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第2章 米国調査 メディアスコープ(Mediascope)

メディアスコープ(Mediascope

1  住所等
住所 100 Universal City Plaza, Bldg. 6159, Universal City, California 91608
TEL 818-733-3180
FAX 808-733-3181
Email facts@mediascope.org
URL http://www.mediascope.org

2    調査日時
平成15年8月1日(金曜日)14時~15時30分

3    対応者
Donna Mitroff氏(President

4    概要
(1)設立の経緯、目的等
 
   ○  メディアスコープ(Mediascope)は、映画、テレビ、インターネット、テレビゲーム、音楽及び広告において、健康や社会的な問題の正確な描写を奨励することを目的とするNPOで、1992年に設立された。
   ○  圧力によって強制するのではなく、情報を提供することで、高品質な番組を増やそうとしている。
  (2)活動内容
   ○  メディアスコープは、表現の自由を侵すことなく、メディアが社会的な問題をより正確で信頼性高く表現するよう促すための手段と情報を提供している。取り上げている社会的な問題は、メディアのレーティング、メディアの多様性、エンターテインメントにおける倫理、十代の性、メディアによる暴力、薬物乱用、喫煙、テレビゲームの影響、中途退学防止等である。メディアスコープの情報やサービスは、映画脚本家、プロデューサー、メディア経営者、ジャーナリスト、評論家、研究者、教育者、政府関係者、権利擁護団体、保護者、学生などが利用している。
   ○  メディアスコープは、社会的な問題については、エンターテインメント業界と直接協力する必要があると感じている。
   ○  活動の動機を証明する調査も積極的に行っている。その一つの例がNational Television Violence Studyで、テレビ番組における描写を分析するものである。子どもが子ども番組以外の番組を見ることを止めることはできないため、調査の対象は子ども番組だけに限定されていない。このような調査報告書をエンターテインメント業界に提供することが、メディアスコープの役割であるが、レポートをもとに番組の変更を迫ることはない。ただ、プロデューサーは、自分の制作した番組しか見ていないことが多いので、他にどんな番組があるか、どのように社会問題や暴力や性が描写されているか、などの知識を提供する必要がある。様々な統計を提供して、プロデューサーとして社会的にどのような役割を果たそうとしているのか、独自に判断させる方法をとっている。
   ○  メディア・レーティングについても本を出版している。業界の自主的なガイドラインが成文化されている。また、テレビのレーティングでは、健全な判断を下すための理解を深めるという意味で捉えており、政治的な動機はない。
   ○  多くの活動項目は、子ども番組には直接関係がない。例えばペインマネージメントなどは、薬で慢性的痛みを抑えて社会参加を実現するための情報を提供している。
   ○  子ども番組については2冊本を出版している。「Building Blocks」はその一つで、「放送事業者は週3時間子ども番組を放送しなければならない」というChildren’s TV Actが含まれている。(資料編60~67ページ参照)
   ○  様々な調査を行っているが、そのための予算は、政府や財団から資金を調達することができる。多様な財団は、異なる目的を持っているので、企画によって適切な財団を選択して、提案書を作成・提出する。

 

(3)取組みに至る背景

 
   ○  過去数十年の間に、テレビゲームやコンピュータゲームは、特に青少年の間で最も人気のある娯楽の形態として台頭している。テレビゲーム業界の国内の売り上げは、63億ドルに達しており、米国世帯の90パーセントが、テレビゲームをレンタルしたことがある、あるいは所有しており、青少年がゲームに費やす時間は、1日平均20分となっている。テレビゲームは、多くの子どもの教育、社会、文化的な体験において大きな割合を占めるようになっている。保護者や教育者などは、繰り返し展開される暴力、攻撃性、性差別などに懸念を示している。
   ○  また、テレビゲーム中毒だけでなく、ゲームが学力、やる気、人格、行動に及ぼす影響が問題となっている。

 

(4)テレビゲームに関する調査データ

 
   ○  メディアスコープは、「The Social Effects of Electronic Interactive Games: Annotated Bibliography」を出版し、テレビゲームに関する200以上の科学的な調査のデータを紹介している。以下は、このデータを日本語訳したものである。(資料編56~59ページ参照)

