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事例報告3 地域課題の次世代の担い手を育てる「サービスラーニング」の試み

  NPO法人浜松NPOネットワークセンター
山口 祐子

 こんにちは。今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。
 私ども「浜松NPOネットワークセンター」は、足掛け10年間、活動しております。元々、私は都市計画、地域計画の仕事に携わっていておりまして、他の先生たちとは少し位置が違うのですが、民設民営の中間支援組織、多くの地域の課題を担う市民の組織が立ち上がる支援をしております。
 6種類ぐらいの事業を行っています。その事業の全てを、もちろん大人たちともやっているんですが、子どもたちも参加できるような仕組みに移し変えています。それがボランティア活動であったり、コミュニティサービスであったり、サービスラーニングであったり、幾つかの方法論で係わりを持っています。

 私はそれぞれの地域の課題の渦中にいる人たちが幸せになりたい、その幸せの物差しを共有できるために色々な活動を展開していると思っています。私は都市計画の仕事をしながら、幸せになるための暮らしの舞台をつくっていくのがまちづくりだと思うのですが、「あなたにとって幸せとは何でしょうか。」と聞いたとき、ほとんどの日本人が答えられない。すぐには答えられない。それは大人から子どもを含めてです。
 私は違って、「自分たちの幸せとはこうなんだ。この問題を解決するための共有の物差しをつくるところなのだ。」それでまちづくり、政策に係わって、まちづくりの主体を担う人たちを育てていくのだ、ということです。

 なぜ、そういうボランティア活動、サービスラーニングをやるか。大人はなかなか変わらない。子どもは私たちの未来なんだ。日本の地域社会の未来をつくっていくためには子どもたちに願いを託したい。それがNPOネットワークセンターです。

 私は、申し上げた6種類の事業の中で、保育園から大学生まで、それぞれの係わりをつくっています。大学生が主に係わっていますのは、今年で11年目を迎える「外国人の無料検診会」です。延べ6,000人の検診者を3,000人のボランティアで支えてきました。ここ2年位は、主に大学生がそれを支えられるようになっています。今夜、検診会のカルテ、検診結果を発送することになっています。
 浜松市には約4万人の「ラティーノ」といわれる出稼ぎの南米人がおります。彼らの子どもたちは不就学です。言葉の問題があり、学校に行けないのです。
 ホームページをご覧になりますと、全てこういうものが載っております。ミューラルという巨大な壁画を日系の高校生たちとつくって、学校に行っていない子どもたちに「学校に行けば未来がある。」ということで、サンフランシスコに代表(浜松市には美術系の高校がありますので、その高校の先生と日本の子どもたち、日系の子どもたち)を送って、そのミューラルの作り方を学んで、浜松市に帰ってきてから、13メートルかける2.7メートルの巨大なミューラルをつくって、そこから新しい高校生のリーダーを育ててきました。
 今年で4年目ですが、彼らが中心になって、学校に行っていない子どもたちに対して「学校に行こうよ。」という一種の進学ガイダンスを、教育委員会とも共催しながら開催しています。そして、高校に進学する子どもたちが少しずつ増えてきました。
 そのロールモデルをつくって、成功した子どもを地域の中で見せていく、それによって、日系の子どもたちに新しい日本の生活の中で未来を築いてほしい、というエールを送り続けています。

 今日、私が発表する目的としておりました「一級河川安間川の河川整備構想事業」です。浜松土木事務所が「氾濫を繰り返してきた川をどうやって環境改善をするか。」と、公開プロポーザルでコンペをしました。ゼネコン9社とNPO(私たち浜松NPOネットワークセンターだけでしたが)が応募した結果、私たちが選ばれました。公共事業に、市民原案が、ゼロのところから、住民が係わる、ということが起こりました。私たちは1年間、ほとんど土日がない位、子どもたちや地域の方たちと一緒に川ベリで調査活動のイベントを展開しました。そこに色々な団体に入っていただきました。観光協会と水辺を見たり、植物観察の方に入っていただいたり、水質調査をする環境ネットの方に入っていただいたり、9種類ぐらいの活動を展開しました。最終的に、行政と一緒に、地域の方と一緒に、専門家と一緒にやりました。
 委員の選任は全部、私たちがいたしました。専門は専門で、全部、私たちがいたしました。その市民原案を子どもたちに託したい。なにせ、この事業が完成するには20年かかる。それをサービスラーニングとして実践した、ということを、今日、主にお話ししたいと思っております。

