スポーツ振興基本計画 2スポーツ振興施策の展開方策 1スポーツの振興を通じた子どもの体力の向上方策 B

2 スポーツ振興施策の展開方策

1.スポーツの振興を通じた子どもの体力の向上方策

B.政策目標達成のための基盤的施策

 子どもの体力を向上させるため、教員の指導力の向上や子どもが体を動かしたくなる場の充実を図るとともに、学校体育の充実を図る。

(1) 教員の指導力の向上
 
1 到達目標
   児童生徒の発達段階等に応じて指導し、スポーツの楽しさを感じさせることができるよう、教員の指導力の向上を図る。

2 現状と課題
   体育の授業及び運動部活動の充実には、優れた指導者の確保が重要である。しかしながら、実技を伴う体育科では、小学校において、特に、高学年では指導内容が高度化するために児童の関心・意欲や技能にあった体育指導が困難と感じる教員が少なくない。中学校や高等学校においても、実技指導力を有する教員の配置や、複数の教員による指導など創意工夫を生かした体育指導の充実により、一人一人の能力等に応じた指導ができるようにすることが求められている。
 また、我が国固有の文化に触れるための武道の指導は、伝統や文化を尊重する態度を養うとともに、自分を律し、相手を尊重するなど人間性を培う上で有効であり、その専門的指導を行うことができる人材を確保することは重要である。

3 今後の具体的施策展開
   児童生徒が発達段階に応じて、運動の楽しさや喜びを味わうことや体力を向上させることについて、各学校の体育の授業や運動部活動における取組が適切に進められるよう、実技を伴う研究協議会の開催、学校種別間の連携等を含めた講習会の開催、大学院修学休業制度も活用した大学院への派遣等を通じて、教員の指導力の向上を図る。
 また、具体的な指導事例や実践研究の成果等の指導情報を体系的に整備し、様々なニーズに対応した指導情報が各教員に正確かつ的確に提供されるシステムを整備するなど、教員の指導力の向上のための支援を行う。
 小学校においては、特に指導内容が高度化する高学年段階において、個に応じた指導や体力の向上が求められていることを踏まえ、体育専科教員の活用等により指導の充実を図る。中学校や高等学校においては、生徒の能力・適性、興味・関心等が多様化することを踏まえ、選択履修の幅の拡大に応じられるよう、複数の教員による指導等創意工夫を生かした指導の充実を図る。
 また、地方公共団体が設置しているスポーツリーダーバンクの一層の活用等に努め、専門的指導を行うことができる人材を確保し、指導の充実を図る。

(2) 子どもが体を動かしたくなる場の充実
 
1 到達目標
   学校内外において子どもが体を動かしたくなる場を充実させる。

2 現状と課題
   子どもの体力の向上のためには、安全に思い切って体を動かすことができるような場の充実が必要である。
 学校体育施設や公共スポーツ施設の充実は、運動への興味・関心、意欲を高めることから、より効果的な指導を行うためにも、また、学校体育施設については地域との共同利用を促進するためにも、「誰もが行きたくなるようなスポーツ施設」という観点に配慮し、その充実を図る必要がある。
 特に、学校や公共スポーツ施設の運動場の芝生化は、転倒したときの衝撃が芝生により和らげられることから、子どもが怪我を怖がらずに体を動かすことが促されることとなり、体力の向上を図る上で極めて効果的であるとともに、学校生活等に大きな潤いをもたらすものである。また、学校においては、主体的に体力の向上のための活動を行う場所として余裕教室等を活用したトレーニングルームの設置を図ることも課題である。
 また、地域の公園など住民のスポーツやレクリエーションの場、子どもが自由かつ安全に遊べる場の充実が必要である。

3 今後の具体的施策展開
   子どもが緑豊かなグラウンドで楽しく安全にスポーツに親しめる環境を創り出すため、学校や地域の実態等に応じて屋外運動場の芝生化を積極的に促進する。
 また、学校体育施設の設置者が次の事項にも配慮しながら施設の改善・充実を図れるよう、効果的な方策を検討し、具体化を図る。

