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第2章 米国調査

  青少年対策の観点からテレビゲーム等に関する取組を米国において行っているNPO及び関係機関等の取組状況を把握するため、平成15年7月27日から8月3日までの間、米国調査を実施した。調査先のNPO等については、限られた調査日程の中で出来る限り多様な活動を調査することを念頭に置き、表23の9団体(者)を選定した。
 調査に当たっては、設立の経緯・目的、活動内容、組織基盤等について聴取することとしたが、特に、テレビゲームが子どもに与える影響、法規制や関係業界による自主規制に対する評価、政府機関・業界団体・他のNPO等との連携、各団体の課題等を中心にヒアリングし、それ以外の事項については、参考資料等により補うこととした。
 各団体の調査結果は、次ページ以降のとおりである。


表23 調査先の団体等の概要

調査先 主な活動の概要 (※)
NIMF
   National Institute on Media and the Family
テレビゲーム等のメディアが子どもや家庭に及ぼす影響について、情報提供等を実施。 坂元委員
MAVIA
   Mothers Against Violence in America
子どもによる暴力及び子どもに対する暴力の予防を行うため、教育プログラムの提供等を実施。 後藤委員
メディアスコープ
   Mediascope
テレビゲーム等のメディアが社会的な問題を正確に表現するよう促すため、情報提供等を実施。 石川委員
スターブライト財団
   The STARBRIGHT Foundation
病気の子どもを支援するテレビゲーム等の教育教材の作成・配付等を実施。 赤堀委員
エンターテインメントソフトウェア協会
   (ESA(イサ):Entertainment Software Association
テレビゲームのソフトウェア制作販売会社の業界団体。 渡邊委員
米国任天堂
   Nintendo of America Inc.
任天堂の北米独立法人。 猪股委員
ジョー・バーカ下院議員事務所
   Congressman Joe Baca’s Office
議員は、「テレビゲームの性や暴力から子どもを守る法案」を議会に提出。 佐々木委員
ジョゼフ・リーバマン上院議員事務所
   Senator Joseph Lieberman’s Office
議員は、テレビゲームの過度に暴力的な内容が子どもに悪影響を及ぼしていることを主張。 橋元委員
連邦取引委員会
   (FTC:Federal Trade Commission
テレビゲームの販売に関するマーケティング調査等を実施。 事務局
(※)協力者会議における報告担当者

NIMF(National Institute on Media and the Family

1    住所等
住所 606  24th Avenue South, Suite 606, Minneapolis, MN 55454
TEL 612-672-4150
FAX 612-672-4113
URL http://www.mediafamily.org

2 調査日時
平成15年7月28日(月曜日)12時~15時

3 対応者
David Walsh氏(President

4  概要
(1)設立の経緯、目的等
 
   ○  NIMF(National Institute on Media and the Family)の目的は、研究、教育、唱導(Advocacy)を通して、メディアが子どもや家族に及ぼす利益を最大化し、問題を最小化することである。NIMFは、保護者、教師、地域のリーダー、その他の養育者が、子どもの養育において適切な選択を採れるように、メディアやその影響を適切に理解するための教育ツールや資料を提供している。NIMFはまた、マスメディアや、人々がそれを使用する仕方を改善するような実践や政策を促そうとしている。
   ○  NIMFは、メディアが子どもや家族に及ぼす影響に関する研究、情報、教育のためのリソースセンターとして設立された。設立者は、博士号を持つ心理学者David Walsh氏である。Walsh氏は、15年前から活動を行っていたが、1996年にNIMFとして組織を設立した。

  (2)活動内容
   ○  NIMFは、「The wise use of media will build healthy communities and promote a culture of respect」(メディアの賢明な使用は、健康なコミュニティと、互いを尊敬する文化をもたらすであろう)という考え方に基づいて、1保護者や教育者など、子どもの養育者に対する情報提供、2メディアの影響などに関する研究、3業界に対する働きかけ、などの活動を行っている。

