「スポーツ立国戦略」の策定に向けたヒアリング(第1回) 議事録

平成22年3月10日

【高井大臣政務官】  

 大変お待たせいたしました。ただ今から第1回目の「スポーツ立国戦略」策定に向けたヒアリングを開催させていただきます。開催に当たりまして、鈴木文部科学副大臣から一言ごあいさつ申し上げます。

【鈴木副大臣】 

  本日はお忙しい所、ありがとうございました。
 今日からスポーツ立国戦略の調査のためのヒアリングを開始したいと思っております。本日は第1回目でございます。課題は、バンクーバー・オリンピックも終わった所でありますが、やはりスポーツの意義というものをもう1回きちんと再定義して、これを文部科学省としては最大限盛り上げていきたいということです。
 具体的にはスポーツ基本法の議論を、私も入り超党派で進めてきましたが、政権が変わったこともありますので、50年前にスポーツ基本法というのものが策定されているのですが、改めて文部科学省として50年ぶりにスポーツ政策の基本となる法律のあり方をもう1回考え、再構築していきたい、できればスポーツ基本法の提出の準備に入っていきたい。そのキックオフが今日です。今まではスポーツ振興法だったわけですが、もちろん振興は大事ですが、振興のみならず、スポーツ基本法という議論の中で、何を大事にしていくかということがあります。
 それで、例えばドーピングやスポーツ仲裁、あるいはその根っこにあるスポーツ権、スポーツする権利、見る権利、スポーツを支える、そうした法律的なことのベースになる考え方をどう整理していくかということをスポーツ基本法の中で議論していきます。今日はそれを意識はしていただきますが、どういうふうにスポーツの盛り上がりをつくっていくかという中で、今まではトップアスリート、トップスポーツと地域スポーツは二律背反になっていて、自民党はトップアスリートで、民主党は地域スポーツみたいなレッテルを勝手に貼られていましたが、実は今年の平成22年度予算は、競技スポーツ予算が20%増になっており、二項対立は非常に不毛で、これは要するにトッポスポーツと地域スポーツが好循環になっていくことが大事であろうと考えます。
 今日の皆様方はまさに日本を代表するトップアスリートですので、その方が引退後、本当に地域、あるいはスポーツコミュニティをご自身でつくり上げられ、皆さんのような方々がリードされるので、ものすごく色々な人たちの求心力が高まり、今までの単なるスポーツクラブとは少しフェーズの違う、大きなうねりになり、結果としてそのスポーツ、あるいはその地域のスポーツというのもが大変活性化、活気づいているとすそ野も広がります。それから特に若い人たちが、トップアスリートと非常に近く触れ合うことにより、スポーツを生涯の仕事ととして目指すということもあると思います。しかし、今、日本では素質のある人でも、最後にそれをためらってしまう所が、おそらく韓国なんかと少し違うと思います。その人たちが、セカンドキャリアも含めて、スポーツキャリア全体が非常に充実した、そういうキャリアだとわかれば、若い人たちが思い切って、まさにスポーツを生涯のライフワークとしてという所に踏み込めるだろう。そうすると、若手の優秀な人材にスポーツで思いきり頑張ってもらおうと。もちろんそれを言い、その教育強化、指導強化をしていくことは当然ですが、素質のある、やる気のある若者を多く集めない限り、どれだけいいコーチングをしてもだめですから、それはやはり両方だと思います。そうすると今度、トップアスリートの国際的なレベルでも活躍していく。それで、活躍した人たちがまたその地域のコミュニティのリーダーになる、オーガナイザーになるという循環をつくっていけないだろうかという一つの仮説があります。
 それは一つの仮説でありますので、今日はお三方から色々なお知恵をいただきたい。でき得れば、今、2019年のラグビー・ワールドカップは決まっています。それから、2018年または2022年のサッカー・ワールドカップ招致活動中でありまして、いずれにしても2010年から2020年の10年間、あの10年間で日本で非常に充実したスポーツクラブが全国各地にできて、そのことによっていい循環ができて、あの時から本当に市民、トップ、サポーターが一体となったスポーツの国、日本になったと将来言われるような10年間にまずはしていきたいと、そんな思いを持っております。今日はそういう観点から、または、他にも様々な課題があるかと思いますが、こういう論点もあるんじゃないか、こういう論点もあるんじゃないかと。例えば体育とスポーツの関係とか、あまり私が枠をはめるつもりはありませんが、そんなご議論をそれぞれいただければ大変ありがたいと思います。
 少々長くなりましたが、第1回ですので、この調査会といいますか、タスクフォースの位置づけも含めて、皆さん方にお話をあえてさせていただきました。
  どうぞよろしくお願いいたします。

