平成19年8月31日大臣会見概要

平成19年8月31日
10時40分〜10時59分
文部科学省記者会見室

大臣)

 今日の閣議は、総務大臣から労働力調査、消費者物価指数及び家計調査の結果についてご報告がありました。7月の完全失業率(季節調整値)は前月に比べ0.1ポイント低下の3.6パーセントです。完全失業者は前年に比べ34万人減少の234万人です。消費者物価指数は上がってこないですね、7月の全国確報値は前年と同水準ということです。また厚生労働大臣から、7月の有効求人倍率の発表がありました。季節調整値で1.07倍、仕事をしたいという人1人について、職の申し出が1.07倍あるということです。ですから、雇用状況は着実に改善していると思いますが、物価が上がらないので、なかなかご商売をしてる人の実感は、景況感が良いというところへは行っていないのではないでしょうか。それから、平成19年度総合防災訓練について、防災担当大臣よりご発言があり、明日9月1日防災の日に東海地震が起こったという前提で総合的な防災訓練が実施されます。全閣僚が防災服に身を固めて官邸に参集するということです。それから、常陸宮様、同妃両殿下がフランス国パリ市へ御旅行になる予定です。それから私から、9月1日付けで文化勲章、文化功労者を選定する文化審議会文化功労者選考分科会の委員の選任について閣議了解を得ました。

記者)

 昨日の中央教育審議会(以下「中教審」)の小学校部会で30年ぶりとなる授業時数の増加、総合学習の削減などを柱とする学習指導要領の素案が示されました。これで大臣は、学校現場等にどういうメッセージを伝えたいと思っていますか。

大臣)

 今日の報道ぶりを見ますと、何かもう全て決まったように活字が躍っておりますが、昨日初めて素案をお示ししたわけです。今後のスケジュールは、中教審において内容について色々ご議論を頂くと。そして率直に言いまして、予算の裏づけがありませんと学校現場はさらに苦しいことになりますから、予算の編成状況も見極めて、1月には、中教審としての最終的な結論を頂戴したいと。そして3月末までには、告示という形で予めお示しすると。で、それに従って教科書その他の準備期間がありますから、これが具体化するのは、平成21年度に一部、23年度以降に完全実施というスケジュールになるのではないでしょうか。基本的には中教審がこれからご議論頂くことですので、私があまり今からコメントすることは慎みたいと思います。安倍内閣において、総理として所信表明演説や施政方針演説をされ、そして教育再生会議でも色々な意見が出て、そして何よりも、教育基本法と教育3法を国会に提出した中で、国民の代表たる国会で色々ご意見、附帯決議を賜ったことを中心に、中教審にお願いをしてあります。体力を増強しなければなりませんし、基礎学力が劣るという部分(国語、理数等)について授業数を増やしたらどうなんだろうと。それから、総合学習について、いわゆる「ゆとり教育」というものは間違っていなかったと私は思いますが、運用面において必ずしも十分な教育効果が現れていない部分については、他に振り替えていくというようなことを、ご審議頂きたいということをお願いしているところですので、これで決めたとか、決まったとか、ましてやそれを受けて告示をしたということではありません。したがって、学校現場へのメッセージとしては、今後、中教審や臨時国会、年末の予算編成があり、色々な議論が出てくると思いますので、学校現場の方も関心をもって、それを是非見守って頂ききたい、ということですね。私の仕事としては、授業数が増えるのに、現在の教員数のままということになれば、学校現場はさらに厳しい状況になるわけですから、何としても、そこに手を打ちたい。それから、国際感覚を養うための教育も、小学校で一人称、二人称、三人称、現在、過去、未来、現在完了、過去完了、未来完了を教えるのではなく、むしろ、色々な言葉や文化があるということを身に付けることに統一したほうが良いのではないかと思いますね。そして、それを充実していくためには、外国人の教師に非常勤という形ででも参画してもらわなければなりません。それを実現するためには、それだけのお金を確保し、人員を整えなければなりません。ですから、年末の予算編成もにらみながら、学校現場が混乱したり、時間数の増だけ押し付けることがないようにすることが、私の責務だと思います。

記者)

 21年度一部実施とおっしゃいましたが、通常のペースですと2、3年かかってたと思いますが。

大臣)

 授業時数が増える増えないは別として、一部でも実施できるものがあれば、実施しても良いということですよ。しかし、通常は教科書の問題がありますから、どんなに早くても、23年度以降でしょう。

記者)

 英語活動という形で、具体的に週に一コマ新設するという、カリキュラムとしては初めて示されましたが、大臣の先程の話ですと、色々な言葉がある中で、特に英語ということにこだわっていらっしゃらないのでしょうか。

