「スポーツ立国戦略」の策定に向けたヒアリング(第5回) 議事録

 平成22年4月20日

【尾﨑大臣官房審議官】  

 それでは、第5回「スポーツ立国戦略」策定に向けたヒアリングを始めさせていただきたいと思います。お忙しいところご出席ありがとうございます。

【鈴木副大臣】  

 今日はお忙しいところ集まりいただきましてありがとうございました。今日で第5回でございますが、「スポーツ立国戦略」のヒアリングを始めさせていただきたいと思います。
 現在、スポーツ基本法案をどうするか、また、それに向けて、予算や組織の在り方等を検討しております。これまではプレーヤーの方々、そして団体の方々に2回ずつお話を承ってきたのですが、今日はアカデミアと現場等の両方を知っておられる先生方にお集まりをいただいた次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 それでは、早速ご意見をちょうだいしたいと思います。最初に勝田隆様からよろしくお願いいたします。

【勝田】  

 仙台大学の勝田です。よろしくお願いいたします。国際競技力向上に関わる立場からお話しさせていただきたいと思います。
 まず、私が提示させていただいた資料ですが、ほとんどは国立スポーツ科学センター(JISS)と日本オリンピック委員会(JOC)の情報戦略関連部門が収集しまとめたものです。ここにおいでの皆様もすでにご覧になっている「情報」がほとんどであると思います。
 したがって、私は、この場でこれらの資料を順次説明させていただくのではなく、「オリンピックやパラリンピック大会などにおいて、今、日本が国レベルでどんな強化をめざすべきなのか」といった方向性やあり方を中心に私的見解を述べさせていただきたいと思います。具体的には「各国がメダル獲得に向けどんな強化を行っているか」ということではなく、「日本の国際競技力を総合的に高めるために今、重要視すべき施策は何か」といった視点です。最初に資料の5枚目をご覧いただきながらお聞きいただければ幸いです。
 私の個人的な見解は大きく3つあります。
  一番目のキーワードは、「資源の統一」あるいは「一元化」です。ご覧いただいている資料に、オリンピック大会におけるメダル獲得上位国を中心として見られる共通的な強化策をまとめてみましたが、どの国も同じような施策に取り組んでいる傾向がうかがえます。大切なことは、強化に関わるさまざまな施策を総合的かつ戦略的行なうことが重要であるということです。
 私は、オリンピックやパラリンピックといった国際総合大会において総合成績を向上させるためには、総合的な戦略を立案し計画的に実行する責任体制・機関の一元化が必要であると考えています。強化に投下できる国費や人材といった資源には限りがあります。したがって、これを有効に活用するためには、専門家による総合的かつ戦略的デザインの立案と長期的展望にたった取り組みが必要です。
 しかし、現在の日本は、「スポーツ界全体を統括し、スポーツ政策・施策の執行に責任を負う機能がない」、「国が示した政策・施策を受けて、さまざまなスポーツ団体が、それぞれの組織の能力の範囲の中で政策・施策の具現化と実行に取り組んでいるため、政策実現及び施策実行は、それぞれのスポーツ団体の能力に依存している」こういった指摘もなされています。(「スポーツ立国ニッポン」.2007)
 このことは、(現在の日本においては)限られた国の資源(ヒト、モノ、カネ、情報、プログラムなど)が、統一化されているとは言い難い現状にあることを意味しています。各国が国をあげてオリンピックやパラリンピックの強化に取り組んでいる現在、我が国においても、その強化を国の重要な政策として位置付け、資源の有効化、一元化を図る体制・仕組みを構築することが急務であると考えます。
 ちなみに、先に行われたバンクーバー冬季オリンピック大会において開催国のカナダは、冬季大会史上最多となる14個の金メダルを獲得しましたが、カナダはこの大会での成功に向けて、専門家集団が「Own the Podium2010(OTP2010)」というメダル獲得のための強化戦略を策定し、併せてこの戦略を実行する「Own The Podium組織委員会」を設置しました。この委員会は、カナダオリンピック委員会(COO)、カナダパラリンピック委員会(CPO)、スポーツカナダ、そしてバンクーバー冬季オリンピック・パラリンピック大会組織委員会(VANOC)から構成された委員会です。
 バンクーバーオリンピック大会期間中に、JISSの情報研究部がJOCと連携して取り組んだ日本選手団情報支援本部(東京Jプロジェクトから)は、「カナダのこの組織委員会は、基金を扱う複数組織を統一させ,効率的に強化費の運用を推進することが可能となることを狙いとした」と報告しています。さらに、(このOwn The Podium組織委員会では)「既存のスポーツ政策とパイ・パフォーマンス・スポーツシステムを融合させ、戦略的に資源の有効活用を図るために助言を行うアドバイザリー委員会(9名のメンバーから構成される)も設置した」。あるいは「資金の統一を行うために7~10名のスポーツ専門家によるハイパフォーマンスポーツコミッション(HPSC)を組織し、HPSCが競技力向上に関するすべての資金を配分した」、また、(組織委員会は)「スノースポーツ」や「滑走スポーツ」といった既存の枠組みを超えた新しい強化のマネジメントユニットも誕生させ、組織経営を効率化や資金活用の有効化を図っていたことなどが報告されています。(東京Jプロジェクト:2010/バンクーバー総括レポート)
 2番目のキーワードは「ジャパン・オリジナル」です。アスリートが世界トップレベルの力を有するためには、基礎的な素質に加え、「質の高い練習を長時間・長期間できること」すなわち練習量が重要な要素となります。しかし、我が国において、練習時間を確保するために学校も行かず「スポーツオンリーの生活」を強いる、あるいは送ることはできません。それは日本の社会から認められません。支援もされないでしょう。またそのような練習や指導体制が日本社会に根付くとは到底考えられません。
 現在、国際競技力向上を目的とした競技者育成プログラムや一貫指導システムの定着化が国の施策として進められていますが、私は、強化策の構築にあたっては、日本の文化や伝統あるいは社会構造などを鑑み日本社会に根付く「日本オリジナルづくり」を創造することが重要であると強く考えています。
 各国もアスリートが質の高い練習を十分に行なえる環境整備に取り組んでいます。アスリートや指導者などの教育機会や就業を保障し、安心して競技に専念できるような環境づくりは、強化の必須事項であり国全体で構築していかなければならない課題となっています。
 たとえば、ドイツのトップアスリート養成機関である「エリートスポーツ学校」では、「トップアスリートの輩出」だけではなく「青少年の健全な発育発達」をめざし、成果授業の成績が下がった生徒に対して、トレーニング時間の授業化(振り替え・補修)などを行っていると言います。(藤井.現代スポーツ評論.創文企画2009)
 ノルウェイでは、トップアスリートをめざす選手に対して「24時間の過ごし方」を教えているという報告があります。このプログラムでは、「一握りの者しかトップになれない」「トップレベルを維持できる時間には限りがある」などといったトップをめざす厳しい現実を教え、練習以外の時間を有効に過ごすスキルの指導を行っているという。(山田.現代スポーツ評論.創文企画2009)
 一方、日本では、長期遠征や大会出場が(学校卒業)単位取得も含めて学習の障害となったりするといった(教育現場の)声も少なくない。指導者の負担や、親の経済的負担を指摘する調査もあります。
 競技者育成プログラムや一貫指導システムの定着化における「ジャパン・オリジナル」のあり方を具現化することの難しさは計り知れないと思いますが、しかし、日本において、その鍵を握る取り組み、すなわち(国際競技力向上における)「ジャパン・オリジナルの構築」の基礎的インフラの鍵となる可能性の高い事業も生まれています。そのひとつとして見逃せないのが、日本オリンピック委員会(JOC)と国立スポーツ科学センター(JISS)が支援する地域自治体が主体となったスポーツタレント発掘育成事業です。この事業に関する資料をご覧ください。福岡県や和歌山県など11の自治体が行っているこのスポーツタレント発掘事業は、県の教育委員会や体育協会が中心となって行っており、世界の舞台で活躍するトップアスリートの輩出をめざしています。イベント型ではなく長期カリキュラムのもとに継続的に行われており、学校やスポーツ少年団、地域の競技団体、あるいは中央競技団体などと密接な連携を図りながら進められています。ここでは、従来の国体強化を超えた新しい連携の姿が具体的に見え始めています。
 カリユラムの中には、運動・体力プログラムの他に、さまざまな競技種目を本格的に経験し、その中から自らの能力や環境に適した種目選択を行うプログラムや国際舞台をめざす子どもたちに必要となる文化・教養プログラムなども用意されています。また、保護者や関連する指導者にも国際的あるいは科学的視点からスポーツを学ぶ機会が提供されています。自治体の中には、これらのプログラムを、選ばれた子どもたちだけではなく、地域全体の子どもたちにも提供できるようにと、たとえば総合型地域スポーツクラブなどを活用しているところもあります。また、地域の大学と連携をすすめ内容の充実を図ろうとしている自治体もあります。JOC・JISSと連携する11の自治体の取り組みは、従来の学校運動部活動や国体を目的とした地域の強化事業では見られなかった新しい連携やプログラムを創出しています。
 このような取り組みを基軸に、JOCやJISS、中央競技団体などが一体なって連携し、国をあげた総合的強化策としてデザイン化されることは、ジャパン・オリジナルであり、今、必要とされる一環指導システム構築の方向性であると考えます。
 3番目のキーワードは「国民の理解」です。国民の理解なくして、国をあげての強化策を安定的に継続させることは不可能と考えます。
 オリンピック等の国際競技大会を目指す強化や派遣は、公費を活用する、あるいは市民社会への影響力・利益追求といった観点において明らかな公的活動と位置付けられると思います。したがって、その活動を推進するためには多くの市民・国民の理解と支援を得る努力が不可欠と思います。私は、オリンピックやパラリンピック等の強化を推進するためには、二つの方向性があると考えています。それは、強化や大会開催を国策レベルで考え推進しようとする活動と、トップスポーツそのもの発展がもたらす有形無形の利益を市民レベルの視点で追求し共有化しようとする活動とに大別できます。前者は、ある意味公共事業活動の推進であり、後者は、市民あるいは文化的公共への理解・普及活動とも言えるかもしれません。
 いずれにしても、トップスポーツの強化をダイナミックに推進するためには、「公共活動」であるという視点を重視し、そのための理解活動も強化策の一つとして同時に推進する必要があると考えます。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2009年10月コペンハーゲンにおいて、オリンピック・ムーブメントの立場を再認識することを目的とした大規模な会議(オリンピック・コングレス)を開催し「社会におけるオリンピック・ムーブメント」を発表しました。これは進化するグローバル社会において、オリンピックの在り方を再認識しようとする取り組みです。
 ロンドンオリンピックを控える英国の強化を担う「UKスポーツ」のスー・キャンベル委員長は「スポーツへの情熱を語ったところで政府は聞いてくれない」「政府が聞きたいのは、スポーツが彼らのために何ができるか。予算を引き出すには、そのための言葉と筋書きが必要(2009/12/02 朝日新聞)」と述べています。公的な強化を推進する場合、有形無形の公益を明らかにしていく努力が必要だということでしょう。
 私は、スポーツが(日本社会において)重要な公共資源として認識、共有されるための取り組みを絶えず考え、検証し、公表していく専門機関が強化体制の中にしっかりと組み込まれることが重要ではないかと考えています。
 以上、「オリンピックやパラリンピック大会などのメダル獲得に向けて、今、日本が、国レベルでどんな強化をめざすべきなのか」といった、そのあり方についての私見を、「資源の統一化・一元化」「ジャパン・オリジナルの模索と構築」「国民への理解活動の具体化」といった3つの視点から簡単に述べさせていただきました。ありがとうございました。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。引き続きまして久野譜也様、よろしくお願いいたします。