 1教育的な使用と学力への影響
   ○  8年生(中2)を対象にした調査においては、テレビゲームをする子どもは最も長時間テレビを見る子どもでもあり、学校における学力水準も最も低いという結果が出ている。(Lin, S. & Lepper, M.R.
   ○  心理学専攻の大学生を対象にした調査では、テレビゲームをする生徒としない生徒の間で、出席率や成績に差は見られなかった。(McCutcheon, L.E. & Campbell, J.D.
   ○ コンピュータを使用した4回のセッションの後には、等差数列の能力が著しく高まったという結果が出ている。(Okolo, C.M.
   ○  読書が苦手な小学生のグループにコンピュータゲームによる指導を行ったところ、教師による指導の場合よりも、読解力が高まったという結果が出ている。(Schwartz, S

  2認知能力の発達とゲーム能力
   ○  学習障害の生徒でも、刺激的なコンピュータゲームによる学習作業は、効果的に学ぶことができた。(Adelman
   ○ 電子ゲームを通して、子どもたちはこれまでの世代には見られなかった知的ツールを構築することができる。(Baird, W.E. & Silvern, S.B.) しかし、他の調査によると、テレビゲームは、認知能力の改善には役に立たないという結果も出ている。(Malec, J. et al
   ○  コンピュータゲームは、集中力に問題があり、リハビリプログラムに参加している子どもの治療に役立つかもしれない。(Larose, S. et al

  3年長者について
   ○  8週間テレビゲームに接触した年長者は、自尊心が著しく高まるという結果が見られる。(McGuire, F.A.
   ○  テレビゲームをした人は、しなかった人よりも、反射運動に対する反応が早い。(Clark, J.E.et al
   ○ テレビゲームを行った年長者は、運動能力や運転能力などの様々な知覚運動能力が高まり、在宅事故も少ない。(Drew, B. & Waters, J

  4ゲームの使用、習慣と能力
   ○  テレビゲームの所有は、子どもの日常生活に大きな変化を与えない。(Creasey, G.L. & Myers, B.J.
   ○  7年生(中1)と8年生(中2)が好むゲームの半数は、暴力的なものであり、2パーセントは、教育的なゲームを好んでいる。男子は、女子よりも、ゲームをする頻度が高い。(Funk, J.B.
   ○  調査結果によると、テレビゲームは、従来のゲームの単なるオプションにすぎず、青少年の解答にあるゲームに費やされる時間と金額を考慮すると「中毒」という表現が頻繁に使用されすぎる傾向がある。(Hanson, J.
   ○  青少年は、テレビを見るのと同じ理由でテレビゲームに興じている。ゲームは、一時的に現実問題から遠ざかることを可能にし、活動に個人的に参加している気持ちにさせ、「交わり」を感じる子どももいる。長時間テレビゲームを使用する青少年は、刺激、対話、楽しさなどの点で、友人よりもゲームの方が勝っていると評価している。(Selnow, G.W.
   ○  保護者は、他の成人よりもテレビゲームの影響に対して前向きな考えを持っている。(Sneed, C. & Runco, M.A.

 5性差の問題
   ○  テレビゲームの上手下手の期待値は、性別よりもスキルにより強く関係しているようだ。女性は男性よりも一度負けた対戦相手と再度対戦することに自信喪失感をより強く感じるという見解を裏付けるデータはない。(Hall, E.G.
   ○  女子は、テレビゲーム端末ではなく、コンピュータ端末を好む嗜好を示している。(Inkpen, K. et al
   ○  大半のソフトウェアは、少年を対象にデザインされているため、コンピュータの世界は、女性の価値観や目標よりも青年文化と調和している。(Kiesler, S. et al
   ○  ショッピングモールの2店のゲームセンターにおける男性の割合は、80パーセント対20パーセントと女性を大きく上回る。(Kaplan, S.J.

