ここからサイトの主なメニューです

第2章 米国調査 米国任天堂(Nintendo of America Inc.)

米国任天堂(Nintendo of America Inc.

1    住所等
  ・ 住所 4820 150th Avenue N.E. , Redmond, WA 98052
TEL 425-882-2040
FAX 425-882-3585
URL http://www.nintendo.com


2    調査日時
  ・ 平成15年7月31日(木曜日)14時~15時30分


3    対応者
  ・ Richard C. Flamm氏(Senior Vice President & General Counsel
Perrin Kaplan氏(Vice President & Marketing & Corporate Affairs
J. C. Smith氏(Assistant Manager & Corporate Communications
Tammy Zhang氏(Bilingual Legal Administrative Assistant


4   概要
(1)  組織
 米国任天堂(Nintendo of America Inc.)は、任天堂(本社:京都市)の北米独立法人で、西半球における販売、マーケティングを行なっている。2003年の年次レポートのキャッチフレーズは、「5歳から95歳までのためのゲーム」とある。

(2)  活動内容
1 営業部門
 主な自社製品(ハードウェア&ソフトウェア)の売上実績は、表24及び表25のとおりである。(2003年3月31日現在:単位100万ドル)

表24   ハードウェアの売上実績
ハードウェア 日本 北米地域 その他地域
Game Boy 32.47 44.06 42.16
Nintendo 64 5.54 20.63 6.75
Game Boy Advance 10.06 15.37 8.38
Nintendo GameCube 2.47 5.13 1.95
 (出所)任天堂「2003 Annual Report」(2003)

表25   ソフトウェアの売り上げ実績
ハードウェア 日本 北米地域 その他地域
Game Boy 156.96 189.73 152.20
Nintendo 64 39.73 142.06 43.16
Game Boy Advance 29.88 54.04 24.98
Nintendo GameCube 10.39 36.24 13.87
 (出所)任天堂「2003 Annual Report」(2003)

 次世代ゲーム機として発売されたゲームボーイアドバンスSP(Game Boy Advance SP)は、販売開始45日目で211万台を売った。ゲームキューブ(GameCube)につなげばゲームボーイ(Game Boy)等のゲームが1,300種類以上楽しめるゲームボーイプレーヤー(Game Boy Player)も登場した。また、コンセントやコードを気にせずにどこでもゲームキューブを楽しめるワイアレス・コントローラーWaveBirdやゲームの世界を広げるための新しいツールe-Readerも相次いで開発された。
 ソフトウェアでは、最近、「ポケットモンスター:ルビー&サファイア(日本発売2002年11月、米国発売2003年3月)」が国内外で大ヒット(2003年3月現在の日米総売上666万本)し、特に北米では発売開始2週間で120万本を売り上げた。

2 マーケティング部門
 任天堂は家族向けのゲームを中心に扱っており、暴力的な要素の少ない商品がほとんどなので、マーケティングに特に注意する必要はないが、厳しいレーティング・システムが存在するので、それに沿ったマーケティングを心がけている。テレビ、ラジオ、雑誌、インターネット、直接消費者に接する草の根イベント等、事業目的によって垂直的なマーケティングを行なっており、「E」は広くマーケティングできるが、「M」はメディアが限定されてしまうなど、レーティングはマーケティングを左右する重要な要素である。年齢制限に従ったマーケティング手法かどうかの検討は、法務部門が担当している。

3 法務部門
 社内で最も重要な部署として、スタッフ25人が5グループに分かれ、それぞれの業務を担当している。「知的財産」グループは、消費者や子どものプライバシー保護やレーティングを担当し、「訴訟」グループは、暴力に関するクレームや問題を担当し、「契約」グループは、マーケティングなどを担当している。
 ホームページでは、特に知的財産権、著作権、商標、特許、海賊版、ライセンスなどの問題について詳細な情報提供を行っている。

