平成19年9月26日大臣会見概要(渡海大臣初会見)

平成19年9月26日
12時43分〜13時24分
文部科学省記者会見室

記者)

 まず、文部科学大臣就任のご所感と、福田総理からどういうご指示、お話があったのかをお聞かせ下さい。

大臣)

 文部科学大臣に就任いたしました渡海紀三朗でございます。これから皆さんとお付き合いをさせて頂くわけでございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。感想といいますと、正直な実感でございますが、伊吹前大臣(現自民党幹事長)という、大変重厚な大臣の後で、いささか緊張をしております。私も長い間、文部科学行政といいますか、政治の立場からやってまいりましたから、自分の持ち味を最大限に発揮できるように頑張っていきたいと思っております。特に教育の問題というのは、よく国家百年の大計というように、いつの世も、どの社会にあっても大変大きな問題でありまして、今、日本はまさにその中にあって、教育基本法、そして教育三法を成立させて、教育再生の真っ只中にあるわけでございます。メニューは色々できましたが、これからそれを実行に移していくため、年末の予算編成に向けて本当に踏ん張りどころであろうと認識をしております。まだまだ議論の残っているところもあり、そういった意味でも大変重要な時期に就任したな、そんな感想でございます。科学技術については、これは私のライフワークと自ら言わせて頂いておりまして、昨日の官邸での記者会見でも申し上げましたように、科学技術庁で政務次官と総括政務次官を経験し、前回の文部科学省でも科学技術とスポーツ担当の副大臣でございました。またこの間まで、自民党科学技術創造立国推進調査会長をやっており、そういう意味で、自分の得意分野というよりも、テーマにしてきた分野であるだけに、この職について、より一層今まで自分がやってきたことが、またやりたいことが、この日本の将来にとって重要なことになるように頑張りたいという思いでございます。総理からの指示というのは、教育再生を引き続き、しっかりやってほしい。また、科学技術というのは国家がこれから持続的にこの日本の国が豊かな経済社会を維持し発展させていくという、非常に重要な政策ですから、しっかりやってほしい、というお言葉を頂きました。

記者)

 今おっしゃられた教育再生は、安倍内閣で最重要課題として掲げられてきました。それを引き継ぐという表明をされましたが、今後どのようなスタンスで教育再生に取り組んでいくのか、特に、教育再生会議が、安倍内閣において教育再生、教育改革のエンジン役として動いてきたわけですが、これまで二回、第一次、第二次報告を出しています。その中で、ゆとり教育の見直しとか、道徳の充実とかをうたっていますが、それに対しての評価、大臣ご自身が共感できる点、それと、ちょっと共感できない点がありましたら、お考えをお聞かせください。

大臣)

 実はまだ全てにわたって理解をしているとは言い難いと正直思いますが、福田総理からもお言葉がありましたように、教育再生をしっかりやっていくという方向性は、私も大賛成でございます。事実、教育というのは、人間を作る、要するに国家を支える柱でありますから、そういう意味において、これも昨日の記者会見で申し上げましたが、山谷補佐官が再任され、教育再生会議も続けていかれるということですから、これは、申し訳ないと思っておりますが、総理の突然の辞任等もございまして、停滞をいたしておりますが、スケジュール等については、今後官邸がお決めになることでもありますし、まだ何のお話も頂いておりませんから、これからよくご相談をしながらやりたいと思っております。中身について言えば、ある意味大きな方向性としては、私は理解しております。ただ一点、私は従来から、教育再生におけるひとつの大きな柱は、今回教育三法の改正もやりましたが、やはり学校の先生の質を向上させるということであろうと思っております。これは、先生方が頑張って頂ける環境を作るということも非常に大事でありますし、そのために予算が必要なら、財政改革という、これも私のある種のライフワークでありますが、そういう中であっても、必要なところにしっかりとお金も使うということはやらなければいけないわけでありますから、そういうことも含めて頑張っていきたい。教員免許更新制についても、実際これから実施していくことについて、色々な意見もあるようですから、そういったこともよく聞きながら、本当に子どもが先生と一緒になって育っていくと、そういう教育ができればいいなと。それは短い期間でできるとは思えませんが、私なりに個人的な抱負を言えと言われれば、そういう希望を持っております。

