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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第2節  社会システム充実のための科学技術の適用
7  社会システム充実の基礎となる情報技術


社会・経済の発展,科学技術の発達に伴い,あらゆる事物,事象が複雑に関連し合つて,社会の変化の加速度がますます増大する状況においては,取り扱われる情報の量,種類も加速度的に増大している。

このような中にあつて,特に情報が重要な役割を占める社会システムを発展させていくには,膨大な情報の中から,必要な情報を迅速かつ的確に選び出すことが重要となつてきている。このため情報を迅速に,かつ制御,管理に使用しやすい形に処理する情報処理技術,更にこれを伝達する情報伝達技術の発達が強く要請されている。以下これらの各技術の動向を概観する。


(1) 情報処理技術
1 電子計算機

電子計算機技術の発達には目覚ましいものがあり,その誕生から四半世紀を経ずして,現在,既に通称3.5世代の時代といわれている程の変革を遂げている( 第1-4-8表 )。

この間,その中枢機能である能動素子については,真空管,トランジスタ,IC,更にLSIと発展してきた。この過程で画期的な外部記憶装置としてのディスクも出現している。

このように構成素子の技術革新と,計算機自体の新技術開発とは密接に関連してきたものであり,この関係は今後も続いていくものと考えられている。更に新しい構成素子の出現は,その実装形態をも一変させる可能性を含むものである。

電子計算機の高性能化に欠くことのできない電子部品の小型軽量化の歴史は,電子技術の進歩の歴史といつても過言ではなく,生産の合理化,消費電力の減少,信頼性の向上など多くの長所を生みだしてきた。コアメモリからICメモリへの発達のように,集積化技術の進歩は絶え間なく続けられており,MSIからLSIへと飛躍的な進歩のために研究開発が進められている。

第1-4-8表 情報処理装置の世代の概念

主記憶装置のIC化とともに,外部記憶装置の高速大容量化,旧世代機種との相互互換性やはん用性の付与,オンライン処理を目指した多量処理機能や関連機器の充実など高速,大型化が現在の計算機技術の大きな方向である。これと後述のソフトウェア技術とが相まつて,電子計算機は複雑多岐にわたる情報処理に中心的役割を果たしていくものと考えられ,そのための各種研究開発が強力に進められている。

一方,集積回路技術を背景にして,価格的にも,取扱いの上でも簡単なミニコン(小型計算機)という新しい分野が具体化され,その応用分野も新しく開かれつつある。更に一個のシリコンチップの上に簡単な処理装置全体を集積した“ワンチップ中央処理装置″又は“マイクロプロセッサ”が検討,試作されるようになり,ミニコンよりもまた一段と簡単なこの種のプロセッサは,更に新しい各種の応用分野を見い出すことになるであろう。特にLSIは,量産による経済効果の極めて著しい技術であり,生産が軌道に載った場合,“大型計算機ほど処理量当たりでは割安になる”というグロシェの法則が成り立たなくなることも可能である。

将来の素子としては,集積回路の大規模化とは別に,“物理現象,物性現象などを直接利用して,高次の機能を直接達成する"機能素子がある。単一素子の存在はそのままにして,単一結晶に複雑な機能を持たせることにより,配線の手数の省略と小型化を目ざす集積回路技術とは本質的に異なるものであり,高電界ドメイン素子,磁気バルブ・ドメイン素子,電荷結合素子などはその代表的なものであり,研究開発が期待されている。


2 電子計算機のソフトウェア

電子計算機が高速化,複雑化し,また利用分野の拡大,利用内容の高度化が進むに従つて,計算機を目的に沿つて能率的にか動させるためのソフトウェアにも高度なものが要求されるようになり,そのための研究開発が行われている。

計算機の利用方式は,バッチ処理,リモートバッチ処理,リアルタイム処理(タイムシェアリング・システムも含む)に分けられるが,我が国においては, 第1-4-9表 のごとく,バッチ処理専用のものが圧倒的に多い。しかし,アメリカの利用形態からも想像されるように,今後リアルタイム処理が漸次増加するものと予想されている。

第1-4-9表計算機利用方式別構成比

1960年代後半から急速に発展したタイムシェアリング方式は,入出力装置の動作速度が中央処理装置本体のそれに比べて極端に遅いので,多人数が同時にそれぞれの入出力装置を利用し,中央処理装置を時分割で占有しても速度が匹敵するという考え方が基本になつているものである。

