教育改革セミナー in 東京

1.日時

平成20年10月22日(水曜日)18時〜20時

2.場所

文部科学省 東館3階講堂

3.出席者

文部科学省生涯学習政策局長 清水潔
中央教育審議会委員 木村孟

4.議事録

○ 司会(寺門)

 ただいまより教育改革セミナーin東京を開催いたします。
 本日は、ご多忙のところご参加をいただきまして、まことにありがとうございます。
 まず初めに、文部科学省生涯学習政策局長の清水より開会のあいさつと教育振興基本計画の概要等について説明申し上げます。

○ 清水生涯学習政策局長

 ただいまご紹介いただきました文部科学省生涯学習政策局長の清水でございます。本日はご多忙のところ、また夕刻という時間帯にもかかわらず多数の方に教育改革セミナーin東京にご出席いただきましたこと、まことにありがとうございます。
 まず、この教育改革セミナーでございますけれども、教育政策の広報・啓発という観点から、できるだけ教育を国民に身近なものということで、昨年度より全国幾つかのブロックで開催しているものでございます。
 今年度は、これからご説明いたします教育振興基本計画をテーマとして、全国7カ所で開催する予定でありまして、本日の東京での開催は、先週の岡山での開催に続く本年度第2回目ということになるわけでございます。
 また、第2回目とは申し上げましたが、実は私ども、皆様方この庁舎のこの場所にというのは恐らく初めてということではないかと思います。私どもにとっても、この1月にこの庁舎に入居しましたとき、大分戸惑いました。なかなかどこに何があるのかわからなかったということで、この場所でこの会合は初めてということでございます。
 さて、若干教育振興基本計画についてでございますけれども、戦後60年ぶりに改正された教育基本法の理念を実現するという観点から策定された我が国初めての教育に関する総合的、体系的な計画ということであります。
 これから限られた時間内でご説明させていただく際に、お手元の資料の中に教育振興基本計画についてのパンフレットがございます。このパンフレットご覧頂きながら、この振興計画というのはどんなふうな構造になっているのかというのを簡単にご紹介し、それぞれの柱で、私どもが今年度を含めてどのような施策を考えているのかということを中心にお話を申し上げたいと思います。
 施策に関する資料は、お手元の資料の中では「教育改革セミナーin東京」というこの資料と、その参考として「参考資料集」というのがございます。この「教育改革セミナーin東京」という資料を中心にご説明させていただきます。
 そこで、お願いでございますけれども、このパンフレットを開きながら、それぞれの施策が教育振興基本計画の中でどんな位置づけにあるのかということをお聞き取りいただければというふうに思っております。
 それでは、まず「教育改革セミナーin東京」の資料からご説明させていただきます。
 まず、教育振興基本計画とはという資料でございます。
 これは、今申し上げましたように、教育基本法に基づいて、基本法はここの中にございますけれども、政府として初めて作成した。そして、まず10年間を通じて目指すべき教育の姿というものを描こうとした。そして、今後5年間に取り組むべき施策を総合的、計画的に推進する5年間の基本的計画ということでございます。
 そのねらいは、まさに教育立国、社会全体で教育立国の実現にどう取り組むか、その実現をどう目指すかということが中心的なテーマになるわけでございます。
 また、地方公共団体におきましては、国の計画を参酌して、それぞれに教育の振興のための施策に関する基本的な計画を策定するよう努めていただきたいという旨を規定しているわけでございます。
 さて、教育振興基本計画策定の経緯につきましては、あと木村先生のお話もございましょうから、ここは飛ばさせていただきます。
 そこで、3ページ目でございます。
 教育振興基本計画の構成ということでございます。
 教育振興基本計画は、まず我が国の教育をめぐる現状と課題、そして次に、先ほど申し上げましたように、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿、教育投資の方向というものについて触れ、そして具体的に今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき事項を、施策の4つの基本的な方向をベースに、その方向ごとの施策と、特に重点的に取り組むべき施策というのを整理して掲げている、こんな構造になっているわけでございます。
 全体として取り組むべき施策は77項目、特に重点的に取り組むべき施策として24項目という形で整理しております。
 そして、第4章はその推進のために必要な事項を関係者の役割分担、あるいは財政措置とその重点的、効率的な運用等々について計画として定めているということであります。
 繰り返しますが、教育振興基本計画は政府として定める計画ということでございます。政府として定める計画であるということは、文部科学省だけではなく政府の各省全体で、閣議を経て、閣議でまさに決定された計画、それが政府としての計画という意味ということになります。
 それでは、まず10年間を通じて目指すべき教育の姿についてラフにスケッチしてみます。
 ページ、4ページ目ですけれども、まず義務教育修了までに、すべての子どもに自立して社会で生きていく基礎を育てるというのを一つの柱としております。
 義務教育修了までにというのを一つの柱としている点、改正教育基本法との関連にご注意をいただきたいというふうに思います。
 もう一つは、義務教育修了以降を含めて、つまり高等学校を含めて社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てる、それが10年間目指す教育の姿である、こういうふうな形で、大まかにいって、この4つの項目であらわしたわけであります。
 そして、10年間で目指すべき教育投資の方向として、これはいろんなところで議論があったわけでありますけれども、3つのこと、我が国の教育に対する公財政支出は他の先進諸国と比較して低いという指摘、そして資源の乏しい我が国が、教育は最優先の政策課題の一つであり、公財政支出は未来への投資であるという点、そして、最後でありますけれども、上記の教育の姿の実現を目指し、OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ必要な予算について財源を措置し、教育投資を確保していくというふうな形で、教育投資の方向を閣議決定としてまとめた、こういうふうなことになるわけでございます。
 次のページ及び5ページ、6ページの部分が、教育投資における公財政支出の対GDP比の現状でございます。
 我が国は3.4%、OECD平均5%、これは、この一番新しいOECDインディケータの2008でございますから、この教育振興基本計画策定のときに議論のベースとなったOECDのあれとは、また数字が若干違ってまいります。
 ただ、全体としては、全教育段階でいえば、OECD平均5%、日本が3.4%、とりわけ就学前教育の段階と高等教育段階でOECD平均と比べて差があるという問題、そして次のページにありますように、1人当たりの教育費支出、公私負担の割合の現状等であれば、特に就学前の部分、高等教育段階の部分で、例えば我が国はある部分ではOECD平均と同じという部分もありますけれども、現実でいえば、例えば高等教育の段階等々で見れば1人当たり教育費支出は低い。そして、今度公私の負担割合のベースでいえば、私費負担、特に家庭負担の部分が特に高い。日本が、OECD28カ国のうちで最低になったというのは、こういう状況を示しているわけでございます。
 続きまして、基本的方向、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策について、施策を中心に触れさせていただきます。
 これは、資料でいえば、こちらの基本的な方向と、それに対応する、いわゆる計画での施策と、今私ども今年度概算要求しているものというものをあわせながらちょっと説明することになりますので、一応これは開いたままごらんいただければというふうに思っております。
 まず、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策のうちの基本的方向1が、社会全体で教育の向上に取り組むという観点でございます。
 実現すべき目標ということについていえば、身近な場所での子育て等の支援、身近な場所での学習機会の充実、ここには書いてありませんが、社会全体の教育力の向上という3つの大きな柱になります。
 まず、5ページ目、施策ということで挙げさせていただきますが、家庭の教育力の向上という、見開きでいえば、ここの、まさに(2)に対応しているわけであります。教育振興基本計画において、まさに家庭の教育力の向上というのが課題になるということで、文部科学省としては、家庭の教育力の向上という観点から、このページ8に掲げるような施策を推進するというふうなことで考えているわけであります。
 地域における家庭教育支援基盤形成事業というのは、まさに社会全体での家庭教育支援の必要性、そしてそこの中で、とりわけきめ細かな家庭教育支援という観点から、必ずしもそれぞれの主体としての市町村で取り組まれていない。孤立しがちな親、無関心な親等々を対象として、どちらかといえば、その地域の状況等に応じながら、そのためのきめ細かな支援というものをしていく。そういう観点からメンター等の追加配信というようなことも考えているというような内容でありますとか、子供の生活習慣づくり支援ということで、子どもの基本的習慣の確立向上のため、これまで実施してきた子どもの生活リズム向上プロジェクトの成果を広く普及していこうというようなことで、新しい事業を立てております。
 参考となるデータは、関連の資料集の2ページ目、3ページ目、親のしつけに対する国際比較等々をあわせてごらんいただければというふうに思っております。
 続いて、7ページ目、基本的施策の方向の、ここでいえば1番目、(1)にこの資料では該当します。まさに子どもを取り巻く環境の変化というものに対応して、そこの中で家庭や地域の教育力が低下しているという指摘、そういう指摘にどう対応していくかという観点でございます。参考の資料でいえば、4ページ目、5ページ目、6ページ目、参考資料集のほうです。
 例えば、注意された経験でありますとか、地域が果たす役割でありますとか、地域活動への大人の参加状況でありますとか、そういう資料を参考に見ていただきながら、学校支援本部地域事業というものを、まさにこれは、地域住民がボランティアとしてできることをできるところから、まさに学校の教科内の活動の充実に地域の方々にご協力いただき、あわせてそれが同時に地域の方々の教育力を引き出していく、そういう成果を生かす、知識、経験を生かす、あわせて、まさに地域の核としての学校というものを地域づくりの中で考えていく、こういうことをねらいとした事業ですが、これを全国3,600カ所に拡充しようというのが内容となっておりますし、また放課後子ども教室推進事業は、まさに学校の放課後、週末等に余裕教室等を活用しながら安全・安心な活動拠点で、さまざまな地域の方々の参画を得た活動を展開していこうと、こういう内容になっているわけであります。
 いずれにしても、まさに社会教育法の一部を改正する法律の成立を契機として、社会全体の教育力をどう向上していこうかと、こういう観点に重心を置いた施策であるということを御理解賜れればというふうに思います。
 続きまして、次のページが、いつでも、どこでも学べる環境の整備ということでございます。
 お手元のパンフレットの資料でいえば、まさに基本方向1の(4)に該当しているわけです。