【高井大臣政務官】  

 ありがとうございました。早速皆様方からのご意見をお聞きしたいと思います。まず、朝原宣治様からお願いします。

【朝原】  

 大阪ガスの朝原と申します。よろしくお願いいたします。
 第1回目の、本当に1回目ということで恐縮しております。法のことは詳しくないので全然分からないのですが、私の経験と実際に活動している範疇で、スポーツの振興に携わることをお話しさせていただきたいと思います。
 以前、教育再生懇談会でもお話しさせていただきましたが、やはり一番理想の形は、政府がイニシアティブをとり、自治体、企業、学校、後は各セクターのネットワークを構築して、地域全体でスポーツを支えていくのが一番きれいな、いい形というのが私の発表させていただいたことです。今回、トップレベルスポーツクラブと地域スポーツとの融合ということで、私が今やらせていただいている「NOBYトラック&フィールドクラブ」というのが4月から本格開始しますが、そのスポーツクラブから世界で活躍するトップアスリートが出るのが一番理想ではあります。そこで一貫指導するのが理想ですが、中々それも競技によって、陸上競技は一貫指導がいいのかどうかというのも、少し疑問があります。
 というのは、私は小学校の時はスポーツは色々なことをしており、中学に入りハンドボールをやりました。高校から陸上競技を始めています。小学校から陸上競技に特化してずっとやっていた選手が、オリンピック選手になったかというと、そういう例はどちらかというと少ない方です。例えば卓球であったり、テニスであったり、競技によってはものすごく集中して、球勘といいますか、そういうものを養わなければいけない。もしくはシンクロ競技のように、子供の頃から逆さになって回る感覚を得ないと、大きくなって身につかない競技というのはずっと一貫指導でやっていく必要があるのではないかと思います。
 私のトラッククラブというのは、そうしたことを踏まえて、小学生の部門、中学生の部門、高校生の部門と、一応つながってはいるのですが、小学校でむやみやたらと走り方を刷り込んで、こうじゃないといけないということでやらせるよりは、もっと、体の使い方であったり、子供たちのコミュニケーションをそこでとってもらって、コミュニケーション能力を上げてもらったり、もう少し人として基本的なことを学んでいってほしい、生きる力を養ってほしいというのが私のクラブの方針です。もちろんそこから、小学校、中学になって陸上競技を続ける子供たちには陸上競技を続けて指導していきますし、高校生になり、もっとレベルが上がれば、それこそオリンピックを目指してやってもらうために本格的、専門的な指導をやっていくつもりです。
 これまで色々な陸上競技クラブが全国にありましたが、特徴としては、大阪ガスという母体があり、大阪ガスの会社のグラウンドを有効に利用しているということと、全面的にバックアップしながら、地域の子供たちを育てていきましょうということでやらせてもらっている点と、後はトップアスリート、関西中心なんですが、現役アスリートもそうですし、現役を終わったトップアスリートがかかわって、専門的な知識を子供たちに伝えるという所は、これまでになかった特徴ではないかと思っております。従って、政府がイニシアティブをとってやっていただくのが理想なのですが、まずはできる所から、企業だったら企業、自治体だったら自治体がまず工夫をしながら、色々な所とネットワークして、人を集めて子供たちを育成するというのが非常に重要なことだと思います。
 それから、普及とトップ、すそ野を広げるということと、トップ選手を育てるということは並行して行うべきだと思いますが、もう一つ、少し混同されることは、最近よく言われる体力低下、運動があまり行われていない所が問題となっていると思いますが、それを地域スポーツで補う、それは分けて考えないといけないのではないか。体を動かしていこう、スポーツを楽しもうという子供たちと、後は本当にスポーツをやっていくという子供たちですね。だからそちらの普及と、楽しむ――生涯スポーツと子供の時から使うかどうかわかりませんが、生涯スポーツをやる子供たちを、しっかりすみ分けをしてやっていくことが重要ではないかと思います。
 もう一つは、そういうクラブなり総合型地域スポーツクラブですか、私は陸上ですが、それをあらゆるスポーツ、競技でやっていくのが重要なのですが、これまでは単体で、陸上なら陸上、野球なら野球、サッカーではサッカーというふうにやってきたと思います。それらの競技者の横のつながりを、競技団体もそうだと思いますが、もっと密にして、みんなが協力し合いながら活動していく方が効率がいいと思いますし、いいものができ上がるのではないかと。
 私の活動としてやらせてもらっているのが、このトラッククラブと、もう一つ、「アスリートネットワーク」ということで、これまでになかった、自主的に選手が集まり――選手というのは多種目、多競技です。多競技の選手が集まって、社会に向かって何か発信することはないかということで、では、何を一番初めに、一番に掲げてやるかというと、やはり子供の育成、子供たちにまず夢を持ってもらったり、頑張る力をそこで持ってもらったり、そういう活動をしていこうということで、選手、トップアスリートの立場としてもそういうつながりを持って活動させていただいております。
 2つ目に、国際競技力向上のための振興策ということで、一番私が思うのは、これも競技によりますが、一番選手が伸びしろのある時期、20歳から、若ければ若いほどいいんですが、気持ちがしっかりしてきて、自分でしっかり目標を立てて、こういう選手になりたいと。そういう人間としてもしっかりなった19、20歳位から、体力が一番熟成される25歳位の頃を、やはり途切れないように強化してもらうのが、競技者、陸上だけかもしれませんが、それは特に思います。ちょうど今陸上競技で困っているのは、大学を卒業するときは22歳です。その頃は一番大事な時で、一番飛び抜けるか、失敗するか分からないのですが、その時に支援が途切れてしまうのは選手にとっては一番つらいことで、企業も最近は不景気の問題もあり、中々支援してもらえる所がなかったり、その辺を継続してサポートしてもらえる方策も考えていただけるとうれしいです。
 セカンドキャリアの問題もずっと昔から言われている問題だと思いますが、例えば野球やサッカーのような、ものすごく市場が大きいスポーツというのは何かしらセカンドキャリア、それでも厳しいと思いますが、まだアマチュアスポーツに比べてましなんです。我々のような陸上競技や、それよりも厳しい競技団体では、そういう所の支援というものも必要だと思います。セカンドキャリアに絡む所で、やはり選手みずからがもっと学ばないといけないし、色々な知識を得て、それで社会に出てもしっかり生きていけるという意識をまず持ってもらわないといけないということと、後はそういう勉強をする、学ぶ場を与えないと、中々この問題は解決していかないと思います。
 後は、学校スポーツ環境の改善です。NOBYトラック&フィールドクラブも、学校の部活動に陸上競技クラブがなく、それでNOBYトラック&フィールドクラブに来ている子供たちもいますので、やはり地域のスポーツクラブと部活動との間で、これこそ本当の話し合いをして、部活動の指導者がもしいらっしゃらなかったら問題ないですが、いらっしゃってもあまり活動していない所とはうまくコミュニケーションをとり、子供たちに一番いい方法を考えながら部活動の支援をしていくのも大事なことだと思います。後は施設の共同利用ということで、もっと企業の施設などを有効活用できる所もたくさんあるのではないかと思います。
 最後にまとめとして、能力の取りこぼしがなく、かつ未来に希望を持って、こういう選手になりたいというあこがれを持って、燃え尽きるのではなくて、そういう強化ができるのが一番いい選手の強化策だと思います。先ほど副大臣がおっしゃられたように、トップを目指して夢破れた選手たちにも、セーフティーネットというか、一つの道筋というか、何かがあるように、前もって選手たちに教育を行い、そういう受け皿がなければ、トップを本当に目指して、安心して競技に専念していけないと思います。
 やはり教育は大変大事だというのは、社会に出てつぶしのきく人材を子供の頃からつくる。今、日本のスポーツは、この競技さえやって強くなればいいという流れがありますが、そうではなくて、社会に出てからしっかりと生きていく力を、子供の頃からしっかり教育していく必要があると思います。
 私は企業スポーツ人の代表として、選手が終わった後、企業でこのように色々と活動させてもらっているのは、本当に企業のPRのみではなくて、企業の経営戦略に当てはまるように選手をうまく活用してくださる会社の人たちがいるというのが非常に大きいです。選手だけで色々行動を起こすのは中々難しいですが、企業なら企業内で、しっかりその選手、現役時代や、現役が終わった後にサポートしてくれる人材が企業それぞれにいれば、もっとスポーツ選手のセカンドキャリアの問題の解決にもつながっていくと思います。
 以上で私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