我が国においては,データ通信のための特定通信回線の利用に次いで,昭和47年11月以降順次公衆通信回線の利用が可能となるに伴い,タイムシェアリング方式の利用も増加してきている。タイムシェアリング方式の利用の例としては,日本電信電話公社のデータ通信サービスがあり,日本電信電話公社は昭和48年には,端末数500台程度の処理可能のDIPS(電電公社インフォメーション・プロセッシング・システムの略)を開発し,これによるデータ通信サービスを開始した。

大型計算機を中心に,中小型計算機を衛星計算機として接続し,いわゆる計算機複合体としてか動するシステムもある。工業技術院のパターン情報処理大型プロジェクトの一環として,電子技術総合研究所において,それぞれ特殊目的のための計算機を接続して,パターン認識に供しようとする研究開発が強力に推進されている。

また,中心的役割を果たす計算機が1か所にだけではなく,複数台の相互に離れている計算機を網状につなぎ,それぞれ特長を生かしつつ全体としての計算機システムの利用効率を上げようとするコンピュータ・ネットワークも,アメリカでは実用化されており, ARPA計画はその代表例である。更に単に一国のみならず,全世界をネットワークでつなぐ計画も検討されつつある。

一方,ソフトウェアを作成する立場から眺めると,計算機を効率的に使用するためのシステム・プログラム,運用上ひんぱんに利用されるユーティリテイ・プログラム,言語プロセッサなど目的別のアプリケーション・プログラム及び計算機利用者が書くユーザ・プログラムに分けられる。

システム・プログラムでは,オンライン処理などプログラムの多重化による能率的な計算機利用が提案されて久しいが,複数台の計算機の並列同時処理方式など,今後の研究に待つところが多い。

計算機の大型化に伴い,ソフトウェアはますます複雑化する傾向にあり,その生産過程においては,デバッグ,すなわちプログラムの訂正作業が50%以上占める場合も少なくない。それを回避するために正しいことが保証されたプログラムを作成するための研究も盛んになりつつある。また,人海戦術によるソフトウェア生産も,数百万ステップ以上にもなると誤りを訂正できなくなる場合も十分考えられる。

これらの点を考慮したプログラム作成法として,まだその緒についたばかりとはいえ,将来有望視されているプログラムの構造を重視するストラクチャード・プログラミング法などの研究開発が行われている。


3 関連機器とパターン認識

複雑な情報の処理が期待されるようになる情報化社会においては,その情報形態も多様化せざるを得ない。しかも電子計算機本体の発展に伴いそのまわりを取り巻く周辺装置,端末装置,すなわち,前者では補助記憶装置,入力装置,出力装置など,後者では通信回線を経由した入出力装置などの性能向上が要求される。OCR(光学文字読取機)も近年著しい進展が見られているが,我が国独特の漢字や仮名文字,また,手書き文字などの問題が山積しているといわざるを得ない。

工業技術院では,超高性能電子計算機に続いて,昭和46年度よりパターン情報処理大型プロジェクトを電子技術総合研究所において開始している。

これは従来型のコンピュータ・システムが不得手とする文字,図形,物体,音声などの情報,すなわちパターン情報と呼ばれるものの直接入力,認識,処理を行うことの可能なパターン情報処理システムを1980年代に実用化することを目指して8か年計画で着手したものである。

研究開発は,文字,図形,物体,音声のそれぞれを認識する個別システム,そのために必要な共通のソフトウエアやパターン情報などを一括処理する情報処理システム,全体をまとめる総合システム及び新しい部品材料等の開発という4つのサブ・テーマより構成されている。

パターン認識は,二次元や三次元に拡がる複雑な情報処理であり,こと細かく全てを調べ,もうらする方法では到底間に合わず,ちょうど人間が行うような適宜取捨選択する方法の確立が望まれており,いわゆる人工知能の研究として展開されつつある。知能をもつロボットの研究は,人工知能技術の集約化としての具体的研究といえる。アメリカのマサチューセッツエ科大学(MIT)やスタンフォード大学,スタンフォード研究所(SRI)などを中心に人工知能向きプログラム言語の開発がここ数年活発に行われており,その成果には目を見張るものがある。

この種のプログラム言語として, PLANNER, CONNIVER, Q A-4,POP-2などが代表的なものであり,これらは一昔前に開発されたリスト処理用言語LISPが再び脚光を浴びてベースになつた言語である。

この傾向は,今後もこの分野では続くものと考えられている。

このように計算機に問題を解決する能力を付与することにより,プログラムを自動的に作成する,いわゆるオートマテイック・プログラミングを指向する研究が始められている。その代表的な例としては,MITにおける在庫管理プログラムの自動作成プロジエクトがある。