【久野】  

 筑波大の久野でございます。私の専門は、スポーツ医学でも健康づくりということ、特にスポーツ、運動が及ぼす効果ということで、自己紹介をさせていただきますと、本職は筑波大学なのですが、9年前に振興調整費の成果をもとに大学発ベンチャーを立ち上げまして、そちらはずっと代表取締役社長をして、2足のわらじで、ちょうどこの4月で9年目に入りました。
 まず、スポーツから一般の健康ということなのですが、今、健康ということの、そこに書きましたが、生活機能の維持・増進が世界的に最上位概念だというふうに位置づけられています。つまり、これだけの高齢社会対策として、生活機能の維持をしていくというのが非常に実は重要であると。その場合に、生活機能が何かというと、青い四角3つを見ていただきたいのですが、これまでどちらかというと厚労省施策で、いわゆる病気にならないという、あるいは病気を治すという政策は心身機能・身体構造の維持に努めてきたわけです。それに対して生活機能という概念では、それがベースにあるわけですが、日常生活が何歳でも維持でき、それだけでも実はだめで、社会参加ができるということが健康状態であると。この社会参加を可能とするということは、地域、コミュニティーが必要であるということになりますので、こういう社会をいかにつくっていくかということに関して、スポーツ、運動の果たす役割は非常に大きいことになります。
 そういう意味で、文科省施策で総合型スポーツクラブは大きな可能性はあるのですが、私から見ると、大変恐縮ですが、まだそこには至っていないのが現状だと認識しています。それでは何が課題であるのかということを見ていく必要があるだろうと思っています。
 次のページの日本地図は、私のベンチャーが今、サポートをしている、全国の自治体や、あるいは企業等で、今、我々の個別に適した運動プログラムを、数万人の方に全国でやっていただいています。9年間やってきまして、データベースが数十万人たまってきています。いわゆる病人のデータは病院にあるわけですが、いわゆる健康人、あるいは未病のきちんとしたデータ、あるいはいろいろな介入の効果に関してのデータは、我々が一番日本で持っているだろうと思います。それを解析することによって、またさらにその人に合ったプログラムが出てくるといった循環システムが非常に重要なのですが、なかなかこういう仕組みがまだ主流にはなっていません。地域でやられている運動指導というのは、非常にまだ経験則に基づいた、IT化とかそういうものがうまく使われていないというのが実情です。
 サービスサイエンスという分野があるのですが、それに基づいてきちんとICT化と人材育成をすると新潟の見附市、三条市と、兵庫の豊岡市と千葉の流山市の例ですが、縦軸が体力年齢という我々が作成した指標で、3カ月後、どれぐらい若返るかを見てみました。いずれの自治体においても、平均で約5歳若返っています。これは紙面の関係で4自治体だけで示していますが、50自治体すべてで同様な結果が出ています。これが科学に基づいて進めることのすごいところだと考えております。
 では、そういうものが医療費にどのように影響するのかをみてみましょう。実はこの資料は、「新しい公共」の円卓会議の座長をされている金子先生がその会議で提出された我々のデータで、実際に継続的に運動プログラムを実施すると、3年目で7万円。4年目のデータを今日は示していないのですが、さらに広がって、10万円という医療費抑制効果が出てきています。
 ここで非常に重要なのは、継続をしていくときちんと医療費に統計的にも差が出てくることです。つまり、短期的に運動してもだめで、継続的に地域でいかに運動を続けていけるようにするのか、そのためのインフラ整備、これはソフトも含めたインフラという意味ですが、そこの整備があればこういう結果は逆に日本中で出るわけですが、実は整備されていないというのが実情であろうというふうに考えられます。
 ここから少しご紹介させていただくのは、最近非常にエビデンスとして住環境や近隣環境が健康に影響するということがわかってきました。今、代表例を4つ挙げていますが、例えば、4を見ていただくと、住宅周辺の散歩空間、公園および並木道があるほど生存率が5年高いという、これは結構レベルが高いジャーナルにこういうエビデンスが出ていますし、つまり歩行量、運動するためには改めて環境が重要であることを見直す必要があります。
 今、我々は実際に何を計画しているかといいますと、都市整備をすることが健康づくりを促進させ、健康寿命の延長や医療経済にも影響を及ぼすかという、エビデンスをとりたいと考えています。このような社会実験は世界的にみてもなされていないのが実情です。
 これは私たちのデータではなくて、為本先生の論文から引用させて頂いていますが、左側の、日常の輸送割合で白い棒グラフのところだけ見ていただくと、東京、大阪、愛知を比べると、愛知が一番車利用が高く、東京が一番少ないということが示されています。それに対して右側は糖尿病の患者数を示していますが、車の利用率ときれいに一致します。この結果は環境整備も必要で、単に個人への国の働きかけだけでは健康という問題が解決しないことを意味します。
 そういう中で、我々は今、Smart Wellness Cityというプロジェクトを立ち上げていまして、地域に運動を中心とした先進予防型社会というものをつくりたいというふうに考えています。その中のポイント、キーワードは、真ん中あたりに書かせていただきましたPreventive focusに加えて、Promotion focus。つまりPreventive focusというのは病気にならない施策、いわゆる国でいくと厚労省施策です。でも、これだけ高齢社会、しかも人口減社会になってくるわけですから、いかに80、90歳でも地域で元気に過ごせるためにPromotion focus、すなわち生き生きと生活ができる健康状態を目指すという発想が必要です。それゆえ、私はここは文科省施策だと思いますし、総合型スポーツクラブ役割というのはすごくあるのではないかと考えています。
 また、今、慶應大学の経済学部と共同研究をする中で、我々の医療費抑制効果から計算をしていただきますと、例えば1,000万人が参加して平均5万円の医療費削減効果と見積もると、医療費削減額は5兆円が見込まれまして、GDPも1.7%上がって8兆5,000億規模で51万人の雇用創出というものが計算上は出てきます。ただ、これを本気でやるかどうかというところがポイントと考えています。
 次のSmart Wellness City施策というのは、実はこれまでの健康施策というのは健康部門の単独だけでやってきたわけですが、今お話ししましたように健康というのは食育、体力、あるいはリテラシー、住環境、教育や収入レベル、あるいは交通網とか、いろいろなものが関係してくるので、今までのような厚労省施策とか地域の保健畑施策のみでは解決できない施策です。総合施策なのです。今後そこをどのようにすすめていくのかが重要となるでしょう。
 ただし、実例を示さないとなかなか社会変革はできないということで、今、Smart Wellness Cityという、そこの下に首長研究会というのを昨年、筑波大学に11月に立ち上げまして、今、これだけのメンバーの方の中できちんとした社会実験をして実証例をつくって、全国に広げていこうと考えております。それを内閣官房の地域活性化統合事務局とも意見交換をさせていただいています。また、内閣官房では地域における健康づくりの活性化に関する省庁連絡会ができており、連携させていただいています。次のページにその実態が示されていますが、文科省からも生涯学習政策局とスポーツ・青少年局からご参加いただいています。今後どのような社会実験を実施すべきなのかについて議論していく考えです。
 あと、参考資料で、『週刊東洋経済』などに掲載された論文で、今お話ししたエッセンスが書かれておりますので、後で見ていただければと思います。以上です。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。それでは、続きまして黒須充様、お願いいたします。