 浜松ネットセンターには愛称があります。「N-pocket」と申します。先ほどの幸せの問題意識ですが、その思いを全て事業化する。事業としてつくり出す。その事業の中に色々な参加の仕組みをつくっていく、それが私たちの特徴です。
 こういう方たちが私たちのパートナーです。ここの問題を事業化していくとき、子どもたちが参加できる事業を様々に展開している、ということです。

 5番目にありますが、誰もが家庭と職場以外の地域の中に自分たちを発揮できる居場所をつくろう。それはボランティア活動と深く係わるものではないか。

 市民自身の力で地域社会全体像を描き出せるよう、地域のニーズに耳を傾けて市民活動の誕生を支援する。誕生したら、私たちの自主事業として、そこに参加の仕組みを色々なパートナーと一緒につくり上げていく、ということです。

 これは先ほど申し上げましたが、外国人の無料検診です。今年で11年目になります。タガログ語、ベトナム語、インドネシア語など、7言語の資料を、カルテから全て作成しなければいけませんから、98人の通訳、40人のお医者さんなど、様々な方たちが係わって、11年を経過してまいりました。

 外国人教育支援全国交流会を何回か開いています。そこからロールモデルが必要だということで、ミューラルの事業を起こして高校生のリーダーを育てる、ということをやっておりました。

 さて本論に入ります。これは今年で6年目になりますが、浜松土木事務所の公共事業のパートナーとして実践した事業です。
 これが安間川です。天竜川はご存じですね。天竜川の河口とこの安間川は河口を共有しておりますので一級河川になっておりますが、それほど大きな川ではありませんが、こういう状態になります。
 最近、都市型の洪水ではよく「内水氾濫」が起こります。川が氾濫する前に、まず街の中が水浸しになります。川の能力とか水の制御の方法に間違いがある、ということです。
 それで、私たちは直径2メートルの「地球ボール」を各地に転がして行きました。運動会に行ったりして、色々な取材をしては、劇にしました。大学生の演劇部の力を借りまして、何回かこれをやりました。その中で行政だけを批判するのではなく、「市民にも責任がある。」というふうに流れが変わっていったという、情報の収集と発信の仕方に特徴があるかと思います。
 これが幾つかの観察会です。「安間川は汚くて危険」ということになっていましたが、ここで判ったのは、カヌーで水辺を見ると、水はとてもきれいです。汚くない。そして、コオホネという貴重種があります。環境ネットワークが「水質調査をした場所で、とても不思議な現象がある。湧き水があるのではないか。」ということで、調査したところ、やはり湧水があるのだ、ということが判りまして、一気に市民原案の作成に弾みがついたわけです。

 その折々で、子どもたちは川に入りました。先ほど、秦野南が丘高校の岩尾先生から「危険なキャンプの話」がありましたが、私たちは子どもと川に入るときには、子ども10人に必ず大人を1人、割り当てています。その大人を一緒に探すだけの力をすでに地域では持っている、ということです。この日は32、3度の気温で18.8度の水温でした。これは市役所と一緒にやっているところです。

 そして、市民原案がゼロからできました。静岡県知事が褒めて下さって、これが進むことになったんです。私たちは作戦を持っておりました。2年目のコンセンサス会議で、小・中学校の先生や校長先生、子どもに参加してもらったんです。そうしたら校長先生が大変感激して下さって、「ぜひ総合学習に」ということで、3学期に4クラスに2時間ずつ入りました。校長先生は「とても良いから。」ということで、私たちは「子どもたちに市民原案を託す。」ということに、まず成功しました。