 1情報提供活動
   ○  NIMFは、養育者に対する情報提供ないし教育活動を主要な目的としており、「Get Media Wise」(メディアに対して賢くなれ)、「Watch What Your Kids Watch」(子どもが見ているものを見よ)などのスローガンの下、いくつかの活動を行っている。
   ○  NIMFは、ウェブサイトなどで多くの情報を提供しており、そうした情報としては、第1に、メディアに関する学術研究の知見がある。子どものメディア使用に関する実情や、メディアの影響に関する伝統的あるいは先端的研究の動向や結果を盛んに紹介し、解説している。例えば、ウェブサイトの「Facts」というコーナーでは、「Computer and Video Game Addiction」(コンピュータとテレビゲームの中毒)、「Effects of Video Game Playing on Children」(テレビゲーム遊びが子どもに及ぼす効果)、「Media's Effects on Girls: Body Image and Gender Identity」(メディアが女子に及ぼす効果-身体イメージとジェンダー-)、「Television’s Effect on Reading and Academic Achievement」(テレビが読書や学力に及ぼす効果)など、19個のテーマについて、根拠となる文献を示しながら、研究知見が簡単かつ分かりやすく要約されている。(資料編4ページ参照)
   ○  第2に、NIMFは、それぞれの親や子どもがメディアに対してどのように接触したらよいかについての具体的なガイドラインを示している。例えば、ウェブサイトの「Tips」というコーナーでは、テレビ、テレビゲーム、インターネットなどの使用などに関する多種多様なガイドラインや示唆が見られるが、「Taming the Video Game Tiger」(テレビゲーム坊主を手なずける)というガイドラインでは、「子どもがテレビゲームで遊ぶ時間を制限すること」、「テレビゲームを購入するときにレーティングを参考にすること」などの15か条が挙げられている。他にも、1親がメディア問題を子どもに言い聞かせる場合のガイドライン、2子どもに適切な本を選ぶためのガイドライン、3メディアに対する親の意識を簡単に調べるチェックリストなどがある。「Tips」コーナーの他にも、「Activity」というコーナーでは、養育者が子どもにそれぞれのメディア問題について教育するときのカリキュラムがいくつも紹介されている。どのような教材を用意し、子どもにどのような作業をさせ、どのように問いかけるかなどが具体的に書かれている。(資料編4~5ページ参照)
   ○  第3に、NIMFは、主要なテレビ番組、ゲームソフト、映画作品のそれぞれに対して、独自のレーティング結果を提示している。レーティングは、13~7歳に適当であるか、28~12歳に適当であるか、313~17歳に適当であるか、4暴力の量、5暴力描写の強烈さ、6恐れ、7違法ないし有害な行為、8俗悪な言葉、9裸体、10性的行為のそれぞれについて、緑(問題なし)、黄色(注意が必要である)、赤(問題あり)の3段階で評価するものである。NIMFによって行われる評価の他にも、1ウェブサイトの閲覧者による評価、2閲覧者のうちNIMFが特に資格を認めた評価者(SuperRatersと呼ばれている。)による評価が掲載されている。SuperRatersの採用には、子どもの発達に関する専門性などが考慮されるようである。このキッズスコア(KidScore)は、非常に多くの番組、ソフト、作品に対して出されている。(資料編6~7ページ参照)
   ○  以上の情報は、ウェブサイトの当該ページで閲覧できるが、サイトには他に、「Dr. Dave’s Column」(Dave博士のコラム)があり、Walsh氏が毎月執筆しているエッセイが多数、掲載されている。また、1年に3回程度、ニュースレターを出しており、ウェブからダウンロードできるようになっている。これらのコーナーでは、メディアに関する社会の状況や研究の進展について解説したり、NIMFの活動や成果を紹介したりするなどとともに、上述したような養育者に対する教育的な情報も多く含まれている。(資料編8ページ参照)
   ○  ウェブサイトの他には、隔週でeNewsという電子メールニュースが出されており、新しい社会的動きや研究知見について速報的な報告をしている。さらに、緊急の事態があった場合には、補足のためにeNewsに加えてeAlertを出している。過去のeNewsは、ウェブサイトでも閲覧できる。(資料編9~10ページ参照)
   ○  NIMFはまた、コミュニティの指導者などに対して、講演会やワークショップもしばしば行っている。NIMFの講演者として、Walsh氏の他にも3名の講師がウェブサイトに履歴や専門性とともに掲載されており、講演依頼などを受け付けている。小売業者向けのプログラムもあるようである。
   ○  NIMFはさらに、多くの教育ツールを開発している。メディアの影響に関する研究知見、悪影響に対する取組の仕方、メディアに対する意識や知識を自己診断するテストなどをまとめた本、ビデオテープ、オーディオテープ、リーフレットなどを、単独ないし組合せて販売している。また、学校用の教材もあり、教員用のガイドブックから、優れた取組をした生徒に授与するシールに至るまで、教員、親、生徒それぞれのための多くのツールが収められている。こうしたツールは、家庭や学校の他にも、宗教団体、企業、健康施設などで利用できるものとなっているようである。

