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第2章 米国調査 連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)

連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission

1    住所等
・住所 600 Pennsylvania Avenue, NW, Washington, D.C. 20580
TEL :1-877-toll-free (382-4357)
・URL http://www.ftc.gov/

2    調査日時
・平成15年7月29日(火曜日)13時~14時40分

3    対応者
Stacy A. Feuer氏(Legal Advisor for International Consumer Protection, Bureau of Consumer Protection
Mark Eichorn氏(Legal Advisor, an author of the original report

4    概要
(1) 組織
 連邦取引員会(FTC:Federal Trade Commission)は、競争と消費者保護を管轄する連邦機関であり、委員長を含む5人の委員、競争局、消費者保護局及び経済局の3局、並びに8つの地方事務所等から構成されている。
 FTCの委員は、上院の承認を経て、大統領が任命する。任期は7年であり、公務に関する不法行為等の場合以外にはその意に反して罷免されることはなく、職権行使の独立性が認められている。
 組織としての規模は小さく、職員は1,000人ほどである。その大半が弁護士であり、経済学者もいる。

(2) 活動内容
 FTCは、「業界において競争をすること及び消費者に正確な情報を提供することは安価で良質の製品を作り出す」という考えの下に職務執行に当たっている。違法行為に対しては連邦裁判所への行政訴訟提起等により対応している。
 FTCの活動は幅広く、大きく分けると次の5つの活動を行っている。
情報の収集・分析(複数のデータベースが存在し、例えばウェブサイトを通じて直接消費者の不満を受付け、それを分析)
法執行(所掌する法律を執行)
政策策定(Eコマースなど新しい経済環境が円滑に機能するような政策を策定。最近では、スパムメール対策に関するワークショップの実施や、オンライン上の消費者のプライバシーやコンピュータ・セキュリティ等の問題に関する政策を策定)
消費者教育(キャンペーンの実施、ウェブサイトによる情報提供等)
業界による自主規制の促進

(3) 自主規制について
1 FTCが自主規制を促進する理由
 米国では、映画、音楽、ゲーム等に含まれる暴力表現についての懸念があり、子どもが暴力的なコンテンツを多く見ると暴力的な行動に走るという意見もある。なお、FTCは、暴力的なコンテンツが子どもに及ぼす影響について、科学的証明がなされたとは考えていないし、そのような研究はFTCの所掌事務の範囲外である。
 他方、映画、音楽、ゲーム等については、憲法修正第一条により表現の自由が保障されており、政府が映画、音楽、ゲーム等の内容を変更するよう強制することはできない。さらに、最高裁判所等の判例により、子どもへのマーケティングや子どものこれらの製品への接触を政府が制限することは困難である。したがって、政府による規制は非常に限られたものとなり、自主規制を監督することが合理的な方法となっている。
 また、保護者に対し、「子どもに適切なものは何か」を判断するための材料を提供することが重要であり、このため、業界による自主規制は効果的であるとFTCは考えている。

2 自主規制の現状
 ゲーム業界は、次のとおり、業界の規約等に従って、自主規制の取組を行っている。
 視聴者の35パーセント以上が17歳未満の子どもであるテレビ番組においては、「M」(17歳以上推奨)に格付けされたゲームの宣伝をしない。
 利用者の45パーセント以上が17歳未満の子どもである雑誌やウェブサイトにおいては、「M」に格付けされたゲームの宣伝をしない。
 テレビでの宣伝では、ゲームのレーティングについて、音声及び映像の両方で情報提供する。
 雑誌等にはレーティング・アイコン及びコンテンツ・ディスクリプターを掲載する。
 ゲーム制作会社のウェブサイトにおいて、レーティングに関する情報提供を行う。
 雑誌等による宣伝や小売店において、消費者教育(消費者に対する情報提供)をより一層推進する。

(4) FTCが実施したマーケティング調査
 コロンバイン高校での銃乱射事件等を受けて、1999年6月、クリントン大統領(当時)はFTCと司法省に対して、映画、音楽及びゲームの各業界が、暴力的な内容を含む製品を未成年者にどのように販売しているか調査するよう指示した。映画、音楽及びゲーム業界は、性的表現、暴力、言葉使い、薬物使用その他の保護者が関心を寄せるコンテンツに関して、レーティング・アイコン及びコンテンツ・ディスクリプターの表示などの自主規制を行っていたが、大統領の指示を踏まえ、FTCは、各業界がこれらの自主規制に基づいた適切な宣伝販売を行っているかどうか調査した(なお、FTCはコンテンツの内容そのものを審査・評価したのではない。)。(資料編154~157ページ)

