「スポーツ立国戦略」の策定に向けたヒアリング(第4回) 議事録

平成22年4月14日

【尾﨑大臣官房審議官】

 「スポーツ立国戦略」の策定に向けたヒアリングを始めたいと思います。お忙しいところを今日はおいでいただきましてありがとうございました。冒頭、副大臣からごあいさつをお願いします。

【鈴木副大臣】  

 今日は、皆様方お忙しいところ、ヒアリングにご参加いただきましてまことにありがとうございます。今日お集まりの皆様方は、日本人に希望を与えて下さっている皆さんでございまして、その観点からも心から感謝申し上げたいと思います。
 バンクーバーオリンピック、パラリンピックも終わりましたが、改めてスポーツの持つ力、日本人を元気にしてくれるということを痛感いたしました。今、50年ぶりにスポーツ振興法を抜本的に見直して、スポーツ基本法をつくろうということでヒアリングを行っているところでございます。今日は第4回目ですが、1回目に野球とラグビーと陸上の方、2回目、3回目は色々な団体に来ていただきました。再び今日、現場で頑張っていただいてる、あるいは支えていただいている皆様方に来ていただいたところでございます。忌憚のないご意見をいただきまして、スポーツ戦略の立案に生かしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 それでは、おいでいただいた方々からそれぞれご意見を伺いまして、その後、意見交換とさせていただきたいと思います。まず、岡部哲也様からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【岡部】  

 よろしくお願いいたします。
 只今ご紹介いただきました岡部哲也と申します。私は北海道の小樽という港町に生まれ育ちました。当時、私は6歳からサッカーも並行してやっておりました。当時の冬は大変雪が多かった時代ですから、春になるまで道路の雪が解けることもなく、冬は雪、そして春から秋まではサッカーという生活でした。日々そういう環境の中で、当時サッカーではJリーグもなかった時代ですし、世界や将来のビジョンが見えにくかったのですが、スキーの場合は1972年に札幌オリンピックも開催され、そういう意味では、非常に目標としやすい環境があり、スキーを選択していったという思い出があります。
 ナショナルチームに入ったのがきっかけで、海外に出て行き、引退するまで15シーズンに渡り、年の9カ月ぐらいは、ヨーロッパ・オーストリアを拠点として動き回っていました。当時はいわゆるウインタースポーツ、アルペンスキーという競技の中で、自分の気持ちはプロという意識があっても、実際はプロという形ではない、アマチュアリズムの中でやっていました。向こうに行った時点で、さまざまなストレスなどもあって、3年目に言葉やコミュニケーション、文化などを学ぶため、2年間ドイツ語学校に通いました。そこにも、多くのスキーレーサーや様々な競技をやっている人がいたわけですが、そこで違いをふと感じたのが、自分にはないモチベーションや目標のベクトルが個々に明確あったことでした。 特に私の場合はスキーですが、アルペン王国オーストリアには当時8つの州に専門学校があり、小学校、中学校、高校とスキーの環境の良いところに学校がありました。そこでは、雪上のことだけではなくて、言語から含め色々学べる環境で、そこを通れば必ずしもスキーで結果を出さなくても、一般企業への就職率が90%以上なわけですから、保護者も力がはいるわけです。そのような学校に入ることによって、スポーツ文化を軸として、人間形成が成り立っていたというのを私が知ったのが18歳のころに感じたことです。日本に帰る度に、日本のシステムはどうなっているだろうと疑問がわき、多々違いを発見しました。物事の考え方とか――私は高校卒業後、後にデサントに入社し、サラリーマンとしてのスキー選手人生が始まっていきました。サラリーマンですから、結果が出なくても毎月固定給与を受け取れます。海外の選手達はスキーに特化していったときに、サラリーがない人がほとんどでしたので、そういう意味では、本気でスポーツを仕事としてとらえていく心構えが出来ており、それをこなすモチベーションの違いという点では、負けていたように感じました。非常に文化や環境で、結果が出たことに対しての国の保障であったり、その後の生活する上の基盤になっていくというものが持てているのだと感じました。
 もちろん、私自身は向こうに行きながら、向こうの文化がすべていいのかというとそうではなくて、日本人としてのよさも色々感じていました。私自身、引退した後、軽井沢でスキー・スノーボード学校を営ませていただいています。積雪量も多く、環境が良いとスキーが楽しいのは当然ですが、軽井沢という地は寒くても雪があまり降らないところです。ですが、温暖化になり、雪が降らなくても造れる195基の降雪機があります。スノースポーツを教えていく上での環境が整っているという点から軽井沢を選び運営をさせていただいています。人々に楽しさを知っていただき、マナーも習得し健康にも繋がっていく。また、余暇を楽しみ色々な部分をトータルで伝えられる。そして、そこをうまく活用してもらえるようなことを、この学校を通して今もやらせていただいています。
 初めてスキーをする時の天候もとても重要で、幸い軽井沢は晴天率が高いところであり、子供達のスタートとしては最適です。
 私は北海道の小樽という雪国で育ちましたが、私の時代はスキー授業が小学校1年生から6年生までありました。現在でもスキー授業が可能な環境があるにも関わらず、残念ながら継続されていない学校があることを多く聞いております。雪が少なくなっているといえども、そういう環境をうまく使うような授業の見直しや、先生が直接教えられる事も望ましいのです。例えば高校野球ですと、外部より専門のコーチを招聘しての指導も考えられますが、地の利を生かした運動の継続は行って欲しい限りです。地域の環境を意識した中での学校の授業の見直し、もともとやっていたものを復活させる事を考えていただけたらいいと思います。
 また、国体の意義というものについて最近、私自身もすごく重要性を感じており、以前は教員組というものがありましたが、今はなくなり、復活させたほうが教員の方々の意識の高さや、指導者としての励みになるような仕組みづくりができると思います。他、スキーだけではないですが、「スポーツと健康管理」というものをもっとうまく表現できるようにしていけたらよいと思います。
 私はアルペンスキーという環境の土俵から去った後、異業種分野の方とも多く会うようになり、その中で話題の一つとして、自分たちがやるスポーツ、見るスポーツという部分の中で、それを支える、あるいは指導していく周りのコーチや指導者の人たちが、以前はボランティアでやっておられたものが継続性に乏しくなっていることもあげられます。そのような方々のためにも改善しなければいけないでしょう。ナショナルチームでの関係者は勿論、地域・クラブ等で指導する関係者への対価なども含め見直し、全体の育成システムも構築しなければいけないと思います。今からでも遅くはない「スポーツ文化を持つ国日本」となっていけるように私は切に願っております。
 今年、バンクーバーオリンピックで、アルペンスキー王国のオーストリアが、74年ぶりにメダルを獲得出来ませんでした。4年間で、アルペンだけで日本円で換算すると9億ぐらいの予算があります。それだけお金をかけてもメダルがとれなかったという、非常にオーストリアとしては大変なことが起きました。ですからお金をかければすべてが結果に結びつくかということでもないと実証されたのではないかと思っております。
 とにかく私自身は、アルペンスキー出身の立場から、日本スポーツとしてウインタースポーツという部分が発展していく上では、他の分野でも一緒だと思いますが、とにかく環境を最大限に利用し、より一層構築するべきと考えます。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。
 引き続きまして河合純一様、お願いいたします。

