ここからサイトの主なメニューです

第2章 米国調査 スターブライト財団(The STARBRIGHT Foundation)

スターブライト財団(The STARBRIGHT Foundation

1    住所等
  ・ 住所 1850 Sawtelle Blvd, Suite 450 Los Angeles, California 90025
TEL 310-479-1212
FAX 310-479-1235
URL http://www.starbright.org


2    調査日時
  ・ 平成15年8月1日(金曜日)9時30分~11時


3    対応者
  ・ Carol Stulberg氏(Executive Director of Development
Jody Ehlers氏(Director of Starbright World
Andrew C. Trilling氏(Director of Development


4   概要
(1)  設立の経緯、目的等
 スターブライト財団(The STARBRIGHT Foundation)は、メディアを活用した製品やプログラムにより、病気で苦しんでいる子どもが自分の病気を理解する助けや、同じように病気で苦しんでいる他の子どもとの対話できるようにすることを目的としている。
 子どもが病気の治療を理解することで、被害者意識がなくなり、特定の治療法がなぜ必要か理解できるようになる。また、病気で苦しむ他の子どもと対話できることで、一体感を感じられるようになり、将来に対する希望が持てるようになる。その結果、治療の効果も改善される場合もある。
 10年ほど前に、Peter Samuelsonという人物が、慢性的な病気で長期的に入院している子どもたちを外に連れ出せないので、技術を活用して楽しませたいと考えたのが、活動のきっかけであった。
 引きこもりなどの精神的な問題に対処するのは設立の趣旨ではないが、病気が原因で精神的な影響が出ている場合は含まれる。

(2)  活動内容
1 活動の概要
 入院中の子どもたちに、わかりやすい言葉で治療法や病気について理解させるために、漫画本の出版や、CD-ROMのゲームソフトを開発して、病院の子どもたちに配付している。
 病気による孤独感で苦しむ子どものためにPeer Programを実施している。これは、病気で苦しむ子どもたちが、お互いにサポートしあうプログラムである。お互いに情報交換することで、前向きな姿勢がとれるようにすることが目的である。
 病気の他の子どもと対話できるオンライン・コミュニティであるスターブライト・ワールド(STARBRIGHT World)を運営している。パスワードを入力するとバーチャルプレイグラウンドにアクセスでき、そこでチャットや掲示板やビデオコンファレンスなどを楽しむことができる。(資料編75ページ参照)
 子どもの病気にどんなものがあるか調査して、取り組む病気と作成する情報を決定している。例えば、喘息の場合は、医者や看護婦と話し合い、喘息の子どもにはどんな苦しみがあるのか調査する。そして、なぜ薬が必要なのか、喘息と生活するためにはどうしたら良いかなどの情報をまとめる。そして、病気の種類によってビデオやCD-ROMや漫画などの異なるプラットフォームが必要だという結果を得て、多様な形態で情報を作成し、提供している。
 技術に注目しているのは、会長のSteven Spielberg氏の「未来の子どもは技術を通して学ぶ」という信念に基づいている。本を読むよりも映像が学習に効果的な場合があり、教科書を読むよりも、インタラクティブな技術を利用したほうが、学習効果は高いと考えている。

2 漫画本の出版
 やけどを負った子どものために人気キャラクターを起用した「X-MEN」という漫画を作成している。この漫画では、やけどによって外見が人と異なってしまった子どもに、他人からの中傷や興味半分の注目にどうやって対応するかなどの戦略を教えると同時に、自分を受け入れることを学ばせる。漫画というプラットフォームを選択したのは、やけどによる身体的な表現をしやすいこと、パソコンがない家庭やインターネットにアクセスできない地域でも利用できることなどによる。(資料編76ページ参照)

3 CD-ROMの制作
 喘息などの病気について、病気の子どもたちに理解させるCD-ROMを制作している。(資料編76~78ページ参照)
 コンテンツは、企画から台本の制作、予算の調達までスターブライト財団が行い、実際のソフトウェア開発やビデオ撮影、美術などは外部委託している。
 喘息などの病気については、市販のCD-ROMやテレビゲームがあるかもしれないが、独自のコンテンツの制作をした理由は、喘息を自分でコントロールする方法を、子ども向けに教育するという特殊なものであるためである。病気について楽しく学べるような市販ソフトは、ほとんどない。
 喘息を患っていない子どもも、喘息について学ぶためにCD-ROMを利用する。

