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  各論
§4  電子技術
II  電子技術の利用分野とその現状
4.  電子航法技術

航空機の進歩,船舶交通量の増大にともない,その航空安全のための航法および交通管制に関する電子技術の発達は著しいものがある。航法用め電子技術および機器は電子技術を総合したもので,通信方式,オートメーション,計算機構,部品,電波伝播等の各種の電子技術の粋を集めている。しかも高信頼度を要求されており,かつ,移動体に用いられるものであるから,操作上の簡便さが必要である。

この技術は第2次大戦後急速に発展してきたが,残念ながら,わが国は戦後の数年間,研究制限を受けたために,諸外国に比べてかなり立遅れの感がある。しかも量産的な種類のものが少いため,研究投資をつぐなうだけの商品成果をあげることが難しく国の強力な振興策が望まれる分野である。
(1) 航空用電子航法

最近の米国のジエツト爆撃機に例をとると,その建造費の約半分,重量比では約%が電子機器で占められるといわれ,航空における電子技術の役割は誠に大きいものがある。米国の航空に関する電子技術の研究に対しては,防衛用として軍事費の中から多額の研究投資がなされている。電子工業についてみるならば,1958年の米国電子工業全体の55%に当る生産額を電子航法で占めている。すなわち,航空電子関係19億ドル,ミサイル用電子機器12.2億ドル,その他軍需用14.2億ドル,総計45.4億ドルとなつている。

これに対してわが国では,研究の立遅れに加えて,使用航空機がほとんど輸入機であるため電子機器もそれに附随して輸入されていること,および研究投資の不足から研究生産共にかなり不利な条件下にあるとはいえ,最近国産飛行機製作の機運が増すとともに,電子装置についても国産化の努力が払われており,航空航海両方面に関する電子装置の生産額は昭和34年度38.6億円で,前年度比1.6倍と急激な発展の途についたところである。現在までに,航空用電子装置の地上施設としては各種のビーコン局,方探局,ロラン局および数台のGCAに国産品が採用されている他に,VOR,ILSおよびTACANについて実用化試験を行なつている。

また,空港用のミリ波レーダー(ASDE)の試験も行なわれている。機上装置としては自動方向探知機(ADF)が最も多く生産されている。

これらの電子装置および機器の基礎になる電子技術の研究の面における。今後の問題は次のとおりである。第1に機器の小型化である。すなわち,電子機器はますます複雑となり重量も増加する傾向をもつが,航空機にとつては,搭載機器重量の増加は禁物である。この相反する要求のため電子機器の小型化は避けられない。それには部品の小型化が先決であり,トランジスタ利用等の固体電子技術,モレトロニクス等の固体回路技術が必要である。

第2に,航法のオートメーション化である。航空機の速度が非常に速くなると,もはや人間の感覚による操縦は困難になるので,極めて高速で動作する装置が必要となる。すなわち自動操縦(Autepilot)が必要である。これは現在ほとんどすべての航空機に装備されて有効な役割をしている。

VTOLがのような可変速度の飛行についての自動操縦が研究されている。また,恒星を捕えて行う天測航法(Celestial Navi-gation),加速度を積分して行なう慣性航法(Inertial Navigation)等の自立航法も一種の自動航法であるが,これらの航法における観測,計算等の機構は電子技術の応用面が非常に大きい。

第3に,信頼度の問題がある。航空機は航行の安全上電子装置に対して高度の信頼度を要求する。とくに遠距離航空においてはその信頼性が一番重要である。このためには使用される部品類,機器装置類の信頼度向上のための研究が必要である。

わが国の電子航法技術分野における研究は諸外国に比べて遅れているが,その原因については前述のとおり,1)電子機器の需要が少ないこと,2)外国技術への依存度が高いこと,3)電子機器の信頼性に関する試験が不能なことが考えられるが,この最後の信頼性の問題は研究の推進,機器の輸出に影響する所が大きい。この性能を確認でぎない原因は,わが国に電子航法技術分野における評価試験機関がないことである。