【河合】  

 パラリンピックの河合純一と申します。私は、日本パラリンピアンズ協会という団体も代表している思いも込めて、今日はお話をさせていただければと思っています。
 私は、現職は静岡県の教育委員会で特別支援の仕事、研修等を担当していますが、高校時代よりパラリンピックに出会いました。水泳は5歳からやっていましたが、バルセロナの大会から出場して、北京まで5大会で金メダル5つを含めて、21個のメダルをとったということで、今日も呼んでいただけたのかなと思っておりますが、そんな経験も含めて、そこから感じたことをお話ししたいと思います。ただ、これを16年、7年たって、92年から考えると18年たったわけですが、18年前に、高校生の僕が17歳で感じたときの思いと、今日お話しすることにそう大きな違いはないということも知っていただきたいと思います。
 それは何かというと、まず一番大きかったことは、そのときに海外の試合に行って、これほど障害者であるからとか、パラリンピックといって評価されているというか、多くの観客がいる中で大会ができるという喜びを一番感じたということです。それがなぜ日本でできていなかったのか、いまもそれがなかなか難しい状況なのかということを、私としては皆さんに知っていただけたらと思って、数点、項目を整理してお話をさせてもらえればと思っています。
 まず、現状として4点ほどそこに挙げましたが、パラリンピックのとらえ方というのが、世界と日本とでは違うのかなと思います。これは最後のほうでもお話しさせていただきますが、もちろん、行政的な違いとかということもあると思いますが、IOCという国際的なオリンピックを統括している組織と、IPCというパラリンピックを統括している組織とが、今、パートナーシップというか、同じように招致の中でもパラリンピックを項目にするようにということで東京も取り組んできたわけですが、そういう中で、メディアの規制であるとか、あるいはドーピング、アンチドーピングにかかわる規定であるとか、ある程度そういったものが同等のものを求められています。障害者のアスリートにも。
 しかし、その求められているものにこたえるための選手たちの環境があるのかということが一番の問題です。結局規制だけは増えるが、保障されるものがないということの日本国内での不一致によって苦しんでいるのは選手たちであるということを知っていただきたいと思っています。こういうときにパラリンピックで障害者の社会的に弱いと思われている立場をオリンピックが手を差し伸べていると日本では勘違いされているきらいもあると思います。そうではなくて、オリンピックという競技が商業主義にだんだん流れていった中で、スポーツの本質的な価値はなんなのかと。人間が真剣に取り組んで自分の限界を超えようとする瞬間に、国籍とか障害の有無とかは関係ないということをオリンピックの側が気づいたということではないかと思っています。その中で、パラリンピックといっしょにすることがオリンピックにとってもとても価値があると考えたから、今のような流れになっていると私は認識しています。そういう中で、今の招致等の流れもあったということで、このずれをどうしていくかということがまず現状としてあると思います。
 それを生んでいる1つの要素としては、メディアの取り上げ方があるのではないかとおもいます。パラリンピックということを実は日本ではすごく報道されるようになりました。これは私も認めますし、思います。これはデータとして言われているのが2年前の北京の大会の視聴者数というのが日本は世界で2番目です。1位は中国です。開催国ですので。それだけやはり、時差的にもなくて見やすかったというのがあるかもしれませんが、報道や関心は高いと思いますし、それだけのニーズがあるということも知っていただけたらなと思います。本当に、この10何年の間で社会面で扱われていた一部の記事が、写真が載るようになり、スポーツ面で扱われるようになったという大きな変化も、私自身も特に感じていますが、特に一番残念なのは、スポーツ新聞の扱いが少ないという点ではないかと思います。スポーツ新聞という新聞でスポーツの価値をどう伝えるかということをもう一度考えていただきたいと思います。
 3点目ですが、資金が不足しているということです。これらについては先日のヒアリングで障害者スポーツ協会からも話があったと思いますので、そちらのことも含めて考えていただければと思いますが、選手がパラリンピックに出るために、年間平均で110万円の自己負担をしているという状況があります。これはアンケートで明らかになっているわけですが、この110万円を多いと思うか少ないと思うか、それぞれだと思いますが、障害を持っている方々が現在、職につけていて、その方たちの平均の収入がどれぐらいかということもよく考えた上でこの金額を見なければいけないのではないかと思います。例えば年収が500万円の方と250万円の方にとっての110万円は違います。当然、そこの部分も踏まえて、ただかかった金額、それも一生懸命圧縮しようとして当然かけている金額だと思います。そこのことも踏まえていただかないと、この金額だけでははかれないものがあるのではないかと思っています。
 4点目です。選手のセカンドキャリアということで、これはオリンピックでも言われていることですが、選手をやめた後とか、引退後のことが、全く保障が当然ありません。もっと言うと、指導者になるということも難しい状況です。それは指導者そのものが今の状態でもボランティア状態でやっているから、その後の道すらないと。そして、各競技団体等にも事務局員が専従でいないということ等を考えたときに、すべてボランティアがベースで動いているという問題です。それらをクリアしない限りいけないのではないかと思います。これは前文部科学大臣にもお話をしたのですが、例えばパラリンピックでメダルをとった選手が、もっと障害者のスポーツや、日本国内で発展させるための勉強を海外でしたいといったときに、オリンピックのメダリストにはそういった留学制度があります。しかし、そういったものがパラリンピックには応用されませんし、枠がありません。それなのに進めていこうとか、発展させようというのはやはり、非常に厳しいのではないかなと思います。そういったことも含めて考えていただきたいと思っています。
 課題と現状が重なるところもありますが、課題とします。障害に対する考え方が非常にまだ未熟であると思います。これは今まで話したところと共通するわけですが、ICFという考え方がWHOから出されて、皆さんもご存じかもしれません。障害というのは個人に起因するのではないという考え方です。私が目が見えないからスポーツができないとか、字が読めないのではなくて、その環境を調整すれば、例えばここに今、私は音声を使って打ったパソコンのデータを点字に変換する道具が発展すれば、お話をこのように皆さんにすることもできるわけです。環境や道具によって調整可能だということです。そのようにとらえたときに、スポーツをするときの環境がどの程度、今、調整できているのか、あるいは社会に参加する上でという視点を、より多くの人たちで共有することが今、大切なのではないかと思います。これはその次のJISSとNTCの関係のところでもあるかと思いますが、同じ規制を先ほど言ったようにかけられていたりする、そして選手に求められているのはメダルです。そういったところが同じでありながら、つくった経緯だったり、色々なもので使えないということが、どの程度国民なり、多くの人が納得するのだろうかということです。使いやすさとか、それらはバリアをどこがつくっているかと。障害者がそういう状態だから使いにくくてしょうがないではなくて、使いやすくするためにどうすればいいかということをやはり考えていかなければいけないのではないかなと思っています。
 その中で、昨年させていただいた招致活動で特に考えていたところで、学習指導要領です。中学校保健体育編の3年生のところでオリンピックの規定が入りましたが、ここにパラリンピックがありません。その後の解説編等を僕も読ませていただきましたが、国籍や障害の有無等を超えてスポーツの価値をというようなくだりになっているが、オリンピックしか記載していないということです。ということは、そこについての記載もこれはやはり同列でパラリンピックについても触れていくことが、もっと多く啓発していくことにも当然なるのではないかと思います。
 合わせて2009年のアジアユースパラゲームスというのが東京で開催されました。こちらの文部科学省のほうと、やはりこれもずれていったのかわかりませんが、なかなか周知徹底されなかったか、特別支援学校や特別支援学級にいる子供たちが多く出場しました。そして通常学級で障害を抱えていても、生活をしている、学習している子供たちも多く参加しました。これらについての周知やそういったネットワークが非常に弱いというところが1つ問題ではないかなと思います。障害者のスポーツ指導員はたくさんいます。しかし、それをうまく活用できずに、通常の学校での体育で十分に活動できていないというケースも耳にします。ぜひそういった連携を進めていってほしいと思います。
 そのために、スポーツ基本法であるとか、スポーツ行政を一元化ということは、障害者スポーツとしてはとても求めるところですし、特にSports for Allという言葉があるときに、ときどき、パラリンピックは別だよねと言われたときに、Allの中に障害者は入らないのかと思ったことがあります。文部科学省のそういった政策の中にも書いてあることですので、きっちりそのあたりは考えて進めていっていただきたいと思います。
 最後に文化的価値という、先ほど岡部さんもありましたが、スポーツは本当にそのものが教育的な価値があると思いますので、そういったものをどうやって、我々アスリートもそうですし、かかわっていくものが高めていけるかということも今、問われているところだと思いますので、私も微力ながら頑張りたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。では引き続きまして、宮嶋泰子様、よろしくお願いします。