【黒須】  

 福島大学の黒須と申します。私の研究フィールドであるドイツのスポーツの話を中心にさせていただきたいと思います。
 ドイツにおけるスポーツクラブとは、単にスポーツを行う組織というものではなくて、地域住民が世代を超えて集って、極めて公益性の高いクラブとして、地域社会が抱える様々な社会問題とか、生活課題の解決にも大きく寄与する力を備えております。私はこれを地域課題解決力と呼んでおります。
 一方、我が国のスポーツは、1つの種目を同じ年代の人々で集まって楽しむという、内向きの傾向が強くて、広く地域住民に門戸が開かれた、そういった仕組みとはなっていないのが現状です。そこで、今回は、総合型地域スポーツクラブのモデルと言われているドイツのスポーツクラブの最新情報について、地域課題への対応ということに焦点を当てて報告させていただきます。
 まず1点目が、少子高齢化社会とクラブということです。2ページの表1をごらんください。少子高齢化が進行する中で、手厚い支援が必要と考えられる就学前の子ども、青少年、そして60歳以上を対象としたプログラムを提供しているクラブの数と、これはパーセンテージを示したものですが、この数値からもドイツにおけるスポーツクラブの存在というものを抜きにして、スポーツの機会が十分に住民に提供されることはほとんど考えられないということが、こういった数字から読み取れるかと思います。
 同じく2ページの表2をごらんください。ここでは経済格差とクラブということで、少し説明させていただきます。まず、平均値ではなくて、中央値のところをごらんいただきたいのですが、全スポーツクラブの50%において、月々の子どもの会費が最大3.5ユーロ、青少年が最大4.5ユーロ、成人会員が最大7.50、家族会員が14ユーロに抑えられています。つまり、公益に資するという使命から、だれもが参加しやすい料金設定ということで、経済的に恵まれない子どもでもスポーツをする権利があるということを、こういった公益的なクラブがきちんと保証しているということがこの表2からも読み取れるかと思います。
 3ページ目をごらんください。ここでは競技力向上とスポーツということで、表5をごらんください。スポーツクラブの存在を抜きにして、ドイツの競技スポーツというものを考えることはほとんど不可能かと思います。地域のスポーツクラブが一貫指導体制、そしてタレント発掘、そしてセカンドキャリアの受け皿、こういった機能を備えております。
 少しページを飛んでいただきまして、5ページの表8をごらんいただきたいと思います。ここでは健康増進とクラブということで、やはりドイツのスポーツクラブが住民に健康の機会を提供するという点でも、重要な貢献を果たしているということがこういった最新の数字から読み取っていただけるかと思います。
 次に表9をごらんいただきたいと思います。ここでは共同参画社会クラブという観点からこの表を見て読み解いていきたいと思いますけれども、スポーツクラブの3分の2以上が学校と、47%以上は幼稚園とか託児所と、そして36%が青少年課と、何らかの形でコラボ、協力関係を結んでいるというような形で、外に開かれた仕組みということがこの表9からもおわかりいただけるかと思います。
 6ページをごらんください。ここでは表11から世代間交流とクラブというところを見ていただければと思いますが、決してクラブというものが単にスポーツを行うだけではなくて、会員のほぼ3分の2が、ここに挙げたような社交的な催し、つまり、多世代で、地域で人々が交流する、そういった拠点をクラブが提供しているということがこの表6からもおわかりいただけるかと思います。
 7ページ目の表12をごらんください。ここでは市民参加とクラブ、ボランティア活動のことがまとめられていますが、その表12の下の文章のところで、ボランティア活動者は平均して1月に17.6時間、無給で仕事を引き受けていると。これをお金に換算すると、全国のスポーツクラブで月々5億5,000万ユーロ、年間66ユーロの給料に相当する仕事を、こういった地域のスポーツクラブのボランティアが果たしているということがおわかりいただけるかと思います。
 そのページの表13、これは我が国にはなかなか当てはまらない面かと思いますが、やはりドイツ、移民が多いということから、社会統合にこういったスポーツクラブが大きな役割を果たしているということで、会員に占める移民の割合が10人に1人を占めているということがここからおわかりいただけるかと思います。
 少しページを飛ばしていただいて9ページ目、表16、ここでは青少年教育とクラブということを読み取っていただければと思いますけれども、ドイツのクラブというものが民主主義の学校だと言われています。この中でも青少年の代表理事、つまりクラブの理事の中で青少年を代表する18歳ぐらいの子どもがしっかり発言権を持っているとか、そういった仕組みになっているという、民主主義教育の場だと。
 次の表17、ここでは職域とクラブということでちょっと紹介させていただきますが、そのページの下のほうの文章で、スポーツクラブの現在の職場は全部で4万のフルタイムの職場に相当していると。つまり、スポーツクラブが労働市場政策の点でも重要性を増している。ここでハルツⅣというのは、日本で言うと緊急雇用対策、こういった政策の中での受け皿として地域のスポーツクラブが役割を果たしているというようなことがここから読み取れるかと思います。
 10ページ目をごらんください。表21、ここでは国際交流とクラブということで、海外とのコンタクトをとっているクラブが9万クラブの中で2万1,000クラブということで、外国においてドイツを代表している。地域のクラブがそういったドイツというものをいろいろなところで交流を図っているということがおわかりいただけるかと思います。
 その後の資料は、いわゆるクラブを支援する州スポーツ連盟等の資料、いわゆる我が国で言うと、公益スポーツセンターに関連する資料ですので、今日は省略させていただきますけれども、今回この資料を使わせていただいたのは、ドイツのスポーツクラブというものが公共の福祉に大きく貢献しているということと、まさに私が述べたかったのが、我が国が推進している総合型クラブの未来図がこういった数字の中から読み取れるのではないかということを報告させていただいて終わりにいたします。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 どうもありがとうございました。引き続きまして齋藤健司様、お願いいたします。

【齋藤】  

 よろしくお願いいたします。
 本日はスポーツ基本法の立法の視点からスポーツ立国戦略についてご提言させていただきたいと思います。レジュメに沿ってご説明させていただきます。
 まず第1に、スポーツ基本法を根拠づけるスポーツ政策の根本理念についてですが、私は人間の身体面からの幸福の追求と、身体活動及びスポーツを通した人間と社会の健全で持続可能な発達に定めるべきだと考えております。これは日本国憲法及び国連の動向とも合致し、今後、スポーツ基本法を制定する上で非常に重要な考え方になるのではないかと考えます。これらの根本理念は今後のスポーツ法の体系、政策体系を展望する上でも重要な柱になると考えます。そして、この根本理念を実現するためにスポーツ基本法を制定し、その理念に基づく戦略の作成と、特別立法の段階的整備を進めるべきだと考えます。
 さらに上述の理念に基づいて、スポーツ政策と身体活動に関する政策等を将来的に調整、統合していくべきであると考えます。
 第2に、スポーツ基本法の理念についてですが、国際的な動向等を踏まえますと、次の7つに分けることができると考えます。スポーツ権の保障、行政によるスポーツ政策の実施義務、公共財・文化財としてのスポーツの保護、スポーツ団体の権利と義務の承認、スポーツの安全、スポーツと環境の整備と調和、スポーツに関する国際協調と平和です。
 まず、スポーツ権の保障とは、スポーツを実際にする権利、スポーツに参加する権利またはアクセスする権利、スポーツの無差別平等、スポーツの自由、スポーツの公正、スポーツの安全、これらを保障または確保することであります。実際の諸外国のスポーツ国家法の中にも、これらの法理念を定めている国や、重要視して政策を展開している国がございます。
 次に、行政によるスポーツ政策の実施を責務として定め、実際に実施していくためには、第1にスポーツ庁を設置し、スポーツの総合行政を展開し、同時にこれまでの縦割り行政の解消と組織の統合による行政の効率化、スリム化を図るべきだと考えます。
 第2にスポーツ財政戦略を策定するべきだと考えます。特にスポーツに関する財源等を基金に一元化すること、スポーツ団体に対する免税措置を講じること、予算の配分、使途について原則を確立することが必要であると考えます。
 第3に、スポーツの経済産業戦略を策定するべきだと考えます。特に、プロスポーツを含むスポーツ産業の活性化策やスポーツにおける持続可能な経済システムの構築を目指すべきです。
 第4に、学校体育、スポーツ施策の改善と保障を明記するべきです。
 第5に、地方分権における中央地方関係を明確にするべきであると考えます。
 第6に、施設設置基準、安全基準を策定し、地方間の格差等が生じた場合に是正に取り組むことを考えるべきです。
 第7に、関係者の評議の場としてのスポーツ審議会を単独で独立して設置するべきだと考えます。
 第8に、スポーツ指導者、選手等の職業、専門化等を進め、あわせて雇用対策等を進めるべきだと考えます。
 第9に、生涯スポーツ施策と競技スポーツ施策の協調を図っていくべきだと考えます。
 スポーツの保護戦略としては、まずスポーツ選手の人権を保障する措置を講ずるべきだと考えます。特に、スポーツ選手の人権を保障する措置の中では、ドーピング法を制定し、日本アンチ・ドーピング機構の組織を強化するなどして、適正な手続の実施を確保するべきだと考えます。
 また、スポーツ紛争処理制度を構築するために、スポーツ仲裁機構などの組織を支援し、適正な手続の実施を確保するべきです。
 さらに、公営競技の行政指導監督を一元化すること、スポーツ倫理綱領を策定すること、スポーツ文化の保護の視点から、伝統的なスポーツ、高度な競技スポーツ、プロスポーツリーグなどを保護育成することが必要であると考えます。
 スポーツ団体組織戦略としては、スポーツ団体組織を設立するための法的基盤を整備し、法人法、税法等の改正を検討したり、団体の自立性や自治を確保するべきだと考えます。
 また、スポーツ行政とスポーツ運動組織とのパートナーシップや、スポーツ政策の共同責任の原則を定め、スポーツ団体組織の責務についても明確にするべきだと考えます。特に、スポーツ政策の国内機関の設置、NOC、NFなどのガバナンスの確保とマネジメントの支援を図る必要があると考えます。
 最後に、地域スポーツクラブの育成については、その多様性を認める必要があると考えます。総合型地域スポーツクラブに関する施策だけではなく、地域の実情に応じて様々なスポーツクラブの支援を検討していく必要があると考えます。
 スポーツの安心安全戦略については、まず、スポーツ事故補償法のようなものを制定する必要があると考えます。特に、日本スポーツ振興センター、関連する公益法人等による安心安全関連事業、保険事業、災害共済給付事業の見直し、統合などをして、制度をより強化していく必要があると考えます。
 さらに、スポーツの安全教育、研修の徹底、安全基準の策定と安全対策の強化、スポーツ事故のリスクマネジメントシステムの開発など、さらに国として積極的に進めるべきであると考えます。
 スポーツと環境の戦略としては、まず地域開発、環境開発と関連する様々なスポーツ関連事業の統合と整理を進める必要があると考えます。観光、ツーリズム、リゾート、地域拠点整備、遊歩道、自転車道、公園、まちづくり、都市基盤など、事業が乱立することに対して、スポーツ庁あるいはスポーツ基本法に基づく調整が必要であると考えます。
 次に、スポーツにおける環境対策の促進、自然スポーツ、野外活動の振興、持続可能なスポーツ開発などについて、統一した政策を実施していくべきだと考えます。さらにこのようなスポーツ環境戦略へ健康増進施策を融合しながら、身体活動及びスポーツの環境整備に関する総合計画、総合戦略を策定するべきだと考えます。
 最後に、スポーツの国際戦略についてですが、グローバル化したスポーツの世界においては、国内だけの戦略に目を向けるだけでなく、国際戦略を検討するべきだと考えます。まず、スポーツを通した国際交流の促進について、積極的に政策を策定するべきです。特に、アジアスポーツ憲章の制定、国際競技会、国際スポーツ機関の招致奨励、国内外のスポーツ政策に関する動向を把握するための調査研究機関の設置、国際的なスポーツ法の積極的な受諾、批准などを進める必要があると考えます。
 そして、日本からアジアへ、さらに世界へ向けてスポーツ戦略の主体的な発信ができるようにすることが、日本がスポーツの分野において世界の中で名誉ある地位とリーダーシップを発揮することにつながると考えます。 短いですが以上です。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。引き続きまして高橋義雄様、よろしくお願いいたします。

