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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第4章  社会開発基盤の強化
第2節  社会システム充実のための科学技術の適用
2  環境監視



(1) 現状と問題点及び研究開発の方向

我が国の大気汚染,水質汚濁等に見られるような環境汚染は,各方面で種々の対策が講ぜられた結果,一部では改善の傾向がうかがわれるものの,依然として汚染が進行している面も見られる。

また,近年の新たな動向として,環境汚染の広域化,多発化,新しい汚染因子の出現等の諸問題が表面化してきている。

このような環境汚染を起こさぬようにするためには,あらゆる産業分野で汚染因子を外部に排出しないクローズド・システムのような抜本的技術体系を確立することが必要である。しかし,この種の抜本的な技術については,まだ,一部の生産分野において,その研究開発が緒についた程度であり,いずれの生産分野においてもそのような技術体系が確立されていない状況にある。

このため,このような抜本的な技術の開発の推進と併行して,環境を常時監視し,環境の変化が人間の健康等にとつて許容し得ない状態になる前にそれを発見し,汚染源の確認とそのコントロールを行うシステムー環境監視システムーの開発が必要となつている。

以上のような状況を基に,このような環境監視システムの開発が進められ,東京都,大阪府等の地方自治体などにおいて一部が実用化されている。しかしながら現在のシステムは,大気汚染を中心としたものであり,より総合的なものへ発展することが望まれている。

今後の望ましい環境監視システムのあり方としては,今後の科学技術の発展,更には社会・経済の発展とあいまつて,快適な環境の創造への貢献,予期せざる環境悪化の発生への事前対処等の積極的機能を有するものであることが望まれる。

このようなシステムに要求される望ましい基本的機能としては,広い範囲にわたつて,1)時々刻々と変化する大気及び水等の流動に伴う汚染因子の移動及び拡散を考慮に入れて,汚染状況をは握すること,2)計測データの解析,汚染状況の判断,汚染の確認,警報及び汚染源のコントロール等すべて迅速かつ的確に処理できるものであること,3)自然条件(植生,土壌,気象,水象等)及び社会経済的条件(人口の移動の分布や経済活動の程度及び分布等)のデータの計測又は収集,データの蓄積及び解析等による環境変化の予測とそれに基づく環境悪化の防止計画が立案できるものであること,4)自然環境の変化が人間及び社会に与える影響並びに人間社会の変化が自然環境に与える影響の研究に役立つような観測及びデータの組織的蓄積等を行い,地域計画,都市計画等への反映,更には快適な環境という目標の確立に資する機能を持つことなどが考えられる。

このような環境監視システムの概念を図示すると 第1-4-9図 のとおりであり,このシステムの確立のためには,そのあらゆる部分にわたつて最新の高度な科学技術が体系的に組み込まれることが必要である。

第1-4-9図 環境監視システムの概念図

前述のとおり,まだこのようなシステムは存在していないが,サブシステムとなり得るようなシステムが一部実用化の段階に達している。

第1-4-10図 は,大気汚染監視システムの東京都の例を示したものであり,その機能は,1)大気汚染状況を常時監視する機能(常時監視システム),2)大気汚染状況を一般に周知させるとともに緊急時の発令を連絡周知させる機能(連絡周知システム),3)緊急時において,大規模発生源(大規模工場,事業場等)が,ばい煙排出量を削減したか否かを監視する機能(発生源監視システム)の三つに分けることができる。本システムは,昭和40年に設置され,47年度末まで総合測定室19か所,自動車排ガス測定室29か所,立体測定室2か所,街頭電光表示盤15か所,緊急時協力工場,事業場251か所となつている。測定はオキシダント,亜硫酸ガス,一酸化炭素,一酸化窒素,二酸化窒素,炭化水素及び浮遊粒子状物質を対象としているが,工場,事業場への同時削減通報・監視は,亜硫酸ガスのみを対象としている。