【宮嶋】  

 私自身はアスリートではないのですが、私はテレビ朝日でアナウンサーとディレクターをしておりまして、過去、1980年のモスクワオリンピックからバンクーバーまで15回のオリンピックを取材しております。そういったことから、外から見たアスリートのこと、それからスポーツのことをお話ししていきたいと思います。
 この30年間というのは、世界のスポーツが本当に変わりました。1980年のモスクワオリンピックのころは、ソビエト、東独などのステートアマが、いわゆる国家ぐるみでドーピングをしたりと、国家によって造られた選手たちが戦いに出ていった時代です。その後はカナダ、アメリカと、これまたお金や名誉を求めてドーピングに走る選手が出現してきた時代でした。そして、EUができてからは、ヨーロッパでは国の威信をかけて戦おうという人たちが若干少なくなってきたかなと感じるのが正直なところです。ただ、お金をもうけられるプロスポーツ、いわゆるサッカーとか、それから国によってはバレーボール、こういったものは本当に熱狂的に行われています。そういう意味で、スポーツというものが、かつては国家に支配されていましたが、それが徐々にお金に支配されている時代になってきたというのが正直な感想です。
 こうした中で、中国・韓国などは国を挙げてナショナルトレーニングセンターで強化をしているという現実があります。
 日本の現状ですが、日本の金メダリストというのは、本当に数多く色々な方にインタビューをさせていただいて、ときどき悲しくなります。みんながみんな幸せではないんです。ある人はアルコール依存症になってしまったり、ある金メダリストは、現役のときの故障がもとで、足を引きずりながら、まともに歩けない状態で、病院の配膳係をしています。現役時代のキャリアがしっかり生かされる道が少ないのが日本の特徴かもしれません。
 また、日本でなぜこんなにスポーツ選手が尊敬されないのか。先ほど河合さんがパラリンピックの選手が尊敬されない、お客が入らないという話をしておられましたが、そうではなくて、この間行われたバレーボールの国内リーグの決勝戦でさえも、お客さんが300人しか入っていません。本当に日本は、スポーツに対する文化的価値を認めるという人たちが少ないように感じます。これはなぜかというと、スポーツを勝ち負けということだけで子供のころから教えるものですから、負けた人はそれでもうやる気をなくしてやらなくなってしまったり、飽きてしまうのかもしれません。本来スポーツというのは人間が身体を使って行う自己表現であって、人生を豊にしてくれて、そこから楽しみがあったり、人生の快楽のひとつだと思います。スポーツから得られるたくさんのすばらしいことがあるはずですが、そういったものをしっかり教育しない、教えていないということが、やはりすごく大きいのではないかと思っています。こういうことから色々な問題が発生してきているのではないかというのが私のこの30年間の感想です。これからトップレベルのスポーツと地域スポーツの融合ということについて話をしたいと思います。
 私の中では、北海道のスケートの町、帯広というのがひとつのいいスポーツの町のイメージです。実は帯広出身のスピードスケートといえば清水宏保さん――長野の金メダリストです。堀井学さん、もうたくさんいらっしゃるんですが、今回高木美帆さんというバンクーバーで最年少の選手がいましたが、彼女も帯広出身です。彼女にスケートを小学校の段階で技術を教えたのは、長野で5位に入賞した島崎京子さんです。だからそこに技術の伝承というのがしっかりとその土地で行われている。実は小学校の段階でトップレベルの指導を受けるということはとても重要なことです。
 マイナス20度30度の地ですから、そんなところで大人になってからスピードスケートやろうという人はほとんどいないですし、今、子供たちも減っているのが現実です。スポーツ少年団もすごく減っていますが、そんな中、去年帯広に、日本で2つ目のスピードスケート専用のオーバルができました。このオーバルは比較的低コストでつくられたリンクで、大会のためのリンクというだけでなく、地元の人たちもトレーニングができるようになっています。オリンピックのために造られた大きな長野のエムウエーブとは少し違います。そうしたところ、おじいちゃんが孫の手を引いてこのリンクにやってきて滑っている様子を見て私は、これはとてもすばらしいことだなと思いました。髙木美帆効果とでも言うのでしょうか。これからは少年団に入る子供たちも徐々に増えてくるでしょう。また、このリンクができてきたことで、韓国のスピードスケートの監督が、夏には帯広に来て合宿をしたいと言い出しました。こういうスピードスケートというものを通じて町が元気になって、お客さんが外からやってくる。外貨を落としていって、上手に町が、これこそまさにスポーツ立国というか、スポーツで人々が元気になって、町も活性化していくいい例だと思います。これはたまたまスピードスケートの例ですが、こういう形でカヌーの町もありますし、色々な小さな町があるので、そういう成功例をもとにして、これから組み立てていくのがよいと思います。
 こういった中で、スポーツ立国というのができていくといいなと思う反面、今、早い段階から1つの競技だけのエリート教育をしていこうという動きがあります。エリートアカデミーのようなものは、これも確かに効果はあるかもしれませんが、小さいうちから少数の子供たちを親元から離して一つのスポーツトレーニングに特化させていくというのは、私は賛成ではありません。失うもののほうが多いのではないかと実は思っています。高木美帆さんなども親元から兄弟3人いる中でスケートをやって、夏はサッカーやって、ヒップホップダンスをやって、そしてここまで来ているわけで、やはりアメリカなどは高校まではシーズン制で4つのスポーツを必ずやるというのもありますし、どれだけ多くのスポーツに接するかというのは、大きいと思います。それこそ柔道でも、たくさんやっても、外国の選手は色々な動きを色々なスポーツでやっていますから、どんな技で来られるかわからないということが多分あると思います。日本の中で、柔道だけの練習をしている人ではとても考えられない動きが突然出てくることだってあると思います。そういう意味で、日本の人たちがメダルを取るスポーツというのは比較的、心・技・体でいうと「技」占める割合が大きい競技だと思います。いわゆるフィギュアスケート、体操など、どちらかというと、技をつきつめていくところでメダルをとれるという競技が多いと思いますが、これはお稽古ごと感覚でずっとそれをやっていると、こういうものが強くなってくるのだと思います。でもやはり、サッカーなどはどこからタックルが来るか、コンタクトしてくるかわからないし、そういったものは、絶対に身体能力、体力が強い人が勝ってしまうわけですから、そういう意味では、同じことだけを小さいときからずっとやっているというのはあまり意味がないのではないかという気もします。
 ここから少し重要な問題ですが、おもしろい調査が出てきまして、幼児期、それから小学校の低学年まで、今、子供もコーチについて体の動きを学ぶということが盛んになっています。こういう「動きを教えられた子供」と、「子供だけを集めて遊ばせた子」の体力の比較というデータが出てきました。そうすると、何と子供だけで遊んだ子供たちの体力のほうが上なのです。何もないところで、子供同士で、頭と体を使って色々工夫をしていく。それがやはり日本の将来を担う体と頭をつくれるもとなのではないか。スポーツスポーツと言って小さいころから教え込んでいくよりも、私は遊ぶということをもっともっと徹底させていくシステムを何かつくれないかと思っております。
 日本のスポーツというのはこの50年近く、東京オリンピックの前ぐらいからスポーツ少年団が基礎をつくってきたといっても過言ではありません。ただ、このスポーツ少年団も、勝つということに終始するあまり、少し崩壊ぎみで、今、これを総合型地域スポーツクラブに展開しようという動きが盛んになっています。私が幾つか見たところで、これはいいなと思うのは、指導者が一人ではなくて、色々な地域の大人が来るところです。中学生も来る。大学生も来る。要するにスポーツ少年団では小学校6年生になると卒団というのがあるわけです。それがないので、色々な大人の目があって、「ほら、靴ちゃんとそろえて」とか、「あいさつちゃんとして」という中で、どんどんどんどん育ってきます。私たちのころには一家10人、15人なんていう大家族は当たり前でしたが、今はもう5人って言っても、「随分多いね」と言われてしまう家族ですから、そういう中で地域の人々と触れ合いながら子供たちが育っていくというのが総合型地域スポーツクラブの中にはあるのではないかと思っております。そこで、中高年の方が幼児の面倒を見たりとか、小さい子たちの面倒を見たりとか、それから大学生が中学生を見たりとか、今度は高校生が小学生を見たりとか、クラブの中で地域の人々が互いに助け合ういい動きが出ているという気がしています。スポーツを通しての地域活性化が成功しているところが少なくありませんし、学校の運動部活動を総合型地域スポーツクラブと一緒にしているところもありますので、そういうところもぜひ参考にしていただければと思います。
 ただ、先日JOCの福田副会長がおもしろいことを言っておられまして、日本のスポーツ選手というのは、育てるときは国のお金、今はtotoのお金なども使っていて、人々のお金をいっぱい使うくせに、一人前になってメダルを獲ると、さらっていって金もうけの道具に使うのはマネージメント会社なんだよなっておっしゃっていましたが、これは本当だなと思います。ですから私は、メダルを獲った選手たちというのはちゃんと社会に対して還元をするということで、人々に無償ででもいいし、廉価でいいのでちゃんと恩返しをするというような、年に5回はすることとか、そういう義務的なものを設けてもいいのではないかと思っています。
 最後になりますが、私は何もスポーツ立国というのはオリンピックでメダルを獲ること、メダルの数を競うことではないと思っています。よく出させていただくのはフィンランドの例で、フィンランドは1週間に国民1人がスポーツを実施する率が91%と言われています。これは世界一です。日本はちなみに45.3%です。しかしながらこのフィンランドは、メダルをとる率はバンクーバーが24位、それから北京では44位に過ぎません。日本よりずっと低いです。これはヘルシンキオリンピックまでは国を挙げてメダルを獲ろうと言っていたのですが、それから政策を転換して、もっと一人一人がスポーツを楽しむ時代にしようということでこの形になったわけで、大会などもとても楽しい独自の競技を作って大会を開催しています。ですから、メダルというのは何もその国のスポーツの盛んさを表すものではないということです。ですから、民主党がヨーロッパ型の国家を目指すというのであれば、もっと一人一人のスポーツを重視する体制づくりに重点を置いていただくほうがよいのではないかと思います。やはりスポーツ立国というのは、スポーツによって国民が元気になって、自分たちの幸福を実感できる国づくりだと思います。
 それを考えると、やはり今、厚生労働省の管轄になりますが、医療費のことを避けて通るわけにはいかないでしょう。ヨーロッパにおけるスポーツ省の大臣たちが集まる会議でよく、スポーツに1ドル投資すると医療費が3.2ドル減るということが言われています。実際に日本でも、長野県において医療費を大幅に削減した町があるります。そういうことを考えて、スポーツと運動と、要するに人生の中で体を動かすということをどうとらえるかということを、スポーツ省をつくって、きちっとやっていただく時期がもう来たのではないかと思っております。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。では山下泰裕様、引き続きましてよろしくお願いします。