【高井大臣政務官】

 ありがとうございました。では、平尾誠二様、お願いします。

【平尾】

 今日はお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 私は、自分の立場ももちろんあるんですが、スポーツの話ということで、スポーツ立国戦略ということを、これからどういう形で立ち上げていかれるかということで、大変興味深いわけですが、私自身のスポーツの問題はこうじゃないかという話を今日はさせていただいて、問題提起ということで受けとめていただければいかがかなと思っております。
 先ほど、副大臣からもラグビーのワールドカップが2019年に開催、これはもう決まっておりますということと、今サッカーがーワールドカップ招致活動を非常に熱心にやっておられるということで、どちらか、18年、22年で日本に来れば大変これも喜ばしい話だと思います。その前に、東京オリンピック招致も非常に熱を込めてやっておられたわけでして、評価は非常に高かったということですが、中々国民的な賛同が他の国に比べて十分ではなかった、という話もあったと聞いております。
 私自身が今、感じるのは、スポーツは本当に役に立つのかという根本的な議論も本当はしていかなければいけない。実は役に立つと私は思います。本当のスポーツの「コアバリュー」は何なのかという、この議論が実は十分にされていないのが僕は現状ではないかと思っています。各スポーツ競技団体においても、そこら辺が十分なるコンセンサスが得られていないというのが、今一つ、この国を挙げての、一つ政策として立ち上げていく上で大変重要なコンセンサスを得なければいけない所ではないかなと僕は感じまして、今日はその話を中心にさせていただきたいと思っております。
 これはそれぞれの認識というか、スポーツのとらえ方があり、スポーツというのはいろんな意味で、例えば経済効果とよく話が出ます。サッカーのワールドカップではこれだけの経済効果があると。ラグビーもしかりです。東京オリンピックも、経済効果と言われている。確かにそれはそれで非常に数値化しやすいというか、わかりやすい数値として、わかりやすいのですが、実はスポーツのコアバリューというのはそうではないと思っております。もっと人間の中に蓄積されていくものです。
 これは古めかしい言い方かもしれませんが、教育的価値の高いものがあると思っており、僕自身が今、「SCIX」という、これはスポーツNPOですが、ここで例えば子供たちにラグビーをする機会を与えるという環境をつくってやっております。目的はスポーツを体験してもらいたいということなのですが、僕はスポーツのコアバリューの、特に教育的価値の高い所は、やればできるということを実感できることだと思います。本人の努力次第とは思いますが、目的を持って、目標を持って、そのことに自分が主体的に取り組んだ時に、その目標が達成されるときの達成感とか、爽快感、こういう体験は、必ず次へつながっていくものだと思います。そういうものをまた体験したい、もう一度その感覚を体験したいというのはやはり人間の心理だと思いますので、そういう経験、きっかけとか機会、もしくは気づきかもしれません。こういうものを経験させることが、大変僕はスポーツにとって価値の高いものではないかと思います。それを主体的に、自主的に自ら取り組む、多分これがいいと思います。
 ところが日本のスポーツは、少し古めかしい指導法になると、強制的にというのがあり、外発的にやらせることによって、それが今は時代に合わないものになっていますが、主体的にそのことのおもしろさを自覚させ、自ら取り組む、そういう成功体験を得ることは、無限の可能性を蓄積させることではないかと思います。そういうものを体験させることがスポーツの、本当のコアバリューではないかと、これは私の完全な私見ですが、そういうふうに思っております。そういう環境をこれから整備していくことが大変重要なことではないかという気がします。
 先ほど朝原さんも述べましたセカンドキャリアということで、例えば先ほど副大臣からプロとアマチュアという話もあり、一流のプロにならなかったら、後はだめなのかということも、僕は一切ないと思います。本当のスポーツのコアバリューを体験することが無限の可能性という話をさせてもらいましたが、スポーツの持つバリューとしてあるのが、例えばスポーツの中で使われる言葉というのは、僕はラグビーですが、ゲームマネジメントとか、コミュニケーション、コラボレーションもあります。それからリーダーシップ、ゲームコントロール、こんな色んな言葉がありますが、実は社会に出ても非常につながる用語です。そういうものがしっかりできないといいゲームはできないのです。
 これは多分、古田さんも実感されていることだと思います。人との関係性において、そういうものをしっかりと認識、もしくはそういうものを自らが自覚できないと、うまく競技として成立していかない。これはポータブルスキルだと思います。そのポータブルスキルがスポーツだけで終わってしまっているのが、今、スポーツの問題だと思います。そういうものを汎用性のある普遍的なものに仕立てていく努力をスポーツサイドもしていかなければいけないと思います。
 プロになれなかったといっても、そういうものをしっかりとしたスキルとして認知すること、もし認識していれば、それはどの世界に行っても、100%とは言えませんが、ある程度活用できるものばかりだと思います。そういうものをしっかりとスポーツサイドも認識して、それをセカンドキャリアにうまく役立てていく視点が必要ではないかという気がします。もちろん政府の政策の中でそういうサポートをしていくのはこれから必要だと思いますが、そちらにまかせっきりではなくて、プレーヤー側にもそういう認識を持って、もしくはスポーツ競技団体側もそういう認識を持った育成というものをこれからしていかないと、中々スポーツそのものが、僕は先ほどのスポーツ立国は大変いいことだと思いますが、なり得ないのではないかと。それは双方の努力が必要であるという気がします。
 したがって、どちらかというと僕は話が少し抽象的になってしまいがちですが、そのコアバリューを少し見直し、それがコンセンサスをとれるかどうかというのが、これからのスポーツの発展につながっていくことではないか、それが一つの軸となって進んでいくべきではないかという気がします。
 以上です。