記者)

 教育再生会議が提言した中に、道徳の教科化、道徳の教育の充実というのがあり、現在、中央教育審議会(以下「中教審」)で学習指導要領の改定作業が進んでいます。その中で議論はされていますが、大臣ご自身の、道徳の教科化、道徳の教育に対するお考えをお聞かせ下さい。

大臣)

 今日も官邸を出るときに、地元新聞の記者から聞かれましたが、神戸でまた事件が起こっております。こういう事件が起こるというようなことを考えたときに、人間として基本的なことというのが、やはり少し、しっかりと教育の中で教えられていないのではないか、そんな印象を持っております。そのために今やろうとしている道徳教育が適当かどうか、そこまで私はまだはっきりと断言することはできませんが、いずれにしましても、そういった観点から道徳という言葉をどう解釈するかということはあると思います。学校における教育は国家が押し付けるものではなく、基本的な部分というのは教えなければいけないのではないですか。間違っていなければ、確か、私が小学4年生の頃に道徳というのは現れたと思います。それから、倫理というものもありました。そういう言葉を出すと、すぐ戦前回帰みたいな話が出てきますが、そういうことではなくて、人間が人間として、そして大人になって社会で生活していくうえで、基本的に必要なことを、どうやって教育の中で実現していくかということは、非常に大事だと思います。それが今言われている道徳なのであれば、それは大いにやらなければいけないということであろうと思います。

記者)

 文部科学省で大きな懸案となっている、教育振興基本計画について、大臣ご自身のお考えの中で、予算の面とか、どういうものを盛り込みたい、どういうものを提供していきたいとお考えになっていますか。

大臣)

 教育振興基本計画の検討は、ある程度方向性が出てますし、その方向性は既に概算要求にも盛り込まれていると思っております。で、ある程度予算が見えてこないと、これをやるんだ、あれをやるんだと言っても、絵に描いた餅とは言いませんが、そういったものになってしまいますから、そのこともよく見極めて、教育振興基本計画は年度末までの間に、最終的な仕上がりを見たいと思っております。ただ、ひとつの大きな柱は、昨日も質問がありましたが、先生の数を少し増やしたい、ある意味少し時代に逆行するようなことですが、学校教育を充実していくためには、先生ができるだけ子どもたちと向き合うといいますか、他の雑用に時間を取られないような人員配置をする必要もあるということは正しいと思いますし、そういったことをしっかりやることによって、教育振興基本計画が生きたものになってくると思います。詳細については、まだ就任したばかりですから、少し時間を頂きたいと思います。

記者)

 高等教育に関して、大学全入時代を迎えるという話があり、大学・大学院改革の必要性が叫ばれていますが、高等教育に関しては大臣ご自身のお考えはありますでしょうか。

大臣)

 やはり少子化で大学全入時代というような時代が来ていると承知しております。ただ、大学に行けばいいということではなくて、大学でしっかり勉強してもらって、高等教育と言われるものがきちんと身についたと言われるような、そういう改革というものをしなければいけないのではないでしょうか。個人的なことで恐縮ですが、私のときは卒業するより入学するほうが難しかったと記憶しております。あの頃は、実は社会の教育力というのも随分ありました。これは、良いとか悪いとかは別ですが、大学を卒業してから、例えばそれぞれの企業なりが非常に研修の力も持っていましたし、でも随分変わったという気がします。ですから、大学を出るときにある程度の能力を身につけているという、そういった大学教育はやはり実現をしてもらわなければいけないのではないのかと思っております。

記者)

