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第2部  科学技術活動の動向
第5章  主要国の科学技術政策
1  アメリカ
(1)  概要


アメリカの科学技術政策は,1972年3月のニクソン大統領の科学技術に関する教書にその基本的な考え方が述べられている。すなわち,研究開発の重要性を再確認するとともに国民生活に密接な関連を有する研究開発に重点を置いて,1970年代をアメリカの科学技術の新しい時代とすることとし,連邦政府の役割の強化,民間研究開発の援助,科学技術面での世界的連係等6項目にわたつて科学技術政策の方向を明らかにしている。

この考え方は,1974年度予算編成においても引き継がれており,次の3点が中心をなしている。

1 戦略,戦術的軍事力の優位性の維持
2国民生活上の緊急な諸問題の解決に必要な科学技術の研究開発の継続的実施(例えば,エネルギー,がん,心臓病,交通輸送,自然災害,犯罪など科学技術が貢献し得る緊急かつ重要な分野の研究開発の推進)
3宇宙科学研究とその応用の推進及び宇宙地球間の人間,施設の低廉な輸送手段の確保等によるバランスの取れた宇宙開発の遂行

このほか,74年度予算では民間との研究協力の推進,研究開発の民間への依存度の増大,民間への技術移転の推進及び国内諸問題解決のための科学技術の貢献度の評価等も特に留意されている。

民間と政府関係機関との協力は,大統領の科学技術教書にもその必要性が強調されており,74年度予算においても石炭のガス化,高速増殖炉の研究開発等を通じて民間との研究協力の推進が図られることとなつている。

また, NSFはRANN(国家的ニーズに適用される研究)プロジェクトとしてエネルギー,環境,資源,防災,都市計画等に関する研究の助成を幅広く行つているが,その実施に当たつては大学と民間企業の共同研究を進めているのが注目される。

まず,エネルギー政策については,アメリカにおいても強い関心が寄せられ,1973年4月のニクソン大統領のエネルギー教書を皮切りに,積極的な施策がなされている。すなわち同教書においてエネルギーの安定確保を目標として,エネルギー消費の節約,国内エネルギー資源の再開発,エネルギーに関する各種の研究開発の強化等一連の対策が明らかにされた。これに引き続き,次のようなエネルギー関連研究開発を中心とした同大統領の声明が発表された。

1エネルギー研究開発庁(ERDA)を新規の独立した機関として設置する。
2当面の措置として,1974年度において約1億ドルの研究費を追加支出する。
3エネルギー関連研究開発のため,1975年度から5ケ年計画をもつて総額100億ドルの研究開発を開始する。

これらの方針に基づいてその後必要な措置がとられつつある。その状況は次のとおりとなつている。

(1)  ERDAの設立については,1973年11月,議会に法案が提出され,12月中旬下院を通過し,上院で審議が行われている。
2  1974年度における1億ドルの追加については,石炭のガス化・液化技術の開発に約5,000万ドル,原子力,エネルギー節約,環境等に関する技術の開発に約6,500万ドル,合計約1億1,500万ドルとし,1974年度のエネルギー関係予算総額を対前年度比37%増の約10億ドルとした(1973年度総額は約7億3千万ドル)。
3  1975〜1979年度の5ケ年計画については,73年12月,原子力委員長からニクソン大統領に報告書が提出された。同報告書は,米国のエネルギーに関する研究開発の第一の目標を国家安全保障におき,1985年には新技術の開発利用によりエネルギー輸入をゼロとすることとしている。

100億ドルの主な内訳については,原子力開発41億ドル,石炭の利用技術22億ドル,核融合研究15億ドル,エネルギー節約技術14億ドルとなつており,これとは別に環境科学の基礎研究に10億ドルの支出が要請されている。

また,100億ドルの連邦支出に対して125億ドルの民間企業の研究投資を期待している。

今回提案した計画に沿つて研究開発を推進した場合のエネルギー節約量としては, 第2-5-2表 に示すように,1980年には2.7億kl/年,1985年には4.1億kl/年の石油が節約されることになる。アメリカのエネルギー自立に対する積極的な姿勢は石油消費国会議の席上,アメリカが配布した「プロジェクト・インデペンデンス」計画からもうかがうことができる。

次に,ライフサイエンスについては,先に述べた緊急な国民生活上の諸問題解決に必要な科学技術の一分野として重視されており,1973年度に連邦政府が配分した全研究費約73億ドルのうちライフサイエンス関係は21億ドルと29%を占めている。また,ニクソン大統領の新政策メッセージにおいても,生物医学研究,特にがんと心臓病に関する研究と救急保健システムの改善に努力することが述べられている。1974年度予算ではがん,心臓病及び薬物乱用者の回復に大幅な増額が認められた。

第2-5-2表エネルギー供給における技術開発の寄与


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