| 1 | 「子どもとインターネット」をめぐる状況 インターネットが開発された当時は、インターネットに接続するためには一定の知識が必要とされた。しかし、現在では利用者は専門的な知識がなくとも簡単にインターネットを利用することができるようになっており、一般家庭にも普及が進んでいる。このような中で、「子どもとインターネット」をめぐって次のような状況があると思われる。
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| 2 | 「子どもとインターネット」のより良い関係のために 「子どもとインターネット」の問題は複雑である。したがって、インターネット上に潜在する危険から子どもを守り、インターネットを子どもにとって良いメディアにするためには、幅広い取組を社会全体で進めていくことが重要となる。 その意味では、社会を構成する一人一人がそれぞれの分野においてこの問題に取り組んでいくことが必要となるが、今回の調査研究は、家庭や地域での取組を進めるためにどのようなことが必要なのかという視点に立って、米国での取組を中心にして実施した。 この観点から、協力者会議では日本における「子どもとインターネット」に関する様々な状況を踏まえた上で、米国でのNPO等の取組を参考にしながら議論を重ねたが、その結果、次のようなことが家庭や地域での取組の推進に寄与するものと思われる。
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| インターネット上に潜在する危険から子どもを守るために、子どもや保護者に対する情報提供が必要である。 |
家庭や地域での取組を推進する観点から、まず、インターネット上には子どもにとっての危険が潜在することやその対処方法などについて、家庭や地域に様々な情報を提供していくことが必要であると考えられる。
| (1) | インターネットに潜在する危険やその対応策などに関する情報提供 インターネット上では子どもにとって様々な危険が潜在していることを保護者等に知らせるとともに、それらの危険に対し、具体的にどのように対処すべきかということについて情報を提供することが必要である。
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| (2) | 推薦サイトのリスト(ホワイトリスト)に関する情報提供 子どもにとって不適切あるいは有害なサイトのリスト(ブラックリスト)のみならず、推薦サイトのリスト(ホワイトリスト)に関する情報提供を行っていくことも、「子どもとインターネット」のより良い関係を構築することに寄与すると思われる。
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| (3) | 様々なツールに関する情報提供 インターネットにおける子どもの安全を守るための様々なツールを紹介することも効果的であると思われる。
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| (4) | Q&Aサービスの提供 保護者などのインターネットに関する知識は決して十分であるとはいえないことから、Q&Aサービスの提供は効果的であると思われる。
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| (5) | 連絡機関、相談機関等に関する情報提供 インターネット上のトラブルやインターネットを介した犯罪等の被害については、利用者はどこに連絡あるいは相談すべきか分からない場合が多いと思われるので、これらに関する情報を提供していくことも必要である。
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| (6) | 子どもの安全に配慮した教育的なサイトの運営 インターネット上に潜在する子どもにとっての危険だけに目を向けるのではなく、インターネットの有用性を活用し、「子どもとインターネット」のより良い関係を構築するという観点からは、インターネット上の子どもの安全を確保しつつ、教育的に利用することも求められる。
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| (7) | インターネット上以外(オフライン)での情報提供等 子どもや保護者に対する情報提供等は、インターネット上にとどまらず、それ以外でも幅広く行っていくことが必要である。
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| 「子どもとインターネット」の可能性と危険性に対する社会的意識を高めるために、全国的なキャンペーンなど幅広く啓発広報を行なうことが必要である。 |
