平成20年9月25日(木曜日)
9時56分~10時32分
文部科学省 記者会見室
教育、科学技術・学術
大臣)
皆さんおはようございます。この度、麻生内閣の文部科学大臣を拝命いたしました塩谷立でございます。国にとって大事な教育行政、あるいは科学技術、スポーツ、文化と、幅広い分野を担当するということで、その責任の重大さを感じているところです。特に、教育基本法が改正されて、それを実行に移す段階でありますから、それをしっかり定着していく役割があると思っていますし、また昨今の子どもたちを取り巻く色々な事件が多発していますので、社会全体でこれをどうするかという問題を家庭、地域、学校を含めて取り組んでいきたいと思います。さらに学習指導要領等の新しい内容の中で、道徳教育がこれから始まるわけですが、その道筋を立てていきたいと思っています。やはり元気で明るい子どもをどう育てていけるかということが、国としても大きな課題であり、未来に向かってたくましく育つような子どもの環境を作ることが大事であろうと思っていますので、私自身も副大臣を経験し、また教育分野については、政治家のライフワークとして取り組んできましたので、その経験あるいは考え方を、大臣として全力で取り組んでいきたいと思っています。また皆さん方からの色々な御指導、御協力もお願いしたいと思っていますので何卒よろしくお願い申し上げます。
記者)
今のお話と少し重複するところがあると思いますが、文部科学行政においての現状での課題の認識と、新しくこれから取り組まれたいことをお願いいたします。
大臣)
今申し上げたように、一昨年は教育基本法が改正され、今年は教育振興基本計画が策定されて、いよいよその実行段階に移りますので、教育基本法の理念をいかに実現に向けて実行していくかというところが、ひとつ大きな課題であると思います。その具体的な内容としては、新学習指導要領の円滑な実施、それに伴って、教員採用の在り方等も含めて、しっかりと新しい道筋を作っていきたいと思います。特に最近では、大分県での教員採用の問題がありましたので、これはあってはならない言語道断のことであって、それをどう改善していくか、教育委員会の在り方も含めて考えていかなければならないと思っています。また一方、科学技術については、科学技術創造立国の実現に向けて、今、第3期科学技術基本計画が実施されていますが、これも当然ながら、計画通り実施していくように努力をしていきたいと思いますが、その創造立国を担う人材の育成、それから基礎研究、あるいはライフサイエンス等、我が国が強い分野に一層の強化をしていかなければなりません。特に今年は研究開発力強化法という法律を議員立法で作りましたので、これを大いに活用して、具体的に効率の良い科学技術の振興に向けて努力していきたいと思います。それから先程新しい取り組みということで、道徳教育について、基本的な生き方、社会のモラルあるいは秩序といったものを保つために何が必要かということで、今回、新たに道徳教育がスタートするわけですが、今、来年度に向けて予算も要求しているところですので、その内容をしっかり見ながら、実行に移していきたいと思います。それから、最近の経済状況から、格差の問題での教育費の在り方について、日本は欧米諸国と比べて保護者がかなり負担しているという感が強いわけでして、やはり教育費の負担の在り方をある程度中長期的に見ながら、どう改善をしていくかを取り組んでいかなければならない。もちろん財政面と大きな関わり合いを持ちますから、基本計画の議論の中でも、日本の教育費がGDP比3.5パーセントですが、それをOECD諸国平均の5パーセントまで上げようという方向を出したのですが、今後それをしっかり積み上げるため、具体的にどういう在り方に向かっていくかということを詰めていく必要があると思っています。
記者)
全国学力・学習状況調査について、結果の公表に関して、知事等を含め地方から様々な意見があったり、自民党の無駄遣い撲滅プロジェクトチーム等からも、毎年やる必要はないといった意見もありますが、この点について大臣はどうお考えでしょうか。
大臣)
私はぜひやる必要があると思っています。一番大事なことは、子どもたちの学力がどの程度であるかということは、当然ながら国として把握していく必要があると思っていますし、それと同時に、やはり子どもたち自身が、自分がどの程度のレベルかということを毎回点検できるような形として、やはり毎年やっていく必要があると思っています。むしろ個人的には、毎学年、毎年やることによって、子どもたち自身が一年間でどうだったかと自分で比較できる仕組みができると良いのではないかと思っています。ただ予算の関係もありますから、方法論としては、簡素化する等、もう少しうまくできると良いなと思っています。いずれにしても、教育向上を図り、我が国としては世界のトップレベルというものを目指す中で、子どもたちの学力の向上というのは、一つの目標を持ってやることが必要ですから、ぜひ継続してやっていく必要があると思っています。また、必要ないのではないかという意見があるということですが、それは何でなのかなと疑問に思います。例えば60億円の効果があるかという話がありますが、やはり我々は我が国の学力の状況はどうかということを、明確に把握していく必要があるし、子どもたち自身にとっても、自分で自分の立ち位置というものを把握していく必要があると思っていますから、単にその60億円の効果を出すための学力調査ではないのです。教育は元々、そんな短期間でははかれないものですから、将来的に5年、10年経ったときに見直しは必要だとは思いますが、当面はやはりある程度継続してやる必要があると思います。
