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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第3章  新領域の開拓
第2節  資源の開発・利用の海洋への拡大
1  海洋資源及び海洋スペースの開発



(1) 生物資源開発

生物資源の開発は,海洋における資源開発の中で最も進んでおり,世界の海洋生物資源生産量は,10年前の約2倍の7千万トンになつている。今後,新しい漁場を開発し,また,南氷洋のおきあみなどの未利用生物資源を資源化することにより,将来は年間2億トンの生産が可能と見られている。更に海洋生物の持つ自律的再生産過程を人為的に管理する資源培養型漁業(栽培漁業)が注目を集めており,既に実用化されでいるが,海湾を一単位とするなど,より大規模な開発が期待されている。こうした海洋生物資源の開発は,今後世界人口の急激な増大が予想される中で,動物性たん白質の確保に大きく貢献するものと思われる。

新漁場開発は漁業生産を増加させるために重要な手段である。従来,民間の水産業界の自主的な開発にゆだねられてきたが,近年,漁場の遠隔化,開発リスクの増大,国際問題の発生などから,国の援助の下に組織的に推進する運びとなり,昭和46年7月,政府と民間の共同出資で海洋水産資源開発センターが設立された。現在,同センターを中心に漁場探査企業化試験,未開発漁場の体系的開発調査を行つている。

未利用資源の開発については,多獲性魚類あるいは低利用資源について,漁ろう技術,利用加工技術の開発,消費流通形態の確立などが,国立水産研究所を中心に検討されている。

栽培漁業については,のり,こんぶ,かき,はまち,くるまえびなどの中高級魚介藻類や真珠の養殖が企業化され,その生産も昭和47年には61万トン(全漁生産量の約6%)に達した。特に,瀬戸内海栽培漁業センターにおけるくるまえびの人工種苗生産技術は,世界的にも高く評価されている。

今後とも,新漁場の開発や大規模な増養殖事業の展開により,漁業生産は拡大すると思われるが,それらの基礎となる技術開発としては,超音波技術を応用した魚群探知機等が開発実用化されている。しかし,現在の探知機等から得られる情報は,魚類の行動のうちのある瞬間の一断面しか影像化できないため,経験に基づく従来の漁業から,魚類の基本的な行動生態から得られた知識に基く漁業への進展を図ることを狙つて,バイオテレメトリー技術(生物情報の遠隔測定技術)等の研究開発が盛んに行われている。


(2) 鉱物資源開発

海底には,石油,石炭,硫黄,マンガン団魂及び砂鉄,砂錫等の重鉱物など多種多様の鉱物資源がふ存しているが,現在,特に大陸棚から大陸棚斜面にかけての石油(天然ガスを含む。)と深海底(水深2,000m〜6,OOOm)におけるマンガン団魂の二つが注目されている。これら鉱物資源については,流通事情の硬直性に加え,将来は世界的な需要の増大による陸上資源の枯渇が予想されるため,需給のひつ迫が懸念されているが,このような状況にあつて海洋の鉱物資源の開発は,その長期的安定的確保に大きく寄与するものとして期待されている。

特に,海底石油の開発は,経済性,技術的波及効果等の点で海洋開発の諸分野の中でも中心をなすものであり,最近の世界的な石油危機は,その重要性を高めている。

第1-3-5図 日本沿岸における海底鉱物の分布図


1970年における世界の海底石油生産量は,全生産量の18.5%を占めるまでに至つているが,1980年には30%以上になるものと予想されている。

我が国における海底石油開発について,国は昭和45年以来,日本周辺大陸棚における石油を主とする鉱物資源ふ存の大要を把握するための調査を進めている。また,この結果に基づいて民間石油開発企業の探鉱も活発に行われており,最近,新潟県の沖合で我が国第1級の海底油・ガス田を発見したほか,五島沖における準商業量の天然ガス,常盤沖における商業量の天然ガスの発見が相ついだ。

海底石油開発における技術進歩としては,石油堀削が次第に深海に向かいつつあることに対応して海底堀削技術と生産技術の向上に著しいものがある。

海底堀削技術として半潜水型堀削装置の自走化による運動性能の向上などがあげられ,その例として,我が国では山陰,対馬の試堀に活躍したオーシャンプロスペクター号,更に第3白竜号が1974年の完成を目指して建造が進められており,この分野では世界第1級の能力を有している。