4 消費者部門
 消費者に対する情報提供は、主にホームページ(※1)で行っており、レーティングに関する教育・啓蒙活動にも力を入れている。
 保護者を対象としたページ(※2)を独立して設け、「子どもとゲーム」に関する様々な情報提供およびアドバイスを行っている。(資料編124~129ページ参照)

(※1)米国任天堂のホームページのスタートページ
   第1層: ニュース、ゲーム、システム、コミュニティ、検索
第2層: 販売店情報、保護者、グローバル、プライバシー、会社情報、顧客サービス、ヘルプ、コンタクト情報、健康・安全マニュアル

(※2)保護者への情報提供(Information for Parents
(1) 任天堂の商品ご購入に当たって
家族に合った内容かどうかを判断するレーティングはどうやって使うか。
商品を購入する前にゲームの内容をもっと詳しく知るためにはどうしたらよいか。
子どもの年齢や技能に一番ふさわしいゲームの種類(アクション、アドベンチャー、スポーツ)はどうやって決めるのか。
附属品購入の有無はどうやって分かるのか。
(2) 商品購入後のサポートについて
セットアップ、トラブルシューティング及び修理に関する情報、商品の保証に関する情報
ゲームをするに当たっての注意事項
ゲームおたすけ情報
「パワーマガジン」情報
オンラインストア利用に関する質問
(3) 保護者のコントロール
12歳以下の子どもがオンライン活動(チャット、Eメール、携帯電話メッセージ、掲示板、ゲームレビュー、アップロード等)に参加する場合、なぜ保護者の承諾書(Nintendo Parent/Guardian Permission Form)が必要なのか。
子どもへのEメールを親にもCCで送ってもらえるのか。
保護者のコントロールは子どもが何歳まで有効か。
保護者の承諾書の内容の更新や、対象となる子どもの人数を増やしたい時はどうすればよいか。
(4) プライバシーポリシー
任天堂の個人情報管理について
13歳以下の子どもからどんな情報を収集するのか。
クッキーを使用しているか。
個人情報を誰が集めるのか、それらの情報を誰とシェアしているのか。
個人情報を守るためにどんな対策をとっているか。
(5) 健康・安全対策
ゲームキューブ
ゲームボーイ(全種類)
その他(N64,Super Nintendo, Virtual Boy, NES

(3)  ゲームを規制する立法に反対する理由
1 ESRBのレーティング・システムの評価について
 ゲーム業界は、コンテンツに関して情報を提供しているという点で、他の業界と比べ進化した業界と言える。テレビや書籍は、コンテンツについて事前に情報提供することはない。業界の急成長の背景には、この優れた独自のレーティング・システムが大きく寄与している。さらに、業界では、このレーティングを広く消費者に伝えるため、様々な教育・啓蒙活動を実践するなど、100パーセント前向きに取り組んでいる(詳細は(4)参照)。

2 「ゲームと暴力」~政府の介入と法規制について
 テレビゲームがインタラクティブなメディアだからといって、暴力性が強まるというのは理解できない。ゲームだけを槍玉に挙げるのは公正ではない。暴力の問題は確かに重要で、暴力をなくすためには政府の介入も必要かもしれない。しかし、この問題が社会的に注目されるようになってからというもの、多くの政治家がこの問題を取り上げ、政治的な問題となってしまった。
 テレビゲーム業界と映画業界は似ているが、17歳以上対象の映画に12歳の子どもが入場しても法的に罰せられることはない。なぜテレビゲーム業界だけ攻撃されるのか。親なら誰しも「自分の子どもを傷つけたくない」「暴力をなくしたい」と思っているだろう。政治家たちは、こうした親の感情を利用し、格好の「票集め」の道具としてこの問題をアピールしている。
 子どもを育てる責任が政府にあるとすれば、法制化もやむを得ないが、子どもを育てる基本的な責任は親にある。子どもがどんな行動をしているか、いつテレビを見ているか、どんな本を読んでいるか、どんな友達がいるかを監督するのは親の責任である。
 テレビゲームは、憲法修正第一条により、テレビ、映画、音楽、図書同様、その表現は憲法によって守られている。これを政府が規制するためには、直接かつ即時に消費者に害があることを証明する必要がある。現在のように、「おそらく暴力的な影響があるだろう」というレベルでは、裁判所が規制を認めるとは考えられない。

