1-2-33図 民間企業と国立研究機関及び大学との技術的交 流実績とその内容(昭和50〜52年)

内容についてみてみると,民間企業と国立研究機関及び大学との技術交流又は情報交換の内容は,技術指導の割合が比較的大きく,次いで大学を交流相手とする定期的な情報交換及び研究開発シーズの交流がそれぞれ18%及び11%となっている。しかしながら,国立研究機関を相手とする企業の割合は,技術指導を除き極めて小さく,特に,ノウハウの交流,研究開発シーズの交流は小さい。このように,研究者の個人的能力の直接的活用といえる技術指導の割合は比較的大きいが,研究成果そのものの交流割合は,大学を含めて小さく,民間企業と基礎・応用研究組織との間で研究成果の交流が十分には行われていない状況を示している。

今後,多様な要請にこたえていくためには,国全体として基礎研究成果の蓄積とその円滑な流通が図られなければならないが,すでにみてきたとおり基礎・応用研究組織と開発研究組織との連携は必ずしも十分とは言えない。民間企業が国関係機関や大学と連携を進める場合の阻害要因について,民間企業に対してアンケート調査を行った結果を示すと 第1-2-34図 のようになる。

すなわち,民間企業からみると,国関係機関を連携の相手とした場合,連携の企画推進体制の問題が最も多く,次いで研究成果の取扱い上の問題,予算・研究開発費の問題等が阻害要因となっており,研究に携わる人材の問題は比較的少ない。大学を連携の相手とした場合は,研究成果の取扱い上の問題が最も多く,連携の企画推進体制の問題に加え,研究に携わる人材の問題が阻害要因となっており,予算・研究開発費の問題は比較的少ない。

第1-2-34図 民間企業からみた相手機関別連携上の主な阻害要因


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