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第2章 米国調査 エンターテインメントソフトウェア協会(ESA(イサ):Entertainment Software Association)

エンターテインメントソフトウェア協会(ESA(イサ):Entertainment Software Association

1    住所等
  ・ 1211 Connecticut Avenue. NW Suite 600, Washington, D.C. 20036
  ・ TEL 202-223-2400
FAX 202-223-2401
Email esa@theesa.com
URL http://www.theesa.com/


2    調査日時
  ・ 平成15年7月29日(火曜日)10時~11時30分


3    対応者
  ・ Gail Markels氏(Senior Vice President/General Counsel
Jeff Woodbury氏(Senior Associate Public Affairs


4   概要
(1)  設立の経緯、目的等
 エンターテインメントソフトウェア協会(ESA(イサ):Entertainment Software Association)は、米国におけるゲームソフトの業界団体である。
 会員会社は約30社で、この会員会社による売上げは米国市場全体(69億ドル/2002年)の90パーセント以上となる。会員会社には日本のカプコン、コナミ、ナムコ、任天堂、セガ、ソニー・コンピュータエンタテインメントなど主要なゲーム会社も参加しているが、多くは現地法人として登録されている。
 設立は1994年4月で、ゲームソフトに対する社会的圧力を感じ、ゲーム関連企業により設立した。その際、日本の任天堂、セガの両社が資金を立て替えるなど積極的に関与したとの報告もある。

(2)  活動内容
1 レーティング関係の活動
 ESRB(Entertainment Software Rating Board)のレーティング・システムをサポートしている。米国のゲームソフトに関するレーティング・システムは1994年にESA(イサ)の前身であるIDSA(Interactive Digital Software Association)がESRBをレーティングのための独立機関として設立した時に始まり、その後、米国を代表するレーティング・システムとして多くの関係者やユーザー側の好評を得ている。(資料編108~119ページ参照)
 レーティングに関する普及・啓発活動を行っている。小売店レベルでレーティングが守られることが業界にとって重要であり、ESA(イサ)の会長Lowenstein氏は小売店側と会い、レーティングが守られるように協力を求め、店頭にレーティング情報を提示させたりしている。また、保護者にレーティングを理解し利用してもらうことが重要であり、PTAに働きかけたり、広報活動のための資金を投入したりもしている。
 連邦政府、州政府対応の活動を活発に行っている。特に猥褻、暴力的なゲームを未成年者に販売することを禁止しようとする立法化の動きに対し反対を唱え、その理由などを広くキャンペーンしている。

2 その他の活動
 世界最大のゲーム業界のトレードショーE3(Electronic Entertainment Expo)を主催している。このイベントは業界関係者を対象にしたもので一般ユーザーを対象としてはいない(この点、日本の「東京ゲームショウ」とは異なる。)。年に1回3日間開催され10,000人以上の人が世界各地より集まり、ワークショップやセミナーも併催される(第8回目は2003年5月14日~16日、ロサンゼルスで開催された。)。(資料編87ページ参照)
 ゲームソフトの海賊版問題に力を入れて活動している。その範囲は単に米国のみならず世界レベルに広がりを持つ活動となっている。(資料編87ページ参照)
 ゲームに関する調査を行っている。例えば1,300世帯を対象にゲームの使われ方、嗜好などに関する調査している。また各方面より発表された調査も調べているが、それらのすべてを信じている訳ではない。(資料編88ページ参照)

(3) 法規制について
1 ゲームを規制する立法に反対する理由
 ESA(イサ)としては、ゲームを規制する立法については反対であるとしている。また、新しく法を作らなくても懸念事項を既に解決していると考えている。以下、Markels氏から聞き取ったことについてまとめる。

1) 規制法案について
 ・  バーカ(Baca)下院議員の法案は、特定の性的・暴力的な表現を含んだゲームを未成年に販売・賃貸した小売店を有罪とする法案である。この法案については法案を読むと分かるが、性的、暴力的の定義が広範で抽象的なため、ESRBレーティングの「M」(17歳以上推奨)だけでなく「T」(13歳以上推奨)も含まれる可能性がある。例えば暴力的な表現には怪我が含まれるので、フットボールゲームなども対象になる可能性がある。この法案は表現の自由の観点から憲法修正第一条に違反するものであり、どのゲームが対象となるかのガイドラインも抽象的である。さらに、もし法制化されても、小売店レベルで100パーセント守らせるのは不可能であろう。