4 成果物の配付
 制作したコンテンツを、診療所、病院、学校などに独自に配付している。
 CD-ROMは、2002年に配付を開始し、1年間で15万枚配っている。CD-ROMは共有できる媒体なので、15万人以上の子どもたちが利用していることになるだろう。すべての成果物の配付は、無料で行っている。
 やけどの漫画「XMEN」などは、バーンキャンプなどのやけど専門の医療機関にも配付している。
 医療機関のスタッフや保護者のためのディスカッションガイドも作成・配付している。子どもの周辺の人間に対しても、子どもが直面する問題を理解してもらう必要がある。

5 広報活動
 プレスリリースの発行や、ラジオやテレビや新聞に公共情報として掲載してもらうなどの広報活動を行っている。広報では無料で協力してくれる人たちがいる。
 オンライン・コミュニティで出会った3人の病気の子どもについてPeople誌に記事が掲載されたが、このように一般紙に取材してもらって認知度を高めることもある。
 オンライン・コミュニティでは、有名人にビデオコンファレンスに参加してもらったり、特別ゲストとして出演してもらったりしている。また、子どもと家庭と病院をつなぐプログラムがあり、人形を使って、病気や治療方法を子どもに説明する工夫をしている。(資料編79ページ参照)
 CD-ROMなどにも多くの有名人が含まれているが、活動に共感してくれる有名人を使ったプロモーションを行っている。そうすることで、世間の注目を集めて、活動に対する理解を広げようとしている。Schwarzkopf氏は過去数年にわたり、財団のプログラムの会長を務めている。また、Spielberg監督は、財団の会長である。この二人の有名人が、財団の活動をサポートしていることによって、他の有名人も参加しやすくなっている。

6 経費の調達
 漫画の制作では、やけどに関連する団体のスポンサー企業や、印刷を担当した会社も、割引価格で支援してくれた。
 喘息のCD-ROMは、製薬会社グラクソーがスポンサーとなって制作した。グラクソーは、喘息の治療薬を開発しており、このようなプロジェクトと関わることで知名度やイメージを向上することが期待できる。また、Spielberg氏が所属する団体と名前を連ねることは大きなプラスとなる。ただし、製薬会社は、プロジェクトのスポンサーを引き受けることはできるが、子どもに薬について直接宣伝することはできない。
 喘息のCD-ROMについては、疾病管理・予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)からも助成金をもらった。この資金は、CD-ROMを学校の医務室に配付するために使われた。喘息にかかっており学校の医務室で診療を受ける子どもが多いのが理由である。
 その他の企業も、スターブライト財団の活動に賛同し、協力したいと考えている。自分の子どもが糖尿病だったり、知人の子どもが入退院を繰り返していたり、身近な問題と捉えている人も多い。また、病院におけるインターネットアクセスなどの施設を改善したいと考えて資金を提供してくれる個人や企業もある。
 病気で家から出られない子どもたちが無料でオンライン・コミュニティにアクセスできるようにしているが、これについては、AOLからの資金提供を受けている。

7 その他
 ドイツ、オーストラリア、日本、イスラエルなどから、スターブライト財団の活動を実施したいというオファーを受けているが、予算がかかることなので、まだ実現できていない。なお、スペイン語のコンテンツは既に制作されており、スペイン語圏の国々に配付されている。翻訳にお金がかかるのも、課題である。また、漫画やCD-ROMに出てくるキャラクターが、異文化で通用するかどうかも課題である。
 テレビゲームは、幅広い年齢層や多民族の子どもにアピールするので魅力的だが、制作コストが高いこと、技術的な変化が頻繁であること、などの理由で取り入れていない。病院には必ずパソコンがあるので、CD-ROMを作成するケースが多い。最近では、病院内の遊び場にビデオコンソールを置いている所も増えている。しかし、任天堂のゲームボーイなどは純粋に娯楽であり、病気について教育する、病気を克服するという、スターブライト財団の目的とは合わない。
 他の企業が、スターブライト財団と同様のサービスを事業化することも考えられるが、既にスターブライト財団のような組織が無料でサービスを提供しているため、事業として成功するかどうかは不透明である。これまでも似たような活動を行う組織が存在したが、消えてしまっている。病院には予算がないところが多いため、営利事業として維持することが難しいのだろう。

