平成19年8月27日大臣会見概要

平成19年8月27日
17時15分〜17時47分
文部科学省記者会見室

大臣)

 引き続きどうぞよろしくお願いします。

記者)

 いつ位に、どのような形で留任ということをお知りになったのかと、その理由について教えてください。

大臣)

 そういうことは「秘するが花」ですね。瀬戸内寂聴さんの小説に「秘花」というのがあるではないですか。

記者)

 先程の臨時閣議後の会見では、3分の2は終わり、あと3分の1があるとおっしゃっていましたが、どのような道筋でスタートされたいとお考えでしょうか。

大臣)

 まず、報道各社にも色々協力をしてもらわなくてはいけません。予算というのは内閣が共同して責任を持って国会へ出すわけですから、文部科学省の都合だけを言うわけにはいかないと思いますが、教育予算というのは、人材、知識、科学等を含めて将来の日本のための先行投資なのですが、一方で、税収の見積もりがどの程度になるのか、その税収の見積もりの中で、2011年までにプライマリーバランスを達成しなければならないという義務があるわけですから、どの程度を新規施策に切り分けられるのかを見極めて、文部科学大臣として主張すべきことは主張すると。最後は総理大臣が調整をされると思います。私は、人員増とか予算増というのは、今年できなければ、なかなか難しいのではないかと思いますので、何とか、私がいる間に道だけはつけておきたいと思っています。

記者)

 先程、官邸での会見でもおっしゃっていましたが、教員の定数を増やすためには、今後の予算編成の中で行政改革推進法との関連が出てくると思いますが、大臣としてはどのように解決できるとお思いですか。

大臣)

 現在の行政改革推進法は「児童及び生徒の減少に見合う数を上回る数の純減をさせるため必要な措置を講ずる」と書かれています。しかし、行政改革推進法を国会で議決した後、学校教育法を同じく国会で議決しているわけです。ですから、最近時点での国会の意思は、学校教育法の議決だと私は思います。したがって、学校教育法に書かれている主幹教諭その他の定数を要求すると。そして、主幹教諭その他は、当然授業に参画するわけですから、その人たちの定数が増えれば、今まで平教諭であった人は主幹教諭になり、そして平教諭の人たちの定数が空いてきますから、そこで新規の採用が行われると。そうしますと、児童・生徒当たりの教員数は増えてきます。そのためにはまず、予算措置で勝負をしなければなりませんが、同時に、教員定数を記載している法律の附則等で、行政改革推進法の当該条項を一時停止するとかは、法治国家として当然やらなければならないでしょう。

記者)

 留任に当たりまして、総理から何か指示なり、お話なりありましたか。

大臣)

 最重要課題なので引き続きよろしくお願いしますと。あと、一枚紙の指示内容というものを頂きましたが、先般成立した教育基本法及び教育再生関連法に基づき、教員免許の更新制の導入や、教育委員会制度の改正等の円滑な実施に努めるなど、公教育の再生に積極的に取り組まれたい。教育再生会議の第二次報告に基づき、学力向上のための対策の実施やメリハリある教員給与の実現、大学・大学院改革に取り組まれたい。年内にも纏められる予定の教育再生会議の最終報告等も踏まえながら、社会総がかりで教育の基本に遡った改革を成し遂げられるよう努力されたい。あとは科学技術のこと、緊急医師対策のこと、私学共済を持ってますから年金の一元化のこと、スポーツの振興、オリンピックが東京で開催できるように努力してほしいとか、そんなことです。

記者)

 今回の組閣全体的なことですが、大臣をはじめ、派閥の会長または会長クラスの方がかなり入閣しましたが、それについてはどうお考えですか。

大臣)

