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第3部
主要科学技術分野の動向
第6章
医療保健科学技術
3
成人病対策
(2)
開発の現状
( わが国のがん研究は,山極博士が人工がんに成功して以来,世界の先端を歩んでおり,日本がん学会,がん治療学会,胃集団検診学会,および肺がん研究会の各学会を中心に文部省,厚生省,科学技術庁の関係研究機関,国立病院,大学等において活発に進められている。 がんの基礎研究においては,発がん性物質,環境発がん性物質,ウィルスによる腫瘍の発生等が徐々に解明されつつあり,がん細胞増殖メカニズムも分子レベルで研究が進められ,さらに,その制御方法等を解明する方向に進んでいる。 また,早期がんに対する診断,治療技術は著しく進歩し,X線,マイクロカメラ,放射性物質摂取等による物理的診断あるいは生化学的診断技術が開発され,比較的早い時期にがんを発見することが可能となり,それに伴つて外科手術が進歩し,がんを早期に治ゆする可能性を高めつつある。また,放射線を用いた治療技術が,がんの治療に大きな効力を発揮している。たとえば,高エネルギーの加速装置を使い厳密にまとをしぼつて人体にひそむ病.根を破壊するようになつた。この装置はこの2,3年の間に国立病院,成人病センター,大学病院,公立病院に設置されてきている。 また,現在ではまだ試験的段階ではあるが,原子炉による脳腫瘍の治療も行なわれるようになつてきた。 抗がん剤の研究は,大学,国立試験研究機関,民間において活発に行なわれており,多数の抗がん剤が開発されている。 手術療法や放射線療法は,限局された部分のがん治療には極めて有力であるが,白血病,悪性リンパ腫瘍の全身的な広がりをもつがんに対しては,無力であり,また,がん細胞の転移を防ぐためにも,がん化学療法の開発が期待されている。 抗がん剤の開発とその使用方法が進歩し多剤併用療法などが試みられるに至つて,徐々にではあるが生命の延長が期待できる時期に到達しつつある。 さらに手術や放射線治療と抗がん剤との併用により単独治療に比べて効果をあげている。 抗がん剤は,大別してアルキル化剤,抗代謝剤,抗腫瘍性抗生物質,植物アルカロイド等があり,とくにわが国では,マイトマイシンC,クロモマイシン3 等の代表的ながん抗生物質が開発され,海外にも輸出されており,最近では皮ふがんおよび咽喉がんにすぐれた効果のあるブレオマイシンが開発されて,すでに使用許可になつており,がん制圧に大きな可能性をもたらしている。 また微生物を用いてがん細胞増殖を阻止する研究も行なわれており,かなりの成果が得られ,将来の実用化が期待されるものの一つになつている。 このように,わが国におけるがん研究は,活発に進められており,昭和43年に厚生省では,がん研究助成金256,080千円,文部省ではがん特別研究費330,000千円を交付している。その他,厚生省の国立がんセンター,科学技術庁の放射線医学総合研究所において,がんの総合研究が行なわれており,なお一層がんの制圧のための研究が強化されるであろう。 また,将来は,分子生物学,生物物理化学の進展に伴い,がん制圧に有力な手段が得られることが期待される。 ( わが国で発生する循環器疾患の特長は,欧米諸国に比して,脳卒中死が多く,心臓死が少ないことであり,さらに脳卒中を脳出血,脳硬塞などの病型別にみると,欧米諸国では脳硬塞が多いのに反して,わが国では脳出血が多い傾向にある。脳卒中および心臓病は従来,その発作の予知やその根本的治療は困難とされ,突発的な死亡にいたることが多かつたが,最近,心電計,眼底血圧計,脳波計等の医用機器による診断技術,血清中のコレステロールや脂肪を測定し循環器疾患の原因となる動脈硬化を生化学的に診断する技術等の進歩により,循環器疾患の早期発見が可能となつてきた。 したがつて,循環器疾患は管理の効果が期待できる疾患であり,地方自治体,職域等で自主的な循環器管理を進めているところが多くなつている。また昭和41年3月に全国の循環器疾患の研究者が結集して日本循環器管理研究協議会を設立し,全国的な規模で脳卒中,心臓病および高血圧の予防管理についての総合研究を行なつている。その研究成果として,すでに循環器疾患診断手技に関する研究が報告され,さらに脳卒中,心臓病発作者についての研究も進められている。 脳卒中のうちとくにわが国に多い脳出血に焦点をおく場合,その予防のために高血圧対策が重要であることが明らかである。これに対し,近年,副作用の少ない降血圧剤,不整脈治療剤,血管強化剤,脱コレステロール剤,強心剤等のすぐれた医薬品が開発され,脳卒中,心臓病発作を事前に予防することが可能となりつつあるので,これからは,早期診断,早期治療技術の・開発に伴つて循環器管理体制を強化すると同時に,診療施設の強化拡充が必要とされている。 前(節)へ 次(節)へ
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