【高井大臣政務官】

 ありがとうございました。
 では、最後に古田敦也さん、よろしくお願いします。

【古田】

 よろしくお願いします。文部科学省の皆さんとお話しする機会はないので、野球の現状を説明するより、意見表明させていただきますので、よろしくお願いします。
 僕は単純にスポーツ庁をつくったらいいと思います。スポーツ省までは言いませんけれども。なぜかといいますと、今までスポーツの価値を、その中にはスポーツの価値を再認識する、もちろんそういうこともありますし、行政の力というのはどうしても伝わりやすくなりますから。申しわけないですが、文部科学省の一部分、もしくは下部組織の隅っこの方の扱いにされている間は、中々これが大きくならない。現場レベルで非常に一生懸命やられている方たちもたくさんいらっしゃいますが、やはり何とか格上げするために、庁とか省になれば、価値というものがぐっと上がりますから、みんなに気持ちが伝わりますし、スポーツをやるのは非常に大切だという気持ちになりますので、もちろんそういうのは当たり前だと思います。
 朝原さんもいらっしゃいますが、オリンピックで彼らがリレーで銅メダルをとったときの感動であったり、この前だったら浅田真央ちゃんが滑るとき、視聴率で言うと40数%という、この力は何にもかえがたい、非常に大切なことです。日本人が今一番忘れているのは、そういうエネルギーといいますか、70年代、80年代にあったあの頃のエネルギーというのが日本人に欠けているわけであり、そういう大人が増えて、子供も何となく明るい未来が見えないような、僕も子供たちに色々会っていますが、そういう子供が増えているという気はします。
 でも、ああいうものを見て、みんなは心を震わすわけですから、非常にスポーツの価値を上げるという意味では、スポーツの位置づけを文部科学省外に出て、中でもいいのですが、スポーツ庁になっていただき、そこを目指してもらうというのが一番早いかと思います。
 もう一つですが、行政の力ということもありますが、先日、パラリンピックの選手が北区のセンターを使えなかったという問題がありました。僕も聞いた話ですが、厚労省の管轄だから使えないという話になったということで、最終的には使えるようになった。
 ただ、正直言って、僕は東京オリンピック・パラリンピックの招致大使をやっていましが、東京オリンピックは東京オリンピックではなくて、東京オリンピック・パラリンピックと名前に両方打って、それで招致するというのが東京の売りでしたから、もちろん文部科学省の皆さんはご存じだと思います。そういうことをやっておきながら使えないというのは非常に恥ずかしい話だと思います。行政的には向こうの担当かもしれないですが、逆に言えば文科省から動いて、何とか使えるようにこっちがやるという形をなされた方もいらっしゃるかもしれません。ただ、ご本人は最後に念押しされて、あなたは特別だよと言われたらしいのです。それが一番悲しかったとおっしゃっている。行政的には非常に扱いがよくないのではないかと。
 先ほどからいろいろ出ていますが、地域に根差して学校単位でスポーツをするのか、地域が主体となってスポーツをするのかということもこれから議論になっていくと思いますし、子供たちにとってみれば、適性を見るという意味では色々なスポーツをやった方がいいと思います。日本の場合、部活に入ると、学校の部活は中々やめられないという現状がありますから、色々なスポーツにチャレンジして適性を見るというのは非常に大切なことで、そのコミュニティ全体で、ここにも子供を見る、育てる、支えるみたいな言葉がありますが、そのためにもそれが必要なので、やはりそこには人やお金が回らないといけないし、そういう意味でも何とか格上げしてもらうように皆さんに頑張っていただきたいというのが本音です。
 セカンドキャリアの話が出たので、野球選手も非常にセカンドキャリアは苦労しております。ご存じのとおり、野球解説者という位置で残っている選手は本当に一部ですし、一部というのは、野球中継自体がなくなってきたので、解説者自体がいなくなってきたというのが現状ですが、色々な仕事をします。
 それはもちろん我々はプロなので、1年契約で飛び込んだ世界ですから、基本的には承知して、やめる時になってぐだぐだ言うという者もたまにいますけれども、そこは承知して入っている、飛び込んでいる世界ですが、僕は単純にいい技術であったり、トップレベルで学んできたことはたくさんあるのに、それを生かせないという現状はやはり、問題といいますか、もったいない。高い技術を持った人たちが何もできないということで。ただ、現状としては、果たしてそれを生かせる機会がないからしようがないと言ったらそうなので、そこには雇用が生まれなければいけないと思うので、これは荒唐無稽かもしれませんが、例えばスポーツを支援しているNPOなどの税額を少しでもいいから控除していただけるとか、寄附するという意味ですけれども。
 スポーツ選手、プロ、本当の一部ですけれども、稼いだ人たちもいます。それまでにも税金をたくさん納めてきています。それに加えて社会貢献という意味で、いろいろな所にボランティアをしたり、色々なことをします。それに加えて、一生懸命頑張っている方々の所に、NPOであったり、寄附することは許されて、その税額は控除されるというのは財務省は怒ると思いますが、そうなると、例えば、僕も年をとって、仮にお金が残ったとして、相続税がこんなにかかるのであれば、これだったらNPOで、この地域で頑張ってほしいから、これを子供たちのために使ってもらいたいと。
 そういうふうにお金が動くようになれば、NPOはもちろん利益を上げられないですから、今度はそこに雇用が生まれます。余ったお金で人を雇う、そして地域の人たちがそこに、色々な体験をした色々なスポーツの方々が入ってきて給料をいただけるという話ですから、やはり言っても雇用がないと話にならないので、簡単なことではないのは重々承知しておりますが、こちらには行政の方々がいるので、そういう働きかけというものをしていくという方向で、かなりの部分が解決する、もしくはスポーツに対して前向きな力があると、先ほどみんなでコンセンサスをとらなければいけないという話があったので、皆さんがそう思うのなら、かなりの部分で解決できると思いますので。細かい議論は非常に大切ですが、最終的には大もとをどんと変えようじゃないかというぐらいの気概でやって下さいと言いたいです。以上です。

【高井大臣政務官】

 ありがとうございました。期待も込めていろいろ示唆に富むご意見、ご発言をいただきました。 では、この時間から自由討議自由に意見交換をさせていただきたいと思います。

【鈴木副大臣】

 今鳩山総理が「新しい公共」円卓会議というのを始めており、これの最大の主眼が古田さんがおっしゃった税額控除となっています。要するに、今まで日本には税額控除はなく、所得控除だけだったのです。それも上限がありました。もちろん、税額控除も若干上限はあるでしょうが、日本で初めて税額控除を行おうとしています。なので、スポーツ界からそういう声があったというのは、非常に応援になると思います。
 それからもう一つ、子ども手当というのが6月から始まりますが、要するに所得制限をつけるかつけないかという議論があり、所得制限はつけませんでした。それは色々な哲学があってつけなかった訳です。その中で、一番大事な議論は、日本人を信じてみようと。何を言いたいかというと、年収1,000万円以上の家庭に子ども手当が2,000億円ぐらい行くのです。この人たちに寄附をしてほしいと考えています。要するに、自分の子供だけに使うのではなく、自分の子供とその友達とか、自分の子供たちのジェネレーション、要するに日本の子供たちのためになっている社会活動に寄附をしてもらうという流れをつくりたいと。その非常に有力な受け皿が青少年のスポーツなのです。
 当面はお金に色をつけず、寄附を促進していこうという話ですが、一方で、さらにその先で、これも円卓会議で出ている議論ですが、むしろコミュニティマネーみたいな、クーポンかバウチャーみたいにして、これを受け取れるのは学校法人、医療法人、社会福祉法人、そしてNPOあるいは公益活動とし、その中で、スポーツ活動をやっているNPOというか公益活動は受け取れるというコミュニティマネーの受け取りみたいな話が動いていまして、それが本当に有効なのかどうかということはものすごくお聞きしたかった話なので、今日の話は大変ありがたかったと思います。
 それから、2つ目は、若手育成の話ですが、まだ検討中ですが、もちろんスポーツの種目の能力を強化していただくのは当然ですが、10代のうちからセカンドキャリアのことも考えて、あるいは現役中のことも考えて、例えば英語をちゃんと学ぶということを強化のメニューの中に入れていくということも考えています。
 それから3つ目、マネジメントの基本的な話についてですが、将来きちんとNPOの地域スポーツクラブのマネジャーや事務局長などに職業としてつけるように、そのためのプロフェッショナリティーというのも備え、競技が強いことに加えてそういうマネジメントもある程度できるというようなことが必要だと思います。また、スポーツ科学も学んでいるなど。そのことは現役時代も生きるし、もちろんセカンドキャリアでも生きるので、そういう強化というもののあり方みたいなことを考えていきたいと思っています。
 それから、加えて、今、総合型地域スポーツクラブは何と2,905できています。ただし、有償の指導者を雇えているのは、1人以上指導者がいるクラブのうちで5割しかいない。雇用という観点からみると、今は約3,000のスポーツクラブが雇用できているのは本当に微々たるものです。もし、1クラブ例えば5人雇えれば1万5,000人になるわけで。もちろん満遍なく雇うということではなくて、多分3,000の中でキーになる、メーンなクラブとサテライトみたいな所と、多分そういう関係にはなると思いますが、キーになる、コアになるクラブには、例えば10人、20人、30人と雇用できるのではないかと考えます。その原資が「新しい公共」で2,000億とか3,000億出てくる分の例えば10%とれたら200億だし、5%だって100億なので、100億あれば雇えるのは当然可能になるし、もちろん税金でみたいな話もありと思います。だから、そういう常用雇用の人を何人か抱える、あるいは場合によれば、ヘッドクオーターであれば何十人か抱える所の中心メンバーになり得てほしいと思います。。
 そういうことで言った時、これは私の思いですが、縦割りというか、競技別のナショナルのスポーツ団体のガバナンスというのはやはり問題だと思っていて、今まさに横と言いましたが、それは横というものが大事だということと同時に、今の硬直した縦割り型の種目別型の競技団体というものをここでかなり刷新していかないとだめだと思っていて、この横型をやるのは、そういうきっかけになるのではないかなと思います。
 それから、国体をどうするかというのは、実は第2回はウインター系の人に来ていただこうと思っているのですが、冬は受け手がいない。非常に協力していただいて何とか今年とか来年もやっていただきますが、47都道府県、1周目の国体はそれなりに意味があり、それをやることにより陸上競技場が整備され、スポーツ公園ができてといういことがありましたが、2週目の国体に入り、受け手の問題も生じている。冬は特にそういう問題を抱えている中で、スポーツ団体のあり方、そういう新しいスポーツムーブメントで、せっかくやってきたけれども、このまま惰性でやるのはもったいなく、これを機に、今みたいな話がぐっと求心力になって国体のあり方も考えていきたい。そのあたりでどなたでもいいのですが、コメントがあればいただきたい。別にこれ以外の話でも結構です。