【山下】  

 鈴木副大臣にはこのような機会を設けていただいたことをまずお礼申し上げたいと思います。
 宮嶋さんの話を大変感動しながら聞いておりました。全く同感でございます。やはり、特に金メダリストは社会に還元すべきだ、そう思っております。最後の競技スポーツをやらないとというところは、両方を大事にして……。そこだけですね、最後の部分だけ若干違いますが、あとはもうほとんど、私の言いたいことの半分ぐらいは宮嶋さんにお話しいただいたのではないかと思っています。
 私は日本代表チームの選手、あるいは監督として世界相手に戦ってきましたが、当然、本来ならば国際競技力の向上という視点とか、あるいは柔道という視点でお話ししなければいけないと思いますが、あえて今日は国を憂う、スポーツに携わる一教育者という視点で、スポーツが担える、果たせる社会的役割、これを中心にお話をしたいと思っております。それがスポーツ立国につながっていくのではないかと。そういう意味では多少文科省の枠を外れた話もあるかと思いますけれどそこはお許しいただきたいと思います。
 ご存じのように、私の専門は柔道です。柔道を通して学んだことが、私の人生の基盤になっています。スポーツを通して心身がたくましくなることはもちろん大切ですが、それだけではありません。フェアプレーの精神、あるいはきちんとあいさつができる、規則を守る、あるいは戦う相手を、ライバルを尊重する、尊敬する、仲間と力を合わせる、弱者、敗者に対して思いやりの心を持つ、失敗しても失敗しても立ち上がって、自分の目標に向かって挑戦していく。こういうことを私は柔道を通して学びまして、これが私の今の人生の土台でございます。こうしたことが、スポーツを通してしっかり学べていけば、社会的にかなりの役割を果たしていけると思います。そういう意味から言いますと、スポーツの場で学んだことをいかに日常生活や人生で生かしていくか。言い方を変えるとそういうことの大切さを指導者がスポーツをやっている人に伝えていくか。この視点が非常に欠けていたのではないか。これは、スポーツに携わる人間として、非常に我々が反省すべき点ではないかと思っています。
 現在、神奈川県体育協会の会長をしておりまして、私が会長になりまして、ここにポスターを張らせていただいておりますが、こういったポスターをつくって活動しております。大切にしているのは、「日常生活でもフェアプレー」です。「ストップいじめ」ですね。いじめは、フェアプレーの精神に反する卑怯な行為です。
 神奈川県の中学生で、スポーツをやっている子供たちが約7割います。高校で4割5分弱です。こういった子供たちが、スポーツで大切にしているフェアプレーの精神、これをスポーツをやっている場だけではなく、日常生活で生かしていく。そうしたら何かが変わっていくのではないかなと思っております。
 これは、2年前に神奈川県体育協会で、県内で募集した標語の優秀作を集めたものでございます。最優秀が、「光る汗 一緒に流せば ほら仲間」。私は、2年、3年後には、これを中学校、高校、小学校の子供たちが、学校に行けない子供、友達がいない子供、自信のない子供、笑顔を忘れた子供、そういう子供たちに対して、スポーツをやっている子が「一緒に走らない?」、「バレーボールやろうよ」と声をかける、そういう運動を何とか展開していきたいと思っております。
 神奈川県だけでやっても意味がありません。しかし、まず神奈川でこれを成功させて、日本に広げていきたいと思っておりますが、ぜひ、文科省の皆様にこういった活動に興味を持っていただきたい。そして、できたらこういった活動に協力していただきたい。
 もう1回言います。中学校で約7割、高校で4割5分です。先ほど宮嶋さんが言われましたが、勝ち負けよりもっともっと大事なことをスポーツを通して学べるはずなのです。そして、子供たちだけではないです。その前に、スポーツに携わっている、かかわっている我々大人が、フェアプレーの精神を実社会で実践していく。そうしていくと、スポーツをやっている人は多いですから、何かが変わっていくのではないかなと思っています。
 ここのところ10年ぐらい、子供の体力低下が大きな問題になっていますが、体の健康よりもっと深刻なのは、心の不健康ではないでしょうか。そして、子供だけですか。大人の心の不健康も大変深刻だと思います。ここに1つデータがありますけれども、WHOの報告で、世界101カ国の中で、自殺率が高い9番目が日本です。日本より高いのは、リトアニア、ベラルーシ、ロシア、カザフスタン、ハンガリー、非常に社会情勢が不安定な国です。先進国の中では、日本は断トツのトップでございます。
 もう一つの資料です。躁うつ病、統合失調症、精神及び行動の障害、これは90年代から非常に数字が増えてきております。そして、これは読売新聞のデータですが、心の健康に不安を抱えている人は3人に1人、30代、40代では4割です。実は、元検事総長をされていました原田明夫さんと一緒に食事をしたときに、こう言われました。「法務省に入ってくるエリートのキャリアで、目と目を見て話すことが不得手の者が出てきている。話すときに、パソコンを一生懸命打ちながらのほうがまだ話しやすい。これは、かなり深刻な問題だ」と言われました。
 3月の終わりに、元名古屋大学の総長で、現在、大学評価学位授与機構長の平野眞一さんと3時間、4時間ご一緒することがありました。同じようなことをぶつけてみました。「いや、山下さん、そのとおりなんだよ。うちの大学でもね、彼女と話をするのに、隣に座って携帯のメールでやりとりしたほうがいいんじゃないか、こんなのがあるんだよ。これはね、大変深刻な問題だ」と。そして、お2人とも、やはりスポーツを奨励して振興していくことが大事だと言われておりました。
 もう一つ、大変残念なデータをお知らせしたいと思います。自国に誇りを持つ人の割合、これは日本は60カ国中57位でございます。体の健康だけじゃございません。心のほうがもっと深刻です。いかに日本人が病んでいるのか。これに対して、スポーツの振興は勝ち負けじゃない、これが果たせる役割というのはかなりあるのではないかなと。そのことをスポーツ立国を通して、ぜひ考えていただきたいと思っています。
 私も、スポーツと医療費の削減をお話ししようと思ったら、宮嶋さんが話をしていただきました。大変助かりました。以前、もう亡くなられましたが、日本を代表する心理学者、河合隼雄先生とご一緒して色々意見交換する機会がありました。河合先生は、たしか日本の各界の代表的な識者を集めてつくられた「21世紀日本の構想」をまとめられたときの座長だったと思います。さまざまな分野からすばらしい提案があったのですが、大変残念ながら、この中にスポーツの「ス」の字も入っておりませんでした。河合先生に、私は大変失礼ながら、このスポーツと医療費の問題だけをお話ししまして、なぜかといったら、経済の話が「21世紀日本の構想」の中でかなりのウエートを占めていたからです。びっくりされました。どきっとされました。「どうしよう。あの中には、スポーツ関係者が1人もいなかった」。私は、もう河合先生のその純粋さ、その後言葉を失われたんですが、「もうそれだけで十分でございます」と言いましたが。経済的な効果、これもある。さまざまな日本でのデータもあります。世界の体育・スポーツ担当大臣の宣言もあります。
 もう一つお話しします。スポーツと学力です。学力と生活習慣、学力と体力、これはかなり関係が深いというデータが出ています。学力を向上させようと思ったら、体力をつけて、そして生活習慣を改善することが大事だと。生活習慣とは何か。早寝、早起き、朝ご飯です。スポーツをやっている子供たちは、これがしっかりできている割合がかなり高い。
 もう一つ、ルールを守る子供、正義感の強い子供、これも学力が高いと聞いております。以前ちょっとお聞きしたのですが、文科省でも、学力の高い県は体力の平均値も高いとお聞きしたことがあります。そういう意味で言うと、勝ち負けだけではない。本当の意味のスポーツを振興していくことは、文科省が抱えている学力の問題に対しても大きな影響力があると思っています。日常生活でもフェアプレー、心の不健康、あるいはスポーツの振興と経済的な効果、スポーツと学力、こういう話を極めて簡単にさせていただきましたが、そういう意味でスポーツというものをもっと幅広くとらえていただきたいと思っています。
 私は、10年近く前に、参議院の文教委員会に参考人として呼ばれました。スポーツ全般についての意見を求められまして、このときは国際競技力の向上を中心に話をしました。そのときの気持ちと私の今の思いとは何ら変わっておりません。
 政治家の先生方から、終わった後、「山下さん、スポーツ振興の必要性は本当に痛感した。しかし、なぜ日本でスポーツ振興政策がこれだけ遅れたんだろうか」、そういう質問が来ました。私は、大変失礼な発言をしました。正直に。「スポーツは、票にならないんじゃないでしょうか。票にならないことに対して、政治家の先生方の関心は低い。だから、遅れている」、そんな発言をしました。会が終わった後、何人かの方から、「我々は、票にならないことでも必要なことはやるんだ。だから、世界で勝つためにしっかり頑張ってくれ」と声をかけられましたが、この10年間で気がつきました。政治家の先生方以上に、我々スポーツ関係者の努力が足りなかった。スポーツの世界は、オリンピックや世界で勝つことに対して一生懸命に頑張ってきたが、スポーツを通して日本をよくするとか、明るく活力ある生き生きした国づくりをしていくとか、そういうことに対してスポーツがいかに貢献できるか、こういうことを考えてこなかった。私は、そういう意味では、我々自身が反省するところが多々あるのではないかと思っております。
 しかし、文部科学省には、この10年間、スポーツ振興基金とかサッカーくじとか、ナショナルトレーニングセンターとか、そういうところの環境を整備していただきました。これは本当にスポーツ関係者はありがたく思っています。でも、国際競技力の向上という視点においても、これではまだまだ不十分であると思っています。私は、本腰を入れて、明るく活力ある日本をつくっていく。あるいは、相手を思いやり、尊重し、心豊かな、そして卑怯を憎む日本人を育てていく。そういう気持ちであれば、これはやはりスポーツの価値というものを真剣に見直す必要があるのではないか。そして、さまざまな省にまたがっている体育・スポーツ関連の予算をまとめて、スポーツ庁といったものをつくっていく、これが不可欠ではないかと思っています。
 スポーツ立国は、スポーツ界のためだけではない。五輪での活躍だけではない。健全な日本社会をつくって、いわば日本人が母国に誇りを持てる。そういう日本にするために、あるいは子供たちが生き生きと目を輝かせて生活していく、そんな日本にするためにぜひ必要なものではないかと思っております。
 諸外国では、しばしば国のトップリーダーがスポーツ政策をリードしてきました。アメリカ、フランス、オーストリア、イギリス。最近では、ロシアのメドヴェージェフ、プーチン大統領、首相が、このことにかなり発言しています。実は、先月モスクワへ行ったときに、河野日本大使主催の食事会に私の友人が呼ばれました。彼は、この2月まで、メドヴェージェフ大統領のスポーツ担当補佐官をしていました。しかし、バンクーバーで惨敗した後、彼はその職を去って、今度はロシアオリンピック委員会の副会長として、ロシアのスポーツの強化に力を入れてくれと、スポーツ担当補佐官からそっちへ移ったんです。そういう意味で言いますと、日本でも、やはりトップリーダーが、スポーツが果たせる社会的役割、スポーツが担える社会的役割、これについてもっともっと深く認識していただいて、スポーツ政策をリードしていただきたいと思っています。
 最後になりますが、これは世界の体育・スポーツ担当大臣会議での発言ですが、「スポーツ振興への投資は、見返りのある偉大な投資である」。
 ありがとうございました。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。それでは、山田満知子様、よろしくお願いします。