このような既存のシステムの経験を活用しつつ前述のシステムを開発していく上で,近年,技術的に問題となつている点としては,第1にシステム全体の基本設計の開発,第2にシステムに組み込まれる要素技術の開発が重要となつており,なかでも計測技術が第1の基本設計の開発を円滑にする鍵となつているため,これらの同時併行的な発展が望まれている。

以下,研究開発の動向をシステムの基本設計の開発,計測技術に分け概観することとする。


(2) 研究開発の動向
1 システム基本設計の開発

環境汚染は,多種多様な自然界への排出物が気象,水象等の自然条件と複雑に絡み合つて発生するものである。このため,環境監視システムの基本設計を行うためには,自然条件と汚染との相関関係の究明に基づく環境汚染のメカニズムの解明及びこれの解明に基づいた環境汚染予測モデルの開発,このモデルに基づくハードウエアの開発等からなる一連の研究開発が重要となつている。

このような一連の研究開発としては,大気汚染について,例えば,鹿島,水島地区等において気象状況と汚染物質の大気への拡散との関係のメカニズムの究明とこれらの結果に基づく汚染予測モデルの開発と測定機器の自動化,テレメータ化等が行われている。

また,環境汚染メカニズムの解明及び予測技術の開発に資する基礎的研究は,国立試験研究機関等において取り組まれている。

第1-4-10図 大気汚染コントロールセンター総合系統図(東京都の例)

今後は,環境汚染メカニズムの解明等の基礎的研究の推進,更には後述の計測技術,発展等を基礎として,水質汚濁,更には種々の汚染因子を総合的にとらえたシステムの開発が望まれる。


2 環境計測技術

環境監視システムに組み込まれる要素技術としては,計測,通信,情報処理等数多くの技術が挙げられる。これらのうち通信,情報処理等の技術の進歩は,著しいものがあり,その成果は,環境監視システムに十分応用できるものとなつている一方,計測技術は,自動連続化,更には態度,精度,信頼性の向上等の面での発展が望まれている。

自動連続化の面でみると,水質汚濁に関連しては,PH,温度,電導度,溶存酸素,酸化還元,電位濁度,シアン,TOC(総有機炭素量),TOD(総酸素量), COD, BOD,油分,フェノール,6価クロム等について,実用化が行われている。しかし水銀,鉛,カドミウム,アンモニア等については実用化の初期的段階であり,ヒ素については実用化されていない状況にある。このため,これらの分野の研究開発が更に急がれており,現在,各方面で取り組まれている。

また,大気汚染に関しては,自動連続化の実用化がかなり進んでいるが,窒素酸化物,塩化水素,フッ化水素等の計測技術の開発が遅れており,現在各方面で取り組まれている。更に,このほかにも臭素,二酸化炭素,フッ化水素,ホスゲン,ベンゼン,アルデヒド等の大気汚染防止法に基づく特定物質計測技術の開発が急がれている。

感度の面でみると,人の健康に係りのある環境基準のうち,“検出されないこと″と規定されている物質に,水質関係でのシアン,アルキル水銀,有機リン及び総水銀があり,これらの計測に関する技術開発が急がれている。

精度の面で見ると,特に大気汚染に関しては,そもそも計測対象の絶対値が小さいので,校正のための標準物質を得ることが難かしくなつており,この面での研究開発が急がれている。

信頼性の面で見ると,環境監視用計測器は,か酷な状況で使用するものであり,この点を考慮しての開発が望まれる。

これらのほかにも,近年の新たな環境汚染である光化学スモッグの解明とこれの自動連続計測等の確立が望まれている。

更に,近年の宇宙技術の進歩により,リモートセンシング(隔測技術)による環境計測がより広範囲なシステムの確立のために大いに期待されている。

これは,人工衛星により,地上の環境を常時計測しようとするものであり,他のサブシステムと連結されることにより,システムの飛躍的発展が期待されている。


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