1 2000年9月報告
 2000年9月報告によれば、映画、音楽及びゲームの各業界は、自身のレーティングなどによれば、子どもには不適切である映画、音楽及びゲームの消費者として、子どもを意図的にターゲットにしていることが明らかとなった。例えば、ゲームについては、暴力に関して「M」に格付けされている118件のゲームのうち83件(70パーセント)が17歳未満の子どもをターゲットにしており、また、60件(51パーセント)のマーケティング計画において、例えば17歳未満の子どもの視聴率を意識した時間帯にCM枠を取るなど、意図的に17歳未満の子どもをその対象としていた。また、13歳から16歳までの子どもが「M」に格付けされているゲームを購入することができるかどうか販売実態調査を実施したところ、子どもの85パーセントが購入することができた。
 FTCでは、この調査をもとに各業界に対し、次のとおり自主規制を改善するよう提案した。
 子どもをターゲットにしたマーケティングを中止するとともに、違反行為に対しては制裁を課すようにするよう規約を見直す。
 メーカーだけでなく小売店等においても自主規制の適用を強化する。例えば、販売時に、IDの確認や保護者の同意を求めるようにする。
 レーティングに関する保護者の意識を高める。特にすべての宣伝の際に、レーティング・アイコン及びコンテンツ・ディスクリプターを表示するようにする。
 なお、2000年9月報告には、暴力的な行動と暴力的な娯楽を関連付けた調査報告も添付されている。この問題については、米国公衆衛生局も調査を行っており、暴力的なメディアと暴力的な行動には弱いつながりがあるとしている。しかし、FTCでは、この問題については、さらに長期的な調査が必要だと考えている。

2 2001年4月報告
 FTCでは、1「M」に格付けされたゲーム等について、業界が引き続き10代の子どもに人気のあるメディアにおいて宣伝を行っているかどうか、2宣伝の際にレーティングに関する情報を明示しているかどうか、という観点から追跡調査を実施している。
 2001年4月報告(第1次追跡調査)によれば、ゲーム業界の宣伝方法にはいくつかの改善が見られた。10代の子どもに人気のテレビ番組では「M」に格付けされたゲームに関する宣伝は見られず、雑誌等ではゲームのレーティング・アイコンとコンテンツ・ディスクリプターを表示した宣伝が行われていた。また、テレビでの宣伝では音声及び映像の両方によってゲームのレーティングに関する情報提供をし、ゲーム制作会社の公式ウェブサイトの80パーセント以上においてゲームのレーティングが公開されていた。
 しかしながら、17歳未満を対象とする雑誌には依然として「M」に格付けされているゲームの宣伝が掲載されており、また、ゲームのレーティング・アイコンとコンテンツ・ディスクリプターの表示がなされているものの、業界の規約により要請されている表示サイズより小さいものであった。テレビでの宣伝ではコンテンツ・ディスクリプターの表示はなかった。また、ウェブサイトについては、レーティングを明示的に公開しているのは半分弱にすぎず、コンテンツ・ディスクリプターを表示しているのは25パーセントであった。

3 2001年12月報告
 2001年12月報告(第2次追跡調査)によれば、ゲーム業界は、10代に人気のあるメディアでの宣伝方法を改善している。特に、自主規制の規約を改訂し、テレビでの宣伝については視聴者の35パーセント以上が17歳未満の子どもである場合、雑誌やウェブサイトでの宣伝については利用者の45パーセント以上が17歳未満の子どもである場合には、「M」に格付けされたゲームの宣伝を行うことは禁止した。
 10代に人気のあるテレビ番組においては、「M」に格付けされたゲームに関する宣伝は見られなかった。他方、14件の「M」に格付けされたゲームのマーケティング計画について調べたところ、雑誌やウェブサイトのような10代の子どもに人気のあるメディアでの宣伝を計画しており、うち2件が明らかに17歳未満の子どもをターゲットにしていた。
 また、若者を対象とする雑誌や10代の子どもに人気のあるウェブサイトには、引き続き「M」に格付けされたゲームの宣伝が見られた。さらに、13歳から16歳までの子どもが「M」に格付けされているゲームを購入することができるかどうか販売実態調査をしたところ、2000年の調査では85パーセントであったのに対し、子どもの78パーセントが購入することができた。

4 2002年6月報告
 2002年6月報告(第3次追跡調査)によれば、ゲーム業界においては、改訂した規約に従った自主規制の取組が普及していた。
 しかし、「M」に格付けされたゲームの宣伝が、10代に人気のあるテレビ番組のいくつかで見られるとともに、若者向けのゲーム雑誌などには依然として掲載されていた。また、コンテンツ・ディスクリプターは、ほとんどのテレビ宣伝やいくつかのウェブサイトでは見られなかった。