【山田】  

 初めまして。フィギュアスケートのコーチをしております山田でございます。よろしくお願いします。
 まず、皆さんが一番よく質問されるのは、フィギュアスケートで、昔で言えば、伊藤みどりから始まり、今は浅田さんですね、それから恩田さん、中野さんといい、小塚君もそうです、鈴木明子もそうですね、皆、名古屋出身というので、どうして名古屋が強いのですかと言われるのですが、私もよくはわかりません。
 もともとはヨーロッパの貴族だとか立派な人たちが、社交ダンスを氷の上におろしたのが発祥の地とされていて、スポーツといっても、気品高くて上品なスポーツというのがフィギュアスケート。北国、寒いところで盛んというよりは、都会、日本でしたら東京だとか、アメリカだったらニューヨークとかロスとか、フィギュアスケートは、都会的なセンスを持ち合わせたスポーツということだと思われていました。
 もともと昔、東洋人はフィギュアスケートでは勝てない。足も短いし、そういうセンスがないといわれ、ヨーロッパとか、芸術の都ロシア、そういうところが強いのではないかと言われていましたが、私たち、名古屋というところで、多少の都会であり、ちょっと田舎の良い部分も持ち合わせていることが一番ほどよいのではないかと思っています。
 個人競技なので、大体が隣の人は敵というか、同じリンクの中でも調和をとることが非常に難しい。田舎の人というのは、ちょっと隣の人がけがをしたら、どう? と声をかける優しさがあり、名古屋というのはフィギュアスケートの必要な部分を少し持っていると思うのです。それからお稽古事、習い事でお金を出したら、元を取る。「芸どころ名古屋」というふうに昔言っていましたが、かけた分だけは絶対元を取るぞと、親も熱心になるというか、この部分でもいろんなところで名古屋というところがよかったのではないかというのが一つあります。
 それと、もう一つは、柔道でもそうですが、何でもお稽古場、道場だったら道場に、親さんはなかなか入り込めないです。そこはもう選手たちが真剣に闘うところですので。アメリカとか海外でも、スケート場に親さんは連れてこられても、リンクの中には入られず、2階の観覧席から子供を見守るとか、送ってきて、また迎えに来るとかというのが、ほとんどのリンクの例だと思います。ところが、私のところは選手の親とか一緒になって進むという形をとりました。
 スケート場、大きなリンクにものすごく選手がたくさん滑っています。個人競技なので私は、個人レッスンで、1人の子しか見ていないです。1人の子を見ていると、こちらの子は皆、習ったことの自主練習です。そうすると、その間に新しい技ができたとします。でも、先生は見てくれてなくて、親もだれもいなかったら、何かやったというのがすごく楽しくないじゃないですか。やはり親さんは、自分の子供だけを見ているので。それで、親さんと一緒に見ていれば、子供が小さくて、やめたくなるときもあるでしょうけど、ご家庭でどんどんスケートに興味を持ってもらえるということで、家族をどんどん入れると。昔、早朝で、コンパルソリなんていうのがあったのですが、お父さんも、下の子供さんの食事の世話よりも、リンクへ連れてきたほうがいいということで、子供さんのほうを連れてきてリンクでやってから会社に行くというので、もう家族ぐるみで応援してくださるようになる。
 そうすると、みんながスケートに興味を持ち、ジャンプできなかったり何かができても、おうちへ帰ってもスケートの話題ができるということで、私は、一応父兄も全部リンクサイドにずらーっと並べるんです。うちの親たちは、毎日リンクに来ていますので、もう連盟の方たちより通になってしまいます。どういう飛び方をしたらいいとか、もう興味がありますから、海外のビデオから全部、どの子のジャンプがどうだとか、ああだとか色々大事なこともありますが、リンクサイドでプレスの方が取材に来られても、ママたちが「あなたのジャンプはこうでしょう。型がこうで!」とやっていると、「すいません、先生、あの方はコーチですか」、「いえいえ、父兄です」と私が言うんですけど、そのぐらい父兄の方が、名古屋の場合は熱心というか。
 でも、この方法もマイナス面とプラス面と両方ありますが、私はやはり介入したほうが絶対いいのではないかということで続けています。私のところが始めたので、今、名古屋の先生方は、ほとんど、親子ともども一緒になって、親と一緒に指導しております。
 指導法ですが、もともと私は、始めたのが戦後で、明治生まれの父親とか、連盟とか、テレビもビデオもない時代ですし、何のフィギュアスケートの知識もない人たちが、海外から資料を取り寄せて教えてくれるので、楽しくないです、明治生まれの父親って。今のようなマイホームパパじゃないですから。それで、スケートが嫌で嫌でしようがなかった。だから、まさかこのお仕事に私がつくと思ってなかったですが、やはり自分でお仕事についたときに、もしも私がスケートに興味があったら、もう少し上手な選手だったのではないかと思いました。ですから、私が今、プロのコーチになったときには、とりあえずリンクに来るのが、お友達とおしゃべりするのがいい、先生と会えるのがいい、何か新しい技が習える、何でもいいからリンクに来たいなと思う環境をつくりたいなと思いまして、できるだけ楽しく、自分が楽しくなかったので私は子供の目線も思うようにしています。小学校低学年は低学年なりに、大学生は大学生なりにと、同じ目線で話をしたいなと。
 今、うちも村上佳菜子という新しい子供ができたというか、出てきたのですが、15歳ですが、私としては、記者の方に「先生と生徒の間柄を先生はどのように思われますか」、「お友達だと思います」と言っているのですが、選手は多分、おばあちゃんと孫というふうに思っていると思いますが、私は、できるだけ友達感覚というか、楽しくみんなと一緒に泣いたり、一緒に笑ったりしたいと思っています。青春時代、25歳ぐらいまでスケートをしますね。1回しかない人生ですから、後悔しなくて楽しかったな、と思うように過ごしていかせたいと思っています。世界一は世界で1人しか出ないですが、やっていて楽しかった、よかったなというふうに言ってもらえるような、だから強化というよりも、普及のほうが私は合っているのではないかと思います。みどりをはじめ、うちの選手の子たちは、「ほんとに先生の子供さんは、みんな楽しんでスケートを滑っている」と。結構うちは笑顔がかわいいとかみんなに言ってもらえるのですが、できるだけスケートを通じて楽しく、山下さんたちが言われましたように、残りの人生のほうが、80歳まで、90歳まで生きるとしたら、スケートをやっているときよりも長いです。だから、スケートを通じて、社会へ出たときに、それが明るくみんなにかわいがってもらえて、助けてもらえて、そういう人間になりたいというふうにいつも子供たちに言って指導をしております。
 あと、オリンピックのときに、1つ皆さんがよく覚えている浅田真央ちゃんとヨナ・キムさんとの戦いですが、真央ちゃんはトリプルアクセルを回っておりました。ヨナ・キムさんは、トリプルアクセルを飛びませんでした。でも、うちは負けちゃいました。そのことについて色々ご質問されるのですが、今、加点というのがあるんです。
 もともとフィギュアスケートというのは、主観的なスポーツです。例えばジャンプは、空中で高さがどれだけ、飛距離がどれだけというわけではなくて、見た感じで、おお、すごいと思ったら点数が出てくる。でも、それではやはりスポーツとしてよくないのではないかとルールが変わりまして、1個1個の、これをやったら何点、これをやったら何点、スパイラルというのがあるのですが、あれをやったら何点。だから、見ていておもしろくないですが、そういうふうに細かくはなったんです。
 それとプラス加点というのが出てきました。例えば、真央ちゃんのトリプルアクセルは何点と決まっているのですが、非常に美しければそれにプラスとかが、加算されます。ヨナ・キムさんは、もともとジャンプの高さと飛距離がある方なので、見映えがします。それで加点をたくさんもらいました、簡単なジャンプですけど。真央ちゃんの場合は、加点があまりもらえなかった。その差もあって負けてしまいましたが、そこで問題なのですが、連盟の方、アマチュアの団体の組織の方ですが、ジャッジなさる方ですね、そういう人たちが、トリプルアクセルというのは非常に難しいわざ、もうやっただけで加点をもっと出してもいいんじゃないかとか、そういうことを世界の人たちにアピールしていただいていれば、もう少し得点は変わったのではないかなという気がします。
 それが難しいのですが、昔、みどりたちがいたときには、連盟はやり手の方というか、すごく英語も達者で、「日本人は足が短くて何が悪いんだ!でもパワーがあるんだ!」とか、もうすごく外国の人たちにそう言って、日本人を一生懸命売り込んでくださった。今は、国際大会に行ったときに、アピールが足りないです。その辺が非常にこれからの課題というのが1つ。
 それと、もう一つは、施設の問題ですが、私たちは刃物をつけて滑っています、氷で。みんな忘れてしまうと思うのですが、すごく怖い。それで、ある子は、くるくる回るスピンをやって、フラングキャメルという、足を上げてやるスピンをしているとき、後ろを向いていて子供が来たときに、ちょうどエッジが顔に当たって、大変な大けがをして問題になったり、それからこれはうちの名古屋であったショートトラック・スピードスケートですが、というのは、あのエッジはストップがなかなかできないもので、滑っていて転んでしまって、足を上げてこう来た。そうしたら、私たちは一般営業で練習しておりますので、一般のお客様が怖いと思って逃げた。そうしたら、フェンスがまな板になって切れてしまったということがありました。やはりそういうけがが怖いです。
 だから、リンクのほうが、事故を起こさないようにということで、込んでいる時間はジャンプ禁止、スピン禁止にしています。今、リンクは6時まで営業ですが、子供たちが来られるのは4時半。学校が3時半に終わって、急いで来ても4時半。そうすると、リンクが込んでしまいます。その4時半からは、ジャンプ禁止になります。土曜、日曜は、一般のお客さんがたくさん来るので、ジャンプ禁止。すると、いつ練習したらいいの?ということは、学校を早引き?今、学校が大事と言われましたが、本当にそうなんですよね。そして、練習も、夜終わってから。ホッケーさんもいます。割り当てでなかなか来ません。そうすると、終わるのが夜11時半とか。それでおうちへ帰って、それから急いでおふろに入って、宿題やって、寝てと、早朝が朝5時に起きて、いつ寝るんだというぐらいやはり大変です。やはりリンクが民間の営業リンクですし、時々、代々木のような国立だとか、名古屋市でつくっていただくリンクは、大きな体育館みたいなリンクですが、そこは一般の市民に開放ということで、私たちインストラクターのプロが選手を連れていって教えることは、ほとんどできないというリンクです。
 今、名古屋の中京大学で、スケート場をつくってくださったので、私たちはわりに恵まれています。今の村上佳菜子もうまくなったのはそこのおかげではないかと私は感謝していますが、でも、そこも難しい。いい環境で、いい氷があれば、いい選手ができるかといったら、それも違います。ぜいたくはよくないです。中京大のリンクは氷も本当にきれいな氷です。試合よりきれいではないかと思うくらいです。時々滑ってみると、スーッと滑ります。これでなれてはいけないんじゃないかと思ったりします。海外へ行ったときに、こんなきれいなリンクで試合をやらないかもしれないと思いまして。いろんなことで悩み、悩み、私も大須の下町のリンクに行ったり、中京に行ったりしていますが。
 だから、施設の問題も、とりあえずは一般民間リンクで私たちは練習しておりますので、やはりなかなか思うようにできない。リンクを借り切って練習するのにも、1人の選手が曲をかけショートとフリーとやると、10分ぐらいかかります。そうすると、1時間半リンクを借り切ったとしても、15人しか曲がかからない。でも、40人ぐらい滑っていると、あなた方はあさってということになりまして、試合前だというのに、本当にそういう練習もままならないという悩みがあります。みどりでもそういう中でやってきて、時代が違うかもしれませんが、人間、わがままを言ってはいけないと思いながら、子供たちを育てております。
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。