記者)
大分県教育委員会の不正事件を含めまして、教育委員会制度について閉鎖的であるとか、形骸化しているといった批判的な意見もありますが、教育委員会制度についてどのようにお考えでしょうか。
大臣)
この問題は、教育基本法改正後の教育三法の議論でもあったわけですが、やはり教育委員会というのは政治的に中立的な立場で、あるいは地域の住民の代表ということで、教育をチェックする役割も担っており、これからも必要であるという考え方で、しっかり存続させたいと考えています。ただ、閉鎖的、形骸化されているといった意見も聞いていますので、これをいかに機能させて、リーダーシップを取って頂くかということが課題です。先日も教育委員長会議を開いたと聞いていますし、色々な御意見があったと思いますので、いかに教育委員会を有効に機能させるかについては、これからしっかりと研究していかなければならないと思っています。基本的な在り方としては形式的な委員会ではなく、当然ながら自主的にそれぞれの状況を把握して、その上で判断をしてもらうような、そういった方向への改善に向けて指導をしていきたいと思っています。
記者)
中央教育審議会で「中長期的な大学の在り方」に関する審議が始まりましたが、少子化・大学全入時代においての、大学や大学院の在り方について御見解をお聞かせください。
大臣)
今、少子化の時代に様々な御意見が出されているところですので、将来的にどう在るべきかというのは当然考えていかなければならないと思っていまして、現在、色々な角度から議論をしているところです。特に18歳人口の減少、あるいは大学進学率の上昇ということで、大学全入時代ですので、その中でどういった大学の在り方が必要かということです。一方で国際社会の中での教育活動の進展ということも考えていかなければならないわけでして、我が国としては高等教育の充実ということ、これは最終的には今、世界は知の時代だと言われて、その大競争が行われている中で、より一層の高度な高等教育を充実させていく必要があるわけですから、在り方についてしっかりと明確にしていきたいと思います。ただ、幼児教育から高等教育までの間の中で、ある程度義務教育までの目標というものが教育基本法の中でも書かれており、また高等教育の大事な位置づけもされていますが、その中で高校教育、前々からこの議論はされていたのですが、この点もしっかり議論をしていかないといけない。いわゆる高校教育というのは、今までも大学の予備校的な状況にあって、はたしてその一つの到達点というのは何かということが不明確であったと思います。最近は高校卒業の18歳の者に選挙権を与えたらどうかという議論もされていますが、アンケート等を見ますととてもそんな状況にはないという内容もありますし、そうなると、高校卒業というのは、どの程度の人間形成と知識を与えるべきかということも明確にしていかないと、大学へのつながりが難しくなってくる。そのような意味でも、大学の在り方というのは、教育全般の在り方に関わってくると思いますし、特に大学入試が全入となると、はたして本当に勉強するのか、勉強をしなくても入ることができる、一方で、そんな大学生が沢山いてもしょうがないという意見もあったりして、しっかりと高等教育としての在り方というものを明確にしていく必要があると思います。それは単に大学だけではなくて、幼児教育から高等教育までの継続した、一貫した流れになると思いますし、本当に我が国の将来がかかっていることだと思いますので、全力で取り組んでいきたいと思います。
記者)
不況下で経済格差によって教育格差が生まれているのではないかという指摘もありますが、この点についての大臣の御見解をお願いいたします。
大臣)
確かに、最近の厳しい経済状況から、教育格差の問題があって、親の所得等家庭の経済状況によって教育が受けられないということがあってはならないわけですから、子どもたちが等しく教育を受けられる機会を保障することが国としての役割ですので、この点については今、就学援助あるいは奨学金事業といったものに取り組んでいるところです。義務教育までは授業料がありませんから、高校以上の特に生活保護家庭に対する就学支援とか、最近は給食費を払えない人たちをどうしようかという動きも出ている。従って、もう少ししっかりと実態調査をして、対応していかなければならないと思っています。また奨学金制度についても、できるだけ利用しやすく、また一方で滞納の問題も解決しながら、誰もが制度を活用できるようにしていかなければなりませんので、状況をしっかり把握すると同時に、対応していきたいと思います。
記者)