3 ワシントン州法について
 この法律は、グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)法と言ってもよいくらいで、任天堂のゲームとはあまり関係ない。最大の競争相手であるソニーを助けるようなことはしたくないが、エンターテインメント業界で最高のレーティング・システムを提供していながら、法で規制されるのは、ゲーム業界が差別されているとしか思えない。
 ワシントン州では、「良いゲームには警察官に対する暴力は含まれるべきではない」という観点から法制化が成功したが、表現の自由は、人の好き嫌いで判断される問題ではない。この州法は、Dickerson議員の嫌いなゲームを販売できないようにしただけのもので、教育的な要素があるとは思えない。
 この法律は、ゲーム業界の自由を奪うものである。我々のみならず憲法の専門家や裁判官ですら明らかに憲法違反であることを認めている。Dickerson議員は、この法律が無効になることを見据えて「教育」という要素をアピールし始めた。「教育」の問題なら喜んで協力するが、「コンテンツを規制する」という脅しをかけながらでは協力できない。
 ワシントン州で法制化された理由は、Dickerson議員がワシントンにいたためだと言える。政治家である彼女は、自分の政治課題として「ゲームの暴力」に目をつけたのだろう。しかし、同氏は、暴力的なゲームと暴力的な行動を関連付ける証明を裁判官から求められた際、「『M』にレーティングされたゲームと暴力的な行動を直接結びつける証拠はない」と認めている。
 ワシントン州は非常に民主的でリベラルな土地柄としても有名である。シートベルトの着用や雇用均等法など、これまでも新しい法規制を真っ先に取り入れてきた。こうした地域的背景も今回の法制化に大きく影響しているように思える。

(4)  ゲーム業界及び自社の取組みについて
1 ゲーム業界
1) 消費者に対する情報提供
 ・  保護者の中には、レーティングに配慮せずに子どもが欲しがるゲームを買ってしまう者もいる。そのためゲーム業界では、数百万ドルを投入して、「Please Read the Label(ラベルを読もう)運動」を行なっている。
 保護者や消費者に対する情報提供のあり方を検討・改善し、保護者がレーティング・システムを有効なツールとして利用できるよう、ゲーム業界では、消費者の教育に力を入れている。

2) 小売店に対する教育啓蒙キャンペーン
 ・  小売店に対する教育は、エンターテインメントソフトウェア協会(ESA(イサ):Entertainment Software Association)が行っており、既に教育キャンペーンを実施している。この小売店教育プログラムは2003年で3年目を迎える。ESA(イサ)は、30秒のパブリックサービス・アナウンスメント(※3)Tiger Woods(プロゴルフ選手)やDerek Jeter(プロ野球選手:大リーグワールドシリーズMVP:NYヤンキース所属)などを起用して制作しており、小売店にゲームのデモを送付する際に添付している。

(※3)Check the Ratingキャンペーン
   1 Tiger Woods編(プロゴルフ選手)
2 Derek Jeter編(プロ野球選手:大リーグワールドシリーズMVP:NYヤンキース)
3 クイズ・ミリオネア編(人気クイズ番組)

  (例)1Tiger Woods
      【状況設定】 ゴルフコース隣りのテニスコートでテニスボールと戯れるTiger Woods。勢いよく打ったテニスボールが勢いあまって隣のゴルフコースのカップにホールインワンしてしまう。
      【セリフ】 「僕はスポーツが大好き。君も自分がどのスポーツに一番合っているか知っているよね?コンピュータやテレビゲームもまったく同じこと。」
「子どもに合ったゲームを選ぶのも親の大事な役目。コンピュータやテレビゲームのパッケージには、必ずレーティングのマークがついています。どんな内容かを示すコンテンツ・ラベルもついています。」
「自分の手でコントロールするためにもレーティングをチェックしよう。君に合ったものを選んでゲームしようね。」
 各メーカーがこのような教育プログラムを個別に展開すると混乱が生じる恐れがあるため、業界団体であるESA(イサ)が積極的に取り組んでいる。