 それぞれの、まさに、だれもがその生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができる、そういう環境を市町村がそれぞれ主体で、いろんな形で、あるいは県がそれをサポートしながらいろんな事業を展開しているのは承知しているわけでありますけれども、そこで、私どもとしては、まさにその環境整備のために国が何をできるかという観点から、私どもとして幾つかの新規事業を立てております。
 例えば、図書館を活用した地域の知の拠点について、例えば博物館も含めて、管掌を超えた連携というものを考えたり、あるいは社会教育の総合的な取り組みの普及で、いろんなすぐれた教育、社会教育の実践、あるいはそういうプランを充実していこうという、すぐれたプランを支援しようとする中身でありますとか、あるいは専修学校を活用した就業能力の向上の支援でありますとか、あるいは、この中には、23年7月の地上デジタルテレビの完全移行に伴って、学校における地上デジタルテレビ放送の整備のために、そのために必要な経費の一部を助成する事業、いずれも新規事業として考えているというようなことでございます。
 これは、ある部分で、いつでも、どこでも、学べる環境の一層の醸成ということをどう図っていくかということでございますし、また次に11ページをごらんいただければ、発達段階に応じたキャリア教育をどのように総合的に支援していくかということでの施策を幾つか組み立てている、こういうふうな状況であるわけであります。
 さて、そういうことでございますが、次に、どちらかというと、基本方向のテーマについての説明に移らせていただきます。
 施策の基本的方向の2ということで、これは個性を尊重しつつ、能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる、そして確かな学力を身につけた子ども、規範意識、生命の尊重、他者への思いやりなどを培う、法やルールを遵守し、適切に行動できる人間の育成、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣、意欲・能力の育成、これが基本的方向2の内容ということになります。
 そして、6つの基本的な柱を立てているわけでございます。
 まず、その観点でいえば、参考資料ということで申し上げれば、参考資料の中で、例えば学力の状況等についての資料が10ページ、11ページに、我が国の子どもたちの学力と学習の状況についての資料がございます。この中身については、ごらんいただければというふうに思っております。
 そこで、そのために何をするかということで、次の13ページをおあけいただければと思っております。
 まず、確かな学力の向上の一つの柱の内容として、新学習指導要領の周知とその移行という問題がございます。
 本年3月の小・中学校の学習指導要領の改定がすべての学校で円滑に実施できるようにするためという観点から、学校関係者、保護者の方々と改定の趣旨・内容についての理解をどう図っていくか、これがこの事業の趣旨であります。
 新指導要領の周知・広報の展開、そして説明会、さらには、来年度以降については、学校関係者を対象とした説明会のみならず保護者の方々を対象とした公開説明会、あるいはインターネットを通じた普及など、その趣旨・内容の普及、ご理解いただくための取り組みをどう進めていくかということが一つの大きな柱でございます。
 そして、次のページ、14ページをおあけいただければ、新指導要領を実施する場合の移行関係をどうするかということでございます。
 算数・数学、理科の内容を充実し、来年度の移行期間中から先行して実施するというのが新指導要領の内容になっております。来年度から追加される内容というものは、現在児童・生徒が用いている教科書には含まれていないために、それを補完する教材の措置が必要になります。
 この教材の作成、配付のための予算が、この16日に成立した平成20年度補正予算に計上されております。文部科学省では、今年度中にすべての児童・生徒、担任教師を対象に教材を配付できるように現在準備を進めております。
 次のページ、14ページをおあけください。14ページをおあけいただければ、確かな学力という関係では、全国的な学力調査の実施がございます。まさに参考資料の中で、10ページ、11ページの中にも触れてあるわけでありますけれども、全国学力・学習状況調査というものを、今年度も小学校6年生、中学校3年生を対象に実施し、8月末に結果を提供・公表しております。
 来年度の実施に向けた準備を進めるとともに、調査結果をより有効に生かすための調査研究、あるいは課題改善に向けた取り組み・支援というのが私どもの施策の内容となっております。
 続いて、1ページもとに戻っていただければ、ちょうどこの基本的方向2のまさに(3)の部分、教員の資質向上を図るとともに、一人一人の子どもに教員が向き合う環境をつくるというふうな観点でございます。教職員定数の改善というふうなことでございます。
 教職員定数の改善ということでは、まさにその環境づくりという観点から、平成21年度概算要求では、行革推進法の範囲内で1,500人の教職員の定数改善を盛り込んでいます。
 また、退職教員や経験豊かな社会人等の積極的な活用を図るという観点から、退職教員等外部人材活用事業というようなものを7,000人から1万500人に拡充するというふうな要求をしております。
 また、新学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備のために、先行実施に伴う授業時数の増等への対応として、1万1,500人の非常勤講師を配置するための経費を盛り込んでいるというふうな内容になっているわけでございます。
 さて、施策の基本的方向2の(2)にかかわる話です。
 規範意識を養い、豊かな心と健やかな体を育成するという関係で、資料でいえば17ページになるわけでありますけれども、21年度の概算要求では、道徳教育の総合的な推進に必要な経費として47億円を盛り込みました。
 特に、新規事項である道徳教育の教材費補助事業は、「学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な教材が教科書に準じたものとして十分に活用されるよう、国庫補助制度等の有効な方策を検討する」という教育振興基本計画の内容を踏まえて、国公私立の小・中学校において、道徳の時間に使用する児童・生徒向けの道徳教育用の教材の購入等を行う際に必要となる経費を補助するというふうな内容でございます。
 この施策の方向(2)に関連するあれとしていえば、参考資料集でいえば、参考資料集の12ページ、13ページ、14ページ、とりわけ参考資料集12ページの我が国の子どもたちの規範意識というものについても、資料を参照しながらごらんいただければというふうに思っております。
 さて、同じく、基本方向2の(2)に関連するとして、全国体力・運動能力・運動習慣等の調査の問題があります。18ページをおあけいただければと思います。
 子どもたちの体力がどうなっているかというのは、参考資料集の15ページとあわせて参照いただければというふうに思っております。
 子どもたちの体力が低下している現状等を踏まえて、体力の状況をどう把握・分析して、学校における体育・健康に関する指導の改善に役立てるか、そのためという観点から、平成20年度より全国体力・運動能力・運動習慣等調査を実施しております。
 今年度12月に全国都道府県などの状況について公表し、来年1月に調査結果を各学校に提供できるよう、現在分析作業を文部科学省において行っているというふうな状況でございます。
 続いて、19ページ、豊かな人間性や社会性を育む体験活動の推進という観点でございます。
 この体験活動の重要性という観点にかんがみ、例えばさまざまな体験活動を実施する学校を指定し、その成果を全国的に普及させるという観点から体験活動の推進を図っているわけでありますけれども、例えばそこでは子ども農山漁村交流プロジェクトなどを実施しているというふうなことでございます。事業の内容については、ごらんいただければというふうに思っております。
 ちょっと資料の順序が後先になりましたけれども、教職員のところで触れるべきでありましたが、基本的方向2の(3)教員の資質の向上の問題に関連するのが、免許状更新講習開設事業費等の補助の問題です。20ページの資料でございますけれども、免許更新制が21年4月から実施されるという観点に立ち、本年度は、教員への周知、講習の試行など制度実施のための準備に取り組んで、来年度以降の制度の円滑な実施に向けて、更新講習を質的にも量的にも確保するという観点から、講習開設費の補助等の予算を現在概算要求しているというのがその内容になるわけでございます。
 続きまして、次のページ、21ページが基本的方向2の、ここでいえば(5)ということになります。認定こども園の幼保連携型の移行・設置の促進事業であります。
 認定こども園幼保連携型の移行・設置促進事業として、文部科学省と厚生労働省で約103億円を新たに計上しました。
 中身といたしまして、具体的には移行・設置の促進を図るため、認定こども園に対する幼保の枠組みを超えた新たな施設整備費の支援、幼稚園型の保育所機能及び保育所型の幼稚園機能への事業費の助成、そして、幼保連携型認定こども園の移行・促進を図るための設置促進費といったものがその内容となっております。
 続きまして、22ページが基本的方向2の(6)に関連いたします。
 発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業ということでございます。
 まさに、これは改正教育基本法第4条第2項において、障害のある者への教育上の支援についての規定を受け、あるいはまさに振興基本計画を踏まえて、この推進事業費を組み立てております。
 発達障害を含むすべての障害がある幼児・児童・生徒の支援のためには、各学校の教員等の研修、大学教員や医師等の外部専門家の巡回・派遣、厚生労働省との連携による乳幼児期から就労までの一貫した支援を行うモデル地域の指定などを実施して、総合的に推進するというのがその内容になっているわけでございます。
 基本的方向3が、教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支えるということで、学士課程の学習成果として共通に求められる能力を育成する、「知」の創造・継承・発展に貢献できる人材を育成する、大学の連携等を通じた地域再生への貢献をするというのがその内容の柱となっております。
 現在、中央教育審議会に新たにこのような高等教育、特に大学が抱える課題ということで諮問を行っております。大学教育が抱える現状と課題、対応の方向性、具体の取り組み等については、24ページの資料をごらんいただければよろしいわけです。
 要は、大学等がさまざまな形でそれぞれの国公私を含めて大学等が今設置されている、そういう中で、役割・機能の分化というのが大学側の抱える課題であると同時に、学生あるいは社会のニーズに、あるいは学習者のさまざまなニーズにどう的確に大学が対応していくか、それぞれの掲げる教育研究所のミッションのもとに、どうまさに教養と専門性を備えた人間の育成の推進を図るということが課題となっているわけでありまして、そのためには、基盤的経費の確実な措置ということをベースとした上で、さまざまな取り組み、国公私を通じた各大学の創意工夫ある取り組みというものを支援していくというのが施策の一つの大きな柱になるわけでございますし、その内容として、具体の取り組み・施策で掲げたような例が挙げられているわけであります。
 関連データとしては、大学・短期大学への進学率の推移等について示した17ページの資料も資料集であわせてごらんいただければというふうに思っております。