 ここで「先生たちに飽きられないように。」ということで、私たちは国際交流基金からお金をいただいて、先生たちをアメリカにお連れしました。
 安間川の河川整備事業は公共事業ですが、与進小学校の総合学習支援は自主事業として立ち上げました。そして文部科学省のお金をいただいて「水辺のリーダー養成事業」を起こして、この二つのスタンド事業を並行して起こしながら、子どもと大人が連携してこの洪水対策に取り組む仕組みをつくり出しました。
 サービスラーニングと総合学習の相違点ですが、サービスラーニングはむしろ「市民性の育成」というところに重心がある、と私たちは思っております。誰かのために貢献するのではない。自分のために、自分がどういうふうに社会の中で生きるか、それがサービスラーニングの重要な点ではないか、と思っています。
 私たちの果たした役割ですが、皆さん読んで下さい。カリキュラムも提案したのです。私たちのスタッフは、それぞれの分野に、すでに2年間の相当の情報量の蓄積をしていましたから、スタッフがそれぞれのテーマに付き添いましてトレーニングをしたのです。そして、先生をアメリカにお連れしたのです。
 1学期が終わって、子どもたちはこの5つのテーマに分かれました。学級を解体しました。1年間、このテーマに従って、毎週木曜日の午後、川に出たり、色々なことをいたしました。
 そして、色々なことをやりながら年間計画を立てて、3学期には最終的にこれを発表することができるようになりました。
 ここで終わっていれば普通です。私たちの特徴はまちづくり事業と連携していった、ということです。植物グループはこういうことをしました。ごみのグループは防止条例をつくるところまで行きました。そのとき、私たちは弁護士とか浜松市の企画課の方をお呼びして、事業を支援する、ということをやってまいりました。
 子どもたちは、ごみが流れていると川に飛び込む位、その問題に真剣に係わるようになりました。
 カリキュラムとの関連性でこういうことができる、それがサービスラーニングの特徴だ、ということです。
 これは公共事業です。水辺にぜひ子どもたちを参加させてほしい、ということで、私たちが長年思っていたことが地元の業者さん、行政の協力によって、左官土を護岸に敷いて、子どもたちが護岸の壁に2メートルから60センチぐらいのお魚の輪郭を描いて、今でもとても温かい雰囲気の川になっています。

 これは大人が始めた雨水貯留です。これは180リットルのウィスキー樽です。これを加工して、樋から樽にくっつけたのですが、洪水防止と水循環を保全するという、大人の活動に発展してきました。それを応援しようということで、1年の最後の授業で、みんなでフラッグアートを作りました。子どもたちが90センチかける75センチのフラッグアート「ためタル君応援旗」を作ってくれまして、雨樽を設置した家庭に贈呈しました。そして、隣近所3軒ずつ回って、その旗をつけてきました。浜松市がやっと5年目になりまして、「浜タル君」として、この樽の設置に助成金が出ることになりそうであります。

 ここが大事でしょうか。子どもたちの意識が着実に変化した。ここが大事です。おとなしかった子どもも、体験活動を通して積極的に発言する、川に対するイメージが変わった。問題を解決しよう、という意欲が向上した。見通しを持って主体的に活動し、計画的に行う児童が増えてきた。地域の課題に係わることにより、地域の大人が励まされて、地域への連帯感や、頑張ろうとする意欲が子どもによって喚起された、という相乗効果が出てまいりました。

 私たちはアメリカと色々なことをやっているのですが、アメリカでなぜサービスラーニングが20年以上続いてきたか、ということです。これは読んでいただきましょう。教師の個人の人生としても非常に豊かで専門性が高まった。子どもたちの学力が確実に上がった。こんなことがあるのだ、と述懐して下さいました。

 保育園でもやりました。

 依然として、私たちは川に入っています。これは県の方と一緒に川に入っています。

 地元の方とこんなことをやっています。

 これはごみ取りレースです。こんなことをやっています。

 中学生も花博のベンチを持ってきて設置したり、延々とやっています。

 安間川というのは、実はこんなに素敵な川なんです。この川を何とか守りたい、ということで、私たちは事業をやってまいりました。

 私たちがなぜこういうことができるか。興梠先生がおっしゃっていましたように、私たちは「中間支援組織」でありまして、結構たくさんの事業を行政とやっております。行政との共同事業で、足りないところは色々なところからお金を調達してきては、実施事業によって事業活動をしています。そこに「中間支援組織」で、色々な地域の課題とか、専門家を含めて色々な人々が見えております。その方たちに声を掛けて、公共的な政策をみんなで続けていく、という仕組みを持っている「中間支援組織」の力があったのではないか、と思います。
 以上です。どうもありがとうございました。



当日配付資料
当日発表資料 分割版(1)](PDF:1,807KB)
分割版(2)](PDF:1,705KB)
分割版(3)](PDF:1,718KB)
分割版(4)](PDF:1,615KB)
分割版(5)](PDF:780KB)

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