【高橋】  

 筑波大学、高橋です。よろしくお願いします。
 私の報告は、基本的に、これまで文部科学省から委託を受けた事業を過去4年間にさかのぼりまして、私がすべてプロジェクトリーダーを務めたものについて、報告書では書き切れなかった点、もしくは現場に落としていく上で注意すべき具体的なことについてお話ししたいと思います。基礎となる調査研究事業は2006年以降のトップレベル・スポーツクラブ活動支援事業、当時は直接助成金を企業スポーツクラブに直接渡したり、地域化したクラブに直接お金を渡したのですが、なかなか成果が上がらないということが言われていました。そのときに、私、当時、名古屋大学におりまして、愛知県においてクラブを対象とするマネジメントの研究会を開きました。要は、魚の釣り方を知らないクラブに魚を与えても、結局、魚がいなくなれば飢えてしまうという現実が見えてきたからです。
 その後、愛知県の財団と一緒に、クロスオーバーモデルといいまして、草の根のクラブとトップレベルのアスリートをつくるクラブをどう交流させたらいいかというような実験ですとか、あとは、昨年、一昨年と、トップアスリートの活動整備基盤事業、それからスポーツ環境の整備に関する調査事業ということで、個別対象にクラブの経営コンサルティングをしてきました。クラブのGMを集めた講習会では、やはり他人事で終わってしまう。やはり自分のクラブに人が来て、会計から何から調べられて、どうしたらいいですよというアドバイスをしてくれて初めて彼らはマネジメントということがわかってくるということが私の実感として感じております。
 2枚目ですが、スポーツ振興システムには日本の場合、大きく3つがあると思います。スポーツはこれまで他律的に、例えば学校ですとか企業に支えられてきた。他の機能に依存して成り立ってきたのがほとんどだったのですが、企業スポーツの廃部ですとか、学校スポーツの行き詰まり等から、やはりトップレベルのスポーツ選手たちが所属する場所というのが、現状、草の根のチーム、地域クラブ化しているというのが現状です。これまで彼らはクラブの経営をしたことがなかったものですから、草の根のチームとなった今、どう経営するかということに迷っています。
 一方で、草の根のチームというのは、これまでボランタリーな活動でしたから、彼らもお金の収入の仕方がわかりません。基本的には公的な支援を受けたり、自分のポケットマネーの範囲内でやったりという小さなクラブが多いというわけです。
 あと、真ん中にある市場メカニズムは、例えばフィギュアスケートですとか、セントラルとかコナミさんみたいな、市場のメカニズムで動くようなクラブもあります。
 ただ、これら総合的にトップレベルを維持するためには、総合的に連携強化する必要があるだろうと考えました。高度化はなぜしなければいけないのかと、よくいろいろと質問されますが、基本的にスポーツはゲームであって、競い合うこと自体が大事、リスペクトなので、競い合って極め合うというのが大事です。それから、スポーツへのあこがれは一流のシーンから始まるわけで、すべての人がボランタリーな草の根レベルでいいわけではありません。
 さらに公的施策がなぜ必要なのかという点になります。それについても、スポーツが社会生活に様々な効用をもたらすことがわかってきていますし、市場メカニズムだけに頼ってしまっては公平、公正の観点から調整することができないということで、やはり公的な施策によって調整することは大事です。さらに、自立していくためには産業化を促すようなスポーツシステムが重要だということです。
 3枚目ですが、シナジーを出すには、それぞれのシステムが連携することだということで、個々には、例えば企業がCSRで連携したりなどは起きていますが、総合的な戦略をもっての動きではないというのが現実だと思います。
 そこで今日は、わかってきた課題を3つ、そしてその課題に対する解決策というものを提示したいと思います。
 1つ目が、スポーツクラブ経営は、各GMはノウハウが不足しています。彼らにまず教えなければいけないのは、基本は会員収入だということです。ということは、会員からちゃんと月会費をもらって、それがしっかりと集められないとビジネスになりません。最初から興行から入ると、興行は水もので、興行はリスクが高いので、基本的には規模を拡大して初めて興行収入が入るというような流れであるという理解が必要です。そのためには当然、事業体である意識が必要ですし、法人化が必要になってきます。
 さらに2番目が、こういうことをやろうと思ったときに、何が阻害するのかということもわかってきました。つまり、既存の構造の既得権です。例えば、施設が学校や公営施設に限られていて、なかなか入り込めないとか、個別の部局に質問に行っても、その個別の部局には個別の仕組みがあって、なかなか新しい仕組みを導入してくれないというような構造があります。
 3番目ですが、その構造にのっとってつくられた行政制度があって、なかなかそれも打ち破っていけないというのが、頑張ろうと思ってもできない原因です。
 その解決策ですが、コンサルティングをした私の実感からは、まず、クラブ経営のコンサルティングをやはりやるべきで、これはtotoの助成が私は最適だと思うのですが、コンサルする側もモラルハザードに陥らないように、成果主義で、ちゃんと成果が出るようなコンサルをしてくださいよというような仕組みが必要です。要は、コンサルティング費用をもらえるからと適当にやるようなコンサルティングは排除すべきです。
 2番目が、公的組織による利害調整ということが実は大事です。というのは、民間同士で、例えばJリーグのクラブが地域の草の根クラブに話をかけたときに、その草の根クラブからすると、大きなものに飲み込まれるのではかという非常に恐怖感があって、なかなか提携ができないのが現実です。それで、実は公益スポーツセンターという公的なものがお互いを調整するということが大事です。公的な色を出しながら調整をするということで解決することが多々あると思います。
 それから、既存の構造で言うと、学校体育施設をどうにか社会体育施設化できないか。さらに言うと、それを指定管理で出せないかということです。そうしていただくと、トップレベルのクラブが、経営力さえあれば、そこに入っていける可能性があります。
 それから、制度設計の話になりますが、国政レベルのスポーツ行政の一元化はやはり大事だと思います。というのも、様々なところで予算が立てられ、それをよく知った人のみがうまく渡れるという現象が今、起きていまして、国政の予算を取るだけでコンサルが成り立つようなことになってしまっています。
 それから、教育行政の中にいると、実はスポーツクラブのビジネスの広がりがありません。特にやるべきことはメディア政策、メディアとの連携で、スポーツのビジネスを広くする。それから、実際にスポーツでお金が動くのは、お客さんだとか会員が移動したり、食事をしたり、そこで消費するという活動ですので、観光などとの連動がぜひ必要だと思います。そうすることによって初めて、スポーツが事実的に収入を得ることになれば、スポーツが投資の対象になるだろうと思います。
 また、「コンクリートから人へ」とは言うものの、実はスポーツ施設について言えば、人が生きるようなコンクリートになっていないというのが現状です。スポーツ施設の高付加価値化ということを目指すべきだと思います。
 最後になりますが、スポーツ産業育成の視点で言えば、クラブが生き残るための会員ビジネスは、なるべく多くの人たちが集まってきても費用がほとんど変わらないので、費用をどんどん下げる。つまり、過当競争に陥りやすいビジネスです。フィットネスクラブなんかは、ある程度横で連携しながら、月会費を落とさないような、お互いのなあなあの状態があると思うのですが、これを実はやらないといけないと思います。広域スポーツセンターを含めて、愛知県では実際に直接的に価格を調整した例もございますし、間接的に言えば、スポーツの資格を持った指導者を必ずつけなさいと。そうすると、人数が増えれば何人の資格が必要になってということで、コストが上がるようにすれば価格を下げずに済むというビジネスになります。
 それから、興行ビジネスにおいては、現状、やればやるほど費用がかかります。そのため各クラブがやりたくなくなります。なるべくコストを下げるためには、縮小したリーグを経営しようとしています。これは完全にトップのアスリートにとってはマイナスでありまして、回数を増やすように、要はその施設を何度も何度も使えば、ホームとして使えば、価格を安くするだとか、観客数を増やせば価格を安くするような、費用が下がるような仕組みにしていただくことによって、なるべくホームで回数多く興行をやるというようなことになるというふうに思います。
 こういった具体的な産業政策なども必要なのかなというふうに見えてきたところが4年間の成果ということでご報告をさせていただきます。ありがとうございました。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 どうもありがとうございました。引き続きまして山口泰雄様、お願いいたします。