 とりわけ、そこの中で申し上げれば、資料の25ページにございますように、学士力確保と教育力向上のプログラムをどう各大学で取り組んでいただくか。それぞれのいわゆる学習者の、あるいは学生の立場に立てば、まさに身につけるべき成果、アウトカムの達成というものが大きな今後まさに高等教育のあり方として必要となってくる。
 そういう意味で、内容の方法の改善をどう進めていくかというのが、そのための学士力の確保と教育力向上プログラムの内容になるわけでございます。
 一方、背景としては、今年7月のOECDの教育大臣会合、お台場で開かれましたけれども、そこでOECDは、PISAとは異なるけれども、高等教育の多様性というものを前提としつつも、まさに大学の学士課程、学部レベルで、どのような学生にアウトカムというものを期待すべきなのか、それを測定するための指標の開発がOECD関係諸国で急務であるというコンセンサスが得られ、この2年間のうちに、まさに試行的なプログラムを立ち上げ、高等教育の多様性を前提とすれば、PISAとは異なりますけれども、まさにそのためのそういうアウトカムの学習成果を測定する、そういう開発が今動きつつあるというふうな状況も前提としてということであります。
 次の資料をおあけいただければ、まさにそういう中で、一方で少子化の中での大学、あるいは高等教育のあり方という中で、大学教育を充実していくためには、それぞれの各大学が、国公立それぞれの大学の限られた資源というものの中で、いわばそういう中で、協働して、あるいは連携することによって差異化を図り、あるいは特色化を図っていくという、そういう取り組みを支援していくこともまた必要となっております。
 平成20年、21年度概算要求では、さらに国公私を超えた大学間の戦略的な連携の取り組みを支援するという観点からの予算を計上しているわけでございます。
 また、次のページにありますように、グローバルCOEプログラムでありますとか、すぐれた国際的に活躍できる大学というものをどう育てていくかということも重要な視点であり、それがまさに大学の役割・機能分化のあらわれでもあるわけでありますけれども、そういうものを育てるという観点から、グローバルCOEプログラムを推進しているわけであります。
 参考資料集で申し上げれば、18ページ、日本の大学の国際的競争力あるいはタイムズによる世界大学ランキング、18ページ、19ページも参照いただければと思います。
 また、28ページに戻っていただければありますように、まさに国立大学等施設の、いわゆる先端的な研究、あるいは人材養成のための基盤としての施設設備の整備というのにも取り組んでまいるということでありますし、また留学生30万人をどのように進めていくかという観点から、29ページの資料でありますけれども、30万人計画をどう具体化していくかというための施策、あるいはそのための予算措置というものについても触れているわけでございます。
 また、昨今問題となっております医師不足対策についても、30ページにありますように、取り組んでいくというのが、その高等教育を通じた内容になっております。
 続きまして、施策の基本的方向の4、安全・安心と質の高い教育環境の問題であります。
 32ページをおあけいただければと思います。
 学校耐震化と、まさに児童・生徒が1日の大半を過ごす活動の場であり、非常災害時には避難場所でもある学校の安全性の確保というのは極めて重要であるという観点から、今回成立した補正予算により、大規模地震による倒壊等の危険性の高いIs値0.3未満、小・中学校、耐震化の完了時期を1年前倒しすることを目指すというような中で、学校耐震化の取り組みが加速するよう取り組んでいるところであります。
 耐震化等の状況については、参考資料集の23ページをあわせて参照いただければというふうに思っております。
 それから、次のページが子ども安心プロジェクト、33ページでありますけれども、校内や通学路での凶悪な事件、あるいはそういう中での学校内外の安全確保の取り組みをどう進めるかということで、地域ぐるみの学校安全体制の整備事業などを初めとする安心プロジェクトを実施し、推進していくというのが内容になっています。参考資料集でいえば、24ページをごらんいただきたいと思いますし、あわせて、おくれている学校情報教育化、34ページですけれども、その推進を総合的に進めなければならないという内容であります。
 それと、同じ基本的施策の基本的方向4で申し上げますと、多様な人材を育む私学の応援ということで、私立学校がまさに建学の精神に基づき多様な人材育成あるいは特色ある教育研究をどう担っている、その役割の重要性という観点から、私学助成その他の総合的な支援を行っていくという観点で、全体として私学助成全体としては4,700億円の要求をしているということであります。
 次の36ページは、教育費負担軽減という観点でございます。
 基本的方向4の(4)ということになります。
 教育費負担軽減の観点から、まさに奨学金、経済的理由により修学に困難のある学生等を支援するための奨学金事業のさらなる充実が課題となっているというふうなことでありますし、そのための施策を講じようとしている、こういうふうな内容になっております。
 以上、ちょっと非常に駆け足で、今後5年間に講ずべき、取り組むべき施策と、その施策の基本的な方向ごとにそれぞれの、私も概算要求をしている事業について、簡単に内容を紹介してまいりました。
 内容を紹介してまいりましたが、それらは、いずれにしても、資料で申し上げますと、まさに37にございますように、国、地方それぞれの役割というのが当然あるわけでございます。文部科学省、そして都道府県、市町村それぞれの主な役割については、皆様個々の中で大体ご案内のところだろうと思いますが、それぞれの地域の実情を踏まえながら、それぞれの地方公共団体で振興のための施策というものを、どうそれぞれの役割を分担しながら講じていかなければならない、これが一つの基本的な、私どもの考え方でもあります。
 ただ、しかしながら、ここでちょっと触れさせれていただきたいのは、例えばそこの中で、全体として財政の効率化というややもするとそういう観点から、国が行う事業については、例えば無駄である、これは市町村がやるべきことであるし、やっているとは言わないわけでありますけれども、やるべきことであるから、国はそこについて何ら助成措置は行う必要はない、こういった議論というのも正直申し上げて、今申し上げた施策の中にも幾つか指摘がありました。
 そういう意味で、非常に厳しい状況もございますけれども、私どもとしては、まさに、全体として、国のみならず都道府県、市町村、そして、例えば学校ということでいえば、家庭と地域と、それらがそれぞれの役割というもの、縦軸、横軸それぞれありますけれども、お互いにそういうものと組んで、取り組んでいくための施策、そういう事業というものは、やはり必要なものは必要であるという観点に立って、私どもは進めていきたいというふうに思っております。
 そこで、38ページで、教育費に対する財政措置等について、振興基本計画についての規定がございます。もちろん無駄は省きつつということで、既存施策が、これはこれから、これまで続けてきたからということにこだわることなく、新しいニーズにどう柔軟に対応し、社会を挙げて取り組むという体制を取り組んでいくか、そこは私どもにとってまさに大きな課題ということになるわけでありますし、また皆様方のご理解もぜひいただきたいところであります。
 そこで、39ページはぜひちょっとごらんいただきたい。
 ただし、ここの中では、ある部分で限界というのも、率直に言って、今認めざるを得ない。歳出改革と振興基本計画の関係という問題があります。
 教育振興基本計画は39ページの資料にありますが、5年間の計画であります。一方で、歳出改革は、歳入改革というものはなく、歳出改革を進めていくという観点であるとすれば、19年度から23年度まで歳出改革の期間が重なるということ、振興基本計画も閣議決定がありますが、歳出改革についても閣議決定、両方の閣議決定がいわばぶつかり合ってという中で、私どもは、少なくとも、そういう制約がある、一方で、歳入改革という状況、厳しい財政状況の中での歳入改革がどのような教育財政についての制約になっているかという状況を認識しつつも、その可能性を常に念頭に置きながら進めていかざるを得ないし、またそのことは、それぞれの施策の重要性、あるいは持つ意味ということも含めて、いわば関係者がまさにそこの中でコンセンサスを持ちながら、いわば国の本当に施策の重点として、教育施策がまさに国のあり方の形にかかわるのであるかという理解というものを全体として、私どもは獲得していかなければならない、まずそういう観点に、ことが最も重要なことであろうというふうに思っております。
 41ページをごらんいただければと思います。
 そのため、教育振興基本計画の確実な推進という観点から、私どもは、教育振興基本計画に沿いつつも、何をどのように、どのような具体的な数字を持って取り組んでいくかについてまとめたアクションプランというものを今作成準備中でありますし、そして、それは毎年度、それがどの程度進捗しているかということについて点検し、概算要求につなげていく、そういうプロセスであろうと思います。
 実は、教育振興計画は初めての計画であると申しました。初めての計画というのは、次の第2期の計画、第3期の計画があるということであります。それは科学技術基本計画を見ても明らかであります。
 それは、すなわちそういう意味で、教育振興基本計画は進化する教育振興基本計画でなければならないし、財政的な、そのために、私どもとして必要な部分について、毎年度それぞれがこれからますますアウトカム、そして教育は中長期の観点から見なければならないということを踏まえつつも、しかし何も変わっていないのか、変わっているのか、単にインプットしただけで、それであとは、結果は何十年ということかという批判、あるいは社会の見方にもこたえる、ある部分までこたえていく努力をしなければ、それはある部分でいえば、まさに、例えば教育はどう変わってきている、変わり得るのか、そのための参考指標というものを、私どもとしてもいろんな意味で考えていかなければならないということだろうというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、教育振興基本計画は、いずれ次の次期振興基本計画は、平成24年までですから、25年に第2期の計画の策定に至るためには、実は、23年には、次の計画のための作業を開始するというのがスケジュール的にいえば、そう推定せざるを得ない、こういうふうな話であります。
 いずれにしても、20年度はもう始まりました。21年度、22年度というものを踏まえながら、それぞれの施策の進捗状況を点検し、評価しながら、さらなるその充実、あるいは計画自体の見直しというものも含めて、そのための作業を我々としてはこなしていかなければならない、こういうことではないかなと思いますし、そのためにも、まさに皆様方のご理解あるいはご協力、ご支援というものが今後ますます重要になってくるであろうというふうに思っています。
 そういうことをぜひお願いいたしまして、私の説明はちょうど時間がまいりましたようですので、これで終えさせていただきます。
 主に、中身としては、教育振興基本計画には具体的な施策の裏づけがあり、具体的な施策は予算の裏づけ、そしてその予算は、まさにかち取っていくものという観点から、私どもとしてちょっと平板になったかもしれませんけれども、内容について少しでもご理解を得たく、資料をベースに平板な説明をさせていただいたわけであります。
 そうご理解を賜れればというふうに思います。ありがとうございました。(拍手)

