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第2章 米国調査 MAVIA(Mothers Against Violence in America)

MAVIA(Mothers Against Violence in America

1  住所等
住所 1051  14th Avenue, Suite 2-A, Seattle, WA 98122
TEL 206-323-2303
FAX 206-323-2132
URL http://www.mavia.org

2  調査日時
平成15年7月31日(木曜日)10時~11時30分

3  対応者
Pamela Eakes氏(President
Mary Lou Dickerson氏(State Representative,WA
Jay Inslee氏(House of Representative, WA)   ほか

4  概要
(1)設立の経緯、目的等
 
   ○  MAVIA(Mothers Against Violence in America)は、1994年1月に創設された団体で、教育や救済活動や唱導(Advocacy)によって、子どもによる暴力及び子どもに対する暴力の予防を行うことを目的としている。特に当初目的としていたのは、米国の銃規制の強化、子どもが銃を手にすることを妨げることで、法制化や教育プログラムなどの活動を行ってきた。
   ○  MAVIAは、青少年を暴力から守る戦略や手段を提供することによって、アメリカの文化における暴力に関する行動や態度を変えるために活動を行っている。アメリカのコミュニティにおける草の根的なエンパワーメントを通じて、安全なコミュニティや学校を作り出すために、個人個人が自らの責任を果たすことを奨励している。
   ○  MAVIAがテレビゲームに関する活動を開始した理由は、アメリカにおけるエンターテインメントが過去10年間大きく変化しており、アメリカの文化や子どもの成長に大きな影響を及ぼしていると判断したためである。そのため、保護者としてモニターする必要を感じ、適時発言することにしている。MAVIAは小さい組織でありながら任天堂のような大企業にも影響力を持っている。また、マイクロソフトのXボックスの開発者とも親密に協力している。保護者として、消費者として、メーカーや小売店が、子どもに何を販売するか影響力を持っていると信じているし、保護者・消費者の力と子どもの参加によって、安全で暴力の少ない社会を形成できると考えている。

  (2)活動内容
   ○  MAVIAでは、青少年や親に対して、様々な教育プログラムを提供している。その内容としては、SAVE(Students Against Violence Everywhere)という小学校から大学までの児童・生徒・学生自身が学校やコミュニティにおける暴力に対する解決方法を学ぶプログラム、暴力犯罪の被害者がどのような精神的・肉体的被害を受けるのかを気付かせるプログラム(Victim Awareness Program)、銃暴力の精神的・法的・感情的帰結について学ぶプログラム(Gun Violence Prevention Education)などがある。
   ○  SAVE(*)の活動は、米国の20州で行われており、150の支部が存在する。SAVEでは、現在「ゲームについてかしこい社会のためのキャンペーン(Campaign for a Game Smart Community)」を行っており、そこでは、「おとり捜査」にも参加し、今回のミーティングにも参加したジェレミーが、「暴力的ではない10のゲーム(Top 10 Non-violent Video Games)」を紹介している。子どもは親の言うことよりも子どもの言うことを聞くので、子どもがお互いに教育することで、学校における暴力をなくそうとしている。(資料編28,30~33ページ参照)

 
(*) 実際にSAVEに参加している子どもは、SAVEについて、次のように話している。
 
・アマ: 高校のチャプターに参加。友人に誘われて、毎週火曜日のお昼にSAVE活動に参加するようになった。風船やチラシを配って、暴力反対の運動や他の生徒に対する教育活動を行っている。また、家庭内暴力を受けている女性のためのチャリティーコンサートなども実施している。
・ジェレミー: 子どものときから暴力について話をしている。1年生の担任もSAVEに熱心だった。活動を通してホームレスの子どものためにお昼を抜いて実際に空腹感を体験しながらお金を集めたりしている。

   ○  すべての子どもに対して安全な環境を提供するための、連邦・州レベルの立法支援も行っている。州レベルでは、州議会議員のDickerson氏と協力し、テレビゲームの小売業者を規制する法律を制定するための活動を行っている。また、MAVIAとDickerson議員は、協力して、保護者を教育し、また小売店に自主的にIDチェックを促すキャンペーンを計画している。来月は公式にキャンペーンを開始するため、昨日は40名ほどのコミュニティ・リーダーを招いて説明会を開いた。
   ○    年に1回、Youth Peacemaker Awards and Legacy of Caring Scholarshipsを、学校や地域で暴力を減らすためのめざましい活躍をした青少年に対して付与している。
   ○    MAVIAでは、「M」(17歳以上推奨)にレーティングされたテレビゲームがどのようなものであるかを示すために、編集したビデオも作成している。ビデオに含まれているテレビゲームは「M」にレーティングされているものなので、17歳以上は購入できる。グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)、グランド・セフト・オート・バイスシティー(Grand Theft Auto : Vice City)は、全米でベストセラーになっているゲームであり、子どもを引き付ける多くの要素を含んでいる。問題は、13、14歳の子どもにとっては、これらの「M」にレーティングされたテレビゲームを購入・所有していることはステイタスシンボルとなっていることである。このようなゲームが子どもの手に渡ることを、保護者やPTAなどが中心となって止めさせなければならない。圧力をかける活動をワシントン州からスタートし、全米に広げたいと考えている。
   ○  最近、エンターテインメントソフトウェア協会(ESA(イサ):Entertainment Software Association)と協力して保護者の教育キャンペーンを開始した。テレビゲームについて、保護者はほとんど理解していないことが問題である。保護者は、最低テレビゲームについて子どもと話す必要がある。また、保護者は、「T」や「M」という記号を知っていても、「M」が実際に意味するコンテンツを知らない。保護者はゲームのレーティングだけでなくコンテンツも知る必要がある。