【平尾】

 国体は、ちょうど兵庫国体というのが少し前にあって、僕はそれにかかわっていたのですが、今おっしゃったとおり、第1回目の国体の意義というのは、環境整備をする上で大変重要な意味がありましたが、2回目以降になってくると意味合いが変わってくると思います。地方へ行って国体の話をすると、道路が割れてとか、まだそんな話をします。時代が変わってきていると思います。2回目になってくると意味合いが違うと思っており、僕は競技の再構築をしていく、強化の再構築をしていく機会ととらえるということです。
 それと、僕は兵庫県の中で提案して実際やりましたが、競技間連携というのをやったらどうだと。各競技、実はそれぞれ特性がありますが、例えばある部分的なものの強化をする。ここにいる人で言うなら、例えばラグビーのチームを強くするといったときに、足が速くないと、スピードをアップしないとだめだ。これはラクビーの中でやっているだけでは限界があるので、朝原さんに来てもらおうというつながりです。実は、そういうものが国体は意外に1つのチーム、ユニットとしてはしやすい。ということで、実はそういう連携をしました。
 そうすると、今までに競技が、自分たちはラグビー、野球、陸上、あまりほかの競技に興味がなかったわけです。それが興味が出てくる。そこに応援に行こうかという。それが1つの、チームとしての一体感が発生するという別の意味の効果が出てきたというのがあり、そういう意味で非常に連携の仕方はよかったなという気がします。
 先ほど古田さんもおっしゃっていたスポーツ庁及び省という、僕もこれは大賛成で、そういう所でこれから一貫性のあるものにしていかないと、今やはり文科省がやっているスポーツとのかかわりというのは、教育的な価値、割合が高いがゆえに、文科省が非常にケアしている所があるわけですが、これが経済にかかわると経産省になったり、健康の問題というのは厚労省、施設は国交省。様々な所に分散している所があり、中々そういう所で一貫性がなかったりするので、そこはしっかりと一貫性を持った中で。スポーツのいい所というのは、そういうもののユニットとしての一体感が出るというのもございますので、そういう活用の仕方もあるという気がします。

【朝原】

 私も競技間連携ということで、昨年の6月にバンクーバー・オリンピックの候補選手に向けてのセミナーに参加させていただきました。それは、JOCの強化が行っているセミナーですが。それには冬のオリンピックですが、なぜか私、夏のオリンピック。柔道の方もいらっしゃいましたし、そのほかにも将棋の羽生さんや、脳科学者の林先生であったり、いろいろな方がレクチャーされて、選手たちというのは、それが何にきくかというのは、それぞれ選手たちの受けとめ方にもよりますが、多分、これまでにはなかった試みをされていて、非常におもしろいことで、どんどんこれから広げていく必要があると感じました。
 国体のことですが、やはり国体開催地で教員枠ができて、強化でやっていきますが、やはりクラブというものがしっかりと雇用を生むものになれば、実際、国体という形ではなく、クラブ対抗戦という形になり、1つ新しいスポーツの形というか、強化、振興の形ができると思います。

【鈴木副大臣】

 どうぞ。

【布村スポーツ・青少年局長】

 今日、第1回目で最初からスポーツの価値とかコアバリューという提案をいただき、お話を聞いていて学校体育はどうしても知育、徳育、体育という形で、中々体育と徳育、体育と知育をどう連携すればいいのか、非常に学校教育を担当していても悩ましい世界があって、先ほどおっしゃられていたように、朝原さんも平尾さんもクラブの中ではコミュニケーション、ゲームマネジメント、コラボレーションという形で分析をしていただいたのですが、それを日本語で日本の人にわかりやすく伝えるキーワードというのは何かないですか。スポーツの価値というのはこういうことなのだというのをわかりやすく伝える、これから探らなければいけないかもしれませんが、何かお感じになっていらっしゃる点があれば教えていただきたいです。

【平尾】

 今あるもので使うのは難しいですね。新たにつくるという造語になるのかもしれませんし。

【朝原】

 でも、達成感とかいうのは非常にわかりやすくて、スポーツでもそうですが、スポーツというのはどうしても勝ち負けが出てきますので、得意、不得意の子供たちがありますので、不得意の子だったり、スポーツが嫌いな子に向けてむやみやたらに発信するのは難しいと思います。
 私が考えたのが、再生懇でも意見させてもらったのですが、1つ登山というのを言わせてもらいまして、登山というのは勝ち負けなしで1人で頑張れると。目標を持って、頂上へ向かって行きますので、そういう目標へ向かって、頂上に行って見晴らしのいい所で、よし、登ったということで達成感を感じられるという、その勝ち負けなしの所でみんなが体を動かして、楽しかったり、楽しくなくても、何かよくやったと思えるような活動は大事になっていくと思います。
 先ほど笹川財団にごあいさつに行きましたが、最新のデータで、男の子は子供の頃から色々なクラブにいてスポーツを楽しんでいますが、女の子というのは限られているということもあり、社会的にも女の子がスポーツをするというのはまだあまり認知されていないという所もあると思います。それで、8歳の女の子という所で、その時期でちょうどスポーツをするかしないかという分岐点になるそうです。そこでぴたっとスポーツをやめてしまう人は、それきり運動をしなかったり、逆にそこから本格的にやり始めたり、本当に二極化になっていますので、体力低下が問題にされているというのは、体力が低下して別に何も問題なければ問題ないのですが、何が問題かというのは、やはり子供の頃にしっかり体を動かすことは、脳の発達にかかわってくるので問題ということです。8歳ぐらいで全く運動しない子が出てくるのは、それはそれで体の発達もそうですし、脳の発達にも影響があることで、その辺も考えていかないといけなと思います。

