「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ~主権者として求められる力を育むために~

平成28年3月31日

1.検討の背景

平成27年6月17日に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、同年6月19日に公布された。改正法の成立に伴い、公職の選挙の選挙権を有する者の年齢が満18歳以上に引き下げられ、公布の日から起算して1年を経過した日(平成28年6月19日)後に初めて行われる国政選挙の公示日以後に公示・告示される選挙から、満18歳以上の者が選挙権を有することとされた。本改正法により、未来の日本の在り方を決める政治について、より多くの世代の声を反映することが可能となったが、一方で、これまで以上に、国家・社会の形成者としての意識を醸成するとともに、自身が課題を多面的・多角的に考え、自分なりの考えを作っていく力を育むことが重要となっている。また、根拠を持って自分の考えを主張し説得する力を身に付けていくことが求められる。このような状況を踏まえ、文部科学省では、平成27年11月9日に義家弘介文部科学副大臣の下に「主権者教育の推進に関する検討チーム」を設置し、主権者に求められる力の養成(以下「主権者教育」という)に係る方策について、総務省へのヒアリングや主権者教育をテーマとした「車座ふるさとトーク」における教員、高校生、保護者を含む地域の方々などの意見を踏まえ、検討を行った。

2.主権者教育の基本的な考え方について

本検討チームでは、主権者教育の目的を、単に政治の仕組みについて必要な知識を習得させるにとどまらず、主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる力を身に付けさせることとした。 このような主権者教育を進めるに当たっては、子供たちの発達段階に応じて、それぞれが構成員となる社会の範囲や関わり方も変容していくことから、学校、家庭、地域が互いに連携・協働し、社会全体で多様な取組を行うことが必要である。 また、取組を行うに当たっては、学校等のみならず、教育委員会等の地方公共団体の関係部署が、積極的な役割を果たすことも重要である。

3.主権者教育の推進方策について

【1】新たに選挙権を有することとなる生徒、学生に対する取組について

平成27年6月17日に成立した公職選挙法等の一部を改正する法律が施行日(平成28年6月19日)後に初めて行われる国政選挙の公示日以後に公示・告示される選挙から、満18歳以上の者が選挙権を有することとなる。そのため、本改正により新たに選挙権を有することとなる生徒、学生が在籍する高等学校、大学等において、政治参加意識の促進や制度等の周知啓発がより一層充実するよう、以下の取組を行う。

1通知の内容の周知及び副教材「私たちが拓く日本の未来」を活用した計画的な指導の実施とその支援

「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」(平成27年10月29日 文部科学省初等中等教育局長通知)等を踏まえ、授業において現実の具体的な政治的事象を扱うことや、模擬選挙や模擬議会など現実の政治を素材とした実践的な教育活動を積極的に行うことを促す。その際、高等学校等において、政治的な中立性を確保した上で、教育指導がなされるよう、同通知の内容や、教職員等の選挙運動の禁止事項等について、周知徹底を行う。また、平成27年12月に全国の全ての国公私立高等学校等に配布された副教材が有効に活用されるよう、今後、平成28年中に実態把握のための全校調査を行う。 さらに、優れた取組を行う高等学校等の指導方法等について調査・分析し、その結果を共有することにより指導の充実を図る。

2大学、専修学校等における取組事例等の周知

若年層の投票率の向上のため、入学時のオリエンテーション等の機会を通じた学生等への啓発活動や、選挙管理委員会等との連携による学生等が主体となった啓発活動など、各大学等において自主的な取組が進められている。このような取組の結果、学生等の意識や投票率の向上につながっている大学等もあることから、引き続き、大学等における取組事例を把握し、関連する制度改正と併せて積極的な周知を行う。

3総務省や選挙管理委員会と連携した普及啓発の実施

生徒の意識や投票率の向上等の観点から、高等学校において効果的な普及啓発がなされるよう、模擬投票などの出前授業の実施など、高等学校と選挙管理委員会との連携を促す。また、平成28年度以降、文部科学省においても総務省と継続的な連携を図る。大学、専修学校等において、キャンパス内における期日前投票所の設置や、選挙管理委員会におけるインターンシップ(投票・啓発事務への参画)を学生等に紹介・あっせんする取組など、学生等の政治参加意識の向上のための取組がより一層進められるよう大学等の取組を促す。特に、総務省においては、夏の参院選では大学等を含め利便性の高い場所等へ期日前投票所を積極的に設置できるよう、事務従事者数の増や選挙人名簿のオンライン対照等の設備に係る経費等について、法律上・予算上の措置を講じる予定としており、文部科学省においては総務省と協力しつつ、大学等と地域の選挙管理委員会との連携を促す。