  (3)法規制について
   1ワシントン州における法規制について
   ○  過去6年間、ゲーム業界の自主的なレーティング・システムを実施するように小売店に求めてきた。ワシントン地区のゲーム小売店やゲーム業界の代表は様々な約束をしてきたが、結局約束は守られなかった。例えば、小売店に対して子どもがゲームを購入する際にはIDを確認するように求めていたが、結局実施されなかった。そのため、法的に規制する法案を提出することになった。強調したいことは、法案を作成する前に、まず業界の自主規制の強化を求めたことである。法規制は必要ないならば行いたくない。しかし、約束は守られず、重要な問題であったため、法案提出に踏み切った。
   ○  ワシントン州の法律に警察官への暴力という表現で制限を加えたのは、全米の州の法律を調べた結果、抽象的だったり、社会的に強い関心がない法律は制定が困難だと分かったからである。人気ゲームには警察官を殺害するシ―ンが多い。法律では、非常に狭義な表現をしながら、多くのゲームを取り締まれるというメリットがある。裁判所に対して、子どもに何を販売するかの問題は憲法修正第一条を保護することよりも重要だと説得を行わなければならない。そのためにも警察官に対する暴力という表現は効果的だった。(資料編44~45ページ参照)
   ○  この法律に対して、憲法違反としてゲーム業界は反発している。ゲーム業界は、ワシントン州の法律に対して差止め命令を申請し、裁判所はそれを認めている。しかし、最高裁まで戦う構えである。どのような判断が下されようと、このケースを利用して、保護者に対してゲームの中身に注意するように教育活動を行うつもりである。

   2バーカ議員の法案について
   ○  MAVIAはバーカ(Baca)議員の法案も支持しており、昨年は数回面談している。
   ○  インタビューに同席したJay Inslee下院議員は、次のように述べている。
   ・  私も教育努力は今後も必要だと考えている。ただ、自主規制の効果があまりないということで、今後議会から他の方法を実現する動きが出るのではないか。その一例がバーカ議員の取組である。バーカ議員は、民主党野球の三塁手とも言える重要な人物である。バーカ議員の法案は、46人のスポンサーの取り付けに成功しているが、共和党主導の今議会では通すことが難しいだろう。
 この法案には二つのハードルがある。一つは、憲法上の問題で、誰がふさわしくないと定義するのか、ということである。個人的には、暴力的な商品の子どもへの普及を制限することは違憲ではないと考えており、広い解釈では、最高裁でもこれは合憲だと判断できるのではないか。もう一つは、ビジネスの慣習に関係することだ。小売店に負担をかけない全米規模のレーティング・システムが必要である。大半のゲーム店は中小企業であり、店を維持するだけでも相当の努力をしているのに、すべての商品の説明書を読んだり、販売に責任をもつことは大きな負担である。法的に小売店の責任を取り除くようなメカニズムが必要である。バーカ法案は、ゲームのコンテンツを定義しようとするもので、これは小売店レベルでは従うのが難しいと考えられる。独立したレーティング・システムで、法的な効力を持つものが必要だ。もし、このようなレーティング・システムが成立しない場合は、ワシントン州のようなやり方が望ましい。今後調査が続けば、暴力的なコンテンツと暴力的な行動の関係を証明できるようになると考えられる。

 

(4)その他

   1テレビゲームの影響について
   ○  北米では、社会とうまく接することができない孤独な子どもが多い。子どもは、これらのゲームをやることで環境をコントロールできるような錯覚に陥り、ゲームに引き付けられるようだ。ゲームを繰り返しやることで、暴力的な行為に麻痺してしまい、その結果、実際に実行に移してしまうコロンバイン高校のようなケースもある。
   ○  二つの心理的概念が考えられる。まず一つは、心理的に未成熟であるため、行動に対する代償を理解できず、ゲームをプレイするのではなく、他人に対して怒りを生む行為となってしまうということである。二つ目は、非常に中毒性の強いゲームなので、高いレベルに達するまで多くの時間を費やすことになり、結果として、通常の子どもの生活から遠くなり、孤独感が増すことになるということである。
   ○  また、米国では子どもの肥満が問題になっており、ゲームと肥満の関係も疑われて注目されている。

