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第1部   重要性を増す政府の研究活動
第3章  重要性を増す政府の研究活動
第2節  政府の研究活動の展開
1  エネルギー問題への対応


エネルギー研究開発は,第2章でみたとおり,我が国ばかりでなく,アメリカ,西ドイツ,フランス,イギリスにおいても政府の重点研究開発分野として原子力を中心に取り組まれている。特に,石油危機以降,エネルギー問題の重要性が一段と増大するのに伴い,各国のエネルギーに関する研究活動は活発化している。

我が国は,石油危機の衝撃を最も強く浴びた国であり,省エネルギーを進めるとともに,石油に代わる代替エネルギー開発の促進を求める声は大きい。このような状況において,我が国におけるエネルギー研究活動は,各分野において積極的に行われている。

現在,我が国において政府が推進しているエネルギー研究開発の主要プロジェクトは, 第1-3-1表 のとおりとなっている。

このうち,原子力開発は,エネルギー研究開発予算の約85%を占めており,我が国エネルギー研究開発の中心を成している。原子力開発について主要事項別予算の推移をみると, 第1-3-10図 のとおりであり,原子力予算中,最大の割合を示しているのが,新型動力炉開発であり,これに次いで,核燃料サイクル関係研究開発,安全研究,核融合研究開発の順になっており,いずれもここ数年着実に増加している。

原子力委員会は,先般,新たに原子力研究開発利用長期計画を定めたが,これらの研究開発は,今後,この長期計画の下に計画的に推進されていくこととなる。これらの主要なものの進捗状況は,次のとおりである。

まず,原子力開発の大前提となる安全研究であるが,原子炉施設等の工学的安全研究,環境放射能調査,放射線障害防止のための調査研究,放射性廃棄物の処理処分等の各分野にわたって推進されている。

第1-3-1表 政府のエネルギー研究開発主要プロジェクト

第1-3-10図 事項別原子力研究開発予算

新型動力炉開発は,現在,商業化されている軽水炉に代わる動力炉の開発を目指すもので,我が国においては,主として軽水炉燃料の再処理によって得られるプルトニウムの有効利用が図れるなど核燃料の経済性が高い新型転換炉の開発と,発電しながら消費する核燃料以上の核燃料(プルトニウム)を生産するという特性を持つ高速増殖炉の開発が中心となっている。新型転換炉については,昭和42年以来,設計,建設が進められてきた原型炉「ふげん」が53年3月臨界に達し,また,高速増殖炉については,実験炉「常陽」が52年4月臨界に達し,更に,原型炉「もんじゅ」の建設準備が進められている。

核燃料サイクルの確立は,原子力発電を円滑に進めるため必要不可欠のもので,天然ウランの確保,ウラン濃縮,ウラン転換・加工,使用済燃料の再処理等多くの要素から成る( 第1-3-11図 )。このうち,現在,技術的に重点的推進を図る必要があるのは,ウラン濃縮と使用済燃料の再処理であるが,ウラン濃縮技術については,第1章で紹介したとおり,遠心分離法による研究開発において世界的水準に達し,パイロットプラントを建設中であり,また,再処理技術の確立を目的とする東海再処理施設については,昭和50年度に建設が終了し,52年9月からホット試験に入っている。また,プルトニウムの利用については,高速増殖炉への利用が最も有効であるが,その実用化までの間,プルトニウムを熱中性子炉にリサイクルすることにより,ウラン資源の節減を図ることとし,新型転換炉の原型炉の運転等を通じ,プルトニウム利用の実証を行うとともに,軽水炉へのプルトニウムリサイクルについての実証試験を進めている。

第1-3-11図核燃料サイクル

21世紀において,エネルギー問題解決に大きく貢献するとみられる核融合については,核融合動力炉実現の前提条件となる臨界プラズマ条件達成のための研究開発が行われている。これまで,中間ベータ値トーラス試験装置(JFT-2)により数百万度のプラズマを安定的に閉じ込めることに成功するなど,アメリカ,ソ連等と匹敵する研究成果をあげ,現在,更に一歩進んだ装置である臨界プラズマ試験装置(JT-60)の開発を進めている。