 2情報提供に関する考え方
   ○   Walsh氏によれば、情報提供の目標は、awareness(意識や関心を高める)、knowledge(知識を増やす)、action(行動を起こさせる)の3段階がある。まず、意識や関心を高める、すなわち、問題に気付かせることが重要であり、そうすれば、問題についての知識を求めるようになり、最終的には行動に結びついていく。
   ○  NIMFでは、「When you are not teaching your children, who is?」(あなたが自分の子どもを教育していないとき、誰が教育しているのですが?)という言葉を基点として、意識や関心を高める活動をしている。意識や関心を高めるために、例えば、広告会社と協力して、コピーを作成してキャンペーンを行っている。「If you believe Sesame Street taught your 4-year-old something, you better believe MTV is teaching your 14-year-old something」(もし、セサミストリートがあなたの4歳の子どもに何かを教えたと信じるならば、MTV(音楽の専門チャンネル)があなたの14歳の子どもに何かを教えていると信じたほうがよいです)、「24 hours a day, lessons in violence, sex and bad values. And the tuition is only the price of the cable」(一日に24時間、暴力、性、悪い価値の授業。授業料はケーブルの価格だけです)などのコピーを20個ほど作成している。出版物やテレビの広告におけるキャンペーンや、ウェブサイトによるキャンペーンがあり、また、スタッフが専門家としてマスメディアに登場することもキャンペーンとなる。
   ○  こうしたキャンペーンなどで意識が高まった養育者に対して、悪影響の実態に関する研究知見を知識として与え、その上で、行動の仕方についての情報を伝え、それを促していく。

  3研究活動
   ○  NIMFは、それ自身で、あるいは、他の研究者と共同して、攻撃型のテレビゲーム使用が暴力性の発達に及ぼす影響に関する縦断調査研究などを実行している。メディアと子どもの問題を扱う専門学会で研究結果を発表したり、専門雑誌に論文を投稿したりするなどの活動も行っている。(資料編11~12ページ参照)

 4業界などへの働きかけ
   ○  NIMFは、「Media Wise Video Game Report Card」(テレビゲーム成績表)を毎年、公表している。これは、テレビゲーム業界の取組について、1レーティングの正確性、2レーティングの教育、3レーティングの遵守の3点から評価するものである。例えば、2002年の成績表では、レーティングの正確性については、暴力描写に関して実際の内容よりも甘いレーティングが付けられた人気ソフトが散見されることから「D」と評価されている。レーティングの教育については、40件の販売店を調査した結果、表示やポスターなどでレーティング・システムに関する説明を消費者にきちんと提示している販売店は47パーセントであり、昨年度よりは増えたものの、まだ不十分であるとして「C」の評価となっている。レーティングの遵守については、7~14歳の子どもに実際に「M」(17歳以上推奨)が付けられたソフトウェアが買えるかどうかを実験したところ、販売が拒否されたのは54パーセントの場合だけであった。これは、以前と変わらない水準であり、評価は「F」とされた。この成績表は、上院議員のジョゼフ・リーバマン(Joseph Lieberman)氏も重視しており、テレビゲーム業界もそれを考慮して、レーティング・システムの変更などを行っている。(資料編13~22ページ参照)
   ○  また、NIMFは、他の機関とともに、テレビゲームでの女性に対する暴力に反対する社会運動を行っているようである。

