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第1部   重要性を増す政府の研究活動
第2章  政府の研究活動の特徴
第2節  政府研究費の性格と研究実施組織の状況
3  産業向け政府研究費の主な目的及び支出先


本項では,各国の社会経済の発展に密接に関係する産業部門の研究活動に,どのような目的の政府資金が支出され,具体的にどのような業種等で使用されているかをみていくこととする。


(1) アメリカ

アメリカの政府研究費は,国立科学財団(NSF)の資料によると,1976年度(推定)で連邦政府内に27%,連邦政府外に73%が支出されている。連邦政府外に支出される研究費のうち,7割が産業部門,2割が大学,残りが民間非営利研究機関,地方政府等で使用されている。このように,産業部門    一には,産業部門の持つ優れた技術開発力を活用して国の目的を達成させるため,多くの政府資金が流れており,なかでも国防省は,1965年度で産業向け政府研究費の5割,1976年度(推定)で同じく6割を支出している。また,航空宇宙局から産業部門へ支出される資金は減少傾向にあるが,1976年度(推定)で2割と,国防省に次ぐ地位を占めており,この両機関からの資金が産業部門へ支出される政府資金の8〜9割を占めている。このほか,エネルギー研究開発庁(現エネルギー省)からの資金が1割程度ある。

このような国防,航空宇宙関係の産業向け研究費が,具体的にどのような業種に支出され,その業種における使用研究費のうちどの程度を占めているかをみたものが 第1-2-18図 である。

第1-2-18図 アメリカの産業向け政府研究費の状況

同図に示すとおり,1965年度と1973〜1975年度を比較すると,各業種とも政府資金の割合が減少している。しかし,航空機・ミサイル工業では1975年度で使用研究費の8割,電気機械工業では同じく5割近くを政府資金によって研究活動を行っている。そして,政府資金の大部分が国防省,航空宇宙局から支出され,その額は,両業種とも,為替レート換算で我が国の科学技術関係予算総額(1975年度6,783億円)を上回る額となっている。このほか,一般機械,輸送用機械工業等においても,使用研究費の1割から2割が国防省,航空宇宙局等からの政府資金である。また,国防,航空宇宙関係以外では,原子力開発を主体とするエネルギー研究開発庁(現エネルギー省)の資金が大部分を占めており,これは化学工業,電気機械工業に多く支出されていることがわかる。


(2) イギリス

イギリスの政府研究費は,経済協力開発機構(OECD)の研究統計でみると,1975年度で,政府内に47%,政府外へ53%の割合で支出されている。

政府外に支出された研究費の7割が産業部門へ,2割が大学へ,残りが民間非営利研究機関及び海外へ支出されている。

このうち,産業部門に支出される政府研究費は,産業部門で使用される研究費の3分の1(1975年度)を占め,産業における研究活動の重要な資金源となっている。

産業向け政府研究費の支出目的としては,イギリス政府の研究開発資料(1973年度)によると,国防及び航空宇宙が大部分で,これらへの支出が産業向け政府研究費の9割以上を占めている。なお,政府の研究活動の主要目的である原子力研究は,政府内で研究費の95%が使用され,国防(政府内39%),航空宇宙(同16%)に比べると,外部へ支出する研究費は少ない。

産業部門へ支出される政府資金の業種別の支出状況は, 第1-2-19図 のとおりである。同図は,全産業の使用研究費に占める業種別の研究費の割合と,各業種の使用研究費に占める政府資金の割合及び支出された政府資金額を示した。これによると,航空機,電子機器へ政府資金の約9割が流れている。使用研究費に占める政府資金の割合の非常に大きい業種としては,航空機,電子機器,船舶が挙げられる。また,使用研究費が少ない木材・家具に対しても政府資金が相当の割合で支出されている。一方,使用研究費が多いにもかかわらず政府資金の支出の少ない業種としては,自動車,医薬品,食品が挙げられ,研究活動が活発であっても国防,航空宇宙とは関係の小さい民生用の業種については,ほぼ自己負担によって研究活動を行っていることがわかる。

第1-2-19図 イギリスの産業向け政府研究費の状況(1975年度)


(3) 西ドイツ

西ドイツの政府研究費は,連邦政府資料によると,1977年度(推定)で,政府研究機関内に1割,政府外に9割の割合で支出されている。これら政府研究機関外へ支出される政府資金の組織別,目的別の使用状況の詳細は明らかでないが,政府研究機関外で使用された研究費の7割が連邦,州,あるいはこの両政府の資金により運営されている大学及び民間非営利研究機関で使用されており,産業部門への支出は残りの3割である。