 6健康問題
   ○  化学療法を受けている小児癌患者においては、テレビゲームをすることで不快感を著しく減少させる効果がある。(Redd, W.H. et al
   ○  テレビゲームは、てんかんの発作を引き起こすことがある。このような発作の引き金となる要素は、フラッシュ、特殊なフィギュアのパターン、シーンの変化の3つである。(Maeda, Y. et al
   ○  3段階にストレスレベルを上昇させた環境で3つのテレビゲームを続けて行うと、血圧や心拍数の上昇を誘発する。(Murphy, J.K. et al
   ○  重度の脳障害の成人患者において、コンピュータゲームの使用は、器械運動よりも運動範囲の拡大に効果的である。(Sietsema, J.M. et al
   ○  テレビゲームをした16~25歳の青年に心拍数と血圧と呼吸数の著しい上昇が見られる。(Segal, K.R. & Dietz, W.H.I.

 7人間性と動機
   ○  テレビゲームのプレイヤーで、罪を犯した人間は、罪を犯さなかった人間よりも早い年齢でテレビゲームを開始しており、ゲームにお金の大半をつぎ込む回数が多く、人間関係に問題がある、などの傾向が見られる。(Huff, G. & Collinson, F.
   ○  テレビゲームを頻繁に行うことは、発達上の葛藤、特に攻撃性や競争心などの管理に役立ち、神経症や引きこもりや現実逃避などを助長することはない。また、テレビゲームのヘビーユーザーは、不満に対する耐久力が低い。(Kestenbaum, G.I. & Weinstein, L.
   ○  社会性のない精神病の患者との対話にコンピュータが役立つという説もある。(Matthews, T.J. et al
   ○  テレビゲームに頻繁に興じる人間は、あまりやらない人間よりも、外向型であり、実績を重んじない。(McClure, R. F. & Mears, F.G.
   ○  自尊心の点数は、テレビの前やゲームセンターや家庭のゲーム機で過ごした時間やコンピュータのプログラミングに費やした時間と大きく関係がない。(Wiggins, J.D.

 8暴力と攻撃性
   ○  暴力的なテレビゲームとの接触は、子どもの攻撃的な行動を高める。(Silvern, S.B. & Williamson, P.A.
   ○  攻撃性の高いテレビゲームをやっている被験者と攻撃性が中くらいのテレビゲームをやっている被験者の両方において、敵対心が高まった。攻撃性の高いゲームを行った被験者は、他の被験者よりも著しく強い不安感を表していた。(Anderson, C.A. & Ford, C.M.
   ○  テレビゲームに対する主な感情的な反応は、攻撃性、怒り、敵対心である。楽しさと刺激と支配を誘発する組合せは、ゲームの魅力を増している。(Mehrabian, A. & Wixen, W.J.
   ○  6年生から12年生の生徒を対象にした調査において、テレビゲームの頻度は、攻撃性と関連があり、自尊心とは関連がない。(Fling, S. et al
   ○  攻撃的なテレビゲームを行った女子は、より多くの一般的な活動と攻撃的な遊びを行った。攻撃性の低いゲームを行った後は、活動が減少し、静かな遊びがわずかに増えた。(Cooper, J. & Mackie, D.
   ○  暴力的なテレビ番組を多く見る被験者は、同様に多くの時間を暴力的なテレビゲームに費やしている。(Dominick, J.R.
   ○  暴力的なテレビゲームを行った子どもは、非暴力的なゲームを行った子どもよりも独断的な空想を示した。これは、テレビゲームにおける攻撃性は、子どもの攻撃的な衝動を社会的に受け入れやすい方法で発散させることを示している。(Graybill, D. et al
   ○  テレビゲームの内容は、被験者の心拍数やゲーム後の攻撃性に何の影響も及ぼさなかった。(Winkel, M. et al
   ○  テレビゲームを行う幼い子どもは、テレビゲームのキャラクターの行動を真似する傾向がある。(Schutte, N.S. et al
   ○  現在、テレビゲームは、軍隊によって、兵士の戦略的・戦術的なスキルの向上に利用されている。(Toles, T.
   ○  キャラクターやプレイヤーの匿名性を強調したり、敵を非人間化するテレビゲームの人気が高まることが問題視されている。(Toles, T.