日本では、子どもが「出会い系サイト」などインターネットを利用した犯罪等の被害に遭う事犯が多発しているが、そもそも保護者など子どもを取り巻く大人がインターネット上の子どもの危険性や対応策について認識が不足していると思われる。したがって、全国的なキャンペーンなど幅広く啓発広報を行っていくことが必要である。これに関し、米国では次のような取組がみられる。
| ● | Kids' Space Foundationは、インターネットの危険性は「コンテンツ」ではなく、「コンタクト」にあると考えている。コンテンツで子どもが死ぬことはないが、コンタクトでは誘拐、暴力、殺人等に発展する可能性があるからというのが理由である。そのため、インターネットを介したコンタクトの危険性について、保護者や教育者をさらに教育する必要があるとしている(35~36ページ参照)。 |
| ● | Donna Rice Hughes氏は、全国的なキャンペーンの必要性を説きつつ、その効果的な実施の困難性も指摘している。実施に際しては、インターネット上に潜在する子どもにとっての危険が存在すること、インターネット上には子どもを狙う性的搾取者が存在していること、この性的搾取者は子どものふりをしてアプローチしてくることを保護者に認識させた上で、あわせて子どもを守るための対応策を教えることが重要であるとしている(42~43ページ参照)。 |
| ● | ICRAはフィルタリング・システム等の普及を図っているNPOであるが、同時に公的な教育キャンペーン(public educational campaign)を通して、家庭や地域に対して、インターネットの使い方や危険性などリテラシー活動を全国的に行っている(52~53ページ参照)。 |
| ● | 米連邦取引委員会(FTC)は公正な市場競争の確保と消費者保護という観点から所要の規制等を行っているが、他方において学校や家庭における教育の必要性も強調している(86ページ参照)。 |
しかし、社会的な啓発を行うことも含め、情報を如何に伝えていくかについては、米国調査の結果を見る限り、米国でも確立した方策があるわけではなく、まだ試行錯誤の段階で様々な方法を模索しているように思われる。
| 情報の送受信に際し、的確に判断し対処することができる能力(メディア・リテラシー又は情報リテラシー)を身に付けることができるよう教育することが必要である。 |
子どもにとって不適切あるいは有害な情報に関しては、情報発信者側に何らかの規制を加えることは必要である。しかし、このような不適切あるいは有害な情報の発信者は最先端の技術を持っており、発信される情報は無数にあることを考えると、情報発信者側に規制を加えることにより問題解決を図ることは、実効性の点から事実上困難な場合があると思われる。また、ホームページのほか、最近では電子メールやチャットにもフィルタリングをかけることができるような技術開発が進んでいるが、フィルタリングも決して万全なものではなく、有害・不適切な情報を完全に規制することは困難である。
そこで、受信者であると同時に発信者でもある子どもが的確に判断し、対処することができる能力(メディア・リテラシー又は情報リテラシー)を身に付けることができるよう、教育していくことが必要である。
| ● | 米国図書館協会は、不適切あるいは有害な情報から子どもを守りたいのであれば、フィルタリングのような技術に依存するのではなく、このような情報から自らを守れるよう、インターネット上の情報の評価について子どもを教育することが大切であるとしている(63~65ページ参照)。 |
| ● | リバプール公立図書館では、インターネットにおける子どもの安全を守るためには、子どもだけではなく保護者もまたメディア・リテラシーを身に付けることが肝要であるとして、今後はより多くの保護者が関心を持って参加できるようなプログラムを実施する必要があると考えている(72~73ページ参照)。 |
日本においても、例えば、IT講習の前段階としてインターネット上の安全性の確保に関する講習を行ったり、幼少期に家庭教育の一環としてメディア・リテラシー又は情報リテラシーを養う教育を行なったり、保護者に対してインターネット上の危険やその対応策に関する情報提供をPTAも巻き込んで取り組んでいくことなどが考えられる。
しかし、現実には、このような情報を批判的に読み解く力(メディア・リテラシー又は情報リテラシー)を身に付ける教育を行うための指導者が少ないことが問題である。
なお、メディア・リテラシー又は情報リテラシーを養う教育は必要であるが、その一方で、例えば、書店やコンビニエンスストアなどに子どもにとって不適切あるいは有害な図書が子どもの手が届くところに置かれているなど、実際には子どもを取り巻く環境自体に問題があると思われることから、これについては社会全体の配慮が必要である。
| インターネットを介した「接触(コンタクト)」の危険から子どもを守るため、個人情報の取扱いには十分に注意する必要がある。 |
インターネットを介した「接触(コンタクト)」により、子どもが誘拐、暴力、殺人等の被害に遭うおそれがある。