○ 司会(寺門)

 それでは、ただいまの説明に関しましてご意見、ご質問等ございましたら、これからちょうだいをしてまいりたいと存じます。
 挙手をいただきまして、指名をさせた形でいただきます。指名いたしましたらば、恐縮ですが、お名前を述べた上でお願いしたいと存じます。
 なお、本日質問に対応していただきますのは、皆様方よりごらんになりまして、壇上右そででございますけれども、左寄り、ただいまご説明申し上げました生涯学習政策局の清水局長、それから初等中等教育局の教育制度改革室から佐藤室長、高等教育局の学生支援課から下間課長が対応させていただきます。

○ 参加者

 小学生の保護者の者です。説明資料の15枚目ですね、ここに教員定数のこと書いてございますが、主幹教諭のマネジメント強化ですね、これで896人と、でもこれは、主幹教諭を入れるということで教諭をたまたまふやすだけで、あれだけ授業時間増になるのに教諭の数はふやさないんですね、全部非常勤講師で。やっぱりこれ予算組み替えるべきじゃないかなというのが1点目です。
 それから、次に、その前のページになりますが、学習指導要領のことを書いた13のあたりについて、実は本体の教育振興基本計画の、例えば分厚いやつつくられていますけれども、4ページとか22ページあたりにちょっと変な文言が入っちゃっているんですね。
 最初、中教審の部会の2月29日の段階で、答申素案では、我が国の伝統文化を充実させる教育を支援すると、控え目な表現だったんですけれども、そのときたまたま私立大学の教授の方が、文言整理したらと言ったのを文部科学省飛びついて、4月2日の答申案では、国を愛する態度というのを入れちゃって、推進を促すなんて強めちゃった。最後のところでは、3カ所「国を愛する」を入れたと、そういうのは、何か非常にみんな不信感を持っているんですよ。
 やっぱりああいうイデオロギー的なことを上が押しつけるというのは、最高裁確定判決に違反するので、できればこういうものは削除すべきだし、次回の基本計画では削るべきじゃないか。
 ついでに、新学習指導要領もどんどん政治的な介入で2月15日から3月28日までの間にパブリック・コメントなんか非常に特定の政治勢力がやったので変えちゃったんで、おかしいということ、ぜひ学習指導要領の周知徹底のときは、保護者の意見とか会場の意見をもっと聞いて改めるという視点を持って、絶対のものじゃないわけですから、指導要領は。そういうところです。これでやめます。

○ 佐藤(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 2点ほどお話があったかと思いますけれども、まず1点目の、こちらの資料、配付資料のほうで申しますと、15ページのほうの教職員の定数の改善の問題でございます。
 先ほどご説明をさせていただいたように、今回21年度概算要求、教育振興基本計画を受けてということでございますが、教職員定数の改善、それから、大きく分けて、新しい学習指導要領の円滑な実施のための指導体制ということで、大きくは2つ、それから教職員定数の中でも、実際定数の改善という部分と、予算による非常勤講師の拡充というあたりと2点入れてございます。
 その点につきまして、そもそもやはり教職員の実態、勤務実態ということでございますとか、あと子どもとどういう形で先生方がお忙しいのかということをちょうど40年ぶりに勤務実態調査というのをやらせていただきました。
 そのことをもとに、大変これは従来と比べて残業時間が長いでございますとか、あと教員の事務的な仕事が多いというようなことが非常に現場のほうからもお話があって、そういったものにどのように対応していくかということが大変これは、中教審でもご議論になりましたし、そういったことにどう対応していくかというのは、我々としても考えているところでございます。
 そういったことから、この定数の改善という中には、その主幹教諭とあと実際教員の事務負担を軽減するというのが大きな柱としてここはおこたえをできるだけしていきたいという部分と、それから、これもご説明の中で最初ありましたけれども、その一方で、行革法という、大変これは、そもそも政府全体で取り組んでいる行財政改革、一つ大変厳しいこれは縛りもあるわけでございます。
 こういった中でどういうふうに対応していくかという中に、こういった定数の改善とともに、非常勤講師の先生方にもぜひ、ここはサポート先生という形で書いてございますが、実際の外部人材を有効に活用して、教員のOB、OGの方にもご協力をいただいて、現場の子どもたちにいろいろと向き合う時間というものをぜひふやしていきたいということで、これも入れているところでございます。
 あと、最後でございますが、新しい学習指導要領の指導体制というのも、当然前回の改訂時期においては、こういった教員の取り組む時間をできるだけふやすという点が、非常にそこは不足していたのではないかということがご指摘としてもあったわけでございましたので、できるだけその指導要領の改訂とあわせて、この教職員の定数というものをできるだけふやしていく、そしてまた非常勤講師による対応を充実させていくというようなこともお話としてございました。
 そういった点から、この2点目の新しい学習指導要領の円滑な実施のための指導体制の整備というのも一つの柱としてここに入っているところでございます。
 そういう構成になっているということはご理解をいただいて、ご質問の中で、その定数をできるだけふやしていくべきではないかということでありましたけれども、ここは、その定数をふやすということと、非常勤講師で対応していくという部分は、それぞれ現場でいろいろな活用の仕方というものを工夫していただければというふうには思ってございます。
 我々としても、それぞれどういう形で先生方が現場でうまく、例えば新しく導入したこの主幹教諭というものが有効活用されているかどうかということは、いろいろな形で我々としてもお聞きをして、またいろいろ情報発信をしていって、有効活用をできるだけしていただければと、その一方、非常勤講師がどういう形で現場で活用されるのかというのもできるだけこれもわかりやすく説明をしていきたいというふうに思ってございます。
 あと、大きく分けて2点目の、お話のご趣旨としては、新しい学習指導要領というものが、どういう形で改訂されたのかということと、その審議過程、プロセスというものが十分だったのかというご指摘だろうと思います。
 新しい学習指導要領につきましては、中教審のそれぞれ部会を設け、その中で専門的な見地からご検討いただいたわけでございますけれども、そういったご意見を踏まえて、今回の柱でございますのが、前回の改訂と同様に、子どもたちの「生きる力」というものを柱にした一つの大きな取り組みというもの、そしてまた知識・技能というものをしっかり教えていくということ、そして、それによって子どもたちが最終的に社会に出ていったときに本当に役に立つ基礎学力というものをしっかりつけていくということ、こういったものが大きな柱としてお話があったわけでございます。
 こういったご議論の中で、個々それぞれの、また専門的な観点からご議論いただいたわけでございますから、今のいただいたお話というのは真摯に受けとめたいと思いますけれども、我々としても、手続的にはパブリック・コメントなどを経て進めさせていただいたという理解には立っております。ただ、それだけではこれから現場の先生方にしっかりと指導要領を理解していただき、また子どもたちにしっかりとした教育が行われるかというと、それでは必ずしも十分ではない可能性があります。
 ですから、この資料の13ページにもありますとおり、中央説明会、地方説明会、もしくは教育課程の公開説明会というものを、従前以上にできるだけわかりやすく、回数を多くして、現場の先生方を含めてご理解を深めていただく機会というものを積極的に設けていきたいというふうに思ってございます。
 これから、小学校であれば23年度が全面実施でございますが、それに向けて新学習指導要領の周知に意をもちいていきたいというふうに思ってございます。
 以上でございます。

○ 参加者

 私立学校の評議員をしております。3点お伺いします。
 4ページに、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿ということで、公教育の質を高め、信頼を確立すると、わざわざ公というふうにうたっているわけですから、公教育の信頼が地に落ちてしまって、これはいわば信頼を復活すると、こういう意味だとは思うんですが、それで、今現在の公教育と私立の教育を見ていますと、決定的な違いは、学校5日制なんですよ。
 土曜日に私立の学校の生徒は、午前中一生懸命勉強して、午後は暗くなるまで部活をやっている。公立学校の児童・生徒は、お休みしてうちにいる。これでは、公教育の質を高めて、信頼を回復することは全くできないと。学校5日制を廃止して、従来のように土曜日もありにすると、それから、夏休みの42日間、余りにも長過ぎる。一部の私立の学校でやっているように、エアコンを導入して、42日間の夏休みを30日とかいうふうにしていかないと、公教育の信頼は確立できないというふうに思いますが、今後10年間そういう計画があるのかどうか、それが1点。
 2点目に、16ページに学力テストの有効活用というふうにありますが、学力テスト、一言で言えば、学校別、市町村別のテストの結果を公表しなければ、有効活用なんてできないというふうに思います。子どもたちは、スポーツをほかの学校の生徒たちと試合をやって、自分たちがどこが悪かったか検討しているわけですから、同じように、自分たちも算数、国語、どこが悪かったのかということを検討できるように、小・中学校、学校別の公表をすべきであると。
 3点目、20ページに教員の免許更新について触れていらっしゃいますが、破廉恥な教師の免許を更新しないのは当たり前として、例えば、卒業式において君が代の伴奏を拒否するような、平成13年に決まった国旗・国歌法の精神にも劣るようなそういう教師の免許更新を拒否するような、そういう形に持っていけないのかどうか、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿ではないかというふうに思います。
 以上、3点質問します。
 (不規則発言あり)

○司会(寺門)

