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第2章 インターネットの有用性と危険性

  「子どもとインターネット」の諸問題に関して家庭や地域での取組を推進していくためには、まず、その問題性を理解しておくことが必要である。
  そこで、ここでは、インターネットの基本的な仕組みについて触れた上で、インターネットの一般的な有用性と危険性、及び子どもに特有の有用性と危険性について述べることとする。

1   インターネット
(1)   コンピュータ通信
  コンピュータは、元々、計算やデータの入出力を行うために使用されていた。それが、コンピュータと離れた場所で作業をするためにケーブルを延長し、さらには電話などの公衆回線網にモデム*1をつけて、離れた場所からデータのやりとりができるようになった。このような通信は、コンピュータは複数となっても1台のホストコンピュータとのやりとりであるがゆえに、クローズされた(一定の範囲内での)データ通信システムである(そのため、ホストコンピュータが故障するとシステムを使うことができなくなるという弊害があった。)。

           *1  モデムとは、変復調装置。電話回線を用いてデータ通信をするときに使う。パソコンと電話回線をつなぐための機械。

(2)   インターネット
  世界で最初のコンピュータ・ネットワーク(ホストコンピュータが複数となるもの)は、アメリカの国防システム用に開発された。これは、ホストコンピュータが2つから4つ、4つから8つと次々と繋がっていく、分散ネットワーク・システムである(したがって、あるホストコンピュータが故障しても、別のコンピュータがその代わりをする。)。
  このネットワークは、アメリカ国内の大学や研究機関を相互に接続し、ホームページ、ファイルの送受信、メールの送受信へと発展した。
  各ネットワークではそれぞれの通信方式あるいは言語(HTML言語)などを取り決めていたが、これらを共通にしたプロトコル(通信手順)*2を決めてルールとすることにより、ネットワークが広がっていった。
  インターネットでは、中継装置としてルータ*3が使われている。回線には、電話回線、ケーブルテレビ回線、専用回線等がある。専用回線にはISDN、ADSL、光ケーブル等があり、ADSL回線以降がブロードバンド(高速回線)と言われ、現在、急激に全国に普及している。

          *2   代表的な通信プロトコルがIP(インターネット・プロトコル)で、IETF(Internet  Engineering  Task  Force)という標準化団体によって定められている。
          *3   ルータとは、ネットワーク上の中継装置。伝送データを送信先と情報通過量を検討して、最も効率がいいと判定した伝送経路に転送する機能を持つ。

(3)   プロバイダ
  インターネット・プロバイダ(接続業者)とは、インターネット上の通信を相互に中継する機能を提供するサービスを行う事業者をいう。利用者がインターネットに接続しようとする場合には、プロバイダを経由して接続することとなる。
  プロバイダは、一般的には、ルータを管理し、WWWサーバー(ホームページ)、FTPサーバー(ファイル送受信)、メールサーバー(メールボックスとメールの送受信機能)等をサービスとして提供している。

(4)   電子メール
  電子メールとは、インターネットを通して「手紙」をやり取りすることである。電子メールは次のような仕組みでやり取りされる。
1  送信者が、プロバイダが管理するメールサーバーにメール送信を依頼する。
2  メール送信依頼を受けたメールサーバーは、メールをあて先のメールサーバーに転送する。
3  あて先のメールサーバーが受信者に対してユーザー認証の手続きを行った後に、受信者はメールを受信する。

  遠く離れた家族や外国の友達にもあっという間に「手紙」を送信することができ、もちろん相手からの返事もすぐに読むことができる。また、パソコンでメールを送受信する場合、その料金は距離に全く関係なく、アクセスポイントまでの電話代とプロバイダへの接続料金だけで、経済的といえる(携帯電話の場合は、送受信に際して課金されるのが一般的である。)。
  なお、プロバイダ(メールサーバーの管理者)は、誰が、いつ、どのような内容のメールを、誰に対して送信したかというようなメールのやりとりを把握することができる。メール自体にも誰が、どこから、どのような経由で(どこのルータを経由して)、どこに送信したかという情報が付いていることから、「封書」ではなく「葉書」のやり取りに類似しているといえる。

(5)   ホームページ
  ホームページは世界中の様々な情報を得られるだけでなく、自分からも世界に向け情報を発信することができる。ホームページを見るには、ブラウザという閲覧ソフト(インターネット・エクスプローラやネットスケープ・コミュニケ-ターなど)が必要となる。
ホームページには、そのページがどこにあるかという住所を示すアドレス(URLともいう。)が付いている(例:http://www.jlh.org/)。見たいホームページのアドレスが分かっているときは、そのアドレスを直接入力することにより、いっきにそのページにジャンプすることができる。
  ホームページは、メールが一般に公開されているようなものである。メールの場合は、送信者がプロバイダ(メールサーバーの管理者)にメール送信を依頼すると、送信先に配信されるが、ホームページの場合は、利用者(ホームページを見る人)が訪問(アクセス)してきたときに、プロバイダの管理するホームページサーバーが、ホームページからのメッセージを利用者に返すという仕組みで、利用者が見ることができる。利用者が訪問(アクセス)すると、メールと同様、誰が、どこから、どのような経由で(どこのルータを経由して)、どこにアクセスしたかという情報が付いていることから、ホームページ管理者と利用者が「封書」ではなく「葉書」のやり取りをしているようなものである。

