ここからサイトの主なメニューです

第2章 米国調査 ジョゼフ・リーバマン上院議員事務所(Senator Joseph Lieberman’s Office)

ジョゼフ・リーバマン上院議員事務所(Senator Joseph Lieberman’s Office



2    調査日時
  ・ 平成15年7月28月(月曜日)16時~17時30分


1    住所等
  ・ 住所 706 Hart Senate Office Building ,Washington, D.C. 20510
TEL 202-224-4041
FAX 202-224-9750
URL http://lieberman.senate.gov/
3    対応者
  ・ Anne Pfitzner氏(Congressional Fellow


   
4    概要
(1)  テレビゲームの問題点/テレビとの相違
 テレビゲームは急速に広まった。保護者の世代もピンポンやドンキーコングなどのテレビゲームを楽しんだが、現在、子どもが遊んでいるテレビゲームは、親の世代のものと大きく変化している。
 米国の研究者によると、現在のテレビゲームは、現実の暴力に対して子どもの感覚を麻痺させ、問題場面において暴力を行使することに抵抗を感じなくさせる、という調査結果がある。
 テレビは積極的に見ようと思わなくても、いつでも見られる状況にある。100チャンネル以上の番組にアクセスできるが、情報の受容形態は受動的である。一方、テレビゲームは、一歩進んで参加することができ、その中で、警察官や女性を傷つけたり暴力的な行動をとったりすることが可能となる。また、暴力的な行動が、ポイント加算やランキングアップという形で報奨されることが問題である。
 テレビに関しては、数多くの研究の蓄積があり、一部ではその悪影響が指摘されている。米国公衆衛生局の報告でも、子どもの暴力的なテレビの長期的な視聴は、成長してから暴力的な行動につながり得るという記述がある。
 テレビゲームの悪影響については、最近まで注目されなかった。調査には、資金だけでなく、長時間かける必要があるため、現状では十分な調査が行われておらず、テレビゲームが長期的にどのような影響を及ぼすか分かっていない。
 テレビゲームには、暴力との関連以外に、時間の消費、現実感の麻痺、運動不足による肥満などいくつかの問題がある。その中では、暴力が最大の問題だと思うが、米国では、テレビやテレビゲームに費やされる時間が問題として大きく取り上げられている。疾病管理・予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)は、外で遊ぶことを奨励するキャンペーンを行っており、子ども番組のニッケルオデオンなどは数億ドルを費やしてCM放送枠を提供している。

(2)  テレビゲームの有効活用
 社会はまだメディアの力を真に理解していない。メディアは学習を助けたり、ハンディキャップのある人たちの役に立ったりもする。また、子どもたちに批評的な考え方を育成するのに役立つゲームも存在する。
 ゲームは、目と手の運動神経を鍛えるだけではない。異文化や他の価値観を理解するためのゲームも開発可能だと考えている。
 個人的には、教育におけるメディアの潜在力に関心があり、そのテーマで教育科学のPh.Dを修得する計画がある。

(3)  テレビゲームをめぐる家庭の役割
 保護者は、子どもと一緒にテレビゲームをすることが望ましいが、10歳以上の子どもに対しては、実現が難しいだろう。しかし、保護者は、メディアと子どもの関係、特に善悪的な価値観の形成過程を含めた直接的な影響を理解する必要がある。
 保護者は、子どもを守る最初で最後の砦である。政府や業界がどんな努力をするよりも効果的に子どもを守れるはずだ。

(4)  レーティング・システムの現状と問題点
 ESRBのレーティング・システムは、ゲームの内容を表示するなど、保護者に分かりやすくなってきており、メディア業界では最良だと言える。しかし、複数のレーティング・システムが存在することは分かりにくいので、一つのレーティング・システムの実現が望ましい。
 ESRBのレーティング・システムは、議員が理事長と二度ほど話し合った結果、改善されることになった。内容表示が詳細になり、暴力的な内容についても、アニメの暴力なのか、現実に近い暴力なのか区別されている。レーティングのラベル表示も改善され、保護者に分かりやすくなった。17歳以上推奨のゲームについては、バーコードにIDをチェックする指示が組み込まれるようになり、小売店レベルでもレーティングを守ることが容易になった。
 キッズスコア(KidScore)のようなレーティング・システムは、具体的なゲーム内容の情報を求めている保護者にとっては有効だろう。また、業界関係者ではなく、第三者の保護者が格付けしていることで、より安全に感じる保護者もいるだろう。
 公聴会では、多メディアにまたがった統一的な「暴力的」レーティングをつくるべきだという議論もなされている。

(5) 法規制について
 メディアにおけるレーティングを法律によって強制・行使することは、憲法修正第一条があるため難しい。特に音楽業界にレーティングを充実させることは困難で、映像を格付けする方がたやすいようだ。
 ワシントン州では、17歳未満の子どもに「M」(17歳以上推奨)に格付けされたゲームの販売を禁じる法律が可決したが、既に憲法修正第一条を盾にした反発があると聞いている。セントルイスでも似たような法律が可決されたが、後に撤廃されている。メディア業界は、社会常識的には当然と思われることであっても、政府が介入することに過敏に反応する傾向がある。
 テレビゲームと憲法修正第一条との関連では、企業の権利と子どもの安全のバランスを図る必要があると感じている。
 Vチップが実施された際にメディアがそれほど反発しなかったのは、Vチップの設定には、5から7つの段階を踏む必要があり、使いにくいので保護者が積極的に利用することは考えられないと予測したためではないか。しかし、ゲームのレーティング、小売店への罰則となると、保護者の管轄を越えて、政府が介入してくることになり、その点で業界は大きく反発していると考えられる。