【高井大臣政務官】

 ありがとうございます。
 私も本当にその問題、特に女児が体育の授業以外ではほとんど15以上になってスポーツをしない。特に20代、30代の女性が本当に二極化しているという現状がある中で、やはり8歳とおっしゃいましたが、多分皆さんもそうだろうと思いますが、何かのきっかけでスポーツがすばらしいという感覚を得られてから、ますます向上しようという気が芽生えてきてという過程があると思います。私もバレーボールとソフトボールをやっていて、徳島県の田舎の生まれなので、小さい頃から体を動かすのが好きで、今でもスポーツは好きです。
 だから、そうした時に、体育の授業があるにもかかわらず、女児が二極に分かれるというか、スポーツをしない子が多いというのは、授業の中で1つでもやったとか、よかったとか、きっかけとなるような何かが得られていないという気がします。
 もう少し学校体育で今おっしゃったようなことを少し啓発するというか、目覚めさせる方法があれば教えていただきたいと思うのと、さっきの国体の話で、第1回目の国体は地域も盛り上がり、そういう意味でも啓発効果もあったと思います。その時に国体に向かって頑張り、より上のスポーツを目指そうというきっかけになったのではないかと思います。最近も地元で陳情があったのは、軟式野球がオリンピックではないので、国体の中でも地位が下がりつつあるということでした。地域スポーツのすそ野としてはすごく広いので、軟式野球をやっているグループ、私もよく大会などにあいさつにも行ったり、地域のクラブにも顔を出したりしますが、そうしたことに軟式野球の皆さんとかはすごく不満を持っています。オリンピックがすべてではないのに、そちらの方向に向かっている。まさに地域スポーツとの連携というか、国体の価値をまた見直してほしいという話もございます。そういう意味では、国体競技の再構築というお話がありましたが、どういう形で、もう少し具体的に言えば進めていけばいいのか。我々の方からどういうふうなメッセージをつくっていけばいいのかと思って考えているのですが、もしご示唆いただければありがたいと思います。

【古田】

 国体は全然詳しくないので、意見がないというわけではないのですが、よくわからないです。国体の現状がわからないので。
 先程の徳島で軟式野球が非常に普及されているという話ですが、徳島県が、地域がフリーハンドで使えるお金があればいいということですね。例えば、僕は野球で全国回らせてもらっていますが、例えば鹿児島へ行けば野球人口よりもソフトボール人口の方が多い。だから、野球教室をやっても、子供たちはみんなソフトボールのバットを持ってくる。野球はやったことがないというのに、僕が来たからみんな無理やり野球をやらされているのです。8割とまでは言いませんが、7:3でソフトボールの方が多いです。
 地域によって違うので、そういう意味では、そこは文化として地域によってあると思うので、それを残すのであれば、フリーハンドで使えるお金を何とかして、地域ごとに違いますから、そういう形でお金が回るようにしていく。民主党の方々もよくおっしゃられていますが、地域主権になっていくと思います。そういう所にもそういう形に持っていければ。国体の全体的な位置とかは、僕は意見はないですが、そういうのがあるのではないかと思います。

【布村スポーツ・青少年局長】

 さっきの質問の裏腹みたいな聞き方をするんですが、トップアスリートの皆様方が学校の体育とか部活動で、ここがおかしかったとか、これが足りなかったとか、そういうご記憶は残っていますか。

【平尾】

 間違いなく時代とともに変わっていますね。僕らの時はものすごく厳しい時代でした。やはり先ほどの政務官がおっしゃった、これからのスポーツの考え方というのは、プレーするという概念は大変重要だと思います。プレーという概念がやはりスポーツの基本ではないかと。プレーというのは遊ぶですから、こういうものの延長線上にスポーツというのはあるのではないか。専門性が出てきて、自分の適性というものが自覚されて、それを職業にしていこうというのでプロになっていく方がおられる。プレーというものが僕はスポーツをする上では非常に重要な1つの考え方ではないかと思います。特に子供たちはそういう所からきっかけとして入っていくことによって、その興味を非常に持って、そのことに対して深めていくというのは、取っかかりがそういう所にあり進んでいくのではないかという気がします。そういう機会を与えることが学校体育の中でも必要ではないかと思います。

【高井大臣政務官】

 その方法に苦心しています。スポーツは、喜びを知ったら、すごく楽しいですし、色々な所に、体が丈夫になることはさらなる喜びでもあり、ソフトボールを私もしていたときにも、ずっと下手でも打てた瞬間にすべてオーケーなんですね。そういうことを例えば学校スポーツの中で、楽しいとかやったという喜びを経験できれば、プロを目指さないまでにしても、ずっと続けていこうという何か気づきが生まれるはずなのに、半分の女児は生まれないということになるのだろうと思いますが。
 言葉で言ってもスポーツの話なので、やった方がいいというのはみんな頭でわかっているし、テレビで観戦は楽しんでみんなそれなりにやるのでしょうけれども、何か特に義務教育課程において気づきを起こさすメニューといいますか、体育の中でのメニューなのかメッセージなのか、何か工夫できないかと悩んではいるのですが。

【朝原】

 習慣というか、体を動かす、楽しくても楽しくなくても、まず子供の頃からそうやって体を動かしているという習慣化されたことはものすごく大事だと思っています。子供の安全・安心を育成するシンポジウムを開いた時に、朝、何らかしらの遊びでも何でもいいのですが、子供たちが集まり体を動かしてから授業を受けるという、そういうルーティーンにしてしまうと、別にそれは何でもいいと思います。ジョギングとかにするとみんな嫌がってやらない子が多くなると思いますが、ドッチボールをするとか、とにかく体を動かすことにより、頭もすっきり起きる。おなかもすきますということで、早く起きさせて体を動かせて、授業を受けて、夜になったら疲れてしっかり寝る。という生活習慣をスポーツによって組み立てていくというのも大事なことと。だから、楽しさというのはもちろん大事ですが、まずはその前に、自然とこういうものという習慣化させるということも必要と思います。
 部活動ですが、僕が中学のときのハンドボール部は、とんでもなくきつい部活動で、僕は結局、3年間で燃え尽きてやめてしまいました。指導者のエゴとは言いませんが、この中学だったら中学、高校だったら高校の間にその選手を育てて、結果を出すという気持ちだけで子供たちを強化していくのは怖いというのはあります。
 もう少し長い目で見て、将来、この年齢で羽ばたかせるという懐の深さというか、そういうのを持ちながら指導できる指導者がもっといてもいいというか、そういう方が多いと思いますが、中にはやはり本当に詰め込んでしまう方もいらっしゃる。そういうのも考えていかないといけないと思います。