2 自社の取組み
1) NPOに対する支援等、社会貢献活動
 ・  企業の社会貢献事業の一環として、子どもの健康や教育などを目的としたNPO(スターライト子ども財団(Starlight Children’s Foundation), Make A Wish Foundation, MAVIA(Mothers Against Violence in America)など)に資金援助している。(資料編130~132ページ参照)
 スターライト子ども財団を資金的に援助しているのは、子どもの健康や教育にゲームを有効利用している点に賛同しているからである。難病の子どもたちは、病気の痛みから逃れるため、薬の量を減らすために、ゲームを利用している。また、付き添いのない政府系の貧しい病院に長期入院している子どもたちにとって、ゲームは孤独をまぎらわせる「癒し」の効果がある。
 地元NPOであるMAVIAを20年来サポートしている。その理由の一つは、MAVIAが特にテレビゲームに関係したNPOだからという訳ではなく、「学校暴力を減らそう」、「子どもの健康を促進しよう」という同団体の活動主旨に賛同しているからである。二つめの理由は、Dickerson氏がこの問題を政治的な問題にしようとしているからである。

(5)  「子どもとゲーム」のより良い関係とは?~メーカーからの提言
 子どもにとってより良いゲームとは、マリオやゼルダなどのように、複雑なチャレンジを要し、子どもの想像力をかき立てるものが望ましい。また、パズルやファイトものなど、単に楽しむだけのゲームも良い。米国ではスポーツゲームも人気がある。このようなゲームは長時間プレイするのではなく、一時的に楽しむものとして、宿題やお手伝いの後にご褒美としてさせることが好ましい。
 「子どもとゲーム」の理想的な関係は、コンテンツだけでなくゲームに費やされる時間も関係がある。子守りの代わりにゲームを長時間させることは好ましくない。子どもにはなるべく外で遊んでもらいたい。
 米国では、子どもの楽しみ(エンターテインメント)を優先させ、しつけを怠る親が少なくない。いくらしっかりしたレーティング・システムがあっても、それを無視する親が多くては何にもならない。特に、9.11ショック以降はこの傾向が強く、家庭内のしつけを強化するような教育プログラムが必要である。


5    コメント【猪股委員】
   ○  任天堂の北米独立法人だが、その機能および活動は、西半球における「本社」とも言えるほど世界市場において重要な役割を果たしているようだ。北米ゲーム市場のリーダーとしても、業界の地位向上のために様々な社会的活動を行っており、業界団体の取組も積極的に支援している。
 「子どもとゲーム」の問題に関しては、自社の製品が主に「家族向け」で暴力的な内容が少ないためか、あまり強い危機感を持っておらず、ゲームの暴力が子どもの心身に与える影響等についても、特別な調査研究を行ったり情報提供はしていないようだ。業界独自のレーティングとその教育・啓蒙活動を高く評価しており、メーカー、販売者、消費者の3者がこのレーティングに準じた行動をとることが重要であると強調している。
 また一方で、家庭の役割を非常に重視しており、子どもの安全を守るためには親の協力が不可欠として、様々な情報提供やアドバイスを通じ、親がこの問題に関わることの重要性を強く訴えている。また、幅広い年齢層に愛されるゲームづくりを目指す会社らしく、子どもの健康や教育などを目的とした様々なNPO活動にも積極的に参加・協力している。それらの活動には、同社の「子ども観」「家庭観」「教育観」が非常によく表れている。「企業の『人格』を明確にし、家庭の共感を得ること」、この戦略が、企業倫理的にもマーケティング的にもかなり成功しているように思えた。


6    参考資料等
  ・ 米国任天堂のウェブサイト(http://www.nintendo.com/
任天堂(2003)   2003 Annual Report
ESRB PSA CompilationVideo: Check the Rating Campaign