【尾﨑大臣官房審議官】  

 ありがとうございました。それでは、意見交換の時間とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【高井大臣政務官】  

 いやいや、圧倒されましたね。すばらしい。
 少し遅れて参りましたが、政務官の高井美穂と申します。大変示唆に富むお話を色々とありがとうございました。本当にさまざまな点、同感する部分が多いんですが、1つ、河合さんにお聞きしたいんですが、まさにスポーツ上、色々議論する中で、パラリンピックもスポーツのほうにというのは、我々も本当そう思っています。いろんな形の支援もと考えているんですが、各地域の障害者スポーツという部分には、多分いわゆる福祉的な厚生労働部分と一緒にやりながらというか、そこでなければできないことがあるのかどうかちょっとわからないんですが、もういっそのこと、例えばスポーツ庁ができてしまえば、障害者スポーツもみんなこっちに入れるということができていくのであれば、地域のスポーツクラブなり、障害者のスポーツとの連携とかで何か問題が生じることはありますか。それとも、障害者のスポーツというのは全部スポーツのほうにとってしまっても、特に何か問題があるとはあまり感じないかどうか、そこら辺をちょっと教えていただければ。

【河合】  

 私の考えですが、もちろん導入というのは、障害を負う段階がどの段階かということによっても、大きく変化はあると思います。けがとか病気等で障害を負ったという場合には、病院との連携とか、スタートラインがそこになるので、やはり従来のリハビリテーションというところがスタートラインになっている方もいると思います。
 ただ、障害者で、今日私がお話ししたものは、アスリートというか、競技スポーツというふうにとらえられる分野があって、多分、一般の方々で言うと、生涯スポーツと言われる一生涯のスポーツですよね、というものと競技スポーツは関係性があると思います。それにプラス・アルファ、多分障害者はリハビリテーションがもう1個くっついているというふうに僕なんかはイメージがあって、それらの中で、それを一体的にしていくというのは、これからも必要なことではないかと思います。健康とか、そういったものは、今も厚生労働省の管轄でいろんなことがされていると思いますが、それと関係性はあるのかなと。ただ、今いきなりそれをすべて一緒にしたときに、重度の方であるとか、そういったことに対応ができないということでの、そういう意味での抵抗とか障害がそこにもあるのではないかと考えます。
 インストラクターとか、いろんな資格が日体協等もありますが、その中に障害のある方が来たときにどういう支援をすべきかということも、資格の制度の中で、これは受講すべきことであるというようなものに変えていくことで、そういったものはいいと思いますし、今、公共の施設で使用拒否という問題はほとんどないと思いますが、相変わらず民間のスポーツクラブで入会拒否というのは、かなり頻繁に起きている問題です。同じように料金を払っても、ほかの利用者への迷惑があるからと。こういうことはもっと行政的にも指導をしていっていただかないと、それは民間の側のやっていることだからということでうやむやになっていることは、僕もたくさん目にしてきています。そういう意味でも、スポーツ庁とか、1つになっていくことで是正されていくのではないかと考えます。

【高井大臣政務官】  

 ありがとうございます。
 もう1点、これは山下さんか宮嶋さんにお伺いしたほうがいいかもしれませんが、今、まさにスポーツの価値を向上させたいと思っていて、喜びというのはすごく、私もスポーツが好きでしていたほうなので思うんですが、今、女の子ほどスポーツをする人としない人がすごく極端に分かれつつあるという中で、学校の体育というのは、導入として、スポーツというか、何かできた喜びを感じるのにまず一番最初だと思うんですよね。親御さんがスポーツが好きで、幼少のころから連れていっている家庭でなければ、小学校で初めてスポーツをする子供もいまやいると思うので、そのときの喜びを感じさせるために、体育の中でのどういう部分を改善なり、いい点が、何かそういうことを感じさせるような体育のあり方なり、ちょっとヒントかアイデアがあれば教えていただければなと思います。

【山下】  

 では、まず私から。私が知っている範囲というのは、大学、高校が中心ですが、文科省の体育というのは、生涯スポーツにつながる、体を動かすことの喜びを知るということを非常に大事にしていると思います。授業を通して、体力がつくことは大事かもしれません。でも、技術的にうまくなることよりも、体を動かすことの楽しさを知る。もっとやりたいと思う。その先に、できなかったことができる喜びというのができると思います。
 ですから、確かに今、二極化していまして、非常に運動能力の高い子と、全く低い子と、これはそういう意味で非常に心配ですが、うまくなること以上に、動かすことが好きになる。スポーツをやることが、体育の時間が楽しみになる、そういう授業をより展開していくことが大事ではないかと思います。

【宮嶋】  

 私は、実は、そのテーマで番組をつくったことがありまして、タグ・ラグビーの番組ですが、「スポーツ嫌いが大好きになる」というので、タグ・ラグビーを取り上げました。サッカーですと、どうしても経験者がどんどんボールを回してしまうので、ボールが回って来ない。ところが、そういったときにタグ・ラグビーというのは、ラグビーですから次々にボールが回ってきますから、一番足の遅い人に最後に必ずボールが回ってきます。先生が上手につくりまして、女の子でも、足の遅い子でも、必ずボールが来る。そのボールを持った子はゴールに走っていくわけですから、もう本当に楽しくて、スポーツ大好きになったと。その教室も、みんなの結束がものすごくよくなったのです。
 だから、どういう種目を取り入れて、どういうふうに指導したらいいかという目当てみたいなものを、もう1回、山下さんがおっしゃったような、体を動かすことの楽しさを知るということに重点を置いたほうがいいのではないかと思います。今みたいに、技術で逆上がりができるとか、跳び箱が何段飛べるとか、それを優先するのではないほうがいいのではないかと私は思っております。

【高井大臣政務官】  

 ありがとうございます。

【山下】  

 やはり、指導する側の力量というのはあると思います。うちの大学でも、学校体育授業研修会というのをここ3年ぐらい続けてやっていますが、ここに来られた中学、高校の先生方が目からうろこだと言われることがあります。中学校の先生方、大変忙しいのですが、そういう自分の授業をもっともっと教授力を向上していくような、そういうところも必要なのかもしれません。

【河合】  

 やはり評価、評価になってきていて、子供もそうですし、教員もそうですが、見えることでどうやって評価できるかという、見てとるというところにすごく注目がいきます。僕が言うと少し重みがあるかもしれない。見えないことを評価するという、見えないものの大切さではないかと思います。例えば、フェアプレーの精神とか、友情とかは、見えないがすごく重要だとだれもが思うことをどうやって伝えるかということをもっと真剣に考えないといけないのかなと思います。

【高井大臣政務官】  

 ありがとうございます。

【山下】  

 賛成ですね。

【宮嶋】  

 賛成。

【鈴木副大臣】  

 今の関連で、5、4、3、2、1ではないが、体育に点数をつけていますよね。あれはどう思いますか。国によっては、体育とか、音楽とか、図工とか、美術には、授業ではちゃんとやるんですが、点をつけない。そういうところもありますが、実は僕はスポーツが好きだったので5だったんですが、美術に2をつけられて、ずっと何か抵抗がある。そういうのは今みたいな生涯スポーツにつなげるということで言えば、確かに好きな子はクラブをやるんですよね。私も色々なことをやりましたが、やはりスポーツ嫌いをスポーツ好きにしていくというのは本当に大事だなと、特に学校教育で痛感しているんです。