生産技術としては,北海において海底より212 mの高さを有するコンクリート製生産プラットホームが建造されているほか,海底油田が大水深に向つていることに対応し,60年代から世界的に研究開発が進められてきた海底石油生産システムの実用化が近いことが挙げられる。この方式は,中間経由点としてのプラットホームを作らずに直接海底の抗口装置に付属した海底面の設備において原油を処理し,陸上に輸送するもので従来に比し極めて効率的なものであり,現在数方式により実用化試験が行われている。

マンガン団魂を中心とする深海底鉱物資源についてはいまだ調査の段階で,資源探査に関する基礎研究が行われるにとどまつている。このため,通産省が昭和47年度から建造に着手していた地質調査船は49年度から就航しており,その成果が期待されている。


(3) 海水及び海洋エネルギー

近年における世界的な社会経済の発展は,水資源の急激な需要増加をもたらしているが,海水の淡水化は,これにこたえるものとして,注目を集めている。また,海水に溶存するナトリウム,カリウム,マグネシウム,塩素,臭素等の有用物質をより経済的に抽出することも期待されている。

更に,海洋には運動エネルギーとして,波,海流及び潮流,熱エネルギーとして塩度差,位置エネルギーとして干満差など様々な形態のエネルギーが含まれているが,立地等種々の制約があり今後の技術開発が期待される。

海水の淡水化については,我が国でもこれまで日産数トンの基礎的なものから,日産2,650トン(長崎県池島),輸出用として日産18,200トン(クエート向け)など数多くの装置を開発している。また,工業技術院においても,昭和44年度から海水の淡水化と副産物の利用に関する研究開発を大型プロジエクトとして取り上げており,多段フラシュ法による技術開発を進めている。同研究では既に日産10万トンプラントのテストモジュールを大分市に建設中であり,昭和50年度までには日産10万トンプラントの実設計資料を得る予定である。

第1-3-6図 海水の総合利用フローシート

海水溶存物質の回収については,現在回収されている有用成分は,食塩,マグネシウムとその化合物及び臭素などである。今後特に実用化が望まれている成分としては,カルシウム,カリウム,バナジウム,モリブデン,ウランなどがある。

海洋エネルギーの開発は,我が国のみならず,世界的にも微少電力利用を除き,まだ実用化していない。波力発電については,現在我が国で常用消費10〜100W程度のものが実用化されており,主にブイ用として使われている。

海洋固定式の波力発電も離島などの特殊用電源として1,000KW程度の装置の開発が検討されているが,いまだ構想の域を出ていない。海水揚水発電については,立地可能地点の調査等を行つている。

潮汐発電は,我が国の干満差が最高でわずか4.5m(有明海)しかないため,かなり困難である。温度差発電も理論的には可能であるが,現在の技術をもつては実用化は極めて困難な状況にある。


(4) 海洋スペースの開発

従来,海洋スペースは,海上交通の場として重要な役割を果たしてきたが,科学技術の進歩により,産業経済の場及び生活空間として立体的多箇的開発の可能性が開けつつあり,海洋スペースの新しい開発は,国土の総合的開発に役立つものと期待される。また,所得水準の向上,自由時間の増加等を背景としてレクリエーション需要の増大が予想されており,海洋スペースの開発は新たな余暇空間の創造にも貢献するものと思われる。

海洋スペースの開発は,我が国の国土が狭小であるためもあつて,特に沿岸部で開発に対する要請が強く,従来から埋立,干拓などによる開発は活発に行われてきた。これに加えて最近は,海上架橋,人工島,沈埋トンネル,海中展望塔などの新しい開発が進められており,海上空港についても大村空港のように完成しつつあるもの,また,関西国際空港,新高松空港など具体的な構想が検討されているものがある。更に,海底貯油タンク,海底パイプライン,海上発電所などについても検討されており,海洋スペース開発の将来は極めて多様である。しかし,一方においては,漁業,航路等の既存の権利との調整,経済性に難点があること,安全性の問題,更に海洋スペースの開発に伴う海洋汚染や環境破壊の問題など解決すべき課題も多い。

海洋スペースの開発は,我が国の場合,特にニーズが強く,海洋開発の各分野の中ではとりわけ有望な分野と考えられているが,その進展のためには技術開発,特に水深50m程度までの海洋構造物に関する技術の開発が不可欠である。その意味で本州四国連絡橋の建設によつてもたらされる技術の発展は,今後の海洋スペースの開発に大きな影響を与えるものと思われる。


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