(6)   チャット
  チャットは、インターネット利用者同士がおしゃべりできるサービスである。チャットは、同じ時間に複数の人がある特定のホームページにアクセスし、そこでお互いに書きたいことを書き込む場所である。学校や団体で特定のチャットのページ(チャット・ルーム)を持ち、パスワードを設定して、特定の人のだけが書き込み・閲覧できるものと、一般向けに誰でも参加できるものとがある。
  「掲示板」という書込みのできるページがあるが、チャットは、この掲示板を同じ時間に使うことと同じである。最近は常時接続により、時間を気にしないで使う家庭も増えている。
  チャットもメールと同様、誰が、どこから、どのような経由で(どこのルータを経由して)、どこに送信したかという情報が付いていることから、チャット管理者と利用者(チャットに参加する人)が「封書」ではなく「葉書」のやり取りをしているのと同じであるといえる。


2   有用性

インターネットには様々な特性があるが、主に次のような有用性があると思われる。

(1)   コミュニケーション
  高速、大容量、双方向、低コストの情報ツールとして、コミュニケーションの可能性を大きく広げることができる。国内外の様々な情報(文字、音声、画像、映像)に簡単にアクセスすることができるだけではなく、自分からも世界に向け情報を発信することができる。また、双方向のコミュニケーションにより、他者との関係を深めることができ、様々なネットワーキングを可能にする。一方、これまでの情報と違ってデジタルな情報なので、データの再生・加工が誰でも簡単にでき、知識や技術の習得に大いに役立つ。

(2)   教育
  多種多様なコミュニケーションを可能にするインターネットは、優れた教育ツールとしても注目されている。豊富な情報の中から必要な情報を取り出す優れた「検索」機能により、教育的価値の高い資料や素材へのアクセスが容易になり、総合的学習や調べ学習など、個性的かつ創造的な学習方法を可能にする。また、自宅にいながら世界中の様々な情報にアクセスすることができ、様々な双方向コミュニケーションが可能なので、在宅学習や遠隔教育、生涯学習など、教育の機会の拡大にも大いに貢献している。一方、自ら情報を発信することで、文章能力やその他の表現能力を養うことができ、情報の使い手として情報を理解・評価する能力をも養うことができる。

(3)   子どもの問題解決能力の育成
  教育におけるインターネットの活用の中でも、問題解決能力の育成のために活用する事例が多い。これまでの教育のスタイルは、教科書などで決められた内容を知識として蓄積することに重点が置かれていたが、これからの社会で必要とされる問題を解決する能力の育成の方に比重が移ってきた。例えば、英語の授業で、これまで決して辞書を引かなかった生徒が、アメリカの高校生と電子メールで文章をやりとりすることで、辞書を頻繁に引くようになった。どうしても訳したいという問題を解決するために、英語を学習するというスタイルに変わった。それは、試験に出るから覚えるというスタイルから、問題を解決するためという目標の変換であった。このように、現実社会と出会うと、そこに多くの問題が生じる。その問題を解決する力強い能力やスキルを修得するために、多くの場合にインターネットが活用されている。

(4)   ビジネス
  インターネットはもともと学術研究・防衛目的に開発されたものだが、最近では、ビジネス・ツールとしてその可能性に大きな期待が寄せられている。Eコマース、オンライン・マーケティングなどの言葉が示すように、様々なコミュニケーション・サービスを可能にするインターネットは、今や大きな利益を生み出す有望な「市場」となっている。オンラインのショッピング、バンキング、トレーディング、ネット広告など、インターネットはこれまでのビジネスの構造や形態を大きく変化させただけでなく、コンテンツ・ビジネスなど新たなビジネス・チャンスの可能性も広げた。また、消費者にとっても、時間や場所に制約されることなく様々なサービスを利用できるなど、より豊かな消費生活の実現に貢献している。