【山下】  

 以前、相対評価から絶対評価に変わりました。そして、もう一つ、その子の上達度を大事にしていくと。これは、教育する側から見ると非常に大変です。その子をよく見ていないと。でも、この視点というのは、非常に人を育てるという意味では大事なのではないかと思っています。ですから、スポーツでもその視点は大事だと思います。
 ただ、運動会で、最後、一緒に手をつないでゴール。私はこれはおかしいのではないかと思っています。大事なことは、多様な評価をして、その人の持っているいいところを色々な違う形から見ていくことであって、それが今は、全体的にどうも学力というところで、その人の人間のレベルまで見てしまうようなところがある。だから、学力も高くない、低い、それから運動能力もない、だけど、非常に優しい心を持ったり、人の嫌がることを進んでやる、そういうことなんかはすばらしいです。ですから、やはり人をはぐくみ、育てるという視点で見ると、多様な評価をして、多様な視点から見て、その子の持っているいいところを引き出していく。
 だから、私は体育でも評価はあっていいと思います。なくすと、逆にみんなで手をつないでゴールというのがますます広がっていくのかなと。そのときに、ただうまい、下手だけではなくて、その子が頑張った度合いとか、その子なりの進歩を評価する。多分、文科省の基準はそういうふうになっているのではないかと思いますが、それをよりしっかり現場で大事にしていただくといいのではないかと思っています。

【鈴木副大臣】  

 ちょっと話題を変えまして、2つ伺いたいんですが、団体のガバナンス、これは色々な方が触れられましたが、今、スキー協会ならスキー協会、スケート協会ならスケート協会、山下さんの場合は柔道という種目と体協という、ある意味で横の、それから河合さんはパラリンピアンズ協会の会長をやっておられますが、宮嶋さんは色々な日本のそういう団体を見てきたと思うんですが、今回、スポーツ基本法の中で、まず大事にしたいのは、まさにスポーツの中にフェアネスとジャスティスというのをもう一回きちんと確立するということをやりたい。
 その中でスポーツ権ということを言っていて、見る、やる、する、支えると。さっきの河合さんの話なんかは、やはりスポーツ権の精神からすると、スポーツ権の侵害ということにもなるんだと思うんですね。いきなりそれが裁判規範になるかどうかは別問題として、少なくともそういうことは権利としてあるんだということをきちんと位置づけた上でということは、1つ大事なことだと以前から思っているんですが、フェアプレーの源であるはずの色々な日本の団体というものが、今後どういうふうなあり方であったらいいのかなという、そのあたりを1つ伺いたい。
 2つ目は、冬の国体はどうしたらいいですかというのを岡部さん、宮嶋さん、山田さんに。さっき、教員の部を復活の話がありましたが、それも非常にヒントになったり、要するに1周はしたので、僕はやめるなんてことは全然思っていませんが、やはり意味あることにしていきたいと。もちろん、競技ごとの色々な事情もあるでしょうが、その点をぜひ。

【岡部】  

 そうですね。1つ目の団体組織について、私の場合は選手時代全日本スキー連盟に在籍した後、教育部とアルペン部の組織になっているところで、私は、教育部のほうで2年ほどアドバイザーをさせていただきました。
 教育部の中には検定と言う子供から大人まで上達する上で指導を受けられますが、特に指導員レベルの検定を受講して受かった方は毎年研修を受けなければいけないというサイクルがあります。数多く資格者がいる方々がナショナルチームや国を代表する選手らに応援に参加できるといった気持ちになることが大事で、ぜひとも1人1人がファン(スポンサー)になっていってほしいと思います。日本代表になった選手たち、もちろんオリンピックの代表、あるいは国体の代表になっていくという部分のファンになってもらえるような気持ちになるには、いわゆる検定費、毎年の講習等以外に「選手育成費など」を組み込められれば強化費などにも当てられて、良い循環が望めるはずです。国体も含め仕分けを明確にしていく事が、多くの資格者も納得し心から応援する気持ちに繋がっていくと思います。
 国体は、私自身も少年組から出場した経験がありますが、社会人になってからはほとんど海外にいたので、なかなか出場出来ませんでしたが、先ほど申し上げた教員組の復活をすることによって、種目のあり方、意識の高さが生まれていくのではないか。また、特に冬の国体の場合はやる場所がすごく限られてきて、もちろんそこには大きなお金というか予算が必要になってきます。運営するほうも大変な苦労がありますが、開催する、都道府県の方々の姿勢というか、モチベーションが高まる。モチベーションが以前はすごくあったのですが、今は薄れてきているのは、そこに予算がなくなったりとか、出場する枠の人数が減ってしまったりとか、色々な厳しいルールができてしまったりというものも少なからずあるでしょう。その辺も改善していき、あとは冒頭にも話しました地域の地元の子供たちが、雪国にいながら授業を行えていない現状が、大会への観戦に、行かなかったり、見なかったりというふうに関心が薄れてしまいます。やるスポーツも、見るスポーツも、国体を通して教えられるのではないかと思います。ですから、ぜひスキー授業の話もしましたが、国体をやることが1つの目標にもなるわけですし、そこを経て今度はオリンピックであったり、色々な目標の設定になっていくと思うので、ぜひとも新たな地域をもっと活性化出来る様なあり方、考え方を変えつつ、今の時代に合ったやり方も含めてやっていってほしいと思います。

【河合】  

 僕は、障害者のスポーツ団体というのは、先ほど言ったように、ほとんど法人格もなくてやっているところですので、その中で考えるとJOCをはじめ、体協に入っているような競技団体はとても力があると思いますが、ご存じのように海外と比べると、その予算というのはまだまだ少ないです。やはり世界が一緒になったから、日本も一緒にしてほしいと我々もこうやって要望しますが、そうすると、もともと小さなパイをまたそこで分け合う。我々からするとすごく大きなパイなのですが、世界と比べればまだ小さい。それすらも取られてしまうとなると、そこを守りに入ってしまうというのは、やむを得ないと、正直思います。なので、一緒になることで、さらにパイを大きくできるということを示していただけることが、やはり今、障害者のスポーツ団体が抱えている問題を変えていくためには必要なことではないかと思います。
 例えば、JOCのスポンサー事業等がありますが、年間1億円とか、数億円で契約が、ゴールドパートナーがあると思いまですが、パラリンピックのところは、同じ企業は消費税分でいいからしなければいけないよというルールづくりとか、その分税制の優遇措置を考えましょうということは、政治でもできるのではないかと思います。そういうことをしていかないと、今はそれすらもないという状態ですので、そうすると社会的にもその企業はオリンピックだけではなくて、パラリンピックにもしているということは、当然マイナスにはならないということで、一緒に増やしていく仕組みであるとか、ともに高め合えるような施策というか、そういうものを考えていただければ一番いいのではないかと思います。

【宮嶋】  

 私は最初に、この30年間、ドラスティックにスポーツが変わってきた、世界のスポーツが変わったというお話をさせていただきましたが、そのわりに、いわゆるナショナルフェデレーション、競技団体というのがほとんど変わっていないのです。
 多分、皆さんも競技団体に行かれるとわかると思いますが、会長はよく代わったりするが、理事会はあまり変化がない。理事会のメンバーは大体スポーツを今までやってきた人で、上意下達でみんな体育会系のシステムの中でやっているというふうに、日本のNFというのは本当に変わらなくて、本来、その中からIFに出ていくような理事たちを出していかなければいけないのに、そういう人たちも育てていない面があると思います。
 私は、サッカーなどはマネジャーや色々なシステムで外部からいわゆる人を動かす術、お金を動かす術を知っている、ノウハウを持った方を登用しているようですが、やはりこういう変化が本来それぞれのNFになければいけないと思います。
 あるNFの会長が、「全くどの理事も、1人も現場を向いていない」と言って怒っていたのを聞いて、「それはどこも同じじゃないですか」と思わず言ってしまったのですが、そういうところがあると思います。理事というのは1つの名誉職になってしまっていて、その競技をやった人たちが何か勲章として得られるところ。その人たちが会議で決めるということが、非常に現場と遊離したものが生まれてきているというのは確かにあると思います。これは、本当に変えなければいけないことだと思います。
 ただ、それが文科省でできるのかどうかというのは、私はその辺の力関係がよくわからないのですが、もし変えられるものならぜひ変えていただきたいと思っています。

【鈴木副大臣】  

 例えば、選出のルールのウエートあるいはそこの選び方ですね。

【宮嶋】  

 そうですね。

【鈴木副大臣】  

 そういうもののガイドラインというものが1つあるのかもしれませんね。

【宮嶋】  

 はい。それで、例えば会長の年齢ですね。もう幾つになったらやめなさいと、やめなければいけないということで交代していくようなところもありますが、もうちょっとドラスティックなものがないのかなというのは思っています。

【鈴木副大臣】  

 例えば、社団と財団とでちょっと違ってくると思いますが、要するにスポーツコミュニティというのは、選手というかプレーヤー、その人たちが実はメーンで、それを助けるコーチだとか、監督だとか、お世話をする色々なチームマネジャーという人たちが、本来のコミュニティのコアなわけですね。であれば、その人たちに応じた投票権といいますか、そういうものを配分していくということを、社団法人であればその理事なり、代表の選出というのは、そういうルール、ガイドラインですが、財団の場合はまた違いますが、それとて、ある種のそうしたコミュニティの色々な分野の人たちからの代表者によって選考されなければいけないということを決めるということは、一般論、理論的に可能だとは思う。そういう勉強は幾らでもできる。他の例を見ればあり得るんだと思いますよね。
 ただ、そこはもちろん団体の自治というものがありますから、しかし、そこに税金が入っていて、まさに健全な発展というものが非常に重要だということになった場合には、ある種のモデル約款ではないですが、そういうことはなくはないということだと思いますね。