【芦立競技スポーツ課長】

 セカンドキャリアということを考えた時に、今、大学は国立、私立、公立、短大まで合わせると900ぐらいあって、そこに体育の先生というのはいらっしゃるわけで、一大学当たり2人いるとして、大体2,000ぐらい大学で体育指導に当たっている人、もうちょっとマーケットは大きいと思いますが、そういう所に例えばトップアスリートが進出していき、学生スポーツの指導者にもなるし、子供に対する体育授業も取り組んでいただくというのが1つのやり方としてあるのかなということも考えており、例えば新年度の予算で認めていただければ、5つか6つの大学院の中でお受けして、トップアスリートをリタイアした方、あるいはコーチを対象にした大学院教育プログラムというのを展開したいと思っています。お三方、それぞれは別の所でも活躍されておられるわけですが、そういうことをアスリートから今度人を教えていく、人を引きつけていく、魅力を持って聞いてもらう時に、何か大学院レベルの教育で考えておくようなことがあるのか、あるいはそれ以外の人生体験の中で身につけたものとかいろいろあると思いますが、そういうのは人為的に提供できるものか。あるいは、マーケットを開拓していく時に何かこういうことが大事ではないのとか、大学の現場で例えば今まで後輩とか同僚とかで聞かされている話などございましたら、教えていただけると大変参考になるかなと思います。

【古田】

 個人的な意見ですが、引退した野球選手、トッププレーヤーたちでも、正直言って勉強は苦手な者ばかりで、大学院に入って何かやると言い出すと少し抵抗があるといいますか、勉強はできないかもしれないですが、人を教える技術については、野球教室をやったら非常に輝く人は大勢います。子供たちにも人気があり、うまく教えて、それはお客さん相手にずっと何年もやっていたというのもあます。
 人に教えることに本当に大切なことという意味では、勉強もしなければいけないことはたくさんありますが、そこばかり重視して、そこばかり通った人間だけがそういう形になってしまうと、伝わりにくい人が増えるというのが僕の今の第一印象で、できればそういうキャラクターといったらざっくりして申しわけないのですけれども、そういう人のそういう所も見てもらうと、子供たちによく響く者は結構います。

【芦立競技スポーツ課長】

 大学院教育そのものが今ものすごくフレキシブルになってきていて、例えば大学入学資格、高校卒業していなくても大学院に進学できるような状況になってきています。まさに今まで磨いてきたキャリアを、あるいは技術をバックボーンにして何かステップするための1つの飛躍にしていただけるプログラムを開発できると、指導者としても、アスリートOBとしてもプラスだと思います。教えてもらえる学生、あるいは今や日本中至る所に大学はありますので、そうすると、地域スポーツとの組み合わせにも使えるという、かなり過大な期待も抱きつつ、今いろいろな大学にご協力いただけないかなと。

【古田】

 例えばそういう所でキャリアが仮に上がったとして、僕は何とか大学院卒ですという肩書が仮についたとして、結局働く場がないというのが問題。

【芦立競技スポーツ課長】

 そこをどうつなげていくかみたいな話も。

【古田】

 そうですね。だから、そちらで、先ほど有償なコーチがあまりいないという現状で、持っても結局使えない、それは使う場がないという所なので、そちらの受け皿がまず大きくならない限り、資格を取っても働く所はないのだからといってやらない人が増える可能性が、現段階ではある気がします。そのプログラム自体は非常にいいことなので、できるだけ受け皿を大きくしていただいた方がいいと思います。

【鈴木副大臣】

 そのときの受け皿で、要するに大学は今700~800あります。運動場を持っている所だけでも。掛ける2だったら、2,000人と今言いました。2,000人にトップアスリートからなっている人はほとんどいないと思います。要するに、言ったら大学の体育の講師です。それは准教授になっていけばいいと思います。そういう人が例えば2,000人いたら、500でも1,000でも、それこそオリンピックみたいなトップアスリートが少し、例えば1年とか何かやってもらったら、大学の教授になれると。あるいは、体育の講師とか准教授になれるというのも雇用先としてあるということです。
 この前、桑田さんが早稲田の修士論文を一番で、桑田さんは多分早稲田で、体育の教員にはすぐなれますね。
 最近、高大一貫という話になってきており、900の大学とか800の大学がわりと高校を幾つか従えてやっていくということになると、そこにさらにまた高校の先生。今まで要するに体育の先生というのがいて、そことトップアスリートが全然かけ離れた世界になっていたでしょう。
 今、代がわりで、体育の先生が定年でやめていくわけです。ある意味では、新規採用のチャンスなんです。そこにトップアスリート35歳みたいな人が高校の体育の先生とか。高校の体育の先生兼地域スポーツクラブの理事長とか専務理事みたいなことの余地が出てくる。
 要するに、色々な意味で学校体育を開放していくことが大変重要だと思っていて、それはポストの面でもあると思っているし、施設の面でもそうだと思います。今、日本は体育施設は人口当たり少ないのですが、学校施設を入れると一瞬にしてドイツとかフランス並みになります。だから、校庭は学校の庭という意味でしょう。そうじゃなくて、市民の庭みたいにして、その管理は体育館にしても、地域スポーツ、例えばシックスとかNOBYに任せる。逆に言うと、学校が必要なときに借りにいくみたいな。
 実はこれは神戸の小学校で1つだけやっている所があって、校庭がたまたま坂にある学校なので、3面あって、1面は学校が専用で使う。2面は、地域と学校と共同で使う。3面は地域が使うみたいな話になっています。これが広がれば、例えば今の学校施設でもそういうふうに分けてやるとか、いずれはスポーツクラブの方がしっかりしてくれれば、その管理を任せるとかが考えられます。今、学校だけに使わせていると、稼働率がものすごく偏ります。もっと稼働率を上げられるので、スポーツクラブに運営を任せていく。そんな可能性をこっち側は広げて、人の話も施設の話もどうつなげていったら良いのではないでしょうか。