 2016年、東京オリンピック招致に向けて、この度、政府が支援をするということを閣議で決めましたが、財政的な支援なども含めて、国として今後どういう形で取り組んでいくのか、お考えをお聞かせ下さい。

大臣)

 この件についてはまだ詳細は事務方より説明を受けていないのですが、既に招致について閣議で了解しており、政府は主要競技施設の整備に要する経費について、2分の1の範囲内で負担するというのが決まっていると、報告を受けております。ただ、まだ設備の整備手法など、東京都の計画の詳細が明確になっていないという状況であって、それがもう少しはっきりしてこないと、どういう形で支援ができるかということは、今の段階では軽々にお答えができないと思います。いずれにしましても、政府が閣議了解をして、世界に対して東京でやりたいということを発信していくわけですから、東京都の計画に政府として、しっかりとエールを送っていかなければいけないと思います。ただ東京都は、そこそこ財政力をお持ちですから、最終的に都がどうする、政府はこういうことをやろうということを、東京都ともよく話をしながら、しっかりと決めていかなければならないのではないかと思っております。

記者)

 科学技術について、インドとか、中国とか、アジア諸国の科学技術の発展が目覚しいのですが、日本の科学技術の国際競争力をさらに上げるために、今後どういうことが必要か、どういう点を重視していきたいか、お考えをお聞かせ下さい。

大臣)

 色々なことが正直あると思いますが、ひとつはやはり人間なのです。研究者、そして技術者、そういうものをしっかり育てるシステムをどうやって作っていくのか。アメリカは今必死になってインドや中国に追い越されないように、“Rising Above the Gathering Storm”というレポートを一昨年作りまして、一般教書の中にも入っていると思います。そういったことにしっかり対抗できる研究者を育てていくこと、また、やっぱり研究環境を良くしていくことだと思います。とかく日本の研究環境というのは、ある部分制約が非常に多い。そういった部分をどういうふうに自由に発想していくか。国の研究機関も、せっかく独立行政法人(以下「独法」)になったわけですから、いい意味でもっと、色々な研究がやりやすいような制度を作っていく必要があると。これは個人的意見もありますが、私はそう考えております。自民党におきましても、私が会長をしておりました科学技術創造立国推進調査会で今、独法の見直しに関して、ただ単に整理合理化ということではなくて、最大限どうやれば力が発揮できるかというような検討もして頂いておりますから、そういったことも非常に大事なことであろうと思います。同時に、これはなかなか苦しいのですが、各国の研究開発投資額を見ますと、購買力平価ベースで中国の研究開発投資額が日本を上回っていると推計されています。我が国では今、第3期科学技術基本計画の途中であり、5年間で25兆円、最後の3年間に向けて頑張るわけでありますが、しんどいなと。あと3年という状況でありますが、集中と選択と言われているように、やはり目的を持って、ただ単に何となくお金を増やせばいいということではなくて、しっかりと我が国の強い分野をより強くする。また、欠けている部分があれば、そこをしっかりと補強していくということが大事だと思います。

記者)

 宇宙の関係ですが、来年から日本の有人実験棟「きぼう」の国際宇宙ステーションでの建設が始まります。日本にとって初めて有人宇宙開発が本格化していくわけですが、今後の日本の宇宙開発はどのように取り組むべきとお考えでしょうか。

大臣)