【山口】  

 神戸大学の山口です。よろしくお願いいたします。
 私は、スポーツ社会学が専門分野ですが、主に1960年代のヨーロッパで誕生して世界へ広がっていったスポーツ・フォー・オールという、そういうムーブメントがありますが、この研究と、それから、国際統括機関でありますTAFISAというところがあります。国際スポーツ・フォー・オール協議会というふうに日本では訳されていますけれども、TAFISAで普及の仕事にかかわってきました。今日はこれまでの研究とTAFISAの経験をもとにして、スポーツ立国に向けた展望とアクションについて、特に3点に焦点を当ててお話をさせていただきたいと思います。
 まず1点は、スポーツ立国とは何かということです。2番目は、スポーツ・フォー・オールの推進という視点からお話ししたいと思います。3番目は、スポーツの専門化、特に専門職の育成と雇用プロモーションと、こういうところに焦点を当ててお話をしたいと思っております。
 まず、スポーツ立国ですが、TAFISAの初代会長のユルゲン・パルムという人がいます。この人がスポーツ・フォー・オールムーブメントのリーダー、世界のリーダーなわけですが、パルム氏が六、七年前にSporting Nationという、こういう言葉を使いました。非常にいい言葉だなと思っています。シンガポールでも今、使われていますけれども、これは国民がアクティブになることだけではなくて、国家もスポーツをするように、アクティブで活動的であってほしいと、こういう意味がありまして、スポーツ立国にはぴったりの英語表現ではないかというふうに思っています。
 それから、かつて、近代スポーツ発祥の地である英国では、スポーツ振興のスローガンは「More people,More places,More programs」と、こういう、どちらかというとグラスルーツの地域スポーツが中心だったわけですが、これまでの社交重視と福祉生活に加えまして「More medals」と、こういう競技力向上政策を加えまして、次回のロンドンオリンピックの開催に至っているということが言えます。これは、国際スポーツにおいてアスリートの活躍が感動と国民の一体感を高めるということを強く認識したことがあって、これを入れたのではないかと思っております。
 私は、スポーツ立国とは、ここに書いてありますけれども、More people,More places,そしてMore medalsということが基本理念ではないかと思っております。そして、スポーツの価値を高めて、実施者を増加することが最も優先すべきミッションであるというふうに考えています。
 スポーツには多様な価値がありますが、社会的、経済的、文化的な価値を今、再評価しようという動きが国際的に広がっています。御存知のように、ヨーロッパではスポーツ担当国務大臣が会議をずっと重ねてきました。ドイツでは今、内務大臣がスポーツ担当ですが、これは何かというと、ヨーロッパでは各国で移民を受け入れてきた結果、いわゆる民族問題が発生しまして、かなりいろいろなところで暴動が起きていると、こういうことがあります。ここでスポーツの持つ社会統合力というものが内務省から注目を集めて、具体的には地域の総合型のスポーツクラブにおいて、様々な民族の子どもたちを集めて、特別なプログラム、いわゆる多民族プログラムを内務省の支援によって推進していると、こういうようなことがあります。スポーツを一緒にすることによって、異民族交流と相互理解を深めるということが背景にあって、スポーツが同化政策の一つとしての装置になっているということが言えるかと思います。
 スポーツと身体活動による社会・経済的便益と健康増進の便益を改善して、普及、競技力の向上に関する基盤整備を進めるということが特に政府の役割ではないかと考えます。また、スポーツ基本法あるいはスポーツ庁を目指すためには、先ほどからいろいろな方が指摘されていますけれども、省庁を超えた行政機関とサービスというものが必須ではないかというふうに思います。例えば、キャッチボールやサッカーボールをけることができない公園とか、あるいはビーチボールの大会の開催にショバ代を要求する暴力団がいるとか、あるいは障害者スポーツの振興は文科省ではなく厚労省とか、自治体の福祉部局とか。これからは、3Eと言われていますけれども、効率的で、効果が上がって、なおかつ経済的であると。エフィシェントリー、エフェクティブリー、エコノミカリーと、こういう3つの3Eということで政策を進めるためにも、省庁を横断する機関の設立というものが必要ではないかと考えております。
 2番目は、スポーツ・フォー・オールの推進です。現在、中教審のスポーツ・青少年分科会で、第2次といいますか、仮称だと思うのですが、スポーツ振興基本計画の準備が進められておりまして、私も委員として参画していますけれども、1つ感じていますのは、基本計画策定の基盤となる調査データが不足しているということです。1つの指針は「体力、スポーツに関する世論調査」です。こういう3年おきの調査がございますが、これはたしか東京オリンピックのころに作成された内容で、少しずつ修正されていますけれども、残念ながら現状を反映していません。国民の多様で広範なスポーツ参加の現状とニーズを十分に把握ができていないと思っています。特に、他のスポーツ先進諸国に比較しますと、スポーツ関係調査が不足していると感じています。
 例えば、カナダでは、国立のスポーツ・ライフスタイル研究所というところがオタワにありまして、縦断的な枠組みでいろいろなスポーツ人口調査、あるいは政策調査というものを行っています。また、オーストラリアではオーストラリア・スポーツコミッションがやっています。それから、ニュージーランドでは、今、SPARCといって、スポーツ・アンド・レクリエーション・ニュージーランド、ここが幼児から子ども、高齢者、障害者までの実態を、特に最近の傾向ですが、栄養と運動と一緒に絡めて見ていこうとしています。実態を把握して、特に先進国すべて肥満児の増加が非常に大きな問題ですので、具体的に栄養と運動を一緒にしたプログラムを展開していこうと、今、幼児にまで踏み込んだプログラムをニュージーランドでもこれから開始するということでございます。
 それから、お隣の韓国におきましても、日本のJISSに当たりますKISSというところ、韓国スポーツ科学院でありますが、ここにはスポーツ政策部というのがありまして、多様な人口調査とか政策立案への調査研究を進めています。
 そこでぜひ、日本のJISSにも、今はスポーツ科学とスポーツ医学、スポーツ情報、この3つの部があると思いますけれども、ぜひ、スポーツ政策部というものの設立を提案したいというふうに思っています。スポーツ政策部がいろいろなスポーツ人口調査、あるいは政策評価の調査研究というものを蓄積することが、いろいろなプランのベースになって、スポーツ立国につながるというふうに考えております。
 また、最近、日本のスポーツ外交力の弱さが指摘されています。オリンピック招致でもありましたけれども、IOCコングレスの前にだけ海外を訪ねてお願いをしても効果がないというのは明らかなわけです。ふだんからのつき合いというものは非常に重要で、特に、アジア、アフリカ諸国への途上国への開発支援というものに対して、日本に対して強い期待があります。今回、toto助成で新たな対象として国際会議の開催に関する助成というものができましたけれども、競技団体のコングレスだけではなくて、スポーツ・フォー・オールのコングレスにも助成の道を開いていただきたいというふうに思っています。ふだんからの交流とネットワークの形成、すなわちソーシャルキャピタルと言いますけれども、社会関係資本の形成というものが重要になってくるというふうに考えております。
 もう一つ、少し前に話題になりましたけれども、メダルが紛失されまして、スポーツミュージアムのことですが、スポーツ文化を発展して継承するということが一つのスポーツ立国の課題というふうに思います。ぜひこれからは、スポーツミュージアムとかスポーツの殿堂と、こういったものを充実していただきたいと思っています。世界の代表的なスポーツミュージアムとしましては、一番大きいのはおそらくローザンヌのIOCのスポーツミュージアム。日本の企業はいっぱい寄附していますけれども。それから、オーストラリアのAIS、それからソウルとかバルセロナのオリンピックパーク、あと、最近ではイスラエルのNOCに体験型のすばらしいミュージアムが置かれています。ぜひ、こういったものにも従事していただきたいと思っています。
 最後に3番目ですが、スポーツ立国を強固なものにするということは、やはり人ではないかと思っております。「企業は人なり」と言われますけれども、スポーツ立国も人なりということではないかと思っています。そのために一番重要なのは、やはりスポーツの専門化を促進するということが重要ではないかと思っています。過去20年ほどスポーツボランティアの研究にかかわってきました。海外の事例も科研費で調査させていただきまして、スポーツのメガイベントはボランティアのサポートなしには成功しないということはもう常識になっております。ボランティアの研究をすればするほど、ボランティアをコーディネートするボランティア・コーディネーターとかボランティア・リーダー、専門職としてこういった人が必要だということを感じています。
 それから、特にこれまで日本のスポーツ指導者は、一言で指導者と養成されてきましたけれども、これからは、資料の表1に書いていますけれども、この3つのタイプに分けての育成活用が重要ではないかと思っています。すなわち、専門指導者、それから有給指導者、ボランティア指導者と、こういったものをはっきり道を分けて活用するということが大事ではないかと思っています。スポーツ団体とかスポーツ行政においてもマネジメントスタッフなどの専門職の雇用と、もう一つ、プロモーションシステムというものの確立が求められているというふうに思います。特に広域スポーツセンターでは、専門職としてのクラブマネジャーを採用していただきたいと思います。定年退職された方ではなくて、ちゃんとマネジメントスキルをしっかり持っていて、そういった方を採用するということが、地域のクラブへの大きなサポートになるのではないかなと思っています。
 そして、次のページの表2に書いていますけれども、するスポーツ、みるスポーツ、ささえるスポーツにおいて、そこにいろいろな専門職等々を書いてありますけれども、こういったそれぞれの専門職の育成と活用がスポーツ立国の大きな戦力になるということを強調したいと思います。以上で私の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。それでは、最後に河野一郎様、よろしくお願いいたします。