(5) 啓発の実施
 FTCは、問題解決の第一歩として自主規制を奨励しているが、同時に、広報啓発なども実施している。特に、保護者に対しては、業界によるレーティング情報のほか、NIMF(National Institute on Media and the Family)、Common Sense MediaPSVratings等のNPOのレーティング情報も参考にするよう薦めている。FTCとしては、このようなNPOの取組が促進することを期待しており、あわせてNPOには的確な判断を望んでいる。もちろん、他の情報源が充実したとしても、レーティング・システムやマーケティング計画における業界の責任が軽減される訳ではない。

(6) FTCの今後の取組方針
 FTCとしては、今後次のような取組を進めることとしている。
 業界の宣伝方法やレーティング情報の提供についての調査を継続する。
 新しい技術の開発が及ぼす影響について注視する。
 17歳以上推奨と格付けされている映画や音楽やゲームを年少者が購入できるかどうかの販売実態調査を実施する。
 2003年10月に、政府、学界、業界の関係者を集めて、小売店の実態や業界の慣習に関するワークショップを開催(消費者団体や保護者団体なども参加)し、調査報告書を作成する。(資料編170~171ページ)

(7) その他
1 法的規制について
 ワシントン州では暴力的内容を含むゲームソフトの販売を規制する法律が成立したが、これは「グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)」という、女性や警察官などに対する暴力が目立つゲームソフトの販売が契機となっている。このようなゲームの規制に係る法案は、たとえ州レベルで法律が成立しても、連邦最高裁判所において憲法修正第一条に違反すると判断されることが多い。したがって、FTCでは、既述のとおり、業界による自主規制の促進が有効であると考えている。連邦レベルでは、バーカ下院議員が同様の法案を検討している。

2 NPOとの関係について
 2003年10月開催のワークショップにはNPOも参加予定であるが、これまで、例えばマーケティング調査報告の作成に当たっては、基本的にはNPOには協力を求めていない。ただし、2000年9月報告についてはNPO(既述のレーティング情報を提供しているNPOに限らず、医療関係や保護者の団体なども含まれる。)からも意見を聴取し、それを反映させた。
 FTCは、議会から自身の活動経費のみ予算措置されており、NPOを含む他の団体の活動を支援するための予算は措置されていない。
 様々なNPOの取組に関する情報提供を広く行うことについて、FTCは中立的な立場を保っているため、一部のNPOの取組のみを紹介することは不適当である。紹介するのであればすべてのNPOの取組を紹介する必要があることから、現実的には困難である。

5    コメント【事務局】
 FTCに対する調査のみならず、今回の米国調査全般を通して感じたことは、「子どもとテレビゲーム」の問題に関しては、米国では暴力的内容の影響が中心的な関心事項となっているということである。
 憲法で保障される表現の自由との関係から、まずは業界自身の自主規制を促進させるべきというFTCの考えは、行政機関の採るべき立場として十分に理解できるものである。「M」にレーティングされているゲームソフトが17歳未満の子どもに対してどのようにマーケティングされているかという調査は、業界の自主規制を促進させる点では有効な方法であると考えられる。
 今回の調査を実施した時期は、折しも、ワシントン州において暴力的内容を含むゲームソフトの販売規制をする法律が成立し、その違憲性について訴訟が提起されるなど様々な議論が米国内で起こっていた時期であった。議会ではリーバマン(Lieberman)上院議員やバーカ(Baca)下院議員などが販売規制推進の立場を採り、バーカ下院議員は法案を議会に提出しようと考えていた。FTCは同議員の要請に基づき、子どもでも「M」のゲームソフトを購入できるかどうかを調査しようと考えているとのことだったが、業界による自主規制促進を掲げながら、このような法規制の促進にも協力するという姿勢は、日本における国会議員と政府機関との関係から考えると奇異な印象を受けた。ただし、「FTCはバーカ議員の法案の内容については何の見解も持たない」としていることからすれば、一見矛盾するように見えるFTCの態度は米国と日本の行政制度の違いによるものかもしれない。
 今後は、関係業界による自主規制、技術開発等の促進とともに、啓発広報をいかに効果的に実施していくかが大きな課題となると考えられる。

6    参考資料等
 FTCのウェブサイト(http://www.ftc.gov/
  Marketing Violent Entertainment to ChildrenSeptember 2000, April 2001, December 200, June 2002