平成19年11月2日大臣会見概要

平成19年11月2日
9時19分〜9時43分
文部科学省 記者会見室

大臣)

 今日の閣議は、国会提出案件等の報告がございました。上川少子化対策、男女共同参画担当大臣から、平成19年版少子化社会白書についてご報告がありました。閣議後の閣僚懇談会において、総理から、安心で質の高い暮らしに向けた総点検について、「今、国民生活の安全安心の確保という視点が、政策立案の中心に置かれていない。そのような中で色々と、例えば耐震偽装問題、食品の不正表示など国民に大きな不安を感じさせることが数多く発生をしている。生産側の視点に立った行政から、消費者や生活者の視点に立った行政に転換しようという動きも見られるが、まだ不十分である。よって、政治や行政のあり方すべてを見直して、真に消費者や生活者の視点に立った行政に発想を転換する。岸田国民生活担当大臣の下で、年内に具体策の取りまとめをしてもらいたい」という発言がありました。これを受けて岸田国民生活担当大臣から、「具体的な施策について年内を目途に、そして、行政のあり方の総点検を来年春までに行う。各省庁も協力願いたい」という発言がありました。また厚生労働大臣から、11月14日から21日まで、静岡県において、2007年ユニバーサル技能五輪国際大会、「技能五輪国際大会」と障害者が技能を競う「国際アビリンピック」とが史上初めて一緒に開催される、という発言がありました。
 引き続いて私から、教科書の問題についてご報告をさせて頂きます。お手元に資料をお配りしておりますが、平成20年度から使用される平成18年度に検定を決定した高等学校日本史教科書について、沖縄戦の記述に関し、昨日、教科用図書検定規則第13条第2項に基づき、2社の教科書の訂正申請が提出され、同日受理しました。訂正理由は、「学習を進める上に支障となる記載」ということでした。また、他社についても近々申請があると聞いております。この訂正申請に関し、本日(11月2日)付けで、教科用図書検定調査審議会(以下「検定審議会」)に意見を聞くこととしたいと思っております。訂正申請の承認に関しては、教科用図書検定調査審議会運営規則(以下「運営規則」)第4条第2項第3号で、検定審議会は必要に応じて専門的な事項について調査審議することができることになっております。訂正申請の場合、簡単な誤記や誤植、資料の追加等については、通常このような手続きを取っていないわけですが、今回は、客観的な学説状況に照らして申請にかかる記述や訂正の理由が適切かどうかを、専門的な見地から検討する必要があると判断して、承認を行うに際して、記述内容や訂正理由等について、検定審議会の意見を聞くこととし、また併せて、調査審議の具体的な方法についても、検定審議会で検討頂きたいと思っております。以上を踏まえ、当該訂正申請について、専門的・学術的見地から審議し、ご意見を頂くようにお願いをするものです。

記者)

 この資料は、今日付けで各委員に送付するという形になりますか。

大臣)

 正式には、まず会長に公文書の形で提出します。

記者)

 形の上では諮問ということになるのですか。それとも何か別の行政手続きになるのですか。

大臣)

 これは意見を聞くという形ですから、諮問とは少し違うと理解しております。先程申し上げました、運営規則第4条第2項第3号の項目に該当すると考えております。

記者)

 10月30日の中央教育審議会(以下「中教審」)教育課程部会で次期学習指導要領に関する「審議のまとめ」が大筋合意ということになったのですが、これについて、大臣のご感想をお願いしたいと思います。

大臣)

 部会で色々とご議論頂いて、一部まだ議論が必要なところもありますが、大筋においておまとめ頂き、委員の先生方のこれまでの議論に感謝を申し上げたいと思っております。今回の審議で一番特筆すべき点というのは、従来のやり方について、一部反省をしなければいけないところもあるということをご指摘頂いたことであろうと思っております。それは、生きる力というものが、ひとつの理念であったわけでして、生きる力というのをどう考えるか、これはある意味での自分で考える力、また物事に対する応用力、社会では色々なことに遭遇をするわけですから、そういったことに対して適宜対応できる力を付けていく。もちろんそれは、基礎的な知識をしっかりと身に付けた上でということになるわけですが、これは官房長官もおっしゃっていますが、「ゆとり」が「ゆるみ」と言いますか、少し曖昧になってしまって、結果的にどうもうまく働かなかった部分があると。考え方がそれほど大きく間違っていたということではないと思っておりますが、具体的な方法というものに反省すべき点があるのではないかと総括をされた点が、非常に大きな特徴であろうと思っております。それをしっかりといかして、3月を目途でまとめる予定の学習指導要領の改訂作業にもつなげていきたいと思います。

記者)

 生きる力とか総合的な学習の時間について、十分な共通理解がなされなかったという部分があり、現場などから、学校などに責任を押し付けているのではないかといった批判もあるわけですが、それについてはどうお考えでしょうか。

大臣)

 部会の資料を見ましても、そういうことを言われているわけではありません。相互理解の問題だと思います。文部科学省としても、十分伝えきれていなかったという意味では、反省しなければいけない点があると思っておりますし、こういう時代ですから、伝え方も工夫をしていかないといけないと思っております。前回のときには、エル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)等、一方向になっていたということもありますので、今回はやはり双方向で、前回以前のように現場に行って、きっちりと趣旨を伝えていくという作業は、前回の反省を踏まえて、やらなければいけないと考えております。これは伝え方もよくなかったのではないかと言われているわけですから、決して、受け取る側がきちんと理解していなくて、それがけしからんというようなことを言っているということにはならないと思います。