  5外部からの評価および外部との連携
   ○  NIMFに対しては、保護者や教育者などから、活動を高く評価するメッセージが送られている。また、大量の教育ツールを学校に配付するなど、学校との連携があるようである。他の機関との共同研究や社会運動もいくつか見られ、リーバマン上院議員など政治家との協力関係もあるようである。また、Walsh氏は、NIMFは、悪いゲームソフトを問題視するだけでなく、良いゲームソフトを伸ばそうとする立場にもあり、テレビゲーム業界とも良好な関係にあると述べていた。

  (3)テレビゲームに対する考え方
 
   ○  以下では、Walsh氏から聞き取った、子どもとテレビゲームの問題に対する見解をまとめる。

  1テレビゲームの重要性
   ○  テレビゲームの問題は、子どもとメディアの問題の中でも、重要なものと考えている。第1に、テレビゲームは、子どもの娯楽メディアとして急成長したものである。第2に、テレビは受動的なものであるが、テレビゲームは、子どもがアクターないしディレクターとして参加し、場面をコントロールしたり、自分が行ったことに対して報酬を受けたりする。第3に、テレビに関する調査は以前から行われており、テレビの暴力シーンは子どもに影響を及ぼすことが示されている。そうすると、テレビゲームもテレビと同様あるいはそれ以上に子どもに影響を与えると考えるのが合理的である。

 2テレビゲームの問題性
   ○  テレビゲームが単純に悪いとは言えない。テレビゲームは強力であり、そのため、有益にもなるし、有害にもなると考えている。有害になる場合は、次のような側面での悪影響が考えられる。
   ○  第1に、健康への影響である。子どもが画面の前で過ごす時間は、15年前には週28時間だったが、現在では、テレビの他に、テレビゲーム、パソコン、インターネットなどが加わったこともあり、週40時間ほどになっている。これが運動不足や肥満を招いていると考えられる。米国では過去15年間の子どものカロリー摂取量は1パーセントしか増えてないのに対し、運動量は13パーセントも減っている。そして、肥満児は10パーセント増えている。肥満児の増加は運動量の低下によるものであり、その要因としてメディア使用が注目されている。
   ○  第2に、テレビゲーム中毒である。テレビゲームは、刺激に対する人間の反応様式に合うように作られており、そのため、人間を強く引き付ける。1年前に行われた13~15歳の600人の青少年に対する調査によると、7人に1人の青少年において、夢に見る、テレビゲームが原因で親とケンカをしたり、嘘をついたりする、親に隠れて遊ぶなど、薬物中毒と同様と言える行動パターンが見られている。また、オンラインゲームのほうが強い中毒性を持っており、この問題は今後さらに深刻化すると考えられる。
   ○  第3に、暴力である。暴力的なテレビゲームが子どもの暴力性を高めるという懸念については、それを支持する調査研究があり、また、脳の発達に関する知見からも、根拠があると言える。感情を司る脳の部位として大脳辺縁系があるが、子どものそれは成長ホルモンの影響でときに衝動的で攻撃的な行動を導く。これに暴力的なテレビゲームの影響で攻撃性を呼ぶホルモンが加わり、恐れや怒りによって扁桃体の過剰な活性化がもたらされると、さらに強い攻撃性が生まれる。一方で、こうした攻撃性を抑えるとされる前頭前野の活動がテレビゲーム使用によって麻痺するという研究知見があり、この両者から、子どもの暴力が生じてくると考えられる。若い脳のほうが、より年長者の脳よりも、アルコールや薬物の影響を受けやすく、深刻であることが知られており、それを敷衍すれば、テレビゲームの影響も、若年者で強くなると見られる。また、すべての子どもに強い影響があるとは考えていない。テレビゲームが直接に暴力行動のきっかけを作る場合は一部である。他の子どもの場合には、テレビゲームの中で展開されるストーリーが社会の価値観や文化を変容させ、それが間接的に影響を与えることが考えられる。暴力的なテレビゲームの最も根深い影響は、互いを尊敬しない文化を作ってしまうことにある。
   ○  なお、NIMFは、テレビゲームを一概に悪いものとは考えておらず、むしろ子どもにとって良いゲームもあると考えている。保護者の知識を増やすことによって、保護者が良いゲームを選択できるようにしたい。そのために、良いゲームの市場を拡大することで、良いゲームのメーカーが利益を出せるようにすることが重要である。また、保護者にもテレビゲームがすべて悪いとは言っていない。あくまで適切なソフトウェアを選ぶこと、テレビゲームで遊ぶ時間帯や使用時間に気をつける必要性を強調している。