【河野】  

 日本アンチ・ドーピング機構の河野一郎でございます。
 私は、ここに3枚ものの資料を用意させていただいておりますが、スポーツ立国戦略の策定に向けたヒアリングということでしたので、スポーツ立国戦略とアンチ・ドーピング活動についてお話をさせていただきたいと思います。
 先ほど、少しオリンピックの話も出ましたけれども、オリンピック招致の過程でも、いつも国策でとか、あるいは国費を使ってというと、必ず国威発揚のために何をするんだということを言われて、大変悔しい思いをしてまいりました。そのときには、なかなかそういうことは発言できませんでしたけれども、こういう機会を与えていただきましたので、今、スポーツ立国戦略の目的は何かということを少し、アンチ・ドーピングのほうから考えてみたいと思っております。実はオリンピック招致と同じなんですが。もちろん、国威発揚ではなくて、やはり日本の現在の国のありようが、やはり次のステージに向かうべきだろうという共通理解があってのスポーツ立国戦略だろうと思いますし、さらに目的としてやることは、国威発揚ではなくて、国のプレステージを上げることと、国のナショナルプライドを上げること、この2点が重要だと思います。
 プレステージとナショナルプライド、これは説明を要しないと思いますが、最近のはやりの言葉で言えば、国家の品格をスポーツを通じて上げることだろうと思います。やはり、国家の格を上げる、つまりメダルを取るだけで多分格が上がるでしょうが、やはり品を持った上げ方、つまり、勝田さんがおっしゃられたような、日本的なということが多分入ると思いますが、特に競技スポーツに関して言えば、スポーツを通じて国家の品格を上げるということがスポーツ立国戦略につながるのだろうと思います。
 これをアンチ・ドーピング活動のほうから見ますと、まさにドーピングで言えば、陽性者が出ると汚名という言葉がありますが、基本的には個人の汚名なのですが、最近のグローバルな世界では個人の汚名にとどまらずに、競技団体、NOC──JOCになりますが、特にそのコミュニティー、そしてやはり今の状況では日本国自体が汚名を受けることになりますから、まさにアンチ・ドーピング活動を考えるということは、スポーツ立国戦略を考える上で非常に重要な、あるいはいい視点を持てるものだろうと思っております。
 さて、2枚目になりますが、先ほど申し上げましたように、ナショナルプレステージ、国家の品格を上げていくということは、ほかの国に、古い言葉ですが、伍していくということになります。現在のWADA設立の経緯、規定、あるいは条約の策定から見た、日本国を中心としたスポーツ界、政府間の、やはり戦略ですから、ほかの国に伍していくということで、あえてパワーオブバランスとネットワークと書かせていただきました。この部屋の隅のほうに、この過程にずっとかかわられた方もありますが、少し説明させていただきますと、やはりWADAができる過程では、明らかにパワーオブバランスの中で生きてきたと思います。日本が現在、私の理解では、おかげさまでといいますか、大変政府に感謝するところですが、アンチ・ドーピングの世界ではプレステージもあるし、我々はプライドを持っていると思います。そのターニングポイントの一つは、細かいところははしょりますが、日本がカナダ、オーストラリアのアライアンスに組み込んで、アンチヨーロッパのほうに入ったというディシジョンをしたということが一つだと思います。それから、もう一つは、WADAへの拠出金を争ったときに、ヨーロッパに、いわばディベートで勝って、日本の主張を通すことができた。これが非常に大きいと思います。そういうことがあったので、世界からアジアの中の日本というのはリスペクトをされ、アドミレーションも受けて、そして多分、日本の中にある東京の地域オフィスにつながったのだろうと思っています。
 そのことからずっと来て、ユネスコ国際条約につながっているわけですが、やはりスポーツ立国戦略というからには、ある程度のどこかでディシジョンがあって、それの背景となる動きがあります。そしてやはり、先ほど申し上げたように、国家の品格を上げるということなので、ただ常任理事国であればいいということではなくて、先ほど来お話が出ているように、アジアへの貢献も大変重要だろうと思います。そういったことをしてきているから今があるのかなということで、まさにアンチ・ドーピング活動が、日本の現在の立ち位置は、スポーツ立国戦略上は大変いい位置に来ていると思います。
 ただ、やはりスポーツ立国戦略というからには、次のステージに進むためには何をしたらいいかというふうに考えているわけでございます。ユネスコ条約のときには私も参加させていただきましたけれども、やはり国内でもいろいろな意見がありますから、例えば外務省と文部科学省で若干違う意見が出たりするということもありますが、今後、日本のプレステージを上げていくためには、先ほど勝田さんのお話の中にもありましたけれども、一体化した意見が出される必要があると思います。モントリオールに行ったときの意見とパリに行った意見が違うというのは避けていきたいというふうに個人的には思っているわけでございます。
 さて、3枚目になりますが、そういうことを含めまして、やはり世界的にはかなり日本のアンチ・ドーピング活動、あるいは日本アンチ・ドーピング機構はいいところに来ていると思いますが、やはり国内的に見ますと、先ほど、齋藤先生がJADAの組織のあり方を考えるべきだと、財政面等々触れていただきましたけれども、やはり我々の課題としてそこをしっかりしていくべきだろうと思います。直近の課題では、公益財団法人化で、公益法人に行ったほうがいいのか一般財団法人に行ったほうがいいのか、我々としても判断がなかなかつきにくいこともございますので、これこそまさにスポーツ立国戦略の中で政府あるいは鈴木先生のほうからいろいろとアドバイスをいただきながら、国の方向性と違わないような選択肢をとりたいなと思っております。
 そのほか、そこに書いてございますけれども、法的、つまり国際的なスポーツ立国の視点から考えると、おそらく共通しているのは国同士の中の調和をどうとっていくかということですので、そういう意味では、例えば国際基準では検査員が企業の敷地に入ることはもう当然のこととなっておりますが、しかしながら、まだ日本の中では法的な背景がないので難しい。実際に守衛さんのところで断られるという例もあります。これは先ほど、人権という話がありましたけれども、一番割を食うのは選手ということになりますので、この辺も次の課題かなと思います。それから、現在、血液検査ということが常識になっているときに、いわゆる競技外検査のときの採血をだれができるのかといった問題についても、非常に課題になると思います。
 それから、未成年者の対応につきましては、法的な背景が何らかないと、国際基準だけで動くということではないと思いますので、この辺もスポーツ基本法等々のことに関係してくると思っております。
 それから、齋藤先生が触れられましたけれども、スポーツ仲裁制度、これはアンチ・ドーピングに限らず、競技スポーツについては特にですが、IOCと国際スポーツ仲裁裁判所の関係と、今のJOCと日本スポーツ仲裁裁判所の関係は必ずしも同じような枠組みではないと思いますし、WADAとJADAの関係と、それから、国際スポーツ仲裁裁判所と現在の日本スポーツ仲裁裁判所の関係も少し違っているように思います。そういったことも今後の課題かというふうに思っています。
 それから、調査権の問題が今、出てきていますが、これも日本の国内の、これまでのスポーツの、いわゆる常識ということからいえば、アンチ・ドーピングということで調査に入るということについては若干何らかの知恵が必要だろうと思います。これも何らかの位置づけをしないと、今後、世界基準に追いついていかないところだと思っております。
 最後になりますけれども、さらにこれから前に進んでいくためには、山口先生に話にもありましたが、いろいろなところでありましたけれども、2013年に予定されておりますアンチ・ドーピングの世界会議をぜひ日本に。シンボリックなことになると思います。ローザンヌで始まり、そしてコペンハーゲンで世界基準ができ、ということになっておりますので、ぜひこれを日本に。やはりこれは日本国政府のサポートがないとできないということは、もうWADAのほうも言っておりますので、ぜひ実現をする方向にご尽力いただければと思います。以上でございます。ありがとうございます。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 どうもありがとうございました。それでは、意見交換に移りたいと思います。

【鈴木副大臣】

 高橋先生、山口先生にお伺いします。まず、私は、マネジャーをちゃんと置くことはカギ中のカギだと思っているのですが、養成は大丈夫かということ。また、同時に、養成した人たちに対して、きちんと職として確保してあげなければいけないと思っているのですが、その点について。
 それから、私は、トップアスリートのセカンドキャリアとしてクラブマネジャー兼コーチのようなこともできるようにしていきたいと思っています。現役のときに、トップアスリートを目指す人たちには、少なくとも語学とクラブマネジメントのリテラシーを身につけていただく必要があるのではないか。自分が学ぶことによって、競技に集中していられるのはこれだけの人たちのサポートがあってやっているのだということの理解にもつながり、色々な意味で相乗効果があるのではないかと思っています。どなたでも結構ですので、ご意見をいただきたいと思います。
 それから、これもどなたでも結構ですが、最近、スポーツを全くやらない若者が増えていて、スポーツが大好きで一生懸命やろうと思っている私たちのような存在が次第にマイノリティーになってきつつあると感じることがあり、非常に危機感を持っています。必ずしもスポーツ好きでない人たちに対して、好きになってもらう、そういったパブリックからのサポートをどういった形で獲得していけばいいのか。
 私は、そのためにはスポーツクラブというものが非常に大事だと思っています。おそらくドイツの例もそういった積み重ねなのだと思いますが、この前のオリンピックの誘致でも4カ国中一番劣っていたのは市民からのサポートの声だったと思いますので、そうした好循環をどう作っていけばよいのかということが、スポーツ立国戦略のメーンシナリオだと考えています。その点についても、皆さんからご意見をいただければと思っております。