 恐縮です。ご静粛に願います。ご回答申し上げますので、まずはご静粛に願います。

○ 佐藤(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 それでは、お時間も余りございませんので、簡単にお答えをさせていただきますと、3点ありました。
 1点目は5日制の問題でございます。あと夏休みの問題もあわせてご質問いただいたわけですが、ご指摘いただいたように、5日制については、公立学校についてのみ、今現場でやっていただいて、できるだけ私学のほうにもご協力をいただくという形にはなっているわけでございますが、その5日制の問題というのも、やはり今回指導要領の改訂に当たって、中教審の中でもいろいろとご意見があったところでございます。
 5日制の趣旨というのは、やはりそもそも子どもたちが学校現場のみならず、いろいろな形で地域や家庭で連携をしながらしっかりとして育っていくと、もしくはそういう環境を整備していくということで、その受け入れ体制というのも十分整備しながらということでございましたが、やはり必ずしもその5日制の趣旨というものを体現するに当たって、まだそういう社会的な環境というのが整っていなかったのではないかというようなことのご指摘なんかもご意見としてございました。
 そういったところは、これもご意見としてお聞きしたいんですけれども、やはりその一方で今回、これも先ほど申し上げましたけれども、指導要領の改訂の柱となりました「生きる力」というものをしっかりと育んでいくためには、やはり、そこは広い意味での学力というものもしっかり育んでいくということが依然としてもう一度これは再確認をされたところでございます。
 そういったものは、学校のみならずいろいろな地域や家庭といったものの協力を得ながら、またそういうフィールドも含めていろいろな形で取り組んでいくということで、そこは一定の方向性が出たところでございますので、今後その5日制の議論というのは、またいろんな角度で出てくる可能性はあると思いますので、そういったご意見はまたいろいろとお出しいただきながら、この5年、10年というスパンで考えていきたいというふうに思ってございます。
 それから、2点目の学力調査の話でございますが、これはまさにおっしゃっていただいたお話そのものなのですが、当然これは、現状では都道府県が、データとして各市町村別や学校別のデータはできるだけ出さないという形でその実施要領上実施しておるものですから、そういった実施要領に基づいて、都道府県県ではなくて、各市町村がそれぞれのご判断で自ら公表したいというところはしていただく、もしくは各学校で自ら公表するということであればしていただくということになっているわけでございます。
 ただ、ご指摘があった各個々人、子ども一人一人に対してどういうふうに指導していくかという点で申し上げますと、子どもたち一人一人の指導改善に生かすために学力調査というのをやっているわけですから、当然一人一人への調査の結果の提供であるとか、調査の結果のみならずその後の指導でございますとか、調査の結果を踏まえての改善でございますとか、そういう一つの流れの中で活かしていくということがあってこそ、この学力調査をやる意味というのがありますので、一人一人の子どもに還元していくというのは必要だと思っています。
 まだ始まって2回目ですけれども、現状でも、そういった結果というのは十分活かしていただきつつあるのではないかというふうに思いますが、これだけのコストをかけてやっている学力調査でございますから、その趣旨というものを現場でしっかりご理解いただけるように、また有効活用していただけるように、我々としても十分現場に対して促していきたいと思っています。
 それから、3点目の免許更新の関係での、言ってみれば、卒業式や入学式での国旗・国歌の指導をしっかりしない教員に対しては厳しく対応すべきではないかというお話であるかと思いますけれども、免許更新に当たっては、きちんとその10年間のスパンでそれぞれの指導内容というものをもう一度確認をしていただく、要するに現場でどういう指導を行うべきかということを、例えば指導要領の内容、今回もちょうど指導要領が改訂されたわけですけれども、そういったご趣旨をしっかりご理解をいただくとともに、新しい知識、アップ・ツー・デートな情報というものをリニューアルしていただくということをそれぞれ目的として導入しているところがございますので、当然学習指導要領に基づいて教育内容というのは展開されるべきでございますから、そういった内容が十分趣旨徹底されるように、そういった機会をとらまえて、これはそれぞれの都道府県、市町村のほうが行っていただけるものというふうに思ってございます。
 以上でございます。

○ 司会(寺門)

 せっかくの機会でございますけれども、お時間でございますので、計画に関する質疑は終了させていただきます。
 なお、先ほども申し上げましたとおり、セミナーに当たってのお願いでございます。やじ等の不規則発言は禁止をさせていただいてございます。今後ございましたときには、退室をお願いしますので、よろしくご協力のほどをお願いしたいと思います。
 (不規則発言あり)

○ 司会(寺門)

 不規則発言はよろしく慎んでいただくようにお願いいたします。これ以上不規則発言があった場合には、速やかに退室を願いますので、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。お願いいたします。
 それでは、次のスケジュールに移りたいと存じます。
 次に、中央教育審議会の委員であります木村孟先生にご講演をいただきたいというふうに存じます。
 木村先生は、皆様方ご案内のとおりでございますけれども、東京工業大学の学長、東京都教育委員会の委員長、また独立行政法人大学評価・学位授与機構長などを歴任しておられます。また、中央教育審議会の副会長など多数の審議会の委員をお務めでございまして、我が国の教育施策の形成に大変にご尽力をいただいてございます。それでは、木村先生、よろしくお願いいたします。

