図書館職員の資質向上と教育・研修

3  これからの図書館サービス実現のために必要な取組

 
3  図書館職員の資質向上と教育・研修
 
(1) 図書館職員の意識改革
 
 社会の変化に対応して図書館を改革するには,図書館職員の意識改革が必要である。図書館職員は,10年先を展望したり,将来に向けて計画を立てるなど,将来のビジョンを持つこと,社会の動向に注意し,コスト意識を持つことが必要である。
 図書館司書をめざす人々のなかには,旧来の図書館のイメージに魅かれている人や貸出・リクエストサービスだけで満足している人も少なくない。新しい図書館に対する展望を持ち,図書館の現状を積極的に改善していく人材が司書となることが必要である。このため,養成段階での意識改革が重要である。

(2) 図書館職員養成の改革
 
 図書館情報学教育には,(1)資格付与のための教育,(2)学問としての図書館情報学教育,(3)図書館利用教育・情報リテラシー教育,(4)現職司書の再教育の4つの側面がある。この4つの側面の間の資源配分の見直しが必要である。
 司書の養成課程では,実践的な専門的知識・能力を身に付けるとともに,情報技術,将来図書館を経営できる能力,地域社会の課題や情報要求の内容に関する教育が必要である。
 現行の司書養成制度では,図書館法第5条第1項第1号の司書講習のカリキュラムしか制度化されていない。大学が養成全般に責任をもてるように,同2号の大学における「図書館に関する科目」を制度化する必要があるのではないか。
 司書養成カリキュラムの改正から10年が経過しているので,カリキュラムの改正を検討する必要がある。
 司書資格については,一定期間ごとに何らかの教育・研修を行って資格を更新する更新制度の検討が必要である。

(3) 図書館職員の再教育
 
 図書館情報学教育の中では,図書館職員の再教育(研修・リカレント教育)に力を入れるべきである。
 図書館職員の再教育には,(1)体系的な研修プログラムの作成,(2)論文・レポート,ワークショップ(演習・討論)形式等の研修方法の導入,(3)その実績を評価・認定する制度の検討が必要である。社会人大学院での勉学も奨励されるべきである。
 再教育の内容では,情報技術,図書館経営のほか,地域社会の課題や情報要求に関する教育が重要である。
 図書館長に対する研修が重要である。図書館勤務年数の多い図書館長には,自治体行政に関する研修,図書館勤務年数の少ない館長には,図書館の社会的役割,地域社会における意義に関する研修が重要である。
 文部科学省等主催の新任図書館長研修は好評であるが,図書館長の役割の重要性から,さらに多くの館長が受講できるように配慮するべきである。
 研修機会は増えているが,出張旅費の不足や人手不足によって,研修に参加できない職員が多いため,自己研修用のテキスト,ビデオ教材などの充実が必要である。
 行政情報や審議会情報,改革の事例報告を図書館現場にもっと伝達することが必要である。

(4) 専門主題情報担当者の教育
 
 現在,医療や法律分野の研究会で議論されている医療,法律に関する情報提供サービスを行うには,高度な教育を受けた司書を養成する必要がある。アメリカでは,法律分野では修士以上の資格を持つ図書館職員など専門性の高い職員の養成を組織的に行っている。日本では,専門的な司書を養成するには時間がかかるため,たとえば,病院図書室の職員や大学図書館の法律部門の職員などと協力することによって,現職の図書館司書のスキルアップを図ることも考えられる。


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-- 登録:平成21年以前 --