 有人実験棟「きぼう」の建設は国際協力でもあります。今年度末から3回打ち上げると承知をいたしておりますが、これはもうしっかりとやっていかなければいけないと思います。有人宇宙飛行というのは、今後のある意味の大きなテーマだと思います。今の段階で、私は断定的にものを決めるということはまだできない、これはたぶんに個人的主観でありますが、そう思っております。こういう分野においても、ただ単に競争度が上がって、例えばこの分野はアメリカが頑張ってやる、それに日本が協力していくという形もありましょうし、これは核融合炉がそうですよね。これはフランスで作るわけですが。それから、これから先、今、リニアコライダーみたいな話も出ていますね。そういった意味において、有人宇宙飛行というものを、我が国単独で目指すのかどうか、これはまた議論が必要だろうと思っております。ただ、日本の宇宙予算というのは、アメリカ等に比べると非常に少ないですから、そういう意味では、集中と選択ということをしっかりとやっていかないと、なかなか思うようにH−2Aロケットも上げられないというようなことになりかねないなと、私自身は心配をいたしております。それからもうひとつ、宇宙基本法という法律を作ろうという動きがありまして、これは超党派に広がりつつあります。宇宙というのはやはり、一番子どもに夢を与える科学技術だと思いますから、そういったことも含めて、今後の宇宙政策を考えていかなければいけない、これが率直な私の意見です。

記者)

 殆どの閣僚が再任される中で、渡海大臣は初入閣で就任されたのですが、これについてのご感想と、先程、重厚な大臣の後任ということで、緊張があるということですが、その伊吹前大臣が次の大臣に望むこととして話された中で、説得力のある人でないと年末予算が取れないと言ったのですが、それについて自信というか、抱負がありましたらお願いします。

大臣)

 私は意外と臆病でして、自分の自信は実はあまり語らないです。やはり与えられたことを全力でやるというのが、自分の人生の生き様でありますから、私も来年で還暦を迎えますので、そういう意味では、とにかくやれることを全力でやって、その結果でお答えをするというのが正直な気持ちでございます。で、新任が一人だけというのは、実は官邸へ行って初めて知ったことでありまして、再任が一人いて、それが同期である石破防衛大臣ですから、「あんたがいて良かった」というような話をしたわけでありますが、なぜ新任が一人なのかを私に聞いても、これは総理がお決めになったことですから、感想と言われても、「ああそうなんだな」という印象です。

記者)

 教育再生会議に関連してですが、今後、第三次報告に向けて教育バウチャーが論議になると思われるのですが、その点に関して大臣はどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。

大臣)

 正直なところ、実は私も、やったらいいかなと考えたことがあるのです。しかし、バウチャー制度をやることによって、例えば義務教育において、要するに子どもたち、国民に等しく同じ機会を与えるという憲法上の責任を果たすことができるかということを考えれば、これは森元総理もおっしゃっていたように、例えばバウチャーをもらっても選ぶところがないという、地域的な問題がなかなか解けないな、そんな思いをいたしております。全面的に否定するわけではありませんが、やはりそういったことがきちんとクリアされませんと、軽々に、これは面白そうだ、これをやると非常に活力が出るだろうということだけで、ものを考えるのはちょっと如何かな、そんな印象を持っております。

記者)

 昨日の官邸での記者会見でも少し出ましたが、沖縄戦の集団自決に関する教科書の表記の問題ですが、今週の土曜日に沖縄県で5万人規模が集まる超党派の県民大会があるのですが、こういった地元の動きをどんなふうにご覧になられているのかということと、大会の結果を受けて何らかの対応をされるお考えがあるのかをお聞きします。

大臣)

 地元の皆さんがそういう集会をされるということは、私も昨日聞きました。我々の仲間にも沖縄の議員もおりますし、沖縄の人にとって、実はこの問題はそうなんだろうなというのが、率直な印象でございます。前の大戦において、沖縄の方々が大変大きな犠牲を払われた。そういった方々の犠牲の上に現代があるわけですから、やはり重く受け止めなければいけない。これは大臣であるからとか、政治家であるからとか、そういうことは関係なしに、日本国民はそういう思いを持たなければいけないなと、常日頃から思っております。その大会がどういう大会なのか、またどういう意見が出てくるのかをよく見極めて、今の段階でどう対応されるのかといいましても、まだ何も出てないわけでありますから、お答えようがないわけでありますが、そのことを受けて、対応についてはお答えさせて頂きたいと思います。

記者)