○ 木村孟氏

 ただいまご紹介いただきました木村でございます。本職は、あそこに書いてありますように、大学評価・学位授与機構と申しまして、大学の評価をする機関の長でございます。現在、国立大学並びに国立の共同利用研究機関、あわせて90機関の評価をやっておりまして、3月ごろになると町を歩けなくなるという状況が来るのではないかと恐れております。評価というものは、うまくいって当たり前、うまくいかないとひどいことになるもので、今から戦々恐々としております。
 ただ今、教育振興基本計画の話が清水局長からありました。お手元に配付させていただきました私の資料も似たようなものになっておりますが、まずなぜ教育振興基本計画というものをつくるようになったかという背景についてお話し、続いて教育振興基本計画の中で、主な重点政策について、私の思うところをお話しさせていただきたいと思います。
 ご承知かと思いますが、教育改革国民会議が平成12年に組織されました。森首相の時代でありますが、江崎先生が座長で、実際に会を切り回されたのは牛尾治朗さんであります。教育改革国民会議は17の提案というものを出しております。4本の柱がありまして、第1番目に「人間性豊かな日本人を育成する」という点を揚げ、例えば教育の原点は家庭であることを自覚するというようなことを言っております。それから、その次の柱が、「一人一人の才能を伸ばし、創造性に富む人間を育成する」ということで、これからの日本に最も必要な事柄であります。そこでは、一律主義を改め、個性を伸ばす教育システムを導入する、そのほか4つ提案をしています。
 次が、「新しい時代に新しい学校づくりを」ということで、先生方の意欲や努力が報われ、評価される世の中にしよう、体制をつくろうというふうなことのほか4項目の提案をしております。
 最後が、教育振興基本計画と教育基本法についてであります。私、もともとは、ただいまご紹介いただきましたように、東京工業大学におりまして、バックグラウンドは、エンジニアであります。たまたま平成5年に運悪く学長に選ばれてしまい、それが縁で、当時の文部大臣、与謝野さんから、中央教育審議会の委員をやれと言われ、それを引き受けました。
 私も中央教育審議会が大体何をするところかは知っておりましたが、詳しいことについては全くわかりませんでしたが、とにかく首を突っ込むことになりました。
 ご承知だと思いますが、平成7年に科学技術基本法というものができております。これは、非常に、高邁な法律でありまして、日本が科学技術を礎にして、世界の人類の平和に貢献するというメッセージをはっきり出した法律です。
 それで、私地震が科学技術の分野に居りましたので、これを翻訳していろいろな外国での会議で、日本はこれだけの決意をしたのだということを外国の皆様方にお伝えしてまいりました。各国の関係者からは、日本がそこまでやるのかということで、厚い感心を示していただきました。その科学技術基本法ができました後に、科学技術基本計画というものをつくることになりました。ご承知かも知れませんが、第1期が17兆円、第2期が21兆円、第3期、現在走っておりますのが24兆円、この金額を科学技術に充当して振興使用という計画を作り、現在実行しております。
 その議論に私も参加致しました。この教育改革国民会議で教育基本法、ほとんどの法律、各省庁はそれぞれ基本法を持っておりますが、殆どの場合それを基本計画が一体となっています。その例外が教育基本法で教育基本法に対する教育基本計画がないのです。
 そういうことで、教育改革国民会議で振興基本計画をつくるべきだということを主張いたしました。ほかにも、主張された方がいらっしゃいます。そういう議論がありまして、振興基本計画を教育基本法に位置づけようということになった次第であります。
 そういうことから、第17条、これも先ほど清水局長からご紹介ございました。法律というのはおもしろいもので、私エンジニアですから、こういうのを見ると非常に不思議だと思うのですが、17条の2というのがあります。1というのは書かないんですね。書かないのが1項、書いたのが2項ですか。この1項は、国の責任を明らかにしています。国はこういうことをやりなさい。地方はこういうことやりなさいということを言っている。このようにそれぞれの役割が明文化されたということであります。
 局長からも説明がありましたが、ざっと振興基本計画についての報告書の目次だけを見て頂きたいと思います。まず、「はじめに」というのがありまして、第1章、我が国の教育をめぐる現状と課題、第2章、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿、それから、ここが大事なのですが、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策について基本的な方向ということで4つ揚げてあります。この基本的方向についてさまざまな施策を提案しております。
 具体的なことについては、既に一枚スライドで出されましたので省略いたします。
 第4章が、施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項であります。
 それでは具体的に少しこの中からいくつか取り上げてご説明をしたいと思います。第1章が、我が国の教育をめぐる現状と課題であります。
 ここで2つのことを指摘しております。子どもの学ぶ意欲や学力・体力の低下、問題行動、家庭・地域の教育力の低下などいろいろな問題が発生しているという指摘です。
 それから、この点について、平成7年に再開されました、15期の中央教育審議会でも盛んに議論されましたが、教育環境が猛烈に変わっており、それに日本の教育はついていかなければいけないという点の指摘です。ここでは少子高齢化、環境問題、グローバル化というようなものを例にして、国内外の状況が急激に変わっていて、我が国の教育はこれについていかなければいけないということを言っております。
 それから、その次の3行でありますが、教育の果たすべき使命を踏まえ、改正教育基本法において新たに明記された教育の目標や理念の実現に向け、改めて「教育立国」を宣言しという旨の記述があります。
 日本は、私は教育立国であると信じております。ここのところそれが少し怪しくなっておりますが、既に江戸時代に、皆様方ご存じのとおり、80%近い子どもたち、これは都会だけではなく、全国の津々浦々に至るまで80%近い子どもたちが何らかの教育機関に通っていました。主に寺子屋でありますが、その他書道の手習い所等そういうところも含めますと、80%近い子どもたちが何らかの教育機関に通っていた。これは世界の教育歴史上でも極めて珍しい例であるといわれています。であるからこそ、明治になって、学校制度ができたときに、あっという間に日本じゅうに学校が普及していったのだと考えられます。
 考えてみますと、私自身は、この年になって過去を振り返ることが多くなりましたが、日本という国は、非常に不思議な国だと思います。東洋の本当にちっぽけな国ですね。しかも、端っこにあり、その上資源は何もない。いいところといえば、割合気候温暖だということと、多分最近は問題が多くなりましたが、海産物では十分にとれたという点くらいだと思います。
 昔から人口は多かったようですが、そういう何にもないちっぽけな東洋の橋にある国から、ノーベル賞受賞者が16人も出ています。こんなこと考えられますか。この事実は、いかに日本が、日本人が教育熱心であったかということを示す以外の何物でもないということではないでしょうか。
 封建時代であった江戸時代に8割近い子どもが一生懸命勉強をしていた。それから、250年という平和な時代があったということ。今「篤姫」やっておりますが、それにも出てきますが、この時代に日本人はむちゃくちゃに勉強をしたんですね。
 どうしてそんなに勉強したかが私にはわからない。私そういうことについて一時凝りまして、随分いろいろな歴史家に聞いてみたのですが、私の納得するような答えは頂けませんでした。
 ということで、もともと教育立国であった我が国が、改めてこういう宣言をしたということです。
 第2章では、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿ということで、先ほど局長からもございましたが、2つの事を言っております。1つは、義務教育修了までにすべての子どもに自立して社会で生きていく基礎を育てることです。これまで義務教育というのは一体どうなんだということについての議論は余りありませんでした。義務教育でどこまで子どもたちを仕上ればいいのかということの議論がなかったということで、15歳で世の中へ何とか出られるようにするのが義務教育の目的だろうということで、ここで初めてこういうはっきりしたメッセージを出しました。
 それから、2つ目が、社会を支え、発展させるとともに、その後ですね、これがキーワードになっておりますけれども、国際社会をリードする人材を育てるということですね。
 国際社会、日本というのは、戦争で無一文になって、そこから見事立ち上がった。私、これも幕末から明治へかけてものすごい教育投資をしたから、あるいは、もっと言いますと、江戸時代から一生懸命日本人が勉強してきたからだと思います。このちっぽけな国が無一文から立ち上がって、今世界の経済の10%近くを支配するようになっているんですね。
 日本は、日本が作ったいろいろな工業製品を世界に買ってもらって、それで非常に良い生活をしている。そういう意味でいうと、日本は国際社会を今後リードしていく役割を果たして行かなければ行けない。そういう人材をつくりたいというメッセージがここに入っています。
 その後のところです。局長のお話にもありましたように、このような教育の姿の実現を目指し、OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ、必要な予算について財源を措置し、教育投資を確保していくことが必要というメッセージを出しております。
 この点については、我々としては数値目標を入れたかったのです。先ほど清水局長のスライドにもありましたが、少なくとも5%というふうな数字を入れたかったのですが、これは閣議決定をすることになってますから、各省庁が合意しないと数字が入らない。と言う事情もあってここに数字を入れることができませんでした。この点については一番最後のところで少し時間とってお話をさせて頂きたいと思っています。
 この振興計画の一番のポイントは、今後5年間に緊急にこういうことやろうよということで、八十幾つかの政策を提案したという点です。実は何年にするかということについてはかなりもめました。今後10年間という方もいたし、20年という方もいましたが結局5年間ということで決着しました。
 この、八十幾つかの政策の中で、特に重点的に取り組むべき事項というものを取り上げさせていただきます。
 まず私が取り上げたのは、確かな学力の保証ということであります。
 新しい学習指導要領ができました。PISAの国際調査等の結果によると、日本の子どもたちは、読解力が足りないということが分かっています。2003年のPISA調査で読解力が14位になったとマスコミの皆さん随分大騒ぎされました。
 私は、読解力で日本の子どもたちがいい成績をとるのは難しいと思っています。というのは、PISAの試験そのものが、オクシデンタル・ランゲージ、つまり西洋の言葉で構築したフレームワークに依存しています。日本語というのは違うんですね。日本語は非常にファジーな表現、そういうものをよしとしている。
 俳句が一番いい例ですね。わずか17語の中へいろいろな意味を込める。ああいうことができるのは、中国語あるいは漢詩等ではできるのかもしれませんが、漢詩だってしかも漢字ですから一つ一つの語が意味を持っている。最低でせいぜい4行ですね。20語を並べてやっと意味が出てくる。日本は17の音でしかない語を組み合わせて意味を持たせることができるということですから、言語体系が違うわけですよね。
 言いわけになるかもしれませんが、私の海外生活の経験からしても、日本の子ども達が彼らのいう読解力ということでいい成績をとるのは、私は難しいと思っています。
 さりながら、その辺に問題があることは確かであり、私は、一番日本人に、私も含めてですが、欠けているのは知識を総合する力だと思っています。私2度ケンブリッジ大学にいたのですが、ケンブリッジで私よりかなり年の若い連中と一緒に研究を致しました。ケンブリッジの学生ですから、極めて優秀な学生です。しかし、あるときに、意外に彼らが知識の量が少ないということに気がつきました。
 私の学問はもっぱら応用数学を使いますが、彼らのその分野の知識が、意外に少ないことに気がつきました。彼らも誇りが高いですから、こんなこと知っているかとは聞けないので、ちょこちょこ小出しに聞いてみたのですが、意外に知識の量が少ない。びっくりしました。
 ところが、彼らのすごいところは、少ないと思われる知識が実に良く頭の中で整理されているということです。整理されているということは、とりも直さず活用能力が高いということにつながってきます。
 そういうことで、読解力というのは一種の活用力だろうということで、この新しい指導要領では、知識の獲得段階と、それから活用段階、その2つがあるということを初めて明言しました。そしてそれぞれの段階について工夫が必要だということを言っています。この点が一つの目玉になっています。
 私、最初の教育課程部会長をやらされたのですが、その時に一つの提案をしました。前から思っていたことですが、私は大学については工学部におりましたが、機械、電気、建設、等異分野の連携、理解というのが全然ないんです。一つ一つの学問の壁が非常に高い。ところが、英国、アメリカへ行ってみて、そういう学問の壁というのが非常に低いことを知らされました。お互いに非常に良くコミュニケーションをしています。平成10年の学習指導要領改訂の際に、私中教審の委員としては新米でありましたが、その私の処にさえ夜討ち朝駆けで手紙、ファクスが来ました。家庭科の時間を減らしちゃいかんと、理科の時間を減らしちゃいかん、算数の時間減らしちゃいかんとか、まさに利権争いですね。授業時間が減る方向に行くことは分かっていましたからしようがないというところありましたが、そのような経験を踏まえて、今回は何か教科間に共通のものがないか考えて欲しいという提案をしました。
 それで出てきたのが言語と体験です。これは私よかったのではないかと思っています。殊に体験、体験というと非常に俗っぽく聞こえますが、理科実験も体験です。実際にものを見て、あるいはものを体験して、知識を自分のものするということが大切じゃないかということで、知識の獲得段階があり、それに続いて活用段階があり、その間をつなぐのが知識と体験だろう、そういうことで議論が進んだわけであります。