このようなプロジェクトのほか,多目的高温ガス炉,原子力船等について研究開発を進めるとともに,原子力開発全般にわたる基礎的・基盤的分野の研究開発が幅広く進められている。

このように,原子力開発の主要プロジェクトは,各分野ともM実に進展をみせているが,各国の状況と比較するとどうであろうか。

第1-3-12図 は,主要国における高速増殖炉の開発状況を示したものであるが,この図に見るとおり,フランス,ソ連,イギリスは,原型炉の建設を終わり,現在運転中であり,また,西ドイツは,1981(昭和56)年を目途として現在原型炉の建設を進めている。これらの国は,フランスが1983(昭和58)年臨界を目途として実証炉「スーパーフェニックス」の建設を進めているのを初めとして,順次,実証炉の建設に入ることになろう。我が国は,アメリカと並び,これから原型炉の建設に入ろうとしており,フランス,ソ連,イギリス,西ドイツの諸国を追って研究開発に拍車をかけている段階である。

遠心分離法によるウラン濃縮技術については,西ドイツ,イギリス,オランダ3国の共同開発プロジェクトは,パイロットプラントの運転から実用工場の一部運転に入っており,また,アメリカは,ガス拡散法に対抗できる遠心分離機の製作を進め,パイロットプラントにより研究開発を進めている。

我が国は,現在,パイロットプラント建設中であるが,今後,これらの諸国と激しい競争の下に研究開発を進めることになる。

核融合は,実用時期は21世紀とされており,今後,巨額の研究費と長期の期間をかけて研究開発を進めなければならない分野であるが,現在,各国において臨界プラズマ条件達成を目標に各種の装置により研究開発が進められている( 第1-3-13図 )。現在,この分野における,我が国の研究開発水準は,世界的水準にあると言われている。

第1-3-12図 世界の高速増殖炉開発計画

第1-3-13図 各国における核融合研究開発長期計画

以上の例にみるように,我が国の原子力開発の水準は,国際的に見ても主要国の水準に匹敵するか,トップグループに激しく迫っており,高い水準にあると言えよう。

我が国の原子力開発は,軍事利用による成果の上に平和利用を進めたアメリカ,ソ連,フランス,イギリスから遅れて出発したが,平和利用一筋に努力を続けた結果,新技術開発の面では,これらの国と競争し得る技術的段階に達したと言えよう。原子力開発にとって問題はこれからである。主要プロジェクトが進展し,新しい研究開発段階に入るとともに,所要資金も増加する。今後,原子力開発において自主技術を確立するためには,これらのプロジェクトを遅滞なく進めることが必要であり,一層の努力が求められている。

このように,我が国のエネルギー研究開発は,原子力中心に進められてきたが,将来の我が国のエネルギーの安定供給を図るためには,原子力以外のあらゆる利用可能なエネルギーについて研究開発を進めることが必要である。原子力以外の新エネルギー開発については,昭和49年度から通商産業省工業技術院の「サンシャイン計画」を中心として,太陽エネルギー,地熱エネルギーの利用,石炭のガス化・液化による利用,水素エネルギーシステム等についての実用化技術の確立等を目指して国立試験研究機関,民間企業等が一体となって研究開発が進められている( 第1-3-14図 )。

このうち,太陽エネルギーの利用としては,太陽熱発電,太陽光発電,太陽冷暖房・給湯の3システムを中心に研究開発が実施されている。太陽燃発電システムについては,昭和55年度までに電気出力1,000KW級2方式のパイロットプラントを建設すべく,現在その詳細設計を行っており,また,太陽光発電については,新製造方法の開発又は新材料の利用により価格が従来より100分の1以下になることを目標として,太陽電池の開発が行われている。一方,太陽冷暖房・給湯システムでは,新築個人住宅用及び既存個人住宅用システムに関する運転研究並びに大型建物システムに関する運転研究がそれぞれ行われており,また,集合住宅用システムについては,昭和53年度完成を目途に建屋の建設工事が行われている。

第1-3-14図 「サンシャイン計画」予算の推移

地熱を利用した発電は,世界各国で既に実用化されており,我が国においても,現在,6か所,16.8万KWの地熱発電が行われているが,これは,地下2km程度までの浅部エネルギー利用で天然蒸気を利用した発電である。