  2レーティング・システムについて
   ○  アメリカの保護者は、子どもが接する娯楽コンテンツにおいては、3つのレーティング・システムを扱わなければならない。1つの統合されたレーティング・システムが理想的である。しかし、ESRBのシステムは、映画のレーティング・システムよりは良いと考えている。
   ○  グランド・セフト・オートなどのゲームはすべて「M」であるが、客観的には「AO」(成人向け)と格付けされるべきゲームだと考えている。この点が、業界主導のレーティング・システムの欠落点である。ESRBは、業界からお金をもらってレーティングを行っている。メーカーは、ゲームが「AO」と格付けされると数百万ドルの損失をかかえる可能性がある。そのため、ESRBの格付けの独立性に疑問を感じている。

  (5)組織基盤等
 
   ○  MAVIAのスタッフは3名。その他は、学校での教育プログラムを担当する契約社員などがスタッフとして働いている。MAVIAの活動では、ボランティアの参加が大きな役割を果たしている。無給の15名、その他100名ほどのボランティアが活動に参加している。
   ○  年間予算は、50万ドルほどで、大半が技術的なサポートやSAVE活動に使われている。資金源は、大半が個人による寄付であるが、その他SAVEの活動資金を提供する企業も多数ある。任天堂も長年のスポンサーである。その他ワシントン州に本社を置くバンクオブアメリカ、マイクロソフト、ボーイングなどからも資金援助を受けている。

5

   コメント【後藤委員】

 
   ○  MAVIAのミーティングは、相手側の参加者が、MAVIAのメンバー、SAVEのメンバーだけではなく、ゲームの問題に関心を持つ、下院議員やワシントン州の法整備の中心となった議員など10人を越え、今回調査の中で最大規模のミーティングになった。ミーティングの中で、MAVIAが編集したビデオも視聴し、問題としている「M」にレーティングされたゲームについても理解をある程度共有しつつ、ミーティングが行われた。 
   ○  MAVIAの活動の中で特に興味深かった点は次の2点である。
   ○  一つは、SAVEの活動である。SAVEの活動は、暴力の満ちあふれた環境で直接影響を受けている当事者である子どもが、自らの意識や環境を変えるために活動している。「おとり捜査」という形で立法への支援もSAVEのメンバーが行っている。
 これは、最近注目されている「当事者主権」の考え方であり、国連の児童の権利条約における子ども参加の望ましい形態である。インタビューの中でも「子どもの子どもへの影響力」が指摘されていたが、アメリカでは、少年犯罪への司法的対応の一つとして、ティーンズコートという試みにも共通するものだといえる。ティーンズコートは、子どもによる裁判で、専門家の指導のもと、子どもが検察官・弁護人・陪審員となり、軽微な少年犯罪の裁判を行うものである。
 テレビゲームを最もよく知っている子どもたちが、自らレーティングを行うなどして、社会や親の意識を変えようとしている。それをMAVIAが支援する。
 もちろん、それは一部の子どもであり、多くの子どもたちは関心を持たないかもしれない。けれども、そこに見られるのは、子どもを保護の客体としてではなく、問題解決のできる主体として位置づける「子どもの権利」の尊重の姿勢である。
テレビゲームに限らず、NPOであっても子どもへの支援が、大人によって行われることが多い日本において、子どもが主体として行う活動を促進する必要を改めて感じた。
   ○  2つ目は、MAVIAの立法支援活動である。社会が複雑化して問題が多様化している現在において、すべての問題について立法者が認識することは不可能である。そこで、当事者がNPOとして集結することで、問題の存在や問題の見方の多様性を立法者に伝えていき、また、立法に必要な事実を集める協力を行う。地方分権が未発達の日本においても、青少年に関しては、各地方自治体が条例を持っている。日本でも、条例化に際して、より当事者の意思が反映されるような支援を行えるNPOの存在が望まれる。
 今回は、ワシントン州が制定した法律をめぐって、その差止めを求める原告と被告に短期間でインタビューするという極めて興味深い経験をすることができた。その中で強く感じたのは、「民主主義のコスト」と「法の支配」である。
 アメリカでは、法律によって示された一つの政策的意思表示をめぐって、裁判という形でそれが憲法秩序に適合するか争うことで、法的社会的規範を形成する。インタビューにもあったように、立法や裁判には、法規範形成の役割だけではなく、問題提起を行い、かつ、社会規範(自主規制も含む。)を促す役割も期待されている。
 もっとも、そのためには、裁判が起こされる必要があり、業界団体であるESRBは業界の利益のために、裁判を起こす役割も期待されている。
 立法化や裁判を支援するMAVIAのようなNPOや、業界団体の存在、またそれに応える議員の存在は、見方によっては、不必要なものかもしれない。けれども、この多様性と法的ダイナミクスが成熟した民主主義のために必要なコストなのかもしれない。

6  参考資料等
   ・ MAVIAのウェブサイト(http://www.mavia.org