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第1部  社会発展基盤の強化と拡大のために
第3章  新領域の開拓
第1節  エネルギーの供給確保と多目的利用に貢献する原子力開発
1  原子力発電


原子力発電は,化石燃料等に比べ燃料の輸送,備蓄がはるかに容易である。

例えば,100万kw級の原子力発電所が1年間稼動率80%で運転するには年に1度約40トンのウラン燃料を取り換えるだけでよいが,重油を燃料とする火力発電所では,1年間に約150万kwの重油が必要である。また,発電コストに占める燃料費の割合が原子力発電では約30%,火力発電では約60%と,原子力発電の方が少ないため,原子力発電の方が燃料コストの増加によつて発電コストに与える影響が小さい。

現在,我が国では既に6基の商業発電炉が運転中で,発電設備容量で2301万kwとなつており,全営業用発電設備容量の約20分の1を占めている。また,原子力発電設備容量は,昭和55年度末には約3,200万kw,昭和60年度末には6,000万kwに達するものと見込まれている。

ここ,1,2年の原子力発電所の建設状況を見ると,安全,環境問題に端を発する住民の反対運動の高まりによつて,用地の確保が遅れるなど,建設に遅れが生じているが,一方において,エネルギーを巡る情勢が大きく変化しており,原子力発電に対する期待が一層強くなつている。

このため,原子力の安全対策の一層の強化向上を図り,また,前述の特別会計制度の新設により,発電所周辺地域住民の福祉向上を図ること等を通じて,計画の遅れを早急に回復させ,国民の原子力に対する期待にこたえていくことが必要であると考えられる。

また,世界各国においても,原子力発電の積極的導入が図られており,昭和48年12月末現在,147基,正味電力で約4,771万kwの発電設備容量を有している。更に,建設中及び計画中のものは,364基,正味電力で約3億1,502万kwに達している。

現在発電に使用されている原子炉は,熱中性子による核分裂を利用した軽水炉,ガス冷却炉などであるが,核燃料の有効利用という観点からすれば,ウラン燃料のもつエネルギーの1%程度しか利用できない。これではウランの世界における埋蔵量から見て豊富なエネルギー源とは必ずしもいえない。

すなわち,自由世界において20ドル/1kg程度の安価なウラン燃料は100万トン程度しか埋蔵量がなく,そのエネルギーの1%(石炭換算300億トン)しか利用できないとすれば,石油の世界埋蔵量3,500億トン(石炭換算)の1割にも達しない。

軽水炉等在来型炉の持つこうした限界に対して,燃料の有効利用などの点で大きな期待がかけられているのは高速増殖炉である。この炉は,ウラン235などの核分裂によつて生じる中性子を在来型炉のように減速することなく高速のまま次の核分裂に利用するとともに,この高速の中性子と通常では核分裂を起こさないウラン238との核反応を利用して,核分裂のための燃料として利用することのできるプルトニウムを効率的に生産することにより,使つた燃料以上の燃料を確保することができるため,夢の原子炉といわれている。

このようにして,高速増殖炉により核分裂エネルギーを取り出すとすれば,ウランの持つエネルギーの60〜80%程度を活用できることになり,現在コストの点から利用が困難であると考えられている低品位の地下ウラン資源をはじめ,海水中に溶存している膨大な量のウランの利用も夢でなくなり,人類は無限に近いエネルギー源を得ることとなる。

更に,育速増殖炉は,軽水炉と比べて熱効率が優れているので温排水の放出量が比較的少なく,放射性物質の放出防止対策がとりやすいなどの環境対策上の利点もある。

このため,各国では 第1-3-1図 のように高速増殖炉の研究開発を積極的に進めており,既にソ連,フランス及びイギリスでは30万kw級の実用規模の高速増殖炉が順調に運転を行つているほか,アメリカ,西ドイツなどにおいても,同程度の規模の高速増殖炉の建設計画を進めている。

第1-3-1図 各国の高速増殖炉開発状況

しかしながら,実用化までには金属ナトリウム取扱技術,金属ナトリウム用機器の信頼性の向上など多くの問題を残していると見られている。

我が国においても,このような問題点を考慮して模擬臨界実験,ナトリウム技術試験,主要機器開発試験,計測制御,遮へい研究,核燃料,材料の開発試験,安全性確立試験などの各種研究開発を進め,この成果を踏まえて,1975年度に臨界を目標に高速増殖炉実験炉「常陽」(熱出力10万kw)の建設を進めるとともに,1975年度に着工を目標に高速増殖炉原型炉「文珠」(電気出力30万kw)の第3次概念設計を進めている。

一方,高速増殖炉開発への過渡的な技術として,軽水炉の技術の経験によつて早期に実現が可能な新型転換炉原型炉「ふげん」(重水減速軽水冷却型)の建設を1976年着工を目標に進めている。


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