科学技術創造立国を目指している中で、これまでの科学行政で改めるべきところはどこか、お考えをお聞かせください。
大臣)
現在、第3期科学技術基本計画が進行中でして、平成18年度から22年度までということですが、今の状況ですと、なかなかその目標であります総額25兆円が厳しい状況にもありますので、これに対して全力で、予算確保の努力をしていきたいと思っています。特に、先程申し上げた研究開発力強化法の成立を受けて、我が国が重点的に強化すべき点をしっかりと打ち出して、そして研究開発システムの改善に取り組んでいかなければならない。一方で非効率な面もあったり、同じ分野をあちこちでやったりということも言われていますので、こういうところも改善しながら、本当の意味で、この基本計画を実行していくように努力していきたい。また、今の我が国の経済状況を見ると、やはり何と言っても、我が国が将来的に成長していくためには、国家的に科学技術創造立国というものをもう少し強く打ち出していく。特に私は、これから環境問題で世界をリードしていく、そういった研究開発が実際に新たな産業化につながって、それが我が国の成長にもつながったり、あるいは、新たな研究開発につながる。これはもとより、人類の存亡に関わることでありますから、大きな大儀を持っていけると思います。そして、地球を救う、あるいは日本の技術が世界に貢献するというような我が国の役割というものを明確にして、将来に向かっての、明るい希望を持つということが、今の子どもたちにとっても必要なことであると思います。特に最近の少子化、高齢化、社会状況の閉塞感がある中で、資源がない一方で実力は世界でトップという日本の役割を明確に示して、それに向けて国として全力で取り組んでいく必要があると思っています。
記者)
学力調査について、各地から来ている公表にまつわる色々な御意見、動きに関してどのように考えていらっしゃいますか。
大臣)
公表については、都道府県ごとの結果の公表はされているわけですが、市町村あるいは学校ごとの公表については、基本的にそれぞれの市町村教育委員会や学校に任せていますのでこれは市町村教育委員会がどう判断するかで良いと思います。序列化を生じることなく、やはり全体の学力の把握と、市町村なり、個人個人のレベルを測り活用するということが一番の目的でありますから、あえて競争心を煽るようなことは、かえってマイナスになるという判断で、今こういう形でやっています。公表すべきと大阪府の橋下知事が言っているようですが、その趣旨については明確に聞いてませんので、そういった意見もこれからしっかり聞きながら、今後研究、議論をしていきたいと思います。
記者)
教育予算について冒頭ありましたけれども、日本はOECDの中でも教育費の割合が一番低いということですが、教育振興基本計画を作るにあたっても、かなり財務省に抵抗しましたが、数値目標は盛り込まれなかったということで今後何を根拠として教育予算を積み上げていくとお考えでしょうか。
大臣)
今回、私も色々とその議論を聞く中で、役所としては努力したと思いますが、やはり、少し明確な積み上げがなかったというのが、正直なところではないかと思っています。例えば、これから消費税の問題がありますが、その時にまず福祉にとか言いますけれども、やはり教育費も必要だと言う必要がある。例えば、欧米諸国でも大学の授業料は取っているところもありますが、額は非常に安いわけです。やはり教育に対する安心感とか、欧米諸国の現状を参考に、日本の教育の在り方を明確にして、それにはこれぐらい必要だと。簡単にはいかないでしょうが、しっかりと在るべき姿を明確にして、税の議論の時や色々な場面で教育費の必要性を訴え、社会的にそういう状況を作っていくことが必要だと思います。
記者)
消費税の議論ですか。
大臣)
例えばです。今消費税の議論になると、福祉に大変な費用がかかると言われます。だけど教育もやはり、国民から見て、本当に安心して教育が受けられる状況を作るためには当然ながら必要だということを、訴えていく必要があると思います。
記者)
特にどの部分の手当が、今一番求められているとお考えですか。
大臣)
やはり今言った教育負担の問題、これは非常に大きなところであると思うし、それから教員の問題も、配置の問題は教員の増員が必要だと思っていますし、習熟度別授業、特別支援教育、あるいは外国人の教育といった問題等、そういったことを考えますと、相当加配の部分が、市町村でやっているところもありますが、やはり国として、しっかりと取り組んでいかなといけないと思います。
記者)
衆議院の総選挙が近いという話もありまして、あまり長くない任期になるかもしれないのですが、その中で、これをしたいという一番重点的に考えていることがありましたら教えて頂けますでしょうか。
大臣)
短い期間の中では、やはり、最近の問題になっている大分県の問題をしっかりと改善させること、それからもう一つは事故米の問題が、相当学校教育にも影響しているという話が出ていますので、農林水産省、あるいは厚生労働省と連携を取りながら対応していく必要があると思っています。
記者)
全国の教師や保護者の方々に対して、メッセージがあれば教えてほしいのですが。
