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第1部  柔軟性のある研究体制への指向
第1章  我が国の研究活動の特徴
第3節  民間企業の研究活動の特徴
2  内外の技術移転からみた民間企業の研究活動の特徴


前項においては,民間企業における技術開発の役割を分析した。本項においては,民間企業の技術開発を推進させる前提として,我が国の民間企業の技術開発力水準と自主技術開発の程度について,主に技術貿易,特許の流通を指標として分析する。


(1) 技術貿易からみた特徴

技術貿易は,技術開発力を示す主要な指標の一つである。民間企業のその年度における新規契約分のみの技術貿易収支比(輸出/輸入)は,昭和47年度の1.26から年々向上し,52年度は2.15と輸出超過が続いている。 第1-1-26図 は,このような新規技術貿易額の推移を地域別にみたものである。

同図に示すとおり,我が国の技術貿易構造は,欧米,特にアメリカ,イギリス,西ドイツ及びフランスの先進4か国からの技術導入,東南アジア等その他の地域への技術輸出というパターンをとっており,最近においてもこのパターンに変化はみられない。しかし,最近6か年を前後3か年に区分して昭和47〜49年度と50〜52年度の比較でみてみると欧米,特にヨーロッパからの技術輸入の減少と,東南アジア及び欧米先進4か国を除く地域への技術輸出の増加が特徴的でこれらが新規技術貿易収支比の向上要因となっている。

技術貿易構造は,最近においても大きな変化はみられないが,海外技術に対する量的な依存度,あるいは自主技術開発力の程度についてはどうであろうか。

第1-1-26図 民間企業の地域別技術貿易額の推移(新規分のみ)

第1-1-27図 は,主な業種について海外技術依存度及び自主技術開発の程度の最近の変化を,技術貿易を指標として示したものである。

同図に示すとおり,海外技術依存度は,民間企業の内部使用研究費に対する技術輸入対価支払総額(新規+継続支払分)の割合をとり,技術開発力水準として欧米先進4か国に対する新規技術貿易収支比をとっている・昭和47〜49年度平均と50〜52年度平均のこれらの値を比較すると,いずれの業種も海外技術依存度は低下している。しかし,対先進4か国に対する技術貿易収支比では,窯業,鉄鋼業,通信・電子・電気計測器工業を除き,大幅な改善はみられていない。

第1-1-27図 主な業種の海外技術依存度及び対先進国技術貿易収支比

第1-1-28図 欧米に技術輸出できない技術的理由

これら二つの指標を合わせてみると,技術輸入対価支払額の使用研究費に対する割合が大きく,かつ,先進国に対する技術貿易も一方的な輸入超過である技術導入依存型の業種が減少し,先進国に対しても技術輸出を行いうる高い自主技術開発力を持った業種あるいは技術輸出は活発でないが海外技術依存度の低い自主技術開発型等のその他業種が増加している。

欧米先進国に対する技術輸出は,単に技術開発力水準の高低だけでなく,国際競争力の維持のため輸出を行わない等の企業方針にも左右される。そこで欧米先進国に対して技術輸出を行っていない理由について科学技術庁計画局の行った「民間企業の研究活動に関する調査(昭和53年度)」によると 第1-1-28図 に示すとおり,全体でみると6割の企業が技術的理由と回答しており,その理由のうち約6割は欧米企業に比べ自主開発技術水準が低いためと回答し,残りの4割は自社開発技術が導入基本特許からの改良技術であるためと回答している。

また,同調査で,欧米のトップレベルの同業企業との独創的な研究開発力の比較を調査しているが, 第1-1-29図 に示すように,上位にあると回答した企業の割合は,精密機械工業を除いて,いずれも低いが,ほぼ同等と回答した企業の割合を合わせると,全産業平均では,4割弱となっている。主要業種では,精密機械工業を除くとやや劣るとみる企業の割合が最も大きくなっている。

第1-1-29図 欧米のトップレベルの同業企業との独創的な研究開発力の比較


(2) 特許移転からみた特徴

技術貿易は,外国との間の特許,ノウハウ,技術指導などの移転状況を示すが,このうち生産活動に最も関係の深い特許について,国内,国外を含めた移転状況を示すと, 第1-1-30図 のとおりとなる。

同図は,昭和51年中に我が国の製造業の各企業が使用した特許のうち,他の組織から導入した特許の割合とその相手先を示したものである。企業が使用した特許のうち他から導入した特許の割合は,従業員規模1,000人未満では約2割であるのに対し,同1,000人以上の企業では1割弱と企業規模が大きくなるに従い自社開発の技術を使用して企業活動を行っている。また,導入特許の導入相手を見ると,企業規模の大きさにかかわらず約半分が国内の他企業である。従業員規模300人以上の企業では海外からの導入が約4割を占めている。国・公立大学及び国・公立試験研究機関からの導入は,従業員規模の大小にかかわらず小さい割合となっている。

総理府統計局の「科学技術研究調査報告」によると従業員1・000人以上の研究開発実施企業の昭和52年度の研究費は,全企業の研究費の約8割を占めており,特許の導入状況と合わせてみると,民間企業の研究活動が自社内技術開発を中心とする自主技術開発体制で行われているとうかがえる。

以上,技術貿易と特許使用状況を中心とした分析からみると,我が国の民間企業の研究活動は,海外技術依存の程度が減少しつつあり,自主技術開発の体質が強まっている。しかしながら,1)我が国の技術的な水準が欧米先進国に追いつけば,従来のように,技術格差を前提になされた海外技術導入による効率的な研究活動を行うことは困難になってくること,2)資源・エネルギーの確保,環境保全,安全問題等我が国独自あるいは我が国が最も厳しい環境にある多様な課題が山積していることから,なお一層の自主技術開発の努力を続けることが必要となっていると言えよう。

第1-1-30図 使用特許のうち導入特許の割合と導入先割合(昭和51年)


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