この産業部門への政府研究費の支出状況をみたものが 第1-2-20図 である。

西ドイツの政府の研究活動の主要目的である国防,原子力のうち,原子力研究費は,経済協力開発機構(OECD)の研究統計からみると,ほぼ政府研究機関及び民間非営利研究機関に支出されている。一方,国防研究活動は,主に産業部門で行われている。したがって,同図に示すとおり,産業に支出される政府研究費の約半分が国防目的となっている。業種別の研究費に占める政府資金の割合は,航空機,  一般機械及び電気機械工業が最も大きい。また,この3業種で政府資金の7割が使用され,国防目的以外にも相当の政府資金が支出されている。一方,研究費総額の多い自動車工業へは,政府資金がほとんど支出されていないこと,研究費総額の少ない木材・紙・印刷業の研究費に占める政府資金の割合が大きいことは,イギリスと同じような傾向である。


(4) フランス

フランスの政府研究費は,経済協力開発機構(OECD)の研究統計でみると,1975年度で,政府研究機関に41%,大学に27%,民間非営利研究機関に1%,産業に31%の割合で支出されている。このうち,産業部門への政府資金は,1974年度の政府資料によると,国防目的が最も大きく5割台である。国防省に次ぐのは,国立宇宙研究センター及び民間航空機開発助成費である。これら国防,宇宙及び航空機開発助成費の矢部分(産業向け政府研究費の約6割)が航空宇宙産業に支出されている。このほかでは,原子力関係の産業支出研究費割合は小さいが,電子計算機,通信(国立通信研究所分)関係の外部支出研究費の割合が大きい。

第1-2-20図 西ドイツの産業向け政府研究費の状況(1973年度)

産業部門に支出される政府研究費の業種別支出状況をみると, 第1-2-24図 に示すように,航空機及び電子機器工業における政府負担割合が大きく,この両業種で政府資金の85%(1975年度)を使用している。これに次いで,情報処理機器,農業,精密機械工業,電気機械器具工業の使用研究費に占める政府資金の割合が1割を超えている。研究活動が活発で政府資金の支出の少ない業種としては,自動車,医薬品工業が挙げられ,これらの業種が市場機構に従って研究投資を行っていることがわかる。

第1-2-21図 フランスの産業向け政府研究費の状況(1975年度)


(5) 日本

我が国の政府研究費は,1977年度で,政府研究機関内に2割,国立学校へ直接支出される割合が4割,残りの4割が助成費等(委託費,補助金及び出資金等)として支出されている。この助成費等の内訳は, 第1-2-22図 に示すとおり,その割合及び金額が増加傾向にあり,投資目的としては,原子力及び宇宙開発が大きく,その中心的研究機関である日本原子力研究所,宇宙開発事業団等の特殊法人の研究機関(民間非営利研究機関)へ助成費等の約半分が支出されている。更に,約3分の1が科学研究振興を目的に,大学における研究の4割を占める私立大学等への助成費と,主に大学に所属する研究者に支出される助成費である。このうち,原子力,宇宙開発関係費は,特殊法人の研究機関から更に外部の企業等へ支出される経費を含んでいると考えられる。しかし,総理府統計局の「科学技術研究調査報告」では,特殊法人研究機関の研究費のうち民間へ支出される研究費は,1976年度で6%にすぎず,民間企業の受入研究費総額からみても,企業内で単に機器,器材等製作費,あるいは海外からの必要機器,技術等購入費として処理されているとみられる。また,我が国においても,1966度年以降,鉱工業への助成費等は拡充され,電算機産業の技術開発助成等が行われているが,ヨーロッパ主要国における民間航空機産業への政府研究助成等に比べると,その額は少ない。

第1-2-22図 我が国の研究助成費等の研究目的別推移

このような理由から,我が国の場合は産業部門へ支出される政府資金割合が極めて小さくなっている。

第1-2-23図 は,産業向け政府資金の状況を推計したものである。

第1-2-23図 我が国の産業向け政府研究費の状況(1976年度推定)

同図に示すとおり,政府負担割合は航空機等の自動車以外の輸送用機械工業が最も大きく,負担額では電子計算機開発助成等が行われている電気機械工業が最も多い。しかしながら,これら以外の業種をも含め,使用研究費中の政府負担割合は,全般的に欧米主要国に比べ小さく,資金面からは民間企業自立型の研究投資構造となっている。


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