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第1部   重要性を増す政府の研究活動
  むすび

今日,科学技術の進歩に対する期待は,極めて大きくなっている。すなわち,エネルギー問題への対応,国民の健康の維持・増進,安全の確保,安定成長下における産業の発展など多くの分野において科学技術の進歩が期待されている。そして,こうした期待の増大とともに,これにこたえるための研究活動の推進者として,民間はもちろん,政府の役割も増大するものと考えられる。

現在,研究活動における政府の役割の増大は,主として二つの点から求められている。

一つは,従来から政府が推進している分野の研究活動の強化を求める要請の高まりである。エネルギー問題への対処,国民の健康,安全等に関する国民生活の質的向上を求める要請への対応,開発途上国のための研究協力の推進等は,科学技術の進歩に期待がかけられている緊急課題であり,この分野における政府の研究活動の強化を求める要請は極めて大きいものとなっている。

他の一つは,自主技術開発力強化のため,政府がより大きな役割を果たすことを求める要請の増大である。現在,ますます拡大していく国際貿易において,高度の技術開発力に裏打ちされた国際競争力の強化が大きな課題となっている。このような状況において,研究集約的分野の産業技術開発の重要性は,極めて大きい。この分野の研究開発については,第一義的には民間企業の努力にまつのは当然であるが,欧米主要国においては,かなりの額の政府助成を行っている例もあり,これらの国と競争して自主技術開発を進めている我が国において,研究集約的分野の研究開発力強化のため,政府の役割の拡充を求める要請は強いものがある。また,このような自主技術開発の要請は,研究集約的分野ばかりでなく,他の分野においても大きい。これまで,我が国の産業技術は,主として外国技術を基盤とした効率的な研究活動により,投入資金額に対比して極めて大きな成果をあげてきた。このような効率的な研究活動は,外国技術導入の停滞化傾向,国際的にみても独創性の高い製品開発への強い要請等により,必ずしも従来通り円滑に推進することは困難となっている。そして,こうした傾向は,自主技術開発を重視し,これを支えるために必要な基礎的・基盤的分野の研究活動の強化を求める要請となっている。

したがって,今後,こうした要請にこたえ,政府の研究活動が拡充され,真に自主技術開発の推進力たるべく強化されることが望まれている。

今後,政府の研究活動の展開に当たっては,研究開発投資及び研究者の確保に配慮する必要がある。

我が国の研究開発投資の水準としては,科学技術会議第6号答申「長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について」において,対国民所得比2.5%を当面の目標とし,長期的には,3%を目指す方針が示されているが,これを実現するため,政府は民間とともに一層努力する必要がある。また,研究者については,特に質の優れた研究者の確保が重要である。

更に,研究開発の効率的,計画的推進を図ることも重要な課題である。近年,我が国においても,主要研究開発課題についてプロジェクトが作成され,また,エネルギー研究開発については,基本計画が策定され,計画的推進が図られているが,今後,社会経済の要請に対応し,可能な限りプロジクェト化を進め,プロジェクトについては,段階ごとの評価を的確に行うとともに,重点的に推進する分野,多数分野の能力を結集する必要がある分野,多数のプロジェクトが競合する分野等において,中期又は長期の研究開発計画を作成し,推進することが重要である。

また,研究開発の効率的,計画的推進を図る上で,民間企業,大学,国立試験研究機関,特殊法人研究機関等の能力の結集,あるいは有機的連携の強化は,現在重要性を増している問題であり,政府の主導力が要請されている問題であるとも言える。

以上のほか,研究開発の進展に応じて,1)社会経済への影響力も増大していくため,研究の必要性,成果の貢献度等について国民に明らかにし,広く国民の理解と協力を求めること,2)国際協力により進めることが適当であるものについては,国際協力を重視すること等の諸点に留意して研究開発の進展を図る必要がある。

かつての高度成長期における技術革新で主役として脚光を浴びたのは,民間企業であった。今後とも民間の自主的努力が重要であるが,安定成長を目指して,新たな社会経済の要請に対応する政府の研究活動の拡充・強化が要請されているときにおいて,主役も脇役もない。政府も,民間も,全力を奮って研究開発を推進し,国民の期待にこたえることが,現在最も求められているものである。


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