【高橋】  

 先に養成の件で、クラブのマネジメントの養成に関して言うと、既存の講習型の、集めてのマネジメント講習会では機能しないと私は思います。一部、サッカー協会が人員講座だとか、レベルの高いものをやっていますが、日本体育協会さんが基本的なことを教えるようなことではビジネスの世界では通用しないというのが私の実感です。
 そのため、できれば高いレベルでやっているスポーツクラブの人たちを個別にコンサルしていって、個別に引き上げていく。ビジネスができるクラブを全国に配置していくというほうが戦略的には早いのかなという気がします。
 実際、職ということを考えるときには、やはり会費を集めなければいけないので、会費は高く上げるのですが、社会的弱者に対する助成金というような仕組みが必要だと思います。子どもだとか高齢者に対しては無料であるが、来た人数を報告すれば助成金がもらえるみたいなことをすれば、モチベーションとしては多く集めますので、とにかく会費で自分の人件費を賄うというような仕組みをつくらせないと、ただ同然のものではまず職にはなりません。
 あとは、パブリックサポートということですが、私の研究事業から言わせていただくと、やはりホーム・アンド・アウェイ戦をすることだと思います。時間と経費削減のためにトーナメントでどこかに集まってやるのでは、やはり自分たちへの親近感がなくて、常に自分たちの近くで試合が行われるという状況をつくらせる。ということは、お金が実はかかるということで、お金をジェネレートするような仕組みを伴わないといけないということだと私は思っています。

【河野】  

 セカンドキャリアですが、JOCあるいはナショナルトレーニングセンターでも、そこのことについてはかなり危機意識がありまして、エリートスクールなどでもそういう学生、子どもたちにはプログラムを展開しています。
 1つ、我々が今、考えているのは、セカンドキャリアと言ってしまっているので、選手たちは、終わって考えればいいやと、こう考える傾向があるので、呼び名をスポーツキャリアとか、意識を転換する方向がいいのかなと思っておりまして、多分そうしないと、現在のように単一路線型の日本の教育制度ですと、複線型になかなか行きにくいので、その辺をちょっとお考え願えればと思います。
 現在、今年度展開していただくように、大学院プログラム等でも、少し言葉が適切ではありませんが、高校から大学をスキップして大学院に行けるようなシステムを展開していくことによって、先生が今ご指摘になったようなことについては、多分、少しキャッチアップできるのかと思います。ネーミングはちょっと重要かなと思っております。
 次に、子どもたちを含めてスポーツをしなくなるということについては、やはり日本の非常に特徴である学校体育、特に小学校児のところをどのように、先生がご指摘になった危機感をクリアするためにやったらいいか。特に、小学校のときに嫌いにさせないということが非常に重要で、これはもう釈迦に説法ということになりますが、ちょっといろいろなところで話が出ているように、小学校のときの嫌いにさせない体育のあり方を、教科指導も含めてどうしていくかということが、クラブということと両立させていく必要があるので、やはり何らかの知恵が必要になると思っています。以上です。

【勝田】  

 市民クラブの中に、トップアスリートのセカンドキャリアプランが組み込まれていくことは極めて重要な視点だと思います。この際、トップアスリートが、トップの場を退いた後に、ひとりのスポーツ市民にもどっていくことも大切です。また、クラブマネジャー兼コーチみたいな役割を果たすことも大切だと思います。
 トップアスリートの存在は、その発信力や国際的経験あるいは人的ネットワークなどから、クラブ全体の発展に大きな役割を果たす可能性があります。自身の競技経験だけではその役割を担うことはできませんが、語学も含め専門的な勉強を積めば、トップスリートであった者が、クラブ経営や広報、アスリート育成システム構築などにおいて中心的な役割を果たす存在となる可能性は極めて高いと思います。他のクラブや分野に対して、コンサルティングを行なえる人材となる可能性も考えられます。日本では、マネジメント、コーチング、あるいは情報・医・科学分野においてサポートという概念は定着化していますが、コンサルティングという言葉は多く聞かれません。そういった機能が必要となることは明らかです。
 話はそれますが、国際競技力向上の分野では、強化組織のコンサルティングを行なう会社や人材あるいはプログラムが生まれています。たとえば、バンクーバーオリンピックで惨敗したロシアは、ローザンヌに本部を置くコンサルティング社に惨敗の徹底的検証を委託したという報告があります。(Sport Business.2010.4.9) 2016年の夏季オリンピックの開催国に決まったブラジルあるいはサウジアラビアのオリンピック委員会も海外のコンサルティング社と契約しているようです。競技団体あるいは組織が、総合的な強化活動のプランニングや評価を、外部のコンサルティング組織に委託することは、今日、珍しいことではありません。
 組織の強化や育成活動は、明らかな経営活動です。トップレベルの活動に深く関わった者が、その経験やネットワークを活かして強化や育成のコンサルタントとして活躍できるようなキャリアプログラムの開発は今日的な課題と考えます。

【久野】

 そういう健康づくりの現場とスポーツの関係でいきますと、データ的には、望ましい身体活動量について望ましい量を国民がどれぐらい行っているかというと、約30%にすぎないというデータが示されています。我々が地域で調査をかけたところ、高齢者は、スポーツが好きである層とそうでない層に二極化されていて、そうではない層で、一番行きたくない場所が体育館、運動場というのがはっきり出ています。
 ですので、総合型に、トップアスリートが来たから、地域の多くの人がスポーツや健康づくりを開始するかというと、そんなに簡単ではない実情があります。また、私がこれまで多数の首長さんたちとのおつき合いの中で、地域における運動による健康づくりの政策が教育委員会系と健康系とに分かれていて、成果が出にくい現状があります。運動、スポーツは、同じもののはずなのに、そこの施策が分かれています。厚労省系と文科省系の施策が地域でばらばらに行われている実態があって、そこの解決は単に総合型スポーツクラブのマネジャーだけで解決できないわけです。

【鈴木副大臣】  

 そのためには、加えてどういったことをしていけばよいとお考えでしょうか。
 縦割りの議論というのは、今まではあったと思います。ですが、私は本日、調和SHC倶楽部に現地調査に行ったのですが、スポーツとヘルスにカルチャーを足したのは地元のリーダーシップなんですよね。私は県庁の課長の経験があるのですが、横ぐしを通すというのは、まさに地方自治体の首長の責任であると。例えば首長部局にスポーツ施策は全部渡し、課が違うぐらいのことは束ねるであるとか、あるいは、これからは地域主権の下、ひもつき補助金をやめていこうという方向性であるとか、そのあたりは民主党政権になるとかなり弾力化するという前提で、加えてどういうことをしたらいいのかというところを教えていただきたい。

【久野】  

 副大臣がおっしゃるポイントは非常に重要で、首長が束ねて欲しいわけです。しかしながら、国からの予算がそうなっていないこともそれの阻害要因となっています。さらに、実際に地域でこの施策にかかわる専門職同士が理解し合っていないという課題もあります。いわゆる保健系で言えば、保健師、管理栄養士という、いわゆる医療系のバックグラウンドが強い人たちがいます。それに対してスポーツ、運動系の専門職がいます。医療系の専門職はスポーツの教育を基本的に受けていないことが問題です。そのためにスポーツに対して不理解が非常にあると思われます。その方々とお話をしていると、スポーツ系の指導者に対して、医療系の知識のなさに関する危機感を持っています。それゆえ、指導者層が非常に学問体系で縦割り化した現状がある中で、横ぐしの刺し方の具体化が重要になります。
 ですから、そういう面では、総合的な指導者育成という視点が非常に重要で、名称独占的な保健師の教育内容というところから実は検討していかないと、今、副大臣がおっしゃる問題は地域では解決していかないと思います。

【鈴木副大臣】  

 おっしゃるとおりで、そうした人材育成を現在きちんとやれているのは、本当にごく一部の、医療系とスポーツをあわせて持つようなところなのでしょうけれども。

【久野】  

 例えば、ちょっと手前みそですが、先ほど我々の例できちんと成果を出せたというのは、実は人材育成を、筑波大学に来ていただいて、運動に関する内容に加えて、MBA的な要素も含めて、総合的な人材育成をしてから地域に戻って事業を進めると、やはり結果が出るので、総合的な指導者育成という視点が非常にポイントになります。ただ、これを全国規模でどこがやるのかというと、実は現状では見えていません。
 いろいろ研修会を各県単位とかでやっていると言いますが、カリキュラムを見ると非常に偏っていて、総合的な視点が弱いと思います。そこで私は、大学が地域にこれだけあるわけですから、システマティックに材育成という点で大学がかかわる役割というものがあるのではないかと思っています。

【齋藤】  

 2つご提言したいのですが、やはりクラブと国の間に、スポーツの競技団体とか、スポーツのNFみたいなものに対してもっとしっかりと助成をして、一緒にもっと生涯スポーツの振興のようなものがよりできるようなところがないと、国と地域の関係だけではやはり無理ではないかと思います。そこでもう一つ、NGO的な大きな団体に対する支援というか、そういうものがちょっと弱いのではないかと思います。すぐ地域に行ってしまうのは弱いのではないかと思います。
 もう一つは、やはりスポーツをやったら生活していけるとか、そういうモデルをもっとつくっていくような、少し変な言い方をすると、学校教育制度よりも塾に行ったほうが勉強ができるというようなことになってしまうのと同じで、ほんとうにそこで頑張れば、仕事や地位や名誉がついてくるというような経済的なシステムみたいなものに結びついた活動というものを構築しないと、やってもしようがないと思われてしまうようなこともあるのではないかと思います。

