ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
 
第7章  諸外国の動向
2  イギリス


技術の振興を国家政策の主要な柱として現政府が発足して以来,すでに一年有余を経過している。

1965年3月末に成立した科学技術法に基づいて科学技術行政の改革が行なわれたが,その狙いは,従来ぼう大な規模を保持してきた国防費を非軍事産業の開発へふり替えるという基本方針から,非軍事研究開発委託の拡大を中心とする産業技術の振興にあつた。このため,とくに技術省を新設して技術行政を統合し,基礎研究と大学行政を掌握する教育科学省との二本立ての体制をとつた。

経済成長率25%を目標として1965年9月に発表された経済成長5カ年計直(1966-70年)においても,この方針が確認されている。すなわち,従来国防研究に従事してきた科学技術者の平和産業への一部ふり替えを要因とする科学技術者の活用促進,技術者の資質向上と地位の引上げ,産業能率改善方策,大学,産業研究組合等への研究費助成や研究開発契約(委託)の拡大,研究開発公社(NationalResearch Development Corporation)の支出権限拡大による非軍事産業の振興等を強調している。この間,技術省は電子計算機,工作機械,電子工業,電気通信の4産業を主体とする開発契約(委託)の拡大に努めつつ,行政体制の強化を進め,地域開発の国家政策に沿つて同省地域局を8局設置し,各地域における大学,国立研究所,産業相互間の連絡機関とした。その重要な機能として中小企業に対する技術助言がある。また最近解体された航空省から航空機製造関係を,このほか商務省から造船分野を引き継いだ。この結果,同省はほぼ全製造業部門を掌握することとなつた。一方教育科学省においても科学技術情報局(Office of Scientific and TechnicaLinformation 一教育科学省内),自然環境研究会議(Natural En-vironment Research Council),社会科学研究会議(SocialScience Research Council)の設置等,行政機構の整備が進められた。

技術省管下の国立研究所(旧科学技術研究庁所管)の研究活動においては,国民生活に直結する研究が目立ちはじめているのが,最近の動向の特色としてあげられよう。例えば政府化学分析所(Laboratory of Government Chemist)における消毒液の穀物への噴霧効果の研究,水質汚濁研究所(Water P011ution Loboratory)の合成洗剤の効果に関する研究等がある。

また,公共的性格の強いものとして,国立物理研究所(NationaI Physical Laboratory)における橋梁等多様な構造物の風洞実験による構造設計の研究や,業界の加工精度の向上とオートメーションの進歩に役立つ物理標準の精度を高める努力などがあげられよう。

また技術相は,原子力公社(Atomic Enefgy Authority)に対し,原子力に関連のある課題分野の研究を行なうことを要請する権限も与えられており,現在海水脱塩技術,新しい金属成型法等の開発が同公社によつて行なわれている。このほか同相の監督下にある研究開発公社も支出権限を拡大され,二大重点研究としてホーバークラフトおよび電子計算機の研究開発があるほか,各種発明の実用化が図られている。現在,48を数える産業研究組合の助成については,特に生産技術および科学器械に関する組合に重点を置き,工程管理あるいはオートメーション技術の進歩を狙つている。

さらに科学技術人材の問題に関し,理工系志望学生の比率の減少を重視して,技術省は1965年2月に諮問機関として科学技術人的資源委員会(Com-mittee on Manpower Resources for Science and Technology)を設立し,需給および有効活用政策を検討しており,これに呼応して教育科学相の諮問機関である科学政策会議(Science Policy Council)が主として科学人材に関する統計実積の分析研究を開始している。

新年度(1966-67年)の予算においては,4億8,900万ポンド(約4,890億円)が研究開発費として計上された。これは,総予算に占める比率では6.3優(前年度6.2%)であり,絶対額では前年度(4億4,600万ポンド)の10%増である。第7-6表の集計によつてみれば,国防省は5,000万ポンド(約500億円)で約4%増,原子力も5,620万ポンド(約562億円)で5%増にとどまり,また大部分が国防研究開発である航空省は2億6,480万ポンド(2,648億円)にのぼり8%の増大であるが,増額分は主として民間への研究開発委託と輸送機開発費の拡大によるものである。技術省(本庁予算)1,850万ポンド(約185億円)は44%の増額,教育科学省(本庁予算)54万ポンド(約5億4,000万円)は91%の大巾な増額であり,各研究会議も平均20%程度の増額である。この総額は大学および学会関係への研究支出を含まない数字であるが,これを加えて試算すると,1965-66年度4億8,980万ポンド(約4,898億円),1966-67年度5億3,800万ポンド(約5,380億円)となり,このうち国防および非軍事研究費はそれぞれ65-66年度で2億6,670万ポンド(約2,667億円)および2億2,310万ポンド(約2,231億),66-67年度では2億7,950万ポンド(約2,795億円),2億5,850万ポンド(約2,585億円)と推計される。

産業界への政府資金の投入について近年の動向をみると,第7-7表のごとく,1958-′59年における産業界研究開発実施分の55%から,′61-′62年では45.5%,′ 64-′ 65年は38.2%と政府支出比率の減少が著しい。イギリス全体の研究開発費に占める政府資金の比率では,第7-8表からわかるように,1964-′ 65年56.4%とやや減少している。しかし国防以外の分野では,同表から算出されるように″55-′56年14.9%,′58-′59年17.1%,′ 61-′ 62年22.O%,′ 64-′ 65年22.7%と構成比において増大を示し,国防以外の一般産業における研究投資の増大傾向と並行している。この傾向が現政府の方針により,現在ではさらに顕著となつていることは,前記予算における国防研究の漸減傾向からみても確実であるといつてよい。イギリス全体の研究投資水準は,第7-10表にみられるように1964-′65年は国民総生産の2.6%を保ち,過去3年間に伸びを示さなかつたが,絶対額では7億5,660万ポンド(約7,566億円)に達し,′ 61-′ 62年の6億3,400万ポンド(約6,340億円)から年間6.1%の増加率である。これは第7-9表に明らかなように,産業界の研究規模の拡大によるものである。産業界が過去10年ほぼ変らずにイギリス全体の研究開発の約2/3を実施しながら,研究費の財源別構成比では大きく伸びを示し,′ 64-′ 65年では43.3%を占めているが,これは前述のように政府国防研究開発の削減を反映するものである。

第7-6表 イギリス政府の研究開発予算

第7-7表 産業界(私企業,公社および研究組合) に対するイギリス政府の研究開発支出

第7-8表 イギリス政府の研究開発予算

第7-9表 イギリスの研究開発費,実施部門別

第7-10表 イギリスにおける研究開発費の伸び


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