(6) 議会・政府の動向/議員の活動について
 テレビゲームを制作することの社会的責任に関する業界の意識を高めるために、米国政府は過去数回公聴会を開いており、秋にも開催予定がある。リーバマン議員は、大統領選にもかかわっている立場上、娯楽ソフト業界をストレートに非難することは困難であるが、この問題に対する前向きな姿勢は不変である。
 議員は、NICHD(National Institute of Child Health Development)に、研究者のための研究助成金を設ける法案を提案しており、下院における支持は広がっている。このような法案が可決され、研究が進むことは、子どもとテレビゲームなどの関連を理解することで重要である。
 公衆衛生局も1970年代以降に暴力とメディアに関する本格的な調査を行っていない。メディアを問題視する活動を行うよりも、ファーストフードなどを槍玉に挙げるほうが一般受けする。インターネットの問題なども全く議論されていないので、全米から専門家を集める秋の公聴会が期待される。
 長期にわたって米国では、メディアの影響に関する政府の調査予算がとられていないため、メディア問題を専門とする研究者が少ない。民間で調査資金を提供しているのは、カイザーファンデーション、ディスカバリーチャンネル、ニッケルオデオンなどである。
 議員は、2003年4月に5人の研究者を招いてフォーラムを行った。また、Children & Media 法案の起草にもかかわった。難しいと感じるのは、シンプルなメッセージを全米に届けることで、リテラシープログラムのようなものが必要だと考えている。リテラシーを通して、子どもたちはよりインテリジェントな選択をできるようになる。
 メディア・リテラシー運動では、PTAやYMCA、学校、コミュニティの参加が必要である。この問題に対する裏口的なアプローチは、子どもに外で遊ぶことを奨励することでもある。NPOや草の根運動の参加者は、現実に子どもの養育にかかわっている人が多く、問題の核心に近い場所にいるので、メッセージなども届けやすいため、彼らが協力して活動することは有益だと考える。

5    コメント【橋元委員】
 ジョゼフ・リーバマン(Joseph Lieberman)氏は、米民主党コネティカット州選出の上院議員で、調査時点で61歳。2000年の大統領選では、Al Gore大統領候補とともに副大統領候補に指名された。メディアの問題にも関心が強く、テレビゲームに関しては、一貫して、過度に暴力的な内容が子どもに悪影響を及ぼし得ることを主張している。
 雑誌インタビュー記事(Next GenerationMarch 1997)(http://netdial.caribe.net /~lancelot/ violence.htmlによる))で、彼が暴力的なテレビゲームとの「聖戦(crusade)」を開始したのは彼の補佐員の体験によるという。子どもがゲームソフトMortal Kombatで遊んでいるのを見て、その補佐員はその残酷さに驚愕し、リーバマン議員に報告した。議員はただちに上院公聴会を組織し、テレビゲームの暴力性について意見収集した。彼は、暴力的なテレビゲームの販売を禁止したり、内容を検閲したりすることを主張しているのではない。そのようなことが米国では法的に不可能なことをよく理解している。彼の意図は、ゲームメーカー自身が適切なレーティング・システムを構築し、ゲームを制作することの社会的責任の大きさを業界自体に理解させることである。実際、リーバマンが組織した公聴会が一つの契機となって、業界はESRBの設立に動き出した。彼の活動は、社会全体としてテレビゲームの問題点を真剣に考えることに大きな一石を投じた。
 今回のインタビュー対象者Anne Pfitzner氏は、リーバマン議員の補佐を務める女性職員の一人である。テレビゲームに対する見解が、リーバマンのものか彼女のものか区別がつかないところもあるが、彼女は教育問題担当の補佐員であり、またインタビュー中でも述べているように、教育科学を学ぶ大学院生でもあるので、子どもとメディアの問題には深い造詣と関心があると思われ、議員の補佐を務めるプロセスで、リーバマン議員と考えをほとんど一つにしていると考えられる。
  Pfitzner氏は、テレビゲームの最大の問題点は、その暴力性のもつ脱感作用だと考えている。子どもへの悪影響を防止するための、現状での最も有効な作業は、レーティング・システムの充実と業界自身の自覚だと考えている点は、リーバマン議員の代弁とみなし得る。また、現状ではテレビゲームの問題点について研究が十分でないことも議員と同じ見解であろう。リーバマン議員自身、そのために公聴会の組織、研究助成のための法案起草などで現実に行動を起こしている。議員の意図は部分的に実現されつつあり、その行動力は高く評価すべきである。
  Pfitzner氏のインタビューで印象的であったのは、テレビゲームの有効利用についてである。メディア・リテラシーの育成や異文化体験、異なる価値観の認識等にもテレビゲームが貢献できる可能性があるとの指摘は、彼女自身が教育科学の研究者であることと大きな関連をもっていよう。これが議員の見解でもあるのかどうか不明であるが、単にテレビゲーム=害悪として見るのではなく、その可能性を多角的に展望し得る見識をもった議員であれば、業界サイドも真摯に彼の議論に耳を傾けることが考えられ、彼の活躍の場は今後もますます拡大するだろう。

6    参考資料等
  ・ リーバマン上院議員事務所のウェブサイト(http://lieberman.senate.gov/
Next GenerationMarch 1997)(http://netdial.caribe.net /~lancelot/ violence.htmlによる)