【平尾】

 大変僕もそれは大賛成で、人的資源、施設、こういうものは本当に活用していかないといけないと思います。学校はここで事故が起こった場合、だれが責任を持つという所がまだ問題になり、そういうときの整備。法的な整備も含めまして、そこはしっかりしていく必要はあると思います。やる側がそこはリスクもある程度背負わなければいけないかもしれませんが、しっかりした指導ができる上でも、そういうものも軽減し、しっかりとした活動をしていく上で背景としては必要だと思いますので、そういう整備もあわせてやっていかなければいけないと思います。
 そういう施設をつくるのは大変お金もかかる話だし、校庭を、ものすごく大きなものをあいているときに使わせていただくのは、どこのスポーツクラブもありがたい話。まして、そこに少しお金を足していれば芝生になった、それはまた再活用する上で大変重要なことだと。喜ばしい話と思いますので、土地を買って芝生のグラウンドをつくるというのではなくて、もともとのグラウンドに芝だけつくればいいということになれば、コストの削減にもつながりますし、さらにプレーの質の向上というものにも非常につながっていくと思います。そういうものの資源の活用というものは大いにこれから考えていかなきゃいけない所ではないかと思います。

【鈴木副大臣】

 今例えば小学校は3時以降グラウンドはがらがらです。中学は部活をやっているから使っていますが。

【布村スポーツ・青少年局長】

 話が飛ぶかもしれませんが、高齢者の方へのスポーツをどう広げていけるかということで、医療費の関係で、医療費30兆円の、もし高齢者の方々が運動を続けていらっしゃれば8.5%の医療費が削減できるという研究された方のデータも出て、そういう面で、皆様方が高齢者の方とスポーツで接点、先ほど来、子供に向けたお話は随分ご提案いただきましたが、高齢者に向けて何かこれが足りないということはございますか。

【朝原】

 高齢者はあまり考えたことはないですが、ただ小学校の低学年の子供たちと、高齢者といってもものすごい高齢者は難しいと思いますが、それぐらいの体力だったらちょうど釣り合うことができるのではないか。だから、一緒に何か運動をしたり、あいた校庭で子供とお年寄りが一緒に何かする。例えば高齢者が昔サッカーをやっていた、そんな人はあまりいないと思いますけれども、何かやっていましたと。それを教えたりするというのも、ある程度、小学校高学年とかになってくると、ちょっと体力の関係で難しいと思いますが、低学年と高齢者というのは、ある程度マッチしていくのではないかと思います。
 学校開放というのは、スポーツの施設だけの問題じゃなくて、教育の面でも非常に色々な人と子供が接して、色々な人とコミュニケーションをとるというのは、今、どこへ行っても危ない、危ないと言われて、世界が狭くなっているという意味では、非常に意味のある策ではないかと思います。だから、セキュリティーの部分をしっかりすれば、非常に有意義なことになると思います。

【古田】

 高齢者、先程も地域の話が出ているので、元気なお年寄りをみんなで表彰する感じにしていくのが一番いいと思います。これから60代の方々、70、80はわからないですが、60代の方々は団塊の世代と呼ばれて競争心の強い人も多いわけで、あの元気なお年寄りには負けてられないと思う人は多いわけで、そういう機会をどんどん増やして、優秀なお年寄りは元気なんだとみんなで表彰して、年をとったらああいうふうになりたいと思わせるようにしていく。今も、マラソンやトライアスロンをやったことがありますが、元気です。はっきり言って、皇居を走っているおじさんに全然ついていけないです。元気なお年寄りが多いと。お年寄りというと言葉が悪いですけれども、高齢者というんですか、多いと思っている方なので、そういう人たちが、地域の人間がこの人はすごいと。表彰がいいのかわからないですけれども、周りからみんながリスペクトされる、あのお年寄りはすごいと言われるようになると、みんな競争心が生まれて、ああなりたいという気持ちが増えるので、どの形でやるかは知りませんが、そういう形で雰囲気づくりをすれば一番いいと思います。

【平尾】

 高齢者のスポーツは、僕も専門ではありませんが、実はやることだけがスポーツではないとは思います。例えば駅から適度な距離を歩いて競技場で試合を見るというのは、例えば高齢者にとっては一番いい運動かもしれないです。そのことによって、感激して、よかったなと、応援しているチームが勝って、そのまままた帰っていく。実はその運動量が本当は適正かもしれないです。だから、運動するだけが僕は高齢者のスポーツということではなくて、そこへ足を運んで見に行くというのが実は一番適当な運動量かもしれないという考え方も片やあるのではないかと思います。するだけじゃなく、本当に見るとか支えるという、よくスポーツでは出てきますけれども、そういうことの方が実は高齢者にとってのスポーツの位置づけとしてはいいと感じております。

【鈴木副大臣】

 では、最後に、どうしても役所がやると総花的になってしまうので、さっきのスポーツ省とか、まずここがポイントみたいなのを3人から、これだけはやった方がいいという話を最後におっしゃっていただいて会を終わります。

【朝原】

 やはり私はアスリートネットワークというのをやらせてもらっている関係で、横のつながりをもう少し柔軟にやっていくというのが一番のポイントと思います。

【鈴木副大臣】

 ありがとうございます。

【平尾】

 スポーツの世界が、スポーツ界というのが一体化していくことは大変重要だと僕も思っていまして、古田さんがおっしゃったスポーツ庁とかスポーツ省、こういうものの設立というのを早期に願うとともに、今スポーツというのは野球対サッカーでもないと思います。そういう闘いではない。もっと細かい。昔は巨人対阪神だったかもしれませんが、それが今はサッカーがJリーグになって、野球やサッカーの人的な資源の獲得の試合、そういう時代も終わりまして、スポーツ対例えばテレビゲームだとか携帯電話というもっと大きな闘いというのが今ある中で、スポーツはしっかりとその中で確たる地位を僕は占めていくべきだと思います。そういうつながりに勝つためには、スポーツの連携、今後も大変重要だと思いますので、そういう機関、こういうものをしっかりと設立していただいて、一貫性のある推進をしていただきたいと思います。

【古田】

 いろいろな理由があってこうなったと思いますが、競争させろということです。子供の頃に競争しなくて、急に大人になってから競争社会。実際、社会に出れば競争社会ではあると思いますから、そうなって、いや、外国の選手に勝てないとか、日本の中でも勝てないというのは、それはそうですよと僕たちは言いたくなる。子供の頃、ここにいる皆さんもすごい必死になって、あいつだけには負けないとかいろいろな思いを持って競争してトップレベルに来たと思うので、オリンピックは何とかと強化する選手はもちろんいるはずですから、そういう気があるのでしたら、それはやはり競争させないと絶対だめ。一部で。トップアスリートを目指すという選手には必ずさせなければいけないので、できるだけ子供の頃からそういう癖をつけさせた方が僕はいいとは思います。 

【高井大臣政務官】

 今日は本当に忙しい中、大変貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。政権としても227億という過去最高のスポーツ予算をつけまして、まさにスポーツ庁の議論も予算をつけるに当たっても、基本法の議論でも、まさにおっしゃったコアバリューというのが何かというのをちゃんとメッセージとして伝えていくようにと思いますので、また頑張りたいと思います。今日は本当にありがとうございました。 

―― 了 ――

 

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-- 登録:平成22年07月 --