| ● | 既述のとおり、Kids' Space Foundationでは、インターネットの「コンテンツ」で子どもが死ぬことはないが、「コンタクト」により子どもが誘拐、暴力、殺人等に巻き込まれるおそれがあることから、インターネットの危険性は「コンテンツ」ではなく、「コンタクト」にあると考えている(35~36ページ参照)。 そのため、インターネット上で子どものプライバシーと安全を守るため、例えば、ペンパルボックス(文通相手募集コーナー)では保護者の承認を義務付けたり、メールがサイトに掲載される前に内容をすべてチェックして子ども自身のメールアドレスや家族のことなど個人情報を削除したり、あるいは全体的に書き直す必要がある場合には理由を付して子ども本人と保護者に送り返すなど、様々な取組を行なっている(36ページ参照)。また、セイフティ・システムの開発や提案、子どもの安全を守るための政府機関等との協力なども行なっている(35ページ参照)。 |
| ● | 米連邦取引委員会(FTC)は、子どもとインターネットの問題に消費者保護という観点から関わっている。すなわち、商業的取引において個人情報が一方的に求められることは、取引の公正や対等性を阻害することとなることから、商業的取引の中にプライバシー情報が組み込まれていることを問題視している(83ページ参照)。このような観点から、COPPA(Children's Onlien Privacy Protection Act:児童オンライン・プライバシー保護法)が2000年から施行されている。この法律は、ある商業的ウェブサイトが13歳以下の子どもから個人情報を収集、使用又は公開をしようとする場合には、保護者の許可を義務付けるというものである(84ページ参照)。 |
| フィルタリング・システムの普及を図るため、一般の利用者が簡単に利用できるソフトを安価に提供することが必要である。また、高度な機能を持つソフトを開発することも大切である。 |
日本でも様々なメーカーがフィルタリング・ソフトを提供しているが、ソフトにより規制精度が異なり、また保守料も含めると高額となるものが多い。例えば、教育現場では、高額なフィルタリング・ソフトが使用され、2年目以降保守料が支払えないために使われなくなっている。また、安いソフトは性能が落ちるのが現実である。
| ● | ICRAでは、ラベリング・システムとフィルタリング・システムの普及を図っており、日本では財団法人インターネット協会の副理事長がICRAの理事として協働されて、SFSサーバーとラベリング・サーバーを無償で使用できるサービスを提供している(55ページ参照)。 |
フィルタリング・システムの普及を図るためには、メーカーにおいても、一般の利用者が簡単に操作できるソフトを安価に提供することが必要である。
なお、あるフィルタリング・メーカーはICRAに関して「法的な制約がないため、虚偽の申告や第三者機関の格付け後に内容を変更するケースが多いため、信頼できる規制精度を提供できていない」旨批判している。フィルタリングに関しては様々な考え方があるところであるが(20ページ、27~28ページ、41~42ページ、63~64ページ、71ページ参照)、ICRAも認めているとおり、フィルタリングは子どもにとって不適切あるいは有害なコンテンツに対する完全な解決策ではなく、解決策の一部に過ぎないのである(51ページ参照)。
フィルタリング・ソフトの活用も含めて、子どもをインターネット上に潜在する危険から守るための対策を立てることが必要であると思われる。
| インターネット上の子どもにとって不適切あるいは有害な情報に対する方策を検討するに当たって、図書館や図書館司書は大きな役割を果たし得る。 |
米国では、図書館は情報発信センターとして明確に位置付けられており、子どもとインターネットの問題に関しても「情報へのアクセスを保障する」という立場から関わっている。
| ● | ALAが設立された目的は、人々の学識を高め、その情報アクセスを保障することである(58ページ参照)。公立図書館においては、富裕層・貧困層の別、都市圏・地方の別なく、利用者に対して同じ情報を提供しなければならないとALAは考えており、そのため、図書館は本の貸し出しをする場所であるとともに、英語を学習できる場所、読み書きを習う場所、市民権を得るための学習をする場所となっている(59~60ページ参照)。インターネットについては、図書館利用者への情報提供という面で大きな役割を果たすものとして、早期に導入を図ってきている(60~61ページ参照)。 |
| ● | リバプール公立図書館でも、インターネットにおける子どもの安全を守ると同時に、「表現の自由」、「アクセスの自由」も大事にしていきたいと考えている(73ページ参照)。 |