 2番目の豊かな心と健やかな体の育成ということでありますが、最近少し体力が下げどまったという文部科学省の調査結果がありましたが、今の子どもたちの直面する最大の問題は、日本の社会から自然がなくなったということだと思います。
 私どもの時代は、遊ぶところは幾らでもありました。そういう遊びから、自然からいろんなものを学んできましたが、それと同時に、体力、当然精神力もそうですが、そういうものを身につけることが出来た。
 今の子どもたちは、そういう機会が殆どなくなっているということで、体力を身につけるということは非常に大切だと思います。
 それから、もう一つは、やはり徳の問題ですね。道徳というといろいろ受け取り方がありますが、私は人間の徳というのは世界共通のものだと思います。
 そういうことからも、豊かな心と健やかな体の育成ということを強調しております。
 それから、教員が子ども一人一人に向き合う環境づくりですね。これは私極めて大切で、私ずっとこのことについては言い続けてきました。40前ほどから、研究の関係で盛んに外国へ出るようになりました。まず驚いたのが、外国の大学、アメリカもそうですし、ヨーロッパではそうですが、先生方が、アドミニストレーション、つまり行政的な仕事をする度合いが非常に少ないということです。研究に専念できる時間が長い。
 なぜそうなっているかというと、サポーティングスタッフの数が物すごく多いからです。英国の小中学校を、去年の11月に随分たくさん見てきましたが、中等教育学校、日本でいうと6年制ですね、そこに700人位しか生徒がいない。その学校に事務職員が六、七人います。ですから、先生方は、子どもたちに向き合う時間を十分とれる。しかもその事務職員の質が高いので、事務的なことは頼んでおくと全てやってくれる。
 そんなことから私はサポーティングスタッフの数をふやすべきだということをずっと中教審で主張してきました。これは大学も同じ状況です。日本には実験をサポートしてくれる、技官という方が多数いらっしゃいましたが、技官の制度はなくなってしまいました。現在では、日本では准教授以上の研究者一人に対して、恐らく0.0何人しかいないと思います。それに対して、英国は実に0.8人程度はいます。ですから、大きな大学行きますと、すごいワークショップがあります。もう工場のようなものです。そこで、こういう実験をしたいからこういう装置をつくりたいというと、デザイナーがいて、これでどうだと図面をかいてくれる。検討して、よし、これでいいとなったら、それを工場へ持っていくと、そこにいる技官がきちんと全部つくってくれる。こういうシステムになっています。
 申し上げたいのは、教育をきちんとやっていく、研究をきちんとやっていくためには、サポーティングスタッフの数がたくさん要るということです。日本の、高等学校にはある程度いらっしゃるようではありますが、小学校、中学校では極めて少ない。これが先生方の労働を加重にしているということで、教職員配置の適正化の提案をしております。
 次が、手厚い支援が必要な子どもの教育の推進ということで、小・中学校に在籍する障害のあるお子さんたちに対する個別の指導計画、そういうものも作成を促すということ、それから学校内外における相談体制の整備など、不登校の子ども等の教育機会を支援するという提案です。
 不登校の問題は、東京都の教育委員会でもかなり深刻に考えておりまして、最近大議論を始めたところですが、統計をごらんになったかと思いますが、小学校6年生まではそれほどでもないんですね。それが、中1になると急増します。いじめも同じです。ということでつい最近までは、私も、中学校が問題だという意識を持っていました。英国でも15歳の子どもが一番難しいという、15歳の子どもたちの教育が一番難しいというのが一種の社会的な共通認識になっています。私もそうだなと思っていたのですが、いろいろ検討してみますと、小学校4年生、5年生、6年生からそういうところに問題の始まりがあるんですね。そういうことが最近わかってきました。そういうことで小学校4年生、5年生、6年生のうちから手を打って、そういう芽をつむということが大切ではないかということを今議論しているところであります。
 次の、地域全体で子どもたちをはぐくむ仕組みづくりということでありますが、これはずっと言われていることです。戦前は日本にもコミュニティー意識というのがあったのですが、工業化、都市化によって、コミュニティー意識というものが極めて薄弱になってしまいました。
 どうでしょう、東京都民にあなたの住んでおられるところにコミュニティーありますか、地域社会のようなものが存在していますかという質問をして、イエスと答える人は10人に1人位でしょうか、私が今住んでいる八王子のみなみ野というところは、確かにコミュニティーあります。非常に子ども活動も盛んですし、自然保護運動等に子供を積極的に参加させています。地域の清掃もしています。私はコミュニティーがあると答えますけれども、恐らく都心では殆どないでしょうね。
 ところが、おもしろいのは、ロンドンの私の友人何十人かに、あなたの住んでいるところにコミュニティーあるかというと、ほとんど全員があると答えるんです。そういう意味から、日本に比べてコミュニティー意識が非常に強い。
 ところが、日本は戦後そういう意識が、殊に都会を中心にしてなくなってしまったということで、もう一度、地域の教育力というものを考え直す必要があるのではないかということであります。
 それから、次が、キャリア教育・職業教育の推進、それと生涯を通じた学び直しの機会の提供の推進です、私、アメリカでも幾つかの高等学校を見ましたし、英国でもエリート高等学校をいくつか見ましたが、そのような処でもキャリア教育はきちんとやっています。職業観みたいなものが大事だということでそのカリキュラムの中に入れているようです。
 日本はその点、進学コースに乗っているような子どもたちですね、そういう子どもたちにほとんど職業教育みたいなものはやっていない、職業観を植えつける教育をやっていない。そういうこともあって公の精神のようなものが育っていないのではないかということで、このような提案を致しました。
 私は、この職業教育というものは、専門高校つまり、以前の工業高校、商業高校、そういうところでやる職業教育と、普通高校でやる職業教育は違うかもしれない。しかし、職業を持つ、しかもそれを通して自分の自己実現を図っていくというような教育は、非常に重要ではないかと思っています。
 それから、非常に不思議なことに、改定される前の教育基本法は、高等教育のことは一切触れていません。非常に不思議です。ということもあって、新しい改定された教育法には、大学、いわゆる高等教育のことを入れるべきだという議論をして、それが入りました。
 そこに2つ書いてあります。大学等の教育力の強化と質保証です。
 日本の大学も、いわゆるブランド大学における研究の、すべてと言いませんが、幾つかの分野の研究は世界的なものであります。そうでないと、ノーベル賞なんか出ませんから、これは間違いない、しかし教育力はどうなのかというと、これは甚だ心もとない。これについては英国でも同じ議論がありまして、英国が、大学における教育の重要性を指摘したのは15年前ぐらいです。日本でもやっとそういうことが言われ始めました。
 1999年のケルンのサミットで、知識基盤社会ということが各G8の共通の認識となった。つまり知識を国民一人一人ができるだけたくさん持つことが国の競争力の強化につながるという発想ですね。
 それについては、知識を伝承してくれるのはどこか、それは大学しかないということです。そして知識を伝承する手段は教育しかない。そういう意味でいうと、日本の大学は、教育には手を抜いていると思わざるを得ない。そのような背景から、教育力をもっと強化する必要があるということをここで言っております。
 その次の卓越した教育研究拠点の形成と大学等の国際化の推進ということであります。日本は戦後、当時の先進諸国からシーズを入れて、それを加工して、改良して、大量生産に結びつけて非常にいい工業製品を出して、それを売って、いち早く復興を成し遂げ今の地位を築いた。しかし、シーズを世界の他の国に求めることは殆ど不可能になったため、自分でシーズを生み出さなきゃいけない状況になっている。つまり研究の振興が急務であると言うことです。大学の研究を高度化する以外に方法はないということです。
 白川先生がノーベル賞をおとりになりましたけれども、白川先生の例の誘電プラスチックですね、あれも物すごいビジネスになっておりますし、東京工業大学の宣伝で恐縮ですけれども、医科歯科大学の、医用器材研究所に中林先生という先生がいらした。もう定年で退官されています。皆さん方、歯の治療をお受けになることが多いと思いますが、最近物すごく接着剤が進歩しています。それは中林先生の研究のおかげなんですね。中林先生のお仕事は、マーケットバリューでいうと1,000億を超えているというふうに言われております。白川先生は、自分の研究よりは、中林先生の研究のほうが、はるかにマーケットバリューが高いというふうにおっしゃっていましたが、そういうふうにある研究から商品化され製品が生まれて、日本の経済に貢献しているということでありますから、大学の研究というのは極めて大事だということです。
 そろそろ時間がなくなりましたので、最後に行きたいと思います。
 実は、先ほども少し触れましたが、教育振興基本計画の議論の過程の中で、我々は数値目標をたくさん入れたかった。例えば先生を2万人ふやせとか、それからOECD並みに教育投資を5%にしよう等という点です。ところが先ほど申し上げましたように、この計画は閣議決定すると言うことになっていますから、全部の省庁が納得しないと入れられないということで、残念ながら入らなくなってしまいました。次のところに、一種の言いわけが4つ書いてあります。
 教育にどれだけの財源を投じるかは国家としての重要な政策選択の一つであり、とりわけ資源の乏しい我が国では云々というところです。OECD諸国などの諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ云々とありますが、我々は、ここにありますように、GDP比5%と入れたかったのですが、それができなかった。しかし、教育投資の規模の考え方でありますとか、諸外国の公財政支出など教育投資の状況を参考にしながら、教育投資を確保するとの今後の方向性などについてはこの中で示すことができたのではないかと考えております。
 次に、大きな問題になった教職員定数ですね。教職員定数についても、矢印の後、教職員定数に関しては、教職員定数の改善や25,000人などの数値目標を示すことはできなかったが、新学習指導要領の円滑な実施の関係では、そのために教職員定数のあり方を検討することを明確に位置づける、検討するという文章が入っていますから、ある程度の主張は盛り込めたのではないかと思っています。また一人一人の子どもと向き合う環境づくりの関係では、そのための教職員配置についての考え方は盛り込むことができたと認識しています。今後の勝負は、先ほども局長おっしゃいましたが、毎年度の概算要求ですね、そこで以下に予算を獲得するかということであります。
 次に、幼児教育の無償化についても提案したのですが、それについても、残念ながら、無償化への道筋をより明確に示すことができればよかったのですが、一番最後に骨太の方針というのをお見せしますが、そこにある主張程度で終わったということです。
 私学助成についても、同じことです。
 それには骨太の方針は何を言っているのか2008年の方針です。6月27日閣議決定された骨太方針においては、以下のような記述が盛り込まれています。これ読むと、当然お金出さなければいけないことになると思うのですが、お金出すこととこの精神は別だということなんでしょう。教育基本法の理念の実現に向け、新たに策定する教育振興基本計画に基づき、我が国の未来を切り拓く教育を推進する。その際、新学習指導要領の円滑な実施、特別支援教育・徳育の推進、体験活動の機会の提供、教員が一人一人の子どもに向き合う環境づくり、学校のICT化や事務負担の軽減、教育的観点からの学校の適正配置、定数の適正化、学校支援地域本部、高等教育の教育研究の強化、競争的資金の拡充など、新たな時代に対応した教育上の諸政策に積極的に取り組むと記述されています、これを読むと、当然お金が出てくるのではないかと思うんですが、日本の債務がどのぐらいあるか、皆様ご存じでしょうか。
 なんとGDPの160%近いんです。いつの間にか、日本は最大の借金国なってしまった。債務がGDP100%を超えている国というのは2カ国しかない。日本が今153%ぐらいですか。最近の数字は知りませんがイタリアが110%位で、あとの国はほとんど100%以下です。イギリスに至っては、67.5%しかない。要するに日本にはお金がないんですね。
 もちろん明治時代のように、政治家が不退転の決意をもって教育投資をすると言ってくれれば、それにこしたことはないんですが、これだけ社会のシステムが大きくなってくると、なかなかそれは言えないだろうということで、最後のスライドを見てください。
 英語で申しわけないのですが、アメリカで6月に使ったスライドの一部です。これは日本に来る留学生の数の推移を示したものであります。
 1999年、5万5,000人です、中曽根総理が10万人計画を提唱されたのが1983年ということが、20年かかって、2003年に10万人を超えました。実は最初の数年間、10年間ぐらいは、留学生を増やすためのお金ほとんど出ていないんです。にもかかわらず、留学生は徐々にふえている。これらの年より前のデータがなくて申しわけないのですが、そこでも少しずつふえています。ふえ出してから、お金が出てきた。このあたり1990年代ですね、ここで急激にふえたためにお金がわっとふえています。私も金を出してほしいんですが、今の財政状況を客観的に見ると、やはり無理だ。何を言いたいかというと、やっぱり当面は耐え忍んで工夫をしてやることしかない。
 ただですね、芽があるのは、例えば先ほども少し議論になりましたが、非常勤の先生方の数は財務省もふやしました。定員化すると、毎年出さなければいけない、非常勤だと切れるからということもあるんでしょうが、問題のあることは財務省は理解しているということだと思います。
 ですから、もう少し辛抱して、日本の財政がよくなるのを待つ以外に今のところ方法はないのではないかなと私は思います。そんなこと言うからだめなんだと言われるかもしれませんけれども、留学生数のトレンドを見ていて、つくづくそう思います。
 時間が来たようでありますので、私の話は以上で終わらせていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