 それは国民の皆さんがご判断をされることです。人事権者である安倍総理がどういう考えでやられたのかは、私は分かりませんが、派閥会長とか、重厚な布陣とか、女性が何人とか、民間人が何人とか、そういうことよりも知識と知恵を兼ね備えていなければ、政策は実現できませんから。立派な理屈がなければいけませんが、理屈だけ言っていれば通るかというとそうではない。一方、理屈なしに何となく現状とうまくコントロールしていくというだけでも困る。そういうことを考えながら、総理が判断されたのではないですか。我々は、鳴門の渦潮の中のワカメみたいなもので、ぐるぐる回っているわけです。渦潮は船の上から見ている皆さんの方が、良く見えるでしょう。

記者)

 先程の総理の指示にもありました教育再生会議について3点ほど伺います。山谷補佐官は留任が決まりましたが、年末の第三次報告に向けた教育再生会議との付き合い方についてと、その中の議論のひとつである教育バウチャー制度について改めて大臣のお考えと、担当室長の義家氏が選挙に出て外れてまして今空席になっていますが、後任はどういう人がなるべきか、お聞かせ下さい。

大臣)

 報道各社がどう見ておられるのか分かりませんが、教育再生会議が提言されていることは、殆ど実現してきたと私は思います。ただ、どういう手法で、どう実現していくかについては、所管官庁である文部科学省に任せてもらわないといけません。ですから、教育再生会議がおっしゃっていることで私がその精神を否定して法案を作ったとか、そういうことはありません。山谷補佐官は常にこちらに連絡をし、ある意味では頼ってもおられますから、良く今後も話し合ってやりたいと思います。バウチャー制度については、どう実現していくのかということと関係してくることだと思いますが、例えば、大学というか、私学とかではバウチャーみたいなものがあっても良いのかもしれません。しかし、義務教育段階でこれを実施するというのは、なかなか国民間に議論があるでしょうから、中央教育審議会(以下「中教審」)や報道各社のこれまでの報道、あるいは国会でどういう議論が行われるかということを含めて、義務教育というのは、お金の有無や住んでいる場所とは関係なく最低限の教育を保障するということでなければならない。逆に、それが保障されることをいいことに、国民の税金を無駄に使っても困る。要はその間のバランスなのです。これが政策を進めていく上での知恵だと思います。義家氏の後任については、私が考えることではありません。文部科学省のポストであれば私が決めますが、内閣官房において考えてもらったら良いのではないでしょうか。

記者)

 歴史教科書の教科書検定に関する件ですが、集団自決に関する検定意見について、沖縄県で来月の末日に県民大会を開く予定ですが、こういった沖縄の動きについてどう対処するのかということと、それから先月、沖縄県選出の国会議員とのお話し合いの中で、日本軍の関与という表現で良いのではないかと。で、来年以降の教科書検定で検討してみてはどうかというようなご趣旨のお話を大臣がなさったというのですが、その2点についてお聞かせください。

大臣)

 私は、その質問にストレートにお答えするのは大変危険なことでして、私が何か教科書を修正できるとか、教科書についてこうあるべきだと言った途端に、私はとんでもないパンドラの箱を開いた大臣という汚名を着るのです。沖縄の人たちの気持ちは私は良く分かりますが、今度は日中、日韓、その他の問題について、ある考えの人たちがこうしろと言ったら、大臣の権限でできるという国であってはならないと私は思います。また、内々会いに来て、マスコミの人がいないところで話したことが、あなたがおっしゃったようなことを言ったかどうかも、私は記憶にありませんが、もしその人たちが、そういうことを言ったということであれば、その人たちとは今後信頼関係を持ってお話しするということは出来ませんね。一般論として言えば、関与という言葉は極めて解釈が広いです。皆さんは戦争の体験もないし、豊かになってから生まれた方々ですから、戦争がどんなに悲惨なものだというご記憶が、文字からしか理解出来ないと思いますが、私は小学校一年生でした。アメリカ軍が上陸してきたら、まず男は殺される。女はみんな連れていかれて、子どもは手の平に穴を開けられて鎖でつながれると教えられました。これもひとつの戦時の軍政下の関与なのです。そういう中、私が沖縄の方に申し上げたのは、軍命という言葉でまとめようとしたが、まとめられなかったと。沖縄県議会が軍の関与という言葉でまとめられたのは、さすがに政治の知恵ですね。これを大切に考えられたらどうなんだろうかなということを申し上げただけです。