研究の結果どんなに優秀な成果をえても,これを実地に評価しなければ実用価値の判航空機飛行場等を有する評価試験機関は,断がつかず,また,その結果によりさらに改良発達を促す研究の端緒をつかむことができない。すなわち,試験用の機器設備,航空用電子航法技術の開発および改良の研究にとつて欠くことのできないものである。すでに開発された電子航法機器で電子航法評価試験機関がないため実用化されず,または実用化の見透しがえられていないものが多い現状から考え,かつ今後の研究開発を促進するためにも国立の電子航法評価試験機関の設置が望まれる。これは航海用電子航法技術分野においても必要なことである。
(2) 航海用電子航

法電波を利用した航海用電子航法機器のわが国における生産の増加は著しいものがある。船舶用レーダは昭和35年末で3,000台以上が日本船に装備され,その77%が日本製であり,同年の舶用レーダの生産は1,000台以上で,約70%が漁船用小形レーダである。この小型レーダは7吋のものもあるが大部分は10吋の画面を有し,尖頭出力7〜20kwの9,000MC帯PPIレーダであり感度は大型レーダに劣らず,電源変動が大きくて環境条件の悪い漁船に適するものが生産されている。

港湾用レーダとしてミリ波を使用した出力)40kwのものが生産され,海上保安庁によつて釧路港に設置され,大阪は建設中であり,港湾航行管制用として活躍が期待されている。

またこのレーダ映像を船舶ヘテレビ伝送するショーダービジョンが計画されて実験が進められている。

次にロランであるが,最初米国側からその電波網がしかれて以来,わが国はそれによつて航海を行なつていたのであるが,昭和35年10月より,わが国でロラン局を落石,波崎,大釜崎等に設けて業務を開始した。送信機尖頭出力150kwで信頼性のある24時間サービスを統けている。

ロラン受信機は最近では外航船よりも漁船の使用が多く,日本船の装備数は昭和35年末で,3,000台を越え,その99%以上がわが国で生産され,80%以上が漁船に装備されている。このようにしてその原理である双曲線航法が今や各種の船の操縦士に知れわたるようになつた。

また,船用方向探知機の生産も盛んであり,5,000台以上がわが国の船に装備されており,その全部が日本製である。大型船用は約20%であり,残りは全部漁船用である。

その他,超音波を利用した測深機,魚群探知機の生産も目覚しい。

また,従来電子技術が余り応用されていなかつた一般航法計器,例えばジャイロコンパス,マグネットコンパス,パイロットログおよび吃水計等に電子技術の利用例が,多くなつてきた。

今後の技術動向は,次に挙げる方向に指向していると思われるので,その方向にそつて研究を進めねばならない。すなわち,

(a)小型船舶用電子航行援助施設の開発わが国では,経済的負担能力の小さい小型船舶とくに漁船が非常に多いので,これら船舶側に負担のかからない電子航行援助施設を考慮しなければならない。
(b)近距離航海における電波の利用の増大わが国の出入港の電波航法施設は非常に少ないので,出入港の能率化,近海の遭難防止のため,テレビ方式の積極的開発,通信方式の能率化等をはかることが必要である。 さらに,科学技術の進歩に対応して,施設の無人化,放射線の利用等の新技術の開発をはかるべきである。
(c)遠距離航海における電波の利用の増大電子技術の安定性,経済性を考慮して,遠距離航海における運航能率の向上,安全をはかるため,双曲線航法,人工衛星等による遠距離用電波航法援助施設の改良,発達をはからねばならない。
(d)航海における自動航法の確立船舶の高速化および交通量の増大に対処し,運航能率の増大,海難防止のため,慣性航法,推測航法,ハイプリツド航法および水中音波利用等の自動航法に関する電子技術の開発実用化,およびこれ等による航海の自動化をはかる必要がある。
(e)原子力潜水船の電子航法技術の開発原子力は潜水船にも応用されるから,これに対する電子航法の開発をはかる必要がある。すなわち,水中音波等の利用,慣性航法,原子力および磁力応用による新航路標式,船の自動操縦技術の開発が望まれる。

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