 既存の学校体育施設については、地域との共同利用を促進するとともに、児童生徒や地域住民の多様なニーズに応えるようにするため、温水シャワーや更衣室を備えたクラブハウスを整備するなど施設の整備・充実を今後とも図ること。
 今後新たに設置する学校体育施設については、地域との共同利用の観点から整備を行うこと。
 地域と共同利用できるトレーニング機材等を備えた「トレーニングルーム」の設置を促進するため、公立学校の余裕教室の利用を推進すること。
 我が国固有の文化としての武道に親しむことができるよう武道場の整備・充実を今後とも図ること。

 さらに、地域の公園については、子どもが一層自由かつ安全に遊べるよう、関係機関との連携を図る。

(3) 児童生徒の運動に親しむ資質・能力や体力を培う学校体育の充実
 
1 到達目標
 
運動に親しむ資質・能力を育成し、児童生徒が生涯にわたり豊かなスポーツライフを送れるようにする。

2 現状と課題
   スポーツライフが充実したものとなるかどうかは、青少年の時期に様々なスポーツに接したか否かにより決まると言われている。学校体育は生涯にわたる豊かなスポーツライフの基礎を培うものであり、学校において、体育の授業や運動部活動等を通じ、児童生徒がスポーツに親しみ、その楽しさや喜びを味わう機会を確保することは、我が国のスポーツ振興の観点から極めて重要である。
 このため、平成10年度に改訂された学習指導要領においては、心と体を一体としてとらえ、生涯にわたる豊かなスポーツライフ及び健康の保持増進の基礎を培う観点に立って、体育や保健の内容が改善された。
 日常生活で体を動かす機会が減少している中、運動の機会を定期的に提供し、生涯にわたりスポーツに親しむ契機となる学校体育の重要性が従来にも増して高まっている。特に、児童生徒の体力については、体育の授業のみならず、特別活動、総合的な学習の時間、運動部活動等、学校教育活動全体を通じて、その向上を図ることが課題となっている。また、小学校と中学校あるいは中学校と高等学校の間で連携や交流を進めて、広い視野に立って教育活動の改善充実を図り、体力の向上を含めて学校体育の充実に取り組むことも課題である。

3 今後の具体的施策展開
   心と体を一体としてとらえ、運動についての理解と合理的な実践を通して、積極的に運動に親しむ資質・能力を育てることや体力の向上を図ること等を定めた学習指導要領の趣旨の徹底により、学校体育の充実を図る。
 また、体育の授業だけでなく、学校教育活動全体を通じて、豊かなスポーツライフの基礎を培うとともに体力の向上を図ることについて、各学校の取組を促す。その際、児童生徒が体を動かすことを楽しみ、スポーツや体力向上に自ら積極的に取り組むようになることに留意しつつ、始業前や休み時間に体を動かす場や機会を確保するなどの工夫が期待される。
 さらに、地域社会との連携や学校間連携を図りながら、日常生活における適切な運動の実践に結びつく運動の学び方や体力の高め方を児童生徒の発達段階に応じて身に付けることができるよう、研修会の実施や指導資料等を活用した情報提供を通じて、体育の授業の改善・充実を図る。