記者)

 「審議のまとめ」の関係で町村官房長官が、総合学習の時間を学校段階が上がるにつれて削るのはおかしいと、中教審の認識がおかしいのではないかという趣旨の発言をされておりますが、これについて大臣はどのようにお考えですか。

大臣)

 官房長官の発言の趣旨は理解しているつもりですが、総合的な学習の時間の時間数について、私自身、この程度あればいいのかなという考えを現段階でははっきりとは持ち合わせておりませんが、これは現場の判断である程度は弾力的な運用も可能なのではないかと思います。まだ完全に固まっていない部分もあるようですから、中教審の委員の先生方のご議論も頂きながら、最終的に決定したいと思います。今日閣議の後、そのことで官房長官と話せる時間があるかなと思ったのですが、ばたばたしているうちに、機会を逸しました。官房長官はそういうことを決めた当時の文部大臣ですから、それに対する思いというものがあったと思いますので、一度よく話を聞かせて頂きたいと思います。いずれにしましても、生きる力、自分で考えて対応していく能力をどうやって教えていくのか、これは今回も指摘されておりますし、先日公表した全国学力・学習状況調査でもそういう結果が出ているわけですから、これは、今の教育の重要課題のひとつであると捉えなければいけないと思っております。

記者)

 今回の「審議のまとめ」の中では、理数系の教科の授業時間が大幅に増えていると思うのですが、科学技術をライフワークとされる大臣としては、どのように受け止めていらっしゃいますか。

大臣)

 科学技術がライフワークである私としては、と聞かれると、それは良いことですねとお答えしたいと思います。ただ、理数系の能力が非常に落ちているということでもないと思うのです。「読み・書き・そろばん」とよく言っていますが、そういった基礎知識をしっかりと教え込んでおかないと、考える力、応用力にも影響があると。その応用力をつけなければいけないからということで、基本の時間を縮小したところに、逆に基本がおろそかになったとは言いませんが、少し足りない部分があったと。基本をしっかり身に付けておかないと、応用力も活かせないということが、今回議論されているわけでありますから、そういったことの一環で増やされたと理解しています。

記者)

 先程、学習指導要領に反省すべき点があるというふうにおっしゃっていましたが、その中で学んできた子どもたちが実際にいると思うのです。で、その子どもたちは、その反省すべき学習指導要領だった点をどのように捉えればいいのか、大臣からその子どもたちに向けてメッセージでも結構なのですが、一言頂けないでしょうか。

大臣)

 教育というのは常に検証をし、そして改めるところがあれば改めなければいけないと思っております。で今回、全国学力・学習状況調査においても、ひとりひとりの子どもの状況もできるだけ捉えたいということで調査をしたわけです。勉強してきたことがすべて間違っているということではないということは、しっかりと子どもたちに伝えたいと思います。ただ、そうであってもやはり改めるべきところは改めなければいけないので、そのことを理解して、それぞれの段階でやるべきことをきちんとやっていくので、これからも安心して一生懸命勉強して下さいということを言いたいと思います。

記者)

 昨日、教育再生会議が開かれて、その後のブリーフィングによりますと、学校の予算について児童生徒数を基本とすべきだというような趣旨で合意されたやに、説明されていましたが、このことについてどのようにお考えでしょうか。

大臣)

 詳細について正直まだ定かではないのですが、そういう議論もあったということですよね。今でも予算の配分というのは、基本的に児童数があって、それから定員があって、それに対して国が3分の1補助して、あとは地方でやるという、人数に応じた配分が行われております。細かいことを言えば、校舎とかは、時期時期に応じて予算配分されるわけでありますから、必ずしもそれに一致するということではありませんが。今おっしゃったことは、何を基準にしてどうやって配分するかということが、それほどはっきりしていないですね。選択制とか教育バウチャーとか、色々なことが議論されておりますが、何をもって選択制とするのか、バウチャーといっても、どのバウチャーを今目指されているのかということが非常に曖昧ですね。いい競争原理は入れたらいい、ではいい競争原理というのは一体何なのかというようなことです。ですから、これから議論をされていくということでありますから、それを見てみたいと思います。私はいつも申し上げているように、義務教育というのは格差がないというのが基本だと思っておりますから、それを前提として、そういった様々な制度が、公平公正に教育の機会が与えられるということに関して支障の無いものであれば、ご提案を積極的に受け止めて、やらせて頂くことはやぶさかではありません。

記者)

 昨日の日本シリーズ、中日が53年ぶりに優勝しましたが、8回まで完全試合をやっていた中、9回にピッチャーが交代しましたが、大臣は一野球ファンとして、どうご覧になりましたか。

大臣)

 よく分からないですね。私は残念ながら、兵庫県出身ですから、日本シリーズは見てもいませんでした。全然興味もわかず、むしろ大リーグの方がどうなったという感じでした。これはやはり、様々な高度な判断があるのでしょうから、ここでのコメントは控えさせて頂きたいと思います。

(了)

(大臣官房総務課広報室)