| ● | 公立図書館等に対してフィルタリング・システムの導入を促進しようとする児童インターネット保護法(Children's Internet Protection Act)が制定されたときには、ALAは、フィルタリングが有益な情報までも遮断するおそれがあるとして、「情報へのアクセスを保障する」という立場から、この法律の廃止を求めて連邦政府に対して訴訟を提起した。連邦最高裁判所はALAの主張を全面的に支持し、この法律は施行されていない(61ページ参照)。なお、ALAは、子どもを有害情報から守るためには、フィルタリングという技術に頼るのではなく、自らを守ることができるように子どもを教育すべきだと考えている(63~64ページ参照)。 |
また、米国では、インターネット上の不適切あるいは有害な情報に対する方策を検討していく上で、図書館司書の視点や知識が大きな役割を果たしている。
| ● | ALAによれば、図書館司書は資格を取得するためにリサーチ・スキル(検索技術)や情報の質に関する判断に関して学ぶため(62ページ参照)、情報を仕分ける能力・技術が高く、その能力を活かした活動が多く成功しているということである。 |
| ● | 例えば、図書館司書の資格を持つNet-Momの代表者がシステム・技術担当者として長年勤めてきたリバプール公立図書館は、小さな町の一公立図書館であるにもかかわらず、全米図書館のトップ5入り(2000年)を果たすほど、インターネット分野で大きな成果を上げている(67ページ参照)。図書館における取組を推進していくためには、システムのサポート(具体的には、検索システム、データベース構築、Q&Aサービス等のサポート)ができる人材が不可欠なのである。 |
| ● | 図書館司書の役割について、リバプール公立図書館では、子どもを悪いものから良いものへと方向付けることであるとしている。インターネットに関しても図書館司書は同様の役割を果たすことができ、良い情報か悪い情報かを子ども自らが判断できる教育を行うことも図書館司書の重要な使命であると考えている(69ページ参照)。 |
これらのことから、米国の図書館については概ね次のようなことが参考となると思われる。
| 地域のニーズや独自のポリシーに基づいた個性的な活動を行っていること。 | |
| ボランティアや友の会など、地域住民が一体となって図書館を支援していること。 | |
| 地域の情報発信基地として、生活全般にわたる幅広い情報提供を行っていること。 | |
| 図書館司書の使命感、社会的責任が強く、活動は情報の水先案内人としてのプロフェッショナリズムに支えられていること。 |
| 「子どもとインターネット」のより良い関係を築くために、家庭、学校、産業界、行政、NPO等の関係者がそれぞれの立場で、あるいは相互に連携しながら取組を進めていくことが重要である。 |
「子どもとインターネット」の問題は複雑であり、それがゆえに様々な方法により解決を図る努力をすることが必要である。家庭や地域での取組を推進するとは言っても、家庭や地域だけで進めることは現実には難しく、学校、図書館、NPO、産業界、行政、法執行機関等の関係者が連携しながら取り組んでいくことが肝要である。米国でも様々な形で連携が図られている(あるいは連携を図ることが必要であると考えている。)。
| ● | Net-Momでは、代表者自身が図書館司書であり、またメディア企業のコンサルタントであり、「子どもとインターネット」の問題に取り組む非営利団体の役員などでもある。(18~19ページ参照) |
| ● | リバプール公立図書館は学校図書館との連携強化を課題とし(73ページ参照)、また、GetNetWiseも教育機関等他の団体やサイトなどとの連携強化を今後の課題としている(28ページ参照)。 |
| ● | Kids' Space Foundationでは、子どもの安全を守るため、子どもを標的にした大人の誘惑や犯罪につながる嫌がらせ行為の捜査に協力したり、メールのやり取りの中でこのような行為が認められた場合には直ちに政府機関や関係団体に通報することとしている(35ページ参照)。 |
| ● | ICRAはメディア企業と協力したコミュニティー・サイトの運営のほか、国際的な連携も推進していこうと考えている(54~55ページ参照)。 |
| ● | ALAは政府機関や議会と密接な連携を取っており、同時に他のNPOやNGO、あるいはメディア企業とも良好な関係を持っている(64ページ参照)。 |
米国では、米連邦取引委員会(FTC)の例からも分かるとおり、この問題に関して国を挙げて取り組んでいる。憲法の保障する表現の自由との関係でいくつかの法律に対して訴訟が提起されているが、連邦政府がインターネット上の子どもの安全を確保するために法的な規制に取り組んでおり、政府の役割は大きいと思われる。
それと同時に、政府機関や教育機関などでは手が届かない分野があるので、この点においてNPOやNGOの役割は非常に重要である。今回調査したNPO等が何らかの形で他の団体等との連携を図っている(あるいは図ろうとしている)ことからも分かるとおり、行政、事業者、NPO等が連携・協力して対策を立て、それを実行していくことが必要である。
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