(5)   生活・文化・社会
  インターネットの利便性やデジタル情報の有用性は、私たちの生活全般に生かされている。行政サービスの向上や市民参加をめざした電子政府・電子自治体の推進は、市民生活に大きな利益をもたらすものとして注目されており、福祉・医療分野においてもインターネットを利用した様々なサービス(遠隔医療システム等)に大きな期待が寄せられている。
  また、インターネットは、NGOやNPOなど市民活動の発展に大きく貢献している。マスメディアに取って代わるオルタナティブなメディアとして、市民のネットワーキングやエンパワーメントを支援するとともに、子どもやシニア、障害者などの社会的弱者が平等に社会参加できる場としても注目されている。
  一方、いつでもどこでも世界の最新情報にアクセスできるインターネットは、グローバルなメディアとして世界をひとつの村にように変えるとも指摘されている。様々な歴史や文化をもつ人々がインターネット上で交わることによって、多種多様な文化を全世界の人々が共有でき、新たな国際交流や異文化理解の場としても期待されている。

(6)   エンターテインメント
  ADSL、CATV、光ファイバー、無線インターネット、専用線、FOMA等、ブロードバンド環境が整備されるにつれ、エンターテインメント・ツールとしてのインターネットの可能性は大きく広がりつつある。ブロードバンドの普及に関連して、ストリーミング・コンテンツへの需要が高まっており、テレビやゲーム、音楽などエンターテインメント関連情報へのアクセスが急増している。ネットでの音楽配信や電子出版などに加え、最近では、オンライン・ゲームの人気も急上昇しており、今やインターネットは、エンターテインメント業界のソフト開発や販売戦略、メディア戦略において重要な位置を占めている。


3   危険性

  インターネットは様々な有用性がある反面、特に子どもにとっては危険性も潜在している。その危険性の主なものは、次のとおりである。

(1)   有害サイト
  様々な情報が氾濫するインターネットには、わいせつな画像・文章が掲載されたポルノサイトや出会い系サイト、暴力、犯罪、自殺、ドラッグ、カルト、差別、偏見など反社会的なサイトなど、子どもに不適切な有害サイトも少なくない。また、アルコールやタバコなど成人向けの商品を直接子どもに売りつけるサイトもあり、これらの有害情報が子どもの心身に及ぼす悪影響が懸念されている。さらに掲示板やチャットなどでは、嫌がらせ・中傷・脅迫などの不快なメッセージや大人の会話にさらされる危険性もある。

(2)   犯罪
  有害サイトの中には、犯罪の手口や方法、武器や毒物の入手・作成方法など、犯罪を誘発するような悪質なものもある。また、チャットやメールなど、双方向性というインターネットの性質がゆえに、子どもがオンライン・オフライン両方で危険な人物と出会うおそれもあり、最悪の場合は、犯罪に巻き込まれるケースもある。さらには、出会い系サイトを通じ児童買春の危険にさらされたり、場合によっては子ども自らが加害者になってしまう場合もある。

(3)   虚偽情報
  インターネットの情報の中には、事実と異なる虚偽の情報や意図的なウソ、デマ情報も数多く含まれている。誰もが簡単に情報発信者になれるインターネットには、正しい情報かどうか、信頼性の高い情報かどうか等、情報の質を事前にチェックする特定の機能やシステムがない。知識や経験の不十分な子どもがこのような虚偽の情報を安易に信じてしまうと、自分が被害者になるだけでなく、他者に迷惑をかけたり、自ら虚偽情報の発信者になってしまうおそれもある。また、デマ情報の中には、チェーンメールの形をとって他者への転送を促すものもあり、子どもが期せずして加害者になってしまう場合もある。

(4)   プライバシー(個人情報)
  インターネットの世界には、善人から悪人まで様々な人がいる。名前や年齢、職業、住所、電話番号、学校名、趣味などの個人情報を出会い系サイトや掲示板に書き込んだ結果、嫌がらせやストーカー被害などに遭ったり、他者に悪用されたりするケースがある。また、チャットで親しくなった相手にうっかり個人情報をもらしたことで、子どもが犯罪に巻き込まれる危険性もある。
  情報化社会における個人情報は経済的価値が高い。ビジネスサイトの中には、マーケティング目的やメーリングリスト掲載のために、知識や経験の乏しい子どもを狙って様々な個人情報を引き出そうとするものが少なくない。また、アンケートページや懸賞ページ、電子商取引、会員登録などのページを通じ、個人情報が流出する場合もあり、不正アクセスによって個人情報が違法に盗み出されることもある。

(5)   コピーライト(著作権)
  他者が作成した文書、絵画、写真、音楽などは、著作権所有者の許可なしにインターネット上で複製・送信することはできない。インターネットのデジタル情報は、ダウンロードやコピー&ペースト、スキャナーなどで容易に複製・加工できるため、著作権を侵害するおそれがある。また、インターネットでは誰でも簡単に情報発信者になれるので、著作物の権利処理(複製権、公衆送信権など)に関して十分な知識がないと、子ども自らが著作権法違反で訴えられる危険性もある。最近では、学校における著作権教育の推進や「著作物コピー可」のマークなど様々な取組が進んでおり、この分野での教育の重要性が指摘されている。