記者)

 年度内に学習指導要領の改訂の予定をされていると聞いていますが、教える内容というのがどうなるのかということが重要だと思うのですが、教育基本法や教育再生関連3法の国会審議を受けて、学習指導要領で特にどのような点を中心に改訂されるのでしょうか。

大臣)

 今、中教審で審議頂いていますから、私があまり先取りをして話すのはどうかと思いますが、まず、授業時間を増やすという話は来年からは出来ません。これは3年後位になると思います。日本史、世界史の、中学校、高校での義務化等をどう考えるのかとか、国際社会への対応という意味で、小学校で外国とはどういうものかということを学ぶとか、そういうことをもう少し、どう考えるかということを、今ご審議頂いていますから、私が結論を先に言うのは、中教審に対して失礼なのではないでしょうか。

記者)

 関連ですが、学習指導要領の関係では、小学校英語の必修化が議論になっておりまして、大臣は昨年就任された際に、必要無いという考えをお示しになったと思うのですが、今のところそのお考えは大臣個人としては変更は無いのですね。

大臣)

 英語教育の必修化は、学習指導要領には書いてありません。国際化に対応出来る教育という書き方になっていると思います。ですから、こういう分野こそ、外国の人たちが非常勤として教えに来られて、外国の事情をお話になるとか、あるいは、「こんにちは」という言葉でも、グッドモーニングから、グーテンタークから、ニイハオから、色々あるわけで、そういうことが、随分違うなということを教えるというのが、本来の趣旨なのです。英語教育というと、現在形、過去形、現在完了、過去完了、未来形、一人称、二人称、三人称を教える前に、もう少し日本語の一人称、二人称、三人称をきちんと書かなければいけないというのが、私が就任の時に申し上げた趣旨です。国際化時代での外国の雰囲気や言葉に触れることを否定している訳ではありません。

記者)

 大学・大学院改革について、これからのポイントを大臣はどう考えていらっしゃいますか。

大臣)

 これも今、中教審で審議していますし、教育再生会議でもこれから一番大きなテーマになっていくと思います。やはり、実社会とか、産業化とか、経済成長とか、そういうことに結びつく技術というのは、日本の将来のために極めて大切なものなのですが、そういうものは、大学における健全な基礎の学修があって初めて出来るものなのです。で、大学でそういう基礎をしっかり学べるということは、高等学校、或いは小学校、中学校の公教育の基盤があって初めて可能になるわけです。ですから、何か現世の利益というといけませんが、それだけを中心に大学を考えていくというのは、少し慎重でありたいと私は思います。

記者)

 いじめと不登校の問題について、昨年、学校でのいじめを苦にした自殺が相次いだことや、不登校の児童・生徒が5年ぶりに増加したことなど、深刻になっていますが、こうした問題の原因はどの辺にあると思われますか。あと、どのような対策が必要でしょうか。

大臣)

 その統計をお示ししたときに、原因もお話ししているのではないのですか。学校にうまく適応出来ないという人のパーセンテージもありますが、同時に、家庭の事情とかもある。で、学校に適応できないというのも、授業についていけないから行きたくない、いじめられるから行きたくない、色々な理由があると思います。ですから、一概にこうすれば直るというものではありませんので、良質な教師を作って、地域と家庭と学校が一体になって子どもを見守るということに尽きると思います。

記者)

 食育に関連しまして、栄養教諭につきましてはどのようにお考えでしょうか。

大臣)