  3保護者の意識や行動
   ○  現在、子どもをめぐる事件のために、子どもとメディアに関する懸念は拡大しているが、子どものメディア接触について保護者の取組を促すことは必ずしも容易ではない。保護者は忙しく、疲れているので、子どもの長時間にわたる使用が問題と考えていても、それについ子守りをさせ、楽をしてしまう。実際に、保護者に調査を行うと、子どものテレビゲーム遊びを監視している、遊び時間を制限しているなどの回答が得られるが、一方、子どもにも調査を行うと、親は子どもがどのようなゲームで遊んでいるかを知らない、監督もしていないなど、保護者とは異なる回答が見られる。保護者の意識や行動はまだ十分な水準にはないと考えられる。

  4レーティングや規制
   ○  ESRB(Entertainment Software Rating Board)の自主的なレーティング・システムは役に立つものであり、保護者に対して、その使用を勧めている。ただし、批判も出されている。第1に、保護者が期待するレーティングとESRBのレーティングでは差があることである。ESRBのレーティング・システムは、暴力性よりも猥褻性を重視していた。2003年、このレーティング・システムが改定されるが、暴力性がより重視されることを期待している。第2に、テレビ、テレビゲーム、音楽、映画のシステムがバラバラであることも問題である。1つの統一されたシステムが使用者にとって便宜である。
   ○  ゲームソフトの制作や販売などを法律で規制することは、一般論として憲法修正第一条の問題のために難しい。ワシントン州で法律が成立したが、あくまで子どもへの販売を規制するものであり、制作は規制していない。しかも、テレビゲーム業界は、憲法修正第一条に基づいて撤廃を求める裁判を起こしている。また、リーバマン上院議員なども、テレビゲーム問題に関する活動を盛んに行っているものの、法規制の活動はしていない。
   ○  言論や表現の自由に触れる法規制は一般に難しいとはいえ、子どもに関しては不可能ではない。例えば、ポルノグラフィーを制作したり、配信したりすることは合法であるが、子どもによるアクセスは制限されている。これまで暴力は子どもの保護の範囲に含まれていなかったが、社会的な関心が高まるにつれて、州レベルでは法制化が可能になっており、この問題については法制化の余地がない訳でもないと考えられる。
   ○  リーバマン上院議員やNIMFの活動は、法制化をもたらすものではないが、業界に圧力を加えることになり、自主的な取組みを促すものとなっている。

 