2) ESRBのレーティング・システムの評価について
 ・  ESRBのレーティング・システムは、模範的なシステムとして大変好評である。他のレーティング・システムと比較して使いやすいし、また、6歳以上、13歳以上、17歳以上と細かく年齢別に分けられているだけでなく、なぜそうなのか説明されている。また性的・暴力的な表現が含まれるゲームには内容表示も加えられている。各方面より大変好評を得ているこの制度を適正に運用することにより、青少年に対する問題に対応でき、それ以上の方策は必要ない。

3) 議会等のゲーム業界に対する誤解について
 ・  米国の議会や立法論者の間には、次のとおり、ゲーム業界に対する誤解がある。
 暴力的なゲームが大多数を占めていると思う向きがあるが、それは当たっていない。2002年でわずか13パーセントであった。それも「グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)」が大ヒットしたからで、その前までは8パーセント程度であった。
 多くの子どもが成人向けのゲームを買っていると考えているようだが、連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)の行った調査によると、80パーセントの場合に保護者がゲームソフトを購入しているとの結果が出ている。これとは別に業界が行った調査では、90パーセント近くは保護者が購入しているとしている。ゲームソフトの価格が40~50ドルと高く子どもの小遣いでは買いにくいのと、ショッピングモールまでは歩いて行ける場合は少なく、親が車で連れて行く必要があるためである。

4) 子どもの暴力・犯罪とゲームの因果関係について
 ・  子どもの暴力・犯罪とゲームとの因果関係については、次のとおり明らかでない。
 規制法案のスポンサーであるDickerson議員も、子どもの暴力とゲームを結びつける調査が存在しないことを認識しており、またワシントン州の厚生当局もゲームと子どもの攻撃性は関係ないとしている。
 米国公衆衛生局もメディアと暴力の関係性は少ないと発表しているし、オーストラリア政府も関係を示す根拠はないとしている。
 独立的な調査機関である「チルドレンズ・ソフトウェア・レビュー(Children's Software Revue)」も立証できないとしている。
 2000年に行ったFTCの調査結果においても、メディアの暴力だけが子どもの攻撃性を高めるとはいえないと発表している。
 学校暴力事件の後に、FBIやシークレットサービスや司法省などが調査を行っているが、いじめ、銃へのアクセス、家庭崩壊、薬物乱用、貧困、虚無感などが事件につながる可能性が高いと判断している。
 10代の子どもの犯罪率は1980年代からの最低レベルにあり、それに対してファンタジー暴力コンテンツは最高レベルにある。このことからも両者には相関性がないと言える。
 10代の子どもの犯罪率についてはカナダとシアトルを比較するとカナダが低い。これは同じ映画やゲームにアクセスしていてもカナダでは銃がないためではないか。

5) その他
 ・  保護者がレーティング・システムを利用しており、業界としても、さらに浸透させるための努力を行っている。
 数年前に宣伝広告のガイドラインを採用し、特定のテレビ番組や雑誌においては既に、「M」にレーティングされたゲームの広告・宣伝はなされていない。
 小売店においてもレーティングが守られるように努力している。特に「M」にレーティングされたゲームが年少者に販売されないように徹底する努力がなされている。

2 議会等に行っている説明について
 バーカ議員やスタッフとは数回面談をしており、反対する理由なども説明して妥協案などを提案している。
 業界の情報を多くの議員やFTCやホワイトハウスなどと共有することで、これらの組織でゲーム業界にマイナスな規制や立法化の動きが生じた場合は、自主規制が効果的に実施されているのでその必要がないことを説明するように努力している。実際に多くの議員と直接会って説明することで現実はそんなにひどい状況ではないことを理解してもらえる。特にレーティングについては、娯楽業界で唯一年齢とコンテンツの内容の両方をベースとしたシステムとしてユニークな自主規制を行っていることを説明し理解を求めている。