 栄養教諭は、20年度概算要求でもかなり増やす要求になっています。ただ、今、義務教育の国庫負担金は3分の1になり、地方自治体で3分の2準備しないといけないので、熱心な県とそうではない県があるのです。例えば、フランスのように義務教育の教員が国家公務員ですと、私の判断で出来るのですが、これは地方自治の建前の中でやっていくということです。自分たちの地元で作ったものを自分たちの給食のときに食べることによって、動物・植物を含めて命を頂くことによって自分の命を繋いでいくとか、そういうことを教えられる栄養教諭を増やしていくということなのではないでしょうか。

記者)

 教育振興基本計画ですが、初年度に予算との関連付けというものをお考えというお話が出ていたと思うのですが、概算要求がまとまり、予算編成も始まるということで、今後どういうような形で初年度の実効性というのでしょうか、その辺をどうやっていくのかというお考えをお聞かせ下さい。

大臣)

 これは、文部科学省は少しスピードを速めてやりたいという気持ちがあったのではないかと、私は思っているのですが、初めての教育振興基本計画でしょ。当然予算の裏付けがなければなりません。空手形を切ったのでは信用性がなくなってきますから、概算要求がどの程度実現出来るかということの見極めをつけながら、まず発射台を確定して、その上でやっていくということではないでしょうか。

記者)

 そうしますと、来年度からスタートということでしょうか。

大臣)

 来年度ということになっても、やはり予算の目処が立つまでは具体的な議論は出来ないですし、やるべきではないと思います。中教審に落ちない手形を書かせるということは、私はやりたくありません。

記者)

 緊急医師対策という言葉が総理からあったと思うのですが、医師確保についてどのようにしていくのか、大臣のご意見をお聞かせ下さい。

大臣)

 これは今、厚生労働省は医師が足りないということを言っておりますね。しかし、しばらく前までは、医師の数は十分だと言っていたわけです。むしろ、文部科学省には医学部の定員を減らして欲しいという話があった。ですから、ここはまず厚生労働省に、方針転換をしたということを明確にしてもらわなければならないですね。そして今度は、そういうことからしますと、医学部の定員を若干増やすことになるのでしょうが、医学部の定員を増やして、必ずその県で働いてもらうという担保を取ってもらわないと困るのです。これは厚生労働省の仕事だと思います。それからもうひとつは、産科と小児科は少子化時代ですから、産科について正常分娩は診療報酬の対象になっていませんが、要するに、患者さんが少ないわけです。診療報酬の受領額が少ない科になります。これは強く私から厚生労働省にお願いしてありますので、そういう方向で厚生労働省で実施すると思いますが、産科と小児科については、診療報酬上の優遇というか、単価を上げてもらわないと、医師の中で産科や小児科に手を挙げるお医者さんがいなくなるということなのです。さらにその上に、どうしてこういうことが起こったかといいますと、極めて専門的な話ですが、6年の養成期間を終わって研修に出るのを、かなり自由化してしまったので、例えば長野県茅野市の病院のように特色のある病院に行きたいとか、或いは勤務条件が非常に楽な民間病院に行きたいという人が増えて、大学で便利使いをされてきた人たちが少なくなってきたということです。そこで大学病院は困って、今度は6年終わって大学院に入って、教室ごとに派遣している人を引き上げているわけです。ですから、私が厚生労働省にお願いしているのは、厚生省と労働省が一緒の役所なのですから、医局現場における労働基準法の適用をもっときちんとして、賃金もきっちりしてもらいたい。いつまでも訳の分からない形で便利使いをしているということを変えてもらわないといけません。医学部というのは、大学においては文部科学省が所管していますが、根本の部分にある、今お話しした諸々の問題は全て厚生労働省の問題なのです。それを放置して、人数を増やせ増やせと言うだけでは、問題の解決にはなりません。勿論、文部科学省もそれに見合う運営費交付金の増を今度の概算要求で要求しますが、それを実効あらしめるためには今お話しした諸々のことを、厚生労働省が責任を持って実施してくれませんと駄目ですね。
 それではまた、暫くお付き合い頂くことになりますが、どうぞ宜しくお願いします。

(了)

(大臣官房総務課広報室)