【山口】  

 2点についてコメントしたいと思います。1つは、地域スポーツクラブのクラブマネジャーの養成とビジョンはどうかということです。今日の発表で1つ強調しましたのは、広域スポーツセンターの機能をまずしっかりすること。今年から文科省事業に広域スポーツセンターの助成が入っていますけれども、そこにしっかりした専門職をつけると。これがまず最初ではないかと思っています。私はスポーツ振興くじの審査委員もしていますけれども、いわゆる広域スポーツセンターの人件費はtotoで出してもいいんじゃないかと思っていますけれども、まずそれが1点です。
 もう一つは、実際のクラブのマネジャーですが、これはなかなか専門職として確立されていません。スポーツ振興くじ助成でクラブマネジャーの給与が出せるようになっています。さらに、サブマネジャーの給与も出せるということで、今、そういうシステムができています。この助成はかつて3年でしたけれども、今、5年に伸びていますが、5年もらって、その後がもう一つポイントになってきます。ここで給与がなくなったときに、なかなか事業、会費だけではやっていけないと、こういうところがあるわけです。委員会でも議論があり、ずっと出したほうがいいのではないかという議論もありましたけれども、そうすると自立できないということもありまして、これからはやはり市町村がしっかりそういったクラブをサポートしていくことが重要かと考えます。
 例えば、もう既にかなりしっかりしたNPOを持っているところが指定管理者になって入ると、これはものすごく大きな財源です。もう一つ、指定管理者でなくても、事業委託という、今まで市町村が独自にやってきたものを、いろいろな教室とが事業をそちらのほうに持っていくということで、人件費が出るような仕組みをするというようなこと。あるいは、市町体協をもう少し法人化して、総合型のマネジャーを雇っている静岡県で幾つか知っていますけれども、こういったところもありますので、市町村の役割が大事になってくると思っています。
 もう1点の、非実施者が増えているのではないかということです。これは、運動嫌いの研究もしたことがあるのですが、大体特徴はわかっていまして、まず、運動・スポーツが苦手で自信がなく、成功体験がなくて、運動しても効果がないと、こう信じている人が大体15%か20%ぐらいはいるわけです。これは日本だけではなくて、今、世界の、スポーツ・フォー・オールのターゲット・グループが、非実施者になっています。やっている人はクラブとかでやっていますので、ほうっておいても大丈夫だと。非実施者をいかに行動変容させるかということの課題があります。例えば、プログラムでも子どもの肥満という場合には、ペアレンタルオベシティー(親子肥満)が多いわけですから、お母さんと子どもの一緒のプログラムが必要です。また、職場で5人1組になって、これはフィンランドですが、1日30分ちゃんと運動したり、歩いたりしているかどうか、リーダーがチェックして、同じような職場のグループと対戦しています。仲間がサポートしてくれることが非実施者になにより重要なことが研究によって実証されています。まず非実施者をしっかりターゲット・グループとするということが大事だと思います。
 それから、河野さんが言われましたけれども、子どものときの経験というのはすごく大事です。苦手な経験というのは、もうほとんど子どものときで、運動嫌いの人の原因を追求していくと、マラソン大会の練習があって「だれだれ君、一周走ってきなさい」と言われた。で、ぐるっと走ってきたと。で、帰ってきて、そのときの指導者に何と言われたかと。「今のは悪いランニングフォームの見本です」と言われたと。こういうことで、もう、がくっときてしまって、ずっと運動嫌いということで、やはり運動好き、スポーツ好きの子どもを育てるという、こういう指導者の発想というのはすごく大事になってくると思います。
 もう一つ、子どものことで言えば、今、子どものプログラムはほとんど大人によってつくられて、子どもが参加するプログラムになっています。これからはもう少し子どもが中心になって、子どもがリーダーになっていくようなプログラム、ジュニアスポーツリーダーという事業をイングランドとニュージーランドがやっています。14歳以上と15歳以上です。今年神戸市でジュニアスポーツリーダー養成事業を市体協と一緒になってやる計画で、中学2年生を対象にしてやるつもりです。子どものリーダーを育て、ヒーローを育てていくと。こういうことがやはり、全部大人がつくってあげるのではなくて、彼らのリーダーシップを育てるということも重要になってくるのではないかと思います。
 以上です。

【鈴木副大臣】  

 広域スポーツセンターはどれぐらいで1つという意味ですか。

【山口】  

 自治体によって違いますけれども、大体1つ。あるいは2つ、3つとか。

【鈴木副大臣】  

 県で、ですか。

【山口】  

 県の中で、持っているところもあります。ただし、大体1つですね。

【黒須】  

 そうですね。

【鈴木副大臣】  

 望ましいと考えられる数は。

【山口】  

 広域センターですか。それはやはり地域によって違いますし、兵庫県なんかものすごく広いですから、できれば二、三あったほうがいいと思いますが、そこにほんとうにしっかりいろいろクラブのアドバイスできる人がいないといけません。しっかりした人をまず配置していって、徐々に2つ、3つ、広げていくと。こういうことが大事かと思います。

【鈴木副大臣】  

 各県に広域スポーツセンターが2つ、3つできるとしますね。それで、齋藤先生がおっしゃったように、国と現場の間にNPOが入るべきであると。おっしゃるとおりだと思います。それは、今はある意味では日本体育協会ですよね。ですが、今、まさに自律型の総合型スポーツクラブ、その上に広域スポーツセンターがあり、さらに国政との間を埋めるものといったときに、別に新しい広域スポーツセンターネットワークのようなものをつくるということもあり得ると思います。そこの組織論というものを、どのように考えればよいのかということが一つ。
 もう一つは、お金の話に絡みますが、2010年という年は、これからの総合型スポーツクラブにとって非常に大事な年だと思っています。というのは、今年から、1,000万円以上の所得の世帯だけに限っても2,000億円の子ども手当が出ます。鳩山政権は、日本人にかけてみたいと思って、あえて所得制限をつけませんでした。この人たちが引き続き、自分の子どもの塾代だけにお金をかける日本人なのか、それとも、自分の子どものみならず、その地域の子どもたちが元気に遊ぶスポーツや野外教育といった、あるいは文化ももちろんあってよいと思いますが、そういうスポーティングな地域ベースの活動に対して、もらったものを寄附しようとする日本人なのか。しかも、今回、鳩山政権は税額控除もやります。はっきり申し上げて、必要条件は整いました。後は、この二、三年で、まさにその2,000億円をどれだけスポーツに集めてこられるか。例えば、スポーツ振興基金とか、子どもゆめ基金とか、ナショナルでそういうものを集めていく方法もあるかもしれません。それから、例えば企業でも、新しいベルマークではありませんけれども、清涼飲料水だとか、鉛筆だとか、子どもが絶対買うものの売上の何%かを、スポーツや野外活動などに寄附してもらう方法もあるかもしれません。残念ながら国の税金投入ベースで、スポーツ予算が3年以内に倍増することはありません。ですが、2,000億のうち1割を寄附していただければ200億です。ですから、やりようによっては、現在のスポーツ予算に匹敵する額も決して不可能ではない。そこにどうやってスポーツコミュニティの力を結集して、そのシナリオで持っていくかということを、今年の第1クオーター、第2クオーターで皆さんと一緒にやっていきたい。

【齋藤】  

 NPO法人の税制については、やはり認定特定非営利活動法人の認定を積極的に考える必要があるかと思います。
 スポーツに特化した、ほんとうに中核的なNPO等は税制改正等を含めて、もっとサポートしていけるような、そこにお金が集まっていきやすいような流れをつくれば、そこからお金がはけていくと思います。公益法人改革のほうもそうですが、今までの特定公益増進法人から公益法人に変わりましたが、すべてのスポーツのNFは公益法人のほうに行くように、減税が受けられるようにサポートして、お金がそこに企業からも寄附や何か、いろいろな意味で集まりやすいような、そういう流れをつくらないといけないのではないかと思います。

【鈴木副大臣】  

 逆に言うと、そういうところは指定法人になって、指定法人への寄附は税制特例がありますから、そういう受け皿をナショナルに1つや2つ持ってもいいなと思います。そうすると、そこに寄附をして、そこから戻すといったようなことも仕組んでいけます。
 ですから、いろいろな意味で今年はチャンスです。このスポーツ立国戦略と子ども手当と税制改正と新しい公共の文脈の中で、このメニューをこれから2カ月ぐらいでどう具体化していくのか。それを、今申し上げたようなことにどれだけ盛り込むのかというステージになっているということはご理解をいただいて、そしてまた、いろいろとご提案をいただければ大変ありがたいと思います。

【高橋】  

 1点だけ、モアピープルですが、我々は身体を動かすことを体育と思っていましたがですけど、審判に日の目を当てるというのが実は大事なんじゃないかというので今回の報告書を上げさせていただきました。学校教育の中で、学習指導要領が新しくなって、まだ先は遠いですが、審判教育、ルール教育ということが品格にもつながるし、審判は実は国際競技に出ていくと、日本人が笛を吹くということは実は勝つためには大事です。けれども、今の審判の調査をすると、なかなか企業でも有給をもらえなかったりとか、教員をしていてものけものにされて、審判活動ができないというのが現状です。そういう意味では、審判に日の目を当てるというのもやっていただくと、強化とモアピープルにつながると思います。

【鈴木副大臣】  

 なるほど。それはすごくよく分かります。あと、メディカルとか、レフリーといった、プレーヤー以外の。

【高橋】  

 プレーヤー以外は大会役員にとどめておかずに政策の俎上に乗せるほうがいいと思います。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 貴重なご意見をたくさんいただきましてありがとうございました。今日はここまでにしたいと思いますが、また、副大臣が申し上げましたとおり、いろいろな機会にご意見をちょうだいしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【鈴木副大臣】  

 よろしくお願いします。

 

── 了 ──

 

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-- 登録:平成22年07月 --