(2) 情報伝達技術

既に述べたように,情報処理技術の発展には目覚ましいものがあり,我が国のオンライン・システム数も47年度末までに450システムを超える状況にある。( 第1-4-10表 )

第1-4-10表 わが国のオンライン・システム数の推移

これとともに,電子計算機を電気通信回線によつて遠隔地の入出力機器や他の電子計算機と直接接続したデータ通信方式が昭和40年ごろから利用されるようになつてきた。更に,昭和46年5月の公衆電気通信法の一部改正により,データ通信のため通信回線の利用範囲が従来に比して飛躍的に拡大された。

コンピュータ・ユーテイリテイ実現のためにはデータ通信をバック・アップする技術が必要で,これを支える技術として,情報処理技術,データ伝送技術,データ宅内技術(周辺装置,端末装置)が3本の柱となつている。

このうち,情報処理技術,データ宅内技術については前述したので,以下データ伝送技術の動向について述べる。

電子計算機の利用の拡大に伴い,各種周辺装置,端末装置は多種多様化するとともに,データ転送速度も逐次高速化されつつある。また,電子計算機相互間の通信も行われるようになつてきている。このためデータ伝送技術は高速化の方向を指向するとともに,経済的で高品質のデータ伝送装置の開発に努力が払われている。

データ伝送技術は,データ宅内装置から出力される2進符号(一般に直流のオン・オフパルス)をひずみなく,誤りなく伝送する技術で,その方法として,電話回線をそのまま又は周波数分割して使用する電話形データ伝送方式,広帯域回線を使用する広帯域データ伝送方式,直流伝送技術を利用する電信形データ伝送方式及びPCM-24方式等のデジタル伝送路を利用するPCMデータ伝送方式がある。 第1-4-17図 に我が国における現在までの各種データ伝送方式の開発状況を示す。

第1-4-17図 データ伝送方式の開発状況

今後のデータ伝送方式の動向としては,既存各種データ伝送装量のIC化による小型化,経済化,より高速度の新データ伝送装置の開発及びデータ交換網の開発が考えられている。特にデータ交換網については,コンピュータ・ユーティリティの実現のためにも重要なものとなろう。すなわち,データ伝送もその初期においては,限られた範囲に使用されていて,専用回線によるサービスで充分であつたが,電子計算機の普及によつて,データ通信の種々の利用形態が生まれ,交換網の利用に対する要望が高くなつてきた。

しかし,現在の公衆電気通信網は本来電話あるいは電信用に作られたものであり,データ通信を行うには伝送品質等に限界があり,今後予想されるデータ通信への多種多様な要求に応じるには困難になつてきた。このことは日本のみならず,国際的にもいえることであり,最近,通信の特殊性から国際的な調整が必要とされ,データ通信のための新しい回線網,いわゆるデジタルデータ網を作ることが各国に提案され,これについての具体的な検討が国際電信電話諮問委員会(CCITT)で開始された。我が国においても,日本電信電話公社を中心に数年前から,時分割電子交換機及びデジタル伝送方式の研究開発の成果を基礎として昭和51年ごろを目途にデジタルデータ網サービスができるよう研究実用化が進められている。

ところで,電気通信による情報の伝達については,今まで述べてきたデータ伝送のほかにも,今後ファクシミリ,テレビ電話といつた伝送量の大きな視覚情報の伝達に対する要請も強くなつている。このためには,従来に増して大容量の伝送路が必要になつてきている。

この大容量伝送方式として,大きく分類するとアナログ伝送方式とデジタル伝送方式がある。アナログ伝送方式としては,既に同軸ケーブルによる電話,10,800チャンネルの容量をもつC-60M方式が実用化されている。しかし,今後の電気通信技術の方向を考えると,データ通信,画像通信と親和性のあるデジタル伝送方式が重要になるものと思われる。

このデジタル伝送方式としては100Mbit/secの伝送ができるPCM-100M同軸ケーブル方式や400Mbit/secの伝送ができる20GHz帯準ミリ波PC M方式の実用化の研究開発が進められている。更に今後ミリ波導波管伝送方式,国内衛星通信方式,光通信方式といつたより大容量の伝送方式の研究開発にも期待がかけられている。

近い将来,これらの大容量伝送方式と既に実用化された電子交換機とを組み合わせた総合通信網により電話に加えて,データ通信,画像通信等といつた新しいサービスを経済的かつ能率良く提供できることになろう。


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