(6)   悪徳商法、虚偽広告
  相手の顔が見えず情報の信頼性も保証されていないインターネットでは、代金を先払いしたのに商品が届かなかったり、送られてきた商品が偽物だったりという詐欺まがいのトラブルが少なくない。いながらにしていつでも欲しい商品が短期間で入手できるオンライン・ショッピングでは、業者の連絡先が電子メールのアドレスだけという場合もあり、ネット広告や個人が掲示板に掲載している商品情報の中には、虚偽のものもある。また、メールを悪用したマルチ商法やネズミ講をはじめ、虚偽の情報によって強引に商品を売りつけたりお金をだましとったりする違法な商行為もみられる。一方、広告の中にはコンテンツとの区別が曖昧なものがあり、消費者としての知識と経験が十分でない子どもは、オンライン・マーケティングの標的にされることもある。

(7)   迷惑メール、違法メール
  商業的な広告宣伝、勧誘などのダイレクトメール、政治や宗教の宣伝メール、いたずらや嫌がらせのメール、不幸の手紙のようなチェーンメール、非合法なビジネスへの勧誘や情報提供など、受信者の意思に関わらず、一方的に繰り返し送りつけられるメールを、一般に「迷惑メール(スパムメール、ジャンクメール)」と言う。これらの迷惑メールは、通信費用が受信者にかかる上、他者へのストーカー的嫌がらせ行為や誹謗中傷、悪質商法や違法行為、他者システムに対する攻撃などに悪用される場合がある。

(8)   不正アクセス・ウィルス
  他者の情報システムに無断で侵入し、情報の盗み出しや改ざん、システムの破壊などをリアルタイムで行うこと(クラッキングまたはハッキング)は、情報技術を悪用した迷惑行為であると同時に犯罪行為でもある。個々の情報システムの破壊などを目的としたコンピュータ・ウィルスは、多くのシステムに甚大な被害をもたらす。特に、メールを通してウィルスに感染するケースが多く、ウィルス対策をしっかり行っておかないと、送られてきたウィルスが自動的に他者に転送され、子ども自らが加害者になってしまうおそれがある。

(9)   他者の誹謗・中傷
  匿名で書き込みができる電子掲示板では、特定の人物の実名をあげ、その人物に関する非難や暴露などが頻繁に行われている。その中には、虚偽や、事実の歪曲に基づくものも多い。また、他者への誹謗や中傷に該当する情報をウェブページに掲載したり、特定の人々・グループ等に対する差別的な発言など、人権を脅かす行為も少なくない。特に、子どもにとっては、不快な言葉や恐ろしい表現、大人の会話等にさらされる可能性が高く、子どもの精神に大きな負担をかけることもある。

(10)   身体的悪影響
  パソコンの長時間(長期間)利用は、視力や体力の低下など、健康に悪影響を及ぼす危険性がある。モニター画面を凝視したり、画面から放射される光の刺激で、眼精疲労や近視を招くおそれが高く、戸外で活動する時間が減少することにより、骨格や筋肉の機能低下、体力の減退、肥満、ストレス,姿勢の悪化を招く可能性がある。また、身体的発達の未熟な子どもの場合、電子的刺激によるてんかん発作や吐き気、頭痛、身体の硬直、震えなどの症状が出ることもある。このほか、生体機能に大きな影響を与え、白血病やガンなどの原因とも言われる電磁波の影響も懸念されている。

(11)   心理的悪影響
  インターネットに氾濫する様々な有害情報は、子どもの精神的発達だけでなく、価値観やモラルにも悪影響を及ぼすおそれがある。特に、暴力や性に関する情報の中には子どもに不適切な内容のものが多く、暴力や性に対する子どもの意識を著しく歪め、健全な心の発達を阻害することが懸念されている。また、不快な言葉や大人の会話に触れることで、心理的ダメージを受ける場合もある。一方、ネット上での仮想的な人間関係に没入し、生活上の支障を引き起こすネット中毒ないし依存症の事例も見られる。また、家族や友人とコミュニケーションを持つ時間が減り、孤独感が高まる、抑うつが強まるなど、心の病気を招くとする指摘も見られる。

(12)   デジタル・ディバイド(情報格差)
  情報化社会の進展に伴い、国や地域、企業、学校、家庭などにおける様々な情報格差が問題になっている。情報インフラが整備されているか否か、知的所有権を持つか否か、コンピュータを購入できるだけの収入があるか否か、コンピュータ教育を受ける機会があるか否かなど、「持つ者」と「持たざる者」との格差は日々広がりつつあり、社会の進歩から取り残された「情報弱者」の存在が指摘されている。また、家庭における親子間の情報格差も、家族のあり方や親子のコミュニケーションに様々な影響をもたらすものと指摘されている。