(3)  組織基盤等
 スタッフは、全員で22名いる。スターブライト・ワールドのスタッフはフルタイムが5名で、配付・マーケティングなどには3名というように、分業している。小さい組織なので、多様な作業ができることが大事である。採用資格は、大学卒業以上で、大学院修了のスタッフも多い。才能ややる気があり、チームプレイヤーであることが必要で、子どものために活動したいという意欲が必須である。コンピュータプログラムについては、専門家のコンサルタントに相談している。
 年間予算は420万ドル。この金額ですべてを賄っているが、「パイプライン」というプログラムを通して、特定のプロジェクトのために特別予算を調達することもある。オンラインプログラムには、予算の170万ドルが費やされている。
 各プロジェクトには、大学病院や医療機関による諮問委員会が設けられている。そのため、糖尿病や喘息や癌などの病気について適切な情報を作成できるようになっている。また、大学病院に入院している子どもがどのように活用しているかをモニターして、理解を深める、治療効果を高める、などの目的を果たしたかどうかチェックしている。諮問委員会の委員は、無報酬で協力している。

(4)  今後の課題・展望
 最大の課題は、資金調達である。豊富な資金があれば、世界中の病気の子どもを助けることができる。
 スターブライト財団は、長い間活動を行っているので、広いコンタクトをもっている。オンラインプログラムを改善することで、今まで95の病院に限られていたサービスを、今後2年間で300まで増やす計画である。
 近々の目標は、新しいスターブライト・ワールドの実現である。これまでは、電話回線から病院に提供する必要があったが、最近では専用回線が敷設されている病院が多い。そのためアプリケーションを提供することで、病院内のすべてのパソコンからアクセス可能にできる。そのためには、プライバシーが保護される安全なものでなければならない。さらに、ワイヤレスでアクセスできるようにしたい。ペイジャーや携帯電話からアクセスできるようにすることで、10代のHIV患者に対応できるのではないか。


5    コメント【赤堀委員】
   ○  本団体は、他の団体と異なり、テレビゲームの規制というより、病院に入院している子どもたちを、勇気づける、病気に立ち向かわす、お互いに励まし合うなどの、支援団体であることが、特徴と言える。
 さらに、効果的にIT技術を活用していることも、特徴と言える。病院に入院している子どもたちは、ゲームなどをして遊んだり、いつでもどこでもアクセスできるインターネットなどを使ったりするが、それを有効活用して、CD-ROM教材を開発したり、オンラインネットワークで入院中の子どもたちがお互いに交流できるように、支援している。
 子どもが、病気に真正面から立ち向かうという姿勢は、誰もが共感できるので、このような趣旨が、本団体が幅広い支持を受けている理由と思われる。
 多くの企業や団体からの支援も、その特徴であり、この経営能力も高く評価される。
 さらに、映画監督のSpielberg氏が本団体の会長であることなど、有名人が関与していることも、成功の秘訣といえるであろう。このことによって、企業などの資金援助が広報として受け入れられやすいからである。
 テレビゲームなどのマイナスの面と同時に、このようなプラスの面を持ち込んだNPOの活動は、これからより高く評価されると思われる。


6    参考資料等
  ・ スターブライト財団のウェブサイト(http://www.starbright.org/
STARBRIGHT Diabetes CD-ROM(糖尿病のCD-ROM)
STARBRIGHT Asthma CD-ROM Game:Quest for the Code TM(喘息のゲームソフト)
The X-MEN in : Life Lessons(漫画本)