【宮嶋】  

 はい。

【鈴木副大臣】  

 国体は何かありますか。国体は、全くブレスト的に言うと、さっき帯広の話をされましたが、例えばスケートだったらスケートは、全国4カ所ぐらいをローテーションするとか、スキーだったら、特にジャンプなんかは、ここの3カ所とか4カ所を回るということになれば、逆に言うと4年に1回は帯広でスケートがあるとか、名古屋もあってもいいのかもしれませんが、結局、今まで47都道府県全部回すということで来ましたと。一方で、高校ラグビーの花園だとか、もちろん甲子園だとか、それがかなり特徴を持った、まさにまちづくりというか、地域づくりにもなってくると。だから、そのやり方を変えるだけで、スケートは帯広と群馬県とどこそこということとか、フィギュアは名古屋がメッカになるとか。

【宮嶋】  

 それが2カ所ぐらいだと、交互に長野と帯広とというのは、それはありだと思います。十分にそのほうがいいと思います。なぜなら、雪が降って、氷があるところがそんなにあるわけではないので、みんなそこで頭を悩ませていることだと思うので。

【岡部】  

 そうですね。ジャンプ台をつくらなければいけない。それが大変なんです。

【宮嶋】  

 むしろそれで町を発展させるという手段でやっていくというのはとてもいいことだと思います。

【岡部】 

 そうですね。

【山下】 

 宮嶋さんと何でこんなに意見が同じなのか……。いや、話そうとしてメモしていたことが全部重なってしまいますが、やはり組織がアマチュアだと思います。だから、本当に選手強化をしていくにしても、そのスポーツの普及を図っていくにしても、やはり自主財源を得るにしても、その組織がプロになっていかなければいけない。しかし、ずっと30年変わっていないと思いますが、あまり変化がない。これが1つですね。
 それから、もう一つは、選手強化は一生懸命やっていると思います。ところが、選手が終わったその人たちが、選手としてではなく違う形で支えていく。その人たちの人材育成をしていないです。情けない話をしますと、私より少し上の年代の人と一緒に、オリンピック金メダリストなどと食事をしたりすると、「いやー、山下君、君のロスのオリンピックはね」という話になります。違うだろうと思います。やはり、それだけの活躍をした人は社会的な使命感があって、今のスポーツ界と、これからの青少年の健全育成とか、そんなところで、集まったら熱く議論をすべきだと思うのですが、そんな話をすると、完璧に浮き上がってしまうものですから、そういう話はしません、浮くのはあまり好きではないものですから。
 ただ、ここで1つだけお話しさせていただきたいのは、私は文科省の在外研修員の制度で1年間海外に出させていただきました。これがものすごく大きかったです。私の人生を変えました。だから、もし私がわずかでも日本のスポーツ界とか、色々なところに恩返しができているとしたら、この制度のおかげです。ですから、これに私が行って、帰ってきた後は、私は次の日本の柔道界を背負うと思った人間に声をかけて、行きたいと思ったらその人間の所属に、この人間はこういう形でこれから柔道界を背負っていってほしいと口説きました。なかなか組織が出したがらないような人が、本当は行かなければいけないです。
 私の教え子の井上康生も現役が終わって、今行っていますが、彼は2年間ですね。ですから、本当にスポーツ界が選手だけではなくて、スポーツ界を引っ張っていくリーダーを育成していくという視点、もちろん国際スポーツ、スポーツステージの中で活躍していくのもそうですが、そういう人を育てるという視点からいっても、この在外研修員の制度はこれからも大事にしていってほしいと思います。
 ただ、1点だけ、そうやって国の貴重な税金を使って出させても、帰ってきたその人間をどう育てているのかということに関しては、厳しくチェックを入れていただいて、ふさわしい人材を送ったり、勉強してきた人間に対してしっかりした処遇とか、与えられないようなところは減らすとか、そういうことはあってもいいかと思っています。
 私はサッカー界のことはよくわかりませんが、ちょっと離れて見ていますが、日本サッカー界のやり方というのは、あれだけのことはほかの競技ではできないが、あそこだけは少なくともプロの軍団であって、サッカーの実績がすばらしくなくても、サッカーが好きで、そういう人たちに対しては、色々な人、プロを集めていただきたいと思います。そこからほかのスポーツ団体が学ぶところはいっぱいあるのではないかなと思います。

【山田】  

 私はプロのコーチで、今、柔道とかスキーは、多分プロというのではなくて、組織の中の強化の人たちが教えられるのでしょうか、どうなのでしょう。私たちは全く連盟とかとは関係なく、プロコーチには、プロの協会というものがあります。あとは、組織として日本スケート連盟というのがありまして、そこに強化部というのがあって、強化合宿とかをやっているのですが、本当に実際的に教えているのは私たちプロというのがフィギュアスケートです。
 昔、伊藤みどりのころは、アマチュアはお金を稼いではいけません、アマチュアだからというので、多分山下さんもそうでしょうが、本当に何に出ても一銭も自分のところには入らない。でも、今の真央ちゃんたちはコマーシャルなど、そういうIMD、マネジメント会社と組んでどんどんもうけて、それでアマチュアというので、選手のほうはそういう活動をしているのですが、組織のほうは連盟とプロというのは全く分かれております。私たちのもう少し前の時は、オリンピックの時に選手村にプロのコーチは入れませんでした。というのは、組織団に入れていただけなくて、毎日選手を見ているのは私たちで、この子が熱を出しても連盟はわからないでしょうと思っても、組織の中ではプロという肩書きなので、別のホテルに、自分で自費で行ってくださいという形で全く。今はオリンピックにも入れていただけますが、やはり組織の中ではないです。それがもう少し日本スケート連盟と日本インストラクター協会とがかみ合いながらやっていけるともう少し変わってくるのではないかというのが1つありますね。
 それから、国体のことですが、オリンピックというのは、国体が大きくなったものと私は子供に言っているのですが、世界選手権というのと、全日本というのが似ています。県のお祭りというのが国体であり、オリンピックで色々な競技の人が一緒になって、世界選手権と戦う選手は一緒ですが、国のお祭りが少し模様が違う。だから、そういう意味で、国体は国体の楽しさというか、独特なものがあるような気がしますので、私はやはり国体は続けてほしいと思っています。

【鈴木副大臣】  

 はい。今日は本当にありがとうございました。本当に参考になりました。
 あと、若干ご紹介をしておきますと、今、セカンドキャリアをどうするかというのも、そのことを通じて生涯スポーツと競技スポーツの二項対立をなくして、やはり好循環にすそ野が広がればトップも強くなるし、トップも強くなればすそ野も広がるしというのを、セカンドキャリアでつないでいく。要するに、トップアスリートが地域スポーツ、生涯スポーツに戻っていただくということでつないでいきたいし、逆に言うと、若手育成のときも、ずっと強化しているわけでもない。そこはちょっと違うかもしれないが、英語とか、クラブマネジメントとか、あるいはスポーツ科学とか、医学とか、栄養学とか、そういうことを選手にも基礎の基礎の基礎ぐらいでいいんですが、学んでいただいて、もちろんやっていくということは、選手力にもつながるし、セカンドキャリアにもう一回本格的に学んでもらうといったときにも、ちょっとでも聞いているのと、全く1からというのは違うんじゃないかなということを今やっています。
 それから、もう一つは、2010年、今年から、寄附文化が変わる、あるいは変えていきたいと思っています。というのは、まず、子ども手当ですね。これは、所得制限をつけるとかつけないとか色々な議論があったんですが、まず最初は、日本人を信じてみよう、かけてみようと。つまり、今回1,000万円の所得以上のお父さん、お母さんにも子ども手当がいくんですね。2,000億円いくんです。このうちの1割でも子供たちのスポーツ、若者たちのスポーツに回れば、一挙に200億円。これはまさにファンドレイジング、プロがいるか、いないかでは全然違ってくると思うんですが、そういうお金の流れができたと。かつ、この前、先週ですが、税額控除という、寄附をすればその分税金からその額丸々引くという、寄附文化を促進するための税制をやるということを決めました。だから、寄附文化をやる大チャンスだと思っているんです。
 これをもちろんスポーツ関連の団体、あるいはメディアも含めて現場の人たちがどうやって、もちろん文部科学省は必要な予算を確保しますが、地域のお父さん、お母さんたちに、あるいは日本中のお父さん、お母さんたちに、子供たちのスポーツを、もちろんパラリンピックを含めて応援していくのに寄附をしてもらうかという知恵をお互いに出し合いたいということと、加えて企業の皆さんもどうせノートは買うし、消しゴムを買うし、清涼飲料水も飲むと。その中で、やはり企業さんが売り上げの1%でも2%でも、例えばパラリンピックのそういったものに寄附していくとか、あるいは子どもの地域スポーツに寄附していくとか、そういう企業もぜひ出てきてほしいなと。これは寄附ですから、国が強制することではなくて、強く強く期待することですが、その辺もまさにこれから皆さんと一緒にそういう文化、スポーツを愛する文化、もちろん国も最低限の絶対やらなきゃいけないことはやり続けますが、国だけではなくて、国を基盤としながら、本当にみんなで応援していく。そういう意味でスポーツを支えるということもキーワードにしながら、スポーツ基本法ないし、そういう文化づくりをやっていきたいと思いますので、これをご縁にどうぞよろしくお願いいたします。
 今日は、本当に長時間、貴重なご意見ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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-- 登録:平成22年07月 --