(4)組織基盤等

 
   ○  3名の職員がフルタイムで勤務している。代表者のWalsh氏の他に、Douglas A. Gentile博士、Gwen Aaberg氏である。Gentile氏は、新進気鋭の研究者であり、NIMFの研究部門のリーダーであり、講演も行っている。Aaberg氏は、財務および事務を担当している。
   ○  これらのメンバーの他にも協力者がおり、Walsh氏の夫人も研究論文の収集などの調査に協力している。ウェブサイトやコンピュータ・システムを担当しているメンバーや、講演依頼などを選別するメンバーなどもいるが、フルタイムの職員以外は、必要に応じて仕事を依頼し、報酬を支払っている。Walsh氏とGentile氏の他に、Marilyn Van Overbeke氏とEileen McCarthy Harness氏という2名の講演者がいるが、これらの講演については有料の場合も無料の場合もある。
   ○  NIMFは、11名のメンバーから成る理事会(Board of Directors)がある。議長は、Weber Shandwick Worldwideの副社長であるSuzan Eilertsen氏である。Walsh氏も理事の1人となっている。11人の理事は、企業の役員、医師、文筆家、保護者など多様な背景を持つメンバーとなっている。
   ○  年間の予算は、Walsh氏によれば、55万ドルである。2002年の内訳は、NIMFが発行している「2002 National Institute Annual Report」では、財団などからの助成金が33パーセント、特定の法人からの支援金が30パーセント、講演料が19パーセント、商品の販売によるものが10パーセント、個人からの寄付が7パーセントなどとなっている。高額な資金提供者としては、2002年の場合、Fairview Health Servicesが20万ドル以上、The McKnight Foundationが12万5,000ドル、Target Corporationが10万ドルである。Fairview Health Servicesは以前、Walsh氏が所属していたところである。一方、政府やテレビゲーム業界からの資金はない。なお、米国では企業がしばしば財団を設置する。カーギル社が設立したカーギル財団などは、低所得の高リスク世帯に関心が強く、NIMFの関連したプロジェクトに資金を提供している。また、特定のプロジェクトのために資金を申請する場合が多いが、使途の指定のない資金の提供もあり、この場合は家賃や光熱費などの支払いにも使用できる。

 

(5)今後の課題・展望

 
   ○  第1に、現実問題として運営資金を確保していくことが大きな課題である。これは、常に大きな問題であり、現在でも多くの時間を費やしている。
   ○  第2の課題は、保護者を動機づけしていくことである。テレビやテレビゲームは便利なメディアであり、若い保護者にとっては生活の一部となっているので、変化をもたらすのは容易ではない。文化的な習慣を変えるには時間がかかる。まず関心や意識を高めることが重要である。
5   コメント【坂元委員】
   ○  子どもや保護者に対してメディア問題に関する情報提供活動をするNPOは少なくないが、NIMFでは、Walsh氏とGentile氏という2人の中心的スタッフが博士号を持つ研究者であり、その結果、NIMFの情報提供活動は学術的な背景に強く裏付けられている。NIMFが提供している情報は、実証研究の動向を正確に踏まえたものであり、妥当性の高いものと言える。また、NIMFはそれ自身でも研究を進めているが、この研究の学術的な水準は高い。こうした学術性の高さがこのNPOの最大の特徴であると考えられる。
   ○  また、NIMFが発表するテレビゲーム成績表は、テレビゲーム業界に少なからず影響力を持っているようである。これは、リーバマン上院議員などとの協力関係による部分があるかもしれないが、いずれにせよ、NIMFが少数のスタッフのNPOであることを考えると、その影響力は驚くほど強いと言える。
   ○  最近の日本では、学術の社会貢献が強く言われるようになっているが、このNPOの事例は、子どもとメディアの問題について、研究者がNPO活動によって社会貢献をしようとする場合、そうした研究者がたとえ少数であっても、方法によってはそれが確かな成果を挙げ得ることを示すものであり、学術の社会貢献を実現する1つのモデルになり得るものと考えられる。
   ○  ただし、こうした成果を挙げているNIMFについても、資金収集は楽とは言えず、Fairview Health ServicesとTarget Corporationという2つの大口支援者があることが大きいようである。個人による寄付や商品の販売による収益などは決して大きくない。日本において類似したNPOを立ち上げ、活動する場合にも、資金の問題が重要になると考えられる。

6  参考資料等
NIMFのウェブサイト(http://www.mediafamily.org/