「サンシャイン計画」では,地熱エネルギーの探査・採取技術の研究開発を進めるとともに,熱水利用発電,深部地熱開発,高温岩体発電などを当面の目標としており,熱水利用(バイナリーサイクル)発電の1,000KW級プラントの試験運転が九州,北海道で行われている。

石炭のガス化については,低カロリーガス化発電技術として5t/日級ガス化炉の運転研究,高カロリーガス化技術として7,000m3 /B級バイロットプラントの詳細設計等が進められており,また,石炭の液化技術については,直接液化,溶剤処理,ソルボリシス等の方式による液化技術の研究開発が並行的に進められており,ソルボリシス法については,1t/日級プラントの建設を行っている。このほか,「サンシャイン計画」では,将来のクリーンなエネルギーとして期待される水素エネルギーを利用する技術の研究開発が行われており,高温高圧水電解法水素製造4m3 /時級プラントの詳細設計を進めている。また,海洋温度差発電システム,風力変換システムなどの基礎研究が行われている。

このほかの新エネルギーの研究開発として,海洋科学技術センター (認可法人)で実施している海洋エネルギーを利用した波力発電の研究開発がある。

このように,自然エネルギーの開発,化石エネルギーの開発は,多くのプロジェクトにより推進されているが,全体としてみると,一部を除き,本格的展開はこれからというものが多い。

海外の動向をみると,原子力以外のエネルギー研究開発に最も積極的に取り組んでいるのはアメリカであり,太陽エネルギー及び地熱エネルギーの利用,石炭のガス化・液化等について研究開発が進められている。また,西ドイツでは石炭のガス化・液化等,フランスでは太陽エネルギーの利用等について研究開発が進められている。

一方,省エネルギーについては,昭和53年度から,産業から国民生活までの広汎な分野にわたる省エネルギー技術を総合的に開発するための計画「ムーンライト計画」が発足した。この計画では,大型省エネルギー技術開発(電磁流体発電,廃熱利用技術システム,高効率ガスタービンの開発),先導的・基盤的省エネルギー技術開発(超電導送電,新動力源,新型電池等)を進めるとともに,民間の省エネルギー技術開発に対する助成,標準化による省エネルギーの推進が軸となっている。

このほか,エネルギーの有効利用に関するプロジェクトとして,農林水産省の「農林水産業における自然エネルギーの効率的利用技術に関する総合研究」,建設省の「省エネルギー住宅システムの研究開発」がある。

以上のように,エネルギー研究開発については,社会経済からの強い要請にこたえるため,数多くのプロジェクトにより推進されていることが特徴を成している。今後,基礎科学,基盤技術,支援技術の一層の推進を図ることはもちろんであるが,これらのプロジェクトを的確に進展させていく努力が必要である。

原子力開発において述べてきたように,今後,この分野においては,プロジェクトの研究開発段階が進むとともに,所要資金額が増加してくる。しかし,エネルギー技術について自主技術を蓄積することは,

1) 資源に乏しい我が国が安定したエネルギー源を持つことになること,
2) 石油に代わる代替エネルギーとして期待されている原子力については,その開発利用の大前提となる安全確保の面で,技術的蓄積が図れること,
3) 核融合,原子力以外の新エネルギー開発等,研究開発に膨大な資金と長期間を要する分野における国際協力に参加できる技術的基盤を作ること,
4) 資源保有国から資源を入手する場合などにおいて,対外的バーゲニングパワーを形成すること

などの面から極めて重要であり,安定成長を目指す我が国にとって不可欠なものであるので,エネルギー研究開発を円滑に推進するため必要な所要資金,人材の確保等の問題に配慮する必要がある。

このためには,資金,人材を有効に活用し,研究開発全般を計画的に推進することが重要となる。既に,アメリカ,西ドイツなどにおいては,エネルギー研究開発全般について計画が策定され,推進が図られている。我が国においても,昭和53年7月,科学技術会議がエネルギー研究開発基本計画について内閣総理大臣に答申し,この答申に基づき,エネルギー研究開発基本計画が策定されており,この計画により,今後,我が国において,エネルギー研究開発の計画的,効率的推進が図られることが期待されている。


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