【2】社会全体で主権者教育を推進する取組について

我が国の将来を担う子供たちに、国家・社会の形成者としての意識を育むためには、子供たちの発達段階に応じた社会の範囲(家族、家の近所、小中学校の校区など)の構成員の一人として、現実にある課題や争点について自らの問題として主体的に考え、判断するといった学習活動や具体的な実践・体験活動を学校、家庭、地域において実施していくことが必要である。

(1)学校における主権者教育に係る指導の充実

1高校における新科目「公共(仮称)」に関する検討

次期学習指導要領改訂について検討を行う中央教育審議会教育課程企画特別部会において、平成27年8月に論点整理がまとめられ、論点整理においては、高等学校の公民科における共通必履修科目として、主体的な社会参画に必要な力を実践的に育む科目「公共(仮称)」の設置の検討が示された。また、学校段階を通じた学習の充実の観点から、小・中学校社会科についても検討の視点が示されたところ。この論点整理を踏まえ、「高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム」等において専門的な観点から更なる検討を進める。

2各教育段階における取組に対する支援・促進

子供たちに、自分が社会の一員であり、主権者であるという自覚を持たせるためには、早い段階から、また、発達段階に応じて取組を進めていくことが必要である。幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、一人一人の幼児が、地域の人々と主体的に関わる中で、将来、社会の一員として活躍できる素地を養う観点から、指導方法等の在り方について調査研究を実施する。また、小中高等学校の段階においては、児童生徒の社会参画の態度を育むため、社会で自立し、持続可能な社会の形成に参画するために必要となる具体的な内容を習得し、地域の抱える具体的な課題の解決に取り組む体験的・実践的な学習プログラムを開発し、その成果を普及する。さらに、大学、専修学校等の段階においては、地域の課題等についての認識を深め、その課題の解決に向けて主体的に行動できる人材を育成するため、大学等と地方公共団体、企業、NPO法人等の連携・協働を図り、大学生等が主体となって行う地域の活動を促す。

(2)学校、家庭、地域の連携・協働による子供たちの社会参画の機会の充実

1地域住民参加型の多様な活動の実施や地域の多様な人材を構成員としたネットワークの構築

国家・社会の形成者としての意識を醸成するためには、グローバルな視点で国家的な課題などを知ることと同様に、ローカルな視点で身近な社会の課題などを知ることも地域を作り、支えるためには重要である。身近な社会の課題などを知り、地域の構成員の一人としての意識を育むためには、学校だけではなく、地域資源を活用した教育活動・体験活動や、子供が、地域行事などについて、単なる参加者ではなく、主催者の一人として参画し、主体的に関わる機会などを意図的に創出していくことが必要である。そのため、平成28年1月に文部科学省が発表した「「次世代の学校・地域」 創生プラン」でも掲げられている「学校を核とした地域の創生」などの観点を踏まえ、土曜日の教育活動、放課後子供教室、学びによるまちづくり、親子で参加・参画する地域活動などの地域学校協働活動や、社会奉仕活動などの体験活動において、より多くの地域住民が参画した発展的な活動が実施されるよう、地域と学校との連携・協働体制を構築する。また、こうした地域学校協働活動等が多様かつ継続的なものとなるよう、退職教職員や教員志望の大学生などの地域における多様な人材を活用するとともに、それぞれの活動を個別に支援するだけではなく、コーディネート機能を強化し、連携・協働型の取組の推進を図る。

2子供の生活習慣づくりの推進

子供たちが家庭において、基本的な生活習慣や社会的なマナーを習得し、自立心を養うことができるよう必要な家庭教育環境の整備を進める。また、子供たちが構成員としてお手伝いなどの役割を担い家族の一員として主体的に家庭生活に参画する取組を進める。

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総合教育政策局地域学習推進課

(総合教育政策局地域学習推進課)

-- 登録:平成28年03月 --