大臣)
教師については、教員養成という問題をもう一度洗い直していかなければならないと考えます。教師の在るべき姿、本当にすばらしい教師というのはどういう教師であろうか。かつては、先生という存在は、その地域において、あの先生に聞けば全部大丈夫だとか、あの先生に何かやってもらおうとか、地域からも誰からも尊敬される、そういう存在だったと思うのです。今はそういう状況にない。はたして、そういう先生を国としても作ろうとしているのかということを考えると、なかなか教員養成の段階では、当然教師としての信念なり意識をもっておられるでしょうが、もっと、自らも、子どもたちのために本当に誠心誠意、全霊を傾けて、教師として頑張ってもらいたい。それが一番の使命であるということを自覚してもらいたい。だからそういう状況を作る。先般日本教職員組合の皆さんにもその話をしましたら、そのような議論はしたことがないとのことでしたので、やはり必要であると考えます。それから、全国の保護者の方々にあっては、やはり子どもは宝ですので、親としては、子育てが大事だということ、「三つ子の魂百まで」というのは使い古された言葉ですが、それは真理であり、それが将来の社会に大きく影響するということを、改めて認識してもらいたい。共に協力して、すばらしい子どもたちの成長ができるような社会を作りたいという思いです。
記者)
教科書検定制度について、昨年度の高校日本史の教科書での、沖縄戦の集団自決をめぐる記述をきっかけに、教科用図書検定調査審議会においてその検定手続きの改善の見直し論議が進んでいると思いますが、この見直しの在り方について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。また、その集団自決をめぐる旧日本軍の関わり方の記述については、沖縄県民の間には、関与ではなく強制という記述にしてほしいと望む方も多くいるのですが、この点についての御所感をお伺いできればと思います。
大臣)
教科書検定の改善については、教科用図書検定調査審議会において、審議の透明性の向上、専門的見地からのきめ細やかな審議の必要性等、改善方策を検討していますので、これからも促していきたいと思います。それから、沖縄戦の記述については、昨年度、教科書発行会社から訂正申請があり、文部科学省としてはそれを認め、具体的に手続きを踏んで、改正されたということですので大変良かったと捉えています。実際に沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであるということについては、文部科学省として新しい学習指導要領の解説にも明確に記載しています。
記者)
道徳教育の充実というお話がありましたが、道徳の教科化についてのお考えをお願いします。
大臣)
道徳の教科化については、教科にすると、その成績を付けざるを得ないということで、今のところは教科として扱わないということです。道徳とは、私は個人的には、教科と少し違うものではないかと思っていますので、それよりも、いかに内容を充実するかということを考えていく、その意識が大事だと思います。また、道徳の内容が大事だということを、いかに浸透させて、単に道徳の時間だけではなくて、やはり学校生活、あるいは家庭生活においても、そういうものが修得できる体制を整えることが大事だと思っていますので、言うは易く行いに難しということで、そのためにどういう教材が必要かは、なかなか難しいところではありますが、やはりしっかりと取り組んでいきたいと思います。
記者)
先程高校教育についてかなり重点的におっしゃっていましたが、たとえば、高大接続テストの件も含め、具体的にもう少しお話し頂けますでしょうか。
大臣)
高大接続テストのこともあるし、抽象的な言い方かもしれませんが、私は高校を卒業したら一人前の社会人となるというのが一つの高校教育の目標だろうと思っていますので、当然そういう目標の下で、どういう内容の教育をやるか、それはそれでひとつ、高校卒業検定みたいなものがあっても良いのかなとは思います。それが大学とどう接続するかは当然考えなければなりませんが、18歳というのは、やはり一つの区切りとして、非常に社会的にも、世界的にもそういう捉え方をされますので、はたして今のままで良いのか、今はたぶん、先程申し上げましたが、高校というのは大学の予備校的なところという意味合いが強いのではないかと感じます。今の高校生を見てて、その卒業生を、立派な一人前になったと思えるかというと、たぶんそうではないですし、この前のアンケートもそういう結果が出ていますから、はたしてそれで良いのかというそういった今の状況を、目標を設定をして、いわゆる大学への接続、そして義務教育からの流れ、そういったものをしっかりと高校教育で、一つの区切りを付けるかというところを考えていかなければなりませんので、具体的に検討していく必要があると思っています。
ありがとうございました。よろしくお願いします。
(了)
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