大臣)

 それはこれから中教審で審議して頂いたら良いと思います。文部科学省が中教審にお示しした内容を読んで頂けば、私の申し上げていることは分かって頂けると思いますが、小学校のときに、国際感覚を身に付けるということなのです。英語というのは、世界的に見ますと一番汎用性のある言語ですから、それを重視するということは、当然学校現場であるのでしょうが、英語だけということでなくても良いのではないですか。

記者)

 今日、平成20年度予算概算要求の締め切りですが、改めて大臣の所感をお聞かせ頂けますでしょうか。

大臣)

 従来、2006年の経済財政運営の基本方針で指定されている部分、例えば運営費交付金等については、文部科学省もそのまま認めているのです。それを否定しているわけではありません。しかしその後、例えば9月入学や医師の養成等、色々新しい事態が生じていますから、それに対応するため、運営費交付金、私学助成費の上乗せはして頂かなければ困ります。それから、教員給与についても優遇分の2.76パーセントのマイナスということは、概算要求上では、まず受け入れています。その上で、その後の国会の意思としてお決めになった学校教育法により、主幹教諭等を実施していくこと、或いは子どもと向き合う時間が少ないといわれている現状から見れば、今の給与体系が出来た時から見て、あまりにも教員の超勤の実態が増えすぎていると。で、それを増員、或いは外部委託、或いは定員外の非常勤講師等によって半分は解消したい。しかし、残りの半分が残っている限り、それをどう見てあげるかということを、新しい視点で、年末の予算編成の中で財務省の調整を受けて、内閣全体として議論したいということで、提案をしています。2007年の経済財政運営の基本方針には、2006年のことを全て踏襲するとは書かれていないと私は思います。ですから、新しい事態に適応して、財政の再建というのは、私は誰よりも財政再建論者ですが、今年の税収の見通しを前提に来年税収がどの程度伸びるかということを考え、国債減額にいくら税の伸びを割り当て、残りの優先順位をどう決めるかというのが、まさに予算編成の政治学なのです。安倍内閣としては、何処に重点を置いているかを国民に示さなければなりませんので、教育再生を担っている担当大臣としては、今申し上げたような予算要求をしているということです。もちろん、憲法の規定によって、内閣は全体として国会に責任を負うわけですから、最終段階で財務省や文部科学省の主張、或いは厚生労働省や環境省の主張等を、最終的に総理を含め内閣として決断していくと。ですから、優先順位を明確にするということが、政治のメッセージだと私は思います。

記者)

 先程、「ゆとり教育は間違っていなかった」というご発言があったと思います。今回、学習指導要領の改訂の方向は大筋で了承されましたが、「生きる力」という理念はそのまま強く打ち出されていると思うのですが、今回の改訂は、ゆとり教育の見直しという捉え方をされているのか、それともそうではないとお思いなのでしょうか。

大臣)

 ゆとり教育の見直しというよりも、ゆとり教育の実施の在り方というのでしょうか。従来、皆さん報道各社が英語教育、英語教育というので、私も少し引っかかっていたのですが、国際感覚を養っていく上の試みということで総合学習の中に入っていたわけです。ですから、少し同じ試みでも、それを実施するならするで、はっきりした方が良いという、むしろ実施要領の見直しと、中教審の委員の方々がお考え頂ければ有難いなと、私は思っています。

記者)

 具体的に、実施の在り方のどういう点が問題だと思われますか。

大臣)

 それは要するに、子どもに基礎をしっかり教え、その基礎の上に立って、応用できる能力とか、現実に適応できる能力とか、現場をしっかり見る能力とかを教えるのが、本来のゆとり教育の在り方ではないかと私は思いますが、観察と称して遠足的な感じで終わってしまえば、これは当初の狙いと違うわけです。少し、学習指導要領の作り方にも問題があったのかも分かりません。文部科学省としても反省しなければなりませんが、具体的に総合学習というのはこういうふうに進めていこうという、先程の、国際感覚を養う場合もそうですが、もう少し具体的に、現場に分かり易くしてあげる親切心があっても良かったのではないかという、そういう理解をしてもらったらどうでしょうか。

記者)

 現場では結局、人と金が無いから、色々な下調べも出来なければ、きちんとした計画も出来ない、そういう不満があるのですが。

大臣)

 それは先程から何度も私が言っている通り、金と人とは出来るだけ配慮して努力をしたいと思いますが、同時に、金と人が無いからといって、努力を怠られるということは困ります。それは両方のバランスを示さないと、納税者の理解は得られませんから。

(了)

(大臣官房総務課広報室)