 参議院選挙の後に大臣は、安倍政権の地方政策などについて、これは変えなくてはいけないという勉強会をなさっていたと思うのですが、今回入閣されて、大きく政権としてどう動くべきかということと、特に安倍政権の文部科学行政についての大臣なりの感想と、この点は変えたほうがいいのではないかということが、もしございましたらお聞かせ下さい。政権全体という点と、文部科学行政に絞ってという両方からお願いします。

大臣)

 我々がやった会について、各紙に、反安倍グループと書かれていましたが、決してそういうことではなくて、やはりそれは政策転換をすべきだろうと。選挙の結果ではっきりとそれが出たわけでありますし、今回の総裁選挙でも、両候補とも、地方に対する配慮というものをもってやろうと。我々は小さなメニューを作りまして、こうなる前にといいますか、福田候補の段階でお届けもいたしておりますが、これは我々のグループの提言でありまして、別に反安倍とかそういうことではありません。あと、安倍政権の文部科学政策については、教育再生を自分の政権の中心に据えて積極的に取り組まれたと評価をいたしております。教育基本法が昨年成立をいたしました。この中において、ある意味、公の概念みたいなものも、しっかりと書かれたわけでありますし、政府の役割みたいなもの、これは学校教育においてもはっきりしたわけですし、社会、それから家庭、そういったことは改めてしっかりと教育基本法で定めたということは、大変重要なことだと思っております。それを受けて、前国会で教育三法が改正をされました。大事なことは、先程冒頭にも申し上げましたように、このことをこれからどう具体化し、どう予算化していくかという段階にきていると思います。教育というのは、個人的に色々な思いがありますから、それは100パーセント正しいと言ったら、かえっておかしいと思います。しかし、大きな方向性において、私は正しい方向に来ているのではないかなと思います。ただ一点だけ昨日申し上げたのは、単に数を増やすだけでなく、やはり良い先生をたくさん養成・確保していかなければならないということです。従来からも言っていましたし、そのために何ができるかということを、これから私は大事にしていきたいと思いますし、また、総理にお話をする機会があれば、私はそんなふうに考えているとお話しするつもりであります。それで今すぐ大きく変わるということではありませんが、OECDの調査を見ても、例えば上の方に張り付いているのがフィンランドですね。で、教育者の質が非常に高く、また、質を求められていますね。そんなことひとつ見ても、日本ももう少し考えなければいけない。今の学校の先生が皆悪いと言っているわけではありません。しかし、学校の先生が能力があっても、なかなか発揮できないような現状があるとするならば、どうすればもっともっと学校教育において、先生が頑張って頂けるか、そんなことを少し考えてみたいと思っております。

記者)

 教育再生会議の一次報告で、日本の教育が非常に危機的な状況で機能不全に近いということを書いてありましたが、大臣は今の日本の公教育について、どれくらいうまくいっているものだという認識でしょうか。

大臣)

 これは率直に言って、地域差があるのです。ひどいところはひどいですよ。全般的に全部こうっていうのは、なかなか難しいと思いますが、最近起こっている、色々な事件ひとつ見ても、そういう意味では、我々はもっと、そういうことが起こらないような子どもを育てなければいけないのではないでしょうか。

記者)

 学制についてお伺いします。教育基本法が成立しまして、6・3・3・4制の現行の学制が今後見直しとして大きな課題になってくるかと思いますが、義務教育の在り方も含めて大臣のお考えをお願いします。

大臣)

 一貫教育は今、モデル校として100件くらい実施しているのかと思いますが、こういう状況も見なければいけないと思いますし、それから、中教審で今議論を多分されているのでしょう。私はそれについて実は、今この段階ではどっちが良いだろうということは、あまり自分の意見を正直持っていません。

記者)

 今の9年という義務教育の年限については。

大臣)