 

(5)組織基盤等

 
   ○  現在、職員は9人で、正職員が5人、契約職員が4人である。
   ○  組織としては、理事会と諮問委員会がある。理事会は、社長のDonna Mitroff博士が議長で、DICエンターテインメント副社長のRobbie London氏、プロデューサーのGeorgia Bergman氏、DICエンターテインメントの社長兼CEOのAndrew Heyward氏他5名で構成されている。諮問委員会は、小児科学学会(Pediatrics Facey Canyon Country)会長Paul Horowitz氏はじめ21名で構成されている。
   ○  予算は縮小傾向で、景気が良いときは、12~15名の職員で運営していた。5人で活動するのは困難なので、プロジェクトごとに人を増やしたり減らしたりしている。
   ○  収入源は、契約と援助金である。本を販売する収入もいくらかある。エンターテインメント業界に渡す資料は無料であるが、「Building Blocks」は、幾らかの報酬をもらっている。

  (6)今後の課題・展望
 
   ○  将来的な課題は、第一に資金調達である。予算が減っている原因は、景気の影響である。財団資金は、金融市場で運営されているので、株式市場のアップダウンが影響している。第二にエンターテインメント業界に知識を提供することである。飽きられないように新しい方法で情報を提供していく必要があり、そのためにウェブサイトなどの活用を考えている。
   ○  基本的なサービスは無料である必要があり、そうでないと参加してもらえない。しかし、収入源となるサービスも検討中である。
   ○  メディア・レーティングについて出版した本では、テレビ以外に映画やテレビゲームのレーティングについて説明しているが、エンターテインメント業界に向けた活動では、テレビ番組だけを扱っている。これはテレビが最大のメディアであるためであり、将来的には変化するかもしれない。インタラクティブ・メディアの台頭は目覚しく、86パーセントの子どもが家庭にインタラクティブ・メディアを所有している。
   ○  レーティングについては、一つのレーティング・システムは素晴らしいと思うが、実現はしないだろう。テレビ、映画、テレビゲーム業界は、もともとレーティングを欲していない。これらの業界が一つのレーティング・システムに合意することは、ほぼ不可能である。レーティング・システムが複雑であることで、業界はある程度のメリットを得ているのではないか。それぞれのレーティング・システムは、MPAA(Motion Picture Association of America)やESRB(Entertainment Software Rating Board)やTelevision Rating Committeeが自主的なものである。一つのレーティング・システムにまとめさせることは、法の規制と受け止められる可能性がある。また、一つにまとめると内容が薄まりすぎて、役に立たない可能性もある。
   ○  インタラクティブ・メディア業界とも将来は仕事をしたいが、まだ計画段階にある。
   ○  個人的には、グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)のようなゲームは子どもの精神の邪魔になると考えている。保護者は、ゲームの中身についてもっと知る必要がある。保護者が責任を持って監督していなければ、どんなレーティング・システムも役に立たない。
   ○  家庭に情報を提供することは行っていないが、大事なことだと考えている。
   ○  メディアスコープは、ロサンゼルスに位置しているというユニークな存在なので、エンターテインメント業界との接触に適所となっている。

5    コメント【石川委員】
 
   ○  メディアスコープは、テレビ番組を中心に、映画、テレビゲーム等幅広く健康や社会的な問題を正確に描写することを促進するための情報を無料で提供することで、高品質な番組を増やそうとしている。
   ○  この団体には、小児科学会長をはじめ法律学者等の専門分野の研究者が参加しているため、問題が起こりそうであればすぐに対応ができる体制である。
   ○  過去に社団法人日本PTA全国協議会でもテレビだけでなくテレビゲームの内容に関する検討も会員から要望されたが、内容まで踏み込めずに入り口で終わった経緯がある。その原因は、テレビゲームの特殊性と独自で確認をしようとしたところに無理があった。メディアスコープのように子どもの体や心に関する専門家と協力をして進めることにより科学的なデータを集めることができ、問題点があればメーカーに対して、また、子どもたちに対しても、保護者の行動が起こせたのではないかと考える。
   ○  子どもたちの成長期には大きな問題の可能性を含んでいるテレビゲームについての国内の調査研究が早急に進むことを期待したい。

6    参考資料等
 
   ・ メディアスコープのウェブサイト(http://www.mediascope.org
Building Blocks:A Guide For Creating Children’s Educational Television
Video Games and Their EffectsIssue Brief)