(4)  組織基盤等
 ESA(イサ)の職員は、全部で23人。ワシントンが中心で、その他ニューヨークに5名、アリゾナに1名いる。職員の半分ほどが、海賊版問題を扱っている。
 ESRBは、ゲームメーカーからの委託料を収入源として運営しており、不足分はESA(イサ)が補助している。ESRBのレーティング料は、1件750~1,000ドルである(1件レーティングするのに3人かかり、その他、オフィス、ポスター、キャンペーンなどの費用がかかる。)。


5    コメント【渡邊委員】
(1)  ESA(イサ)について
 ESA(イサ)は、州や連邦の議会・議員などへのロビー活動に大変大きな力を使っている。内部組織的にもそのようになっているようである。そしてその主な対象は、海賊版問題と対社会的問題である。海賊版問題は、米国内だけでなく世界を対象にしている。米国における2001年の推定では30億ドルにも及ぶ(これはインターネットによるものを含んでいない。)。
 ESA(イサ)は直接的に調査、告発、行動を世界的にオンラインも含めて行い、また政府の各部門(例えばFBI)や外国の政府や各部局とも連携を取り行動をしている。このあたりが日本とは大きく異なるところである。日本ではこのような活動は社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が実施していて、ビジネスマターについては社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が担当している。ビジネスとそれに伴う権利はお互いに密接に関係しているため、会議への出席でも両者が出なければならぬ場合が多い。ESA(イサ)のように一つの業界団体で事が足りている状況を見聞きし、その効率の良さに羨ましく感じた。

(2)  レーティング及び日米の相異点について
 表現の自由の確保と社会的要請、特に青少年に対する影響との両立という大変難しい問題をレーティング制度で対応を図り、これまで成功してきたことは業界による自主規制の模範を見るように思えた。
 ESRBのレーティング制度は、業界関係者以外からも評価、支持されていることを知ったのは初めてで、今回の米国調査での大きな収穫であった。特にゲームを規制すべきとする活動を行っているNPOやゲームの影響を調査するNPOなどゲームに批判的な立場と思われるような側からも、レーティング制度は高く評価されており、問題を解決するにはこの方法が最適との声を聞き、社会への定着度がかなり進んでいることを感じさせた。
 レーティングに関しての課題としては、まず販売現場での利用・活用の徹底が挙げられる。これについても供給者側と批判側ともに認めており、目下更なる改善が進められているところである。
 次に挙げるのはESA(イサ)とESRBとの関係についてある。ESA(イサ)がESRBを設立し、ESRBは独立団体として運営されているが、ESRBの経費不足をESA(イサ)が補填しているということは公知されている。このことからESRBは本当に中立的な立場で公平にレーティングができるのだろうかとの疑問を持つ向きがない訳ではない。現にMAVIA(Mothers Against Violence in America)の活動家の一人は、最近米国で大ヒットしている暴力的ゲームソフト「グランド・セフト・オート」について「本来ならば『AO』(成人向け)にレーティングされるべきと考えるが『M』にレーティングされたのはESRBがESA(イサ)より資金的援助を受けていることが影響しているのではないかとの疑問を持っている」との発言があった。日本のレーティング制度もスタートして1周年を迎え、定着化に向かい順調に経過している。我が国においては、CESAはCEROの立ち上がり時期に資金の立替えは行ったものの資金援助はしていない。
 MAVIAで見せてもらったドギツイ映像シーンは日本では社会的に受容が難しいと思われるものばかりであった。米国には「禁止表現」はないが、我が国のCEROによるレーティング制度では、倫理規定で社会の倫理水準を適正に保つために不適切な映像などについては「禁止表現」としている。この点は、米国のレーティングと大きく異なる点で、このような日本のレーティング方法を羨ましがる声も聞かれた。我が国のレーティング制度はESRBの方式をモデルにしたものであるが、部分的に修正を施して国情の相異に応じたものにしていると言えよう。
 レーティングについての今後の課題としては「販売現場での利用、活用の徹底」があるが、日本も同じ課題に取り組み始めているところである。日本で業界がこの点に力を入れて対応して行くことができれば、レーティング先輩国を上回る成果を上げることも不可能ではないということを感じた。


6    参考資料等
  ・ IDSA Annual report (2003)
ESA(イサ)のウェブサイト(http://www.theesa.com/
社団法人コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会(2002)   「ゲームソフトにおけるレーティングシステム構築のための調査」