 これもまだ議論のあるところではないですか。高校の入学率が非常に高いことは事実でありますが、100パーセントではないわけでありますし、そういったことも考えたときに、高校まで義務教育にすることは、国家が責任を持って高校まで行かせるということですから、今の日本の社会で、果たしてそれが上手くいくのだろうかということは、もう少し慎重に考えなければいけない問題だと思います。

記者)

 国立大学法人運営費交付金が今年初めからしきりに議論になっておりまして、今後の改革ということが、骨太の方針でもうたわれているのですが、大臣としてこの辺について特にお考えはありますか。

大臣)

 国立大学法人運営費交付金について、骨太の方針2006では5年間、毎年1パーセントずつ切っていくことになっています。法人化後もう4年くらいになるのですかね。私も歳出削減チームで、かなりガンガンやった方です。ただ、その辺の問題については確かに現場から少し悲鳴が聞こえてくるというのが、今の現況かなと、そんな気がしております。それから、例えば医学部で、医師不足の解消の問題等がありまして、それを考えたときに、こちらからお願いをして定員を増やして頂いているようなところもありますから、そういったところについては、この厳しい歳出削減という、財政再建計画の途中にあっても、手当てをしないといけないのではないかと思います。

記者)

 幼児教育の無償化が近年議論されているのですが、それについてお考えをお聞かせ下さい。

大臣)

 これは、自民党の公約では、「幼児教育の無償化を目指す」となっています。また、骨太の方針2006でも「幼児教育の将来の無償化について歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討」となっています。要するに歳出・歳入一体改革ですから、当然、歳入改革が行われるときには、それをやれるのではないかと。やることは非常に良いことだと思います、正直。ただ、何でもやれるというわけではありませんし、財源保障のない部分について無責任にお約束をすることはできないと思います。いずれ今年の年末には、抜本的な税の議論というものもしなければいけないわけでありますから、そういったときに当然、こういうものに充てる財源はあるのかと。まず基礎年金の、再来年の国庫負担2分の1というものも、当然議論しなければいけませんし、それから、今回社会保障についても、少し議論が出てくると思います。自公の連立合意、私は直前まで政調会長代理で支えていましたから、その中で高齢者医療の問題等もありますから、いずれにしても財源論を避けて通れないと思っておりますから、そういったことも含めて、そういう時期が来れば、是非この問題もやるべきではないでしょうか。

記者)

 文部科学省所管の財団法人日本相撲協会(以下「相撲協会」)の時津風部屋で、お弟子さんを暴行して死亡させていたという事案が出ていますが、その関係についてご所感を頂けますか。

大臣)

 申し訳ないのですが、事実関係がよく分かりませんので、お答えを差し控えさせて頂きたいと思います。

記者)

 そうしましたら、ここ最近の、相撲協会の朝青龍の問題がございましたが、新しい大臣として相撲協会に求めることというのを伺わせて頂ければと思います。

大臣)

 朝青龍の件はテレビで見ていましたが、これは相撲協会により主体的に行われるものであって、文部科学省が直接こうしろああしろということではないと思います。ただし望むのは、やはり国民が見ているわけですし、それから子どもが見ているわけです。個人的にお名前を出して恐縮ですが、皇太子のお子様の愛子様も相撲が好きだとか、こういうことがあるわけです。そういう中で、ある意味の不祥事が起こるというようなことは、本当に好ましくないし、相撲協会の役員の皆さん等、しっかりと運営をして頂きたいというのが、率直な気持ちです。

記者)

 今回のケースでいうと、お弟子さんが、親方や先輩方に集団で暴行を受けて、親方もビール瓶で殴ったというようなことを認めているというような話なのです。まさに、いじめの事案ともいえる、相撲の世界という、ちょっと特殊な世界ではありますが、色々今の時代とかみ合う部分があるのですが、その辺どうお考えでしょうか。

大臣)

 先程も申し上げたとおり、事実関係がよく分かりませんので、お答えを差し控えさせて頂きたいと思います。
 これからもよろしくお願いします。

(了)

(大臣官房総務課広報室)