(4) 運動部活動の改善・充実
 
1 到達目標
   児童生徒のスポーツに関する多様なニーズに応えるため、学校の実態等に応じて複数校合同で運動部活動等が柔軟に実施できるようにする。

2 現状と課題
   運動部活動は、学校の指導のもとにスポーツに興味と関心をもつ同好者で組織し、部員同士の切磋琢磨や自己の能力に応じてより高い水準の技能や記録に挑戦する中で、スポーツの楽しさや喜びを味わい、豊かな学校生活を経験する活動であり、学校教育活動の一環として位置付けられている。運動部活動では、教員は顧問や監督など指導者として重要な役割を果たしている。
 しかしながら、最近、少子化による生徒数の減少、運動以外の活動への興味・関心等による運動部活動への参加生徒数の減少、指導者の高齢化や実技指導力不足のために競技種目によっては、チームが編成できない、あるいは、十分な指導ができなくなるなどの状況があり、生徒数の減少等により単独の学校では運動部活動を継続することが困難な場合も出てきている。スポーツを行いたいという生徒の関心や意欲に応えるため、複数校合同の運動部活動の円滑な運営を促進することやその全国大会への参加の道を拡げていくことなど環境の整備が必要である。
 なお、運動部活動の運営については、学校週5日制の趣旨も踏まえつつ、競技志向や楽しみ志向など児童生徒のそれぞれのスポーツニーズに応じて、複数の種目に取り組むことや地域のスポーツ活動を同時に楽しむことができるよう、必要に応じて見直しを図っていく必要がある。また、運動部活動について、一部では、地域のスポーツ活動との関係が疎遠になっているとの問題点も指摘されており、地域の実態等に応じて、運動部活動と地域のスポーツ活動が連携して児童生徒のスポーツ活動を豊かにしていくための関係者の取組が求められている。
 さらに、運動部活動の成果の発表の場である学校体育大会の支援とともに、大会規模等が過大になり関係者の財政負担が大きいという状況を踏まえ、その規模や回数等が適切なものとなるよう運営が改善されることも必要である。
 なお、学校体育大会については、学校外のスポーツ活動の状況等を踏まえ、地域スポーツクラブの参加の道を開くなど参加条件の弾力化を図ることや、様々な競技レベルの生徒ができるだけ多く試合を楽しむことができるような大会を開催すること等が検討課題となっている。

3 今後の具体的施策展開
 
1) 複数校合同運動部活動等の推進
   学校の実態等に応じて近隣の学校と合同で運動部を組織し、日常の活動を行う複数校合同運動部活動や、小学校をはじめとして、児童生徒の興味・関心に応じて複数の種目に取り組むことができる総合運動部活動について、各学校における取組みを促すとともに、複数校合同運動部の全国規模の大会等への参加について、学校体育団体等の関係者の取組を促す。

2) 運動部活動の運営の改善
   次の事項に配慮しながら運動部活動の運営の見直しを図り、学校教育活動の一環として一層その充実を図るための各学校における取組を促す。

 児童生徒が豊かな学校生活を送りながら人格的に成長していくという運動部活動の基本的意義を踏まえ、例えば、一部に見られる勝利至上主義的な運動部活動の在り方を見直すなど、児童生徒の主体性を尊重した運営に努めること。
 スポーツに関する多様なニーズに応える観点からは、例えば、競技志向や楽しみ志向等の志向の違いに対応したり、一人の児童生徒が複数の運動部に所属することを認めるなど、柔軟な運営に努めること。
 バランスのとれた生活やスポーツ傷害を予防する観点から、学校段階に応じて、年間を通じての練習日数や1日当たりの練習時間を適切に設定すること。
 学校週5日制の趣旨も踏まえて、児童生徒が学校外の多様な活動を行ったり、体を休めたりできるよう、例えば、全国学校体育大会や都道府県学校体育大会等の試合期を除いて、学校や地域の実態等に応じ土曜日や日曜日等を休養日とするなど、適切な運営に努めること。
 合同練習や定期的な交流大会で異校種間も含めた学校間の連携を図るなど、運動部活動の活性化に努めること。

3) 学校体育大会の充実
   学校教育活動の一環として開催される全国中学校体育大会や全国高等学校総合体育大会等の学校体育大会は、日頃の運動部活動の成果の発揮、異なる学校の児童生徒相互の交流等、大きな教育的効果があることを踏まえ、今後とも支援の充実を図る。
 また、学校体育大会の意義を踏まえ、学校体育大会における児童生徒の引率や学校体育大会に向けた週休日等における部活動の指導が行われる場合に支給される指導手当の充実に努める。
 なお、学校体育団体等においては、主催する大会について、大会規模、日程や回数、種目、開催地負担の軽減方策、安全対策、補償等に関して国や地方公共団体と常に協議しながら対応するとともに、開催に伴う負担にも配慮しながら、参加のための条件や大会の方式に関しても柔軟な対応が図られるよう検討することが望ましい。

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スポーツ・青少年局企画・体育課

(スポーツ・青少年局企画・体育課)

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