○司会(寺門)

 ありがとうございました。それでは、予定されております時刻まで時間ございますので、ただいまの木村先生のご講演に関しましてご質問、ご意見ございましたら、先ほどと同じ形でご発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 参加者

 本日はありがとうございました。
 戦後、日本共産党の志賀義雄氏が、共産党が歴史教科書を書き、日教組の教師が教えれば、三、四十年後には、日本の政治家はみんな共産党の考えに近づいてくるというふうに申したそうです。
 それで、先ほど先生は、江戸時代の寺子屋のお話されたんですけれども、確かに戦前はそういう伝統があったと思うんですけれども、やっぱり戦後のそういう仕組みというものを脱却しないと本当の日本人の底力というのは出てこないんじゃないかというふうに、重点的に取り組む課題ということで、国の郷土を愛するというような文言が、先ほどフロアの方から、そんな文言が学習指導要領に入るのはおかしいという変な言葉もございましたけれども、やはり各国、国土を愛するというのは、どこの国でもやっていることですよね。ですから、それを小学生、中学生の基礎教育の段階で、やはり養うためには、歴史なりですね、伝統というものを本当に勉強していかないと、日本そのものが好きにならない。
 私も過去2回、そういう教科書採択に参加して、いろいろ教科書を見ましたけれども、本当にこれではやっぱり小・中学生がかわいそうだという、思わずどういう方が書いたのか、末尾の著者欄を見たぐらいですから、ですから、そういう、実際に教えるのは先生方ですし、その先生がやっぱり参考にするのは教材だと思うんですね。その辺が、私は見たところ、やっぱりこれでは国を愛する気持ちにならない。やっぱりもっと国に誇りを持てるようなですね、そういうものにしていかないと、本当の日本人の底力というのは出てこないんじゃないかというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。

○ 木村孟氏

 この場で余りイデオロギー論争はしたくないので、私の考えを述べさせていただきます。私も初めて外国に出ましたのが二十七、八歳の時です。それまでは、日本のよさとか、それから日本のすぐれているところとかいうのはほとんどわからなかった。それ以来、英国で、前後合計4年程生活をしました。またその他にもこの間数えましたら訪問した国は70カ国ぐらいになっています。そのような経験をして初めてその意味での日本のよさというものが理解できるんですよね。
 その意味でも、日本の良さを初めから教えるというのは、私は非常に難しいのではないかと思います。ですから、そういう意味でいうと、やはりやらなきゃいけないのは、異文化理解といいますか、日本の中で、自分の考えと違う人とできるだけ接触する機会をつくるということではないかと思います。
 私、子どもが2人いて、2人とも40歳前後ですが、私3度外国連れていきました。彼らを見ていると、日本人に対する接し方も違いますね。外国で言葉が分からない、友達がいないなど非常につらい目に遭ってきている。しかし、優しくされた。そういう思いが物すごくインプリントされていて、親から言うのも変な話ですが、人に対する接し方等全く違う、今2人とも外国にいますが、非常に快適に生活しています。
 そういう、体験をしないと理屈で教えることは難しいのではないかという点が一つ、少し話長くなって恐縮ですが、ミットワーさんというアメリカ人ですが、禅宗のお坊さんがいらっしゃいます。私、その方と一時に親しくして頂いたのですが、その方は、アメリカでおじいさんが日本人ということで、戦争のときに、随分虐待されました。アメリカ人にしては珍しく結核になって、死ぬかどうかという死線をさまよって、二十歳少し過ぎたときに日本へ来られて、禅の道に入られて、少し前リタイアされたというお手紙をいただきましたが、大変な高僧になった。その方と話をしていると、いつも絶対に外国のまねをしてはいけない、日本には日本流があるんですよということを盛んにおっしゃっていました。その辺に一つの答えがあるのではないかと思います。
 私はイギリスかぶれしていると盛んに言われるのですが、やはり日本流のやり方、日本人には日本人にふさわしいやり方というのがあるのではないか、教育もそうだと思います。そういうことを強く感じています。お答えになったかどうかわかりませんが。

○ 司会(寺門)

 ほかにございますでしょうか。
 すみません、時間が迫っておりますので、簡潔にお願いいたします。

○ 参加者

 貴重なお話ありがとうございました。
 先ほど講演で使われたレジュメの中の4ページの新しい時代に新しい学校づくりをという第1項めの、教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくるという項目と、あと16ページの教員が子ども一人一人に向き合う環境づくりというものの中の一番最初に挙げられてあるメリハリある教員給与体系の推進というものについて、教育をよくしていく中で、先生たちの頑張りというのは非常に重要だと思うんですけれども、そういう中で、よくしていく、インセンティブを与えていくというのは大切だと思うんですけれども、具体的にこれについてはどういった取り組みがなされているかというのを教えていただけたらなと思います。

○ 木村孟氏

 これは、我々の提案でありまして、めり張りというと何だか減らすという意味にも取られそうですが、我々は決してそのめり張りという言葉をそのような意味では使っていません。もちろん教育改革国民会議には産業界の方もいらっしゃいますので、当然下げるのも当たり前だということをおっしゃっていましたが、私はそうではなくて、やはり優秀は先生にはそれだけの処遇をするべきであるということを考えています。具体的には、事務的なこと、行政的なことについては清水局長のほうからお伝えいただいたほうがいいかもしれませんね。
 それから、ちなみに、今英国では、もうやめましたけれども、トニー・ブレアよりも高い給料をもらっている先生方が何千人といるんです。それだけ英国は教育に金を使っている。ここのところ30%教育費を増しました。英国は教員免許というのは要らないんです。だれでも先生になれるんです。ただし、初任給というのは物すごく低いです。日本に比べたら、比較にならないぐらい低い。だから一生懸命階段を上がろうとして努力します。上まで行くと、首相の給料、英国の首相の給料は低いですから、簡単に超えられるようですけれども、そういう先生がたくさんいるということであります。

○ 佐藤(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 今木村先生がお答えになっていただいたとおりでございますけれども、今内部的にご承知いただいていると思いますけれども、教員、先ほど来出ている骨太2006で、基本的に教員の給与というのもきちんとメリハリをつけてということがございました。
 こういったものを受けて、教員の給与については、教職調整額というのが本給の4%分支給されていますが、それをどうするかという検討を行っており、平成19年3月の中教審の答申や省内に設置した検討会議での議論を踏まえ、先日、中教審に作業部会を設けたところでございます。
 こういったところで検討を引き続き進めていければと思ってございます。

○司会(寺門)

 ありがとうございました。それでは、もう一問お受けいたしたいと存じます。

○ 参加者

 先ほど……清水さん……あわせて何とか子どもたちのためにあれこれやってやろうと思ってくださっているらしいことは感じたんですけれども、でも本当にこれで子どもたちは楽しく、幸せに暮らせるのかなというのが気になってしようがないのです。5人の孫の祖母ですけれども、今木村さんのお話にもありましたけれども、自分が小さかったときは、家に帰ればぱっと飛び出して外で遊んだっていう、そういうことを保証してやる条件というのは、ちっとも今の、今日ご説明いただいた中にはなかったような気がするんですね。
 それがなくて、本当に子どもって伸び伸びと人間性豊かに体力つけて育ち得るものなんだろうか、そういうことが保証されるような、私は教育基本法というのなら、大人基本法、それから大人指導要領というのをつくって、本当に子どもたちが伸び伸びと自由に楽しく育っていけるような環境をつくってやらないと、子どもたちは本当に楽しくは過ごせないんじゃないかって、そこがすごく心配です。
 ということは、ねらっている成果も上がりはしないんじゃないか。例えば、認証保育園なんていうのも、預かってくださるので、親は安心できるかもしれませんけれども、鉄道の高架の下に部屋だけあって、日の当たる園庭はない。危ない道を先生に連れられて近所の公園まで歩いて遊びに行く。学校になれば、戻ったら放課後子ども何とかといって、親切かもしれないけれども、そこに囲い込まれるというか、親切過ぎて、本当に伸び伸びはできない。それをまず直してやらなかったら、本当の子どもの幸せと、将来にわたっていい教育にはならないんじゃないかと思えてしようがなくて、その辺のところをお伺いしたいと思います。

○ 木村孟氏

 適当なお答えできるかどうかわかりませんけれども、大人何とか法をつくるという点については、私も全く同感です。つまり最近子どもの倫理観云々といいますが、子どもの倫理観が落ちたのは大人のせいなんですね。見てください。日本じゅう大人の世界で変なことばかり起きていますね。そういう社会に育ったら、子どもの倫理観がなくなるのは当たり前です。ですから、今の点は全く賛成です。
 後のほうですけれども、確かに僕らが子どものころは、草っぱらも原っぱも幾らでもあった。川はきれいだったし、本当に思う存分遊ぶことができた。ただ、そのときの、例えば母親の生活見ていますと、朝4時に起きて、まきとかまで御飯を炊いて、洗濯その他働きづくめで、くたくたになっていましたよね。
 その代償つまり、野原や原っぱがなくなったりなんかした代償として、インダストリアライゼーションとか工業化が進んで、ある面では生活がすごく楽になっています。そこは認めざるを得ない。そっちの方向へ全世界が向かっているのですが、これは人間の欲のなせる業なのですが、しかし、昔みたいなところへ戻って、昔みたいな朝4時に起きて、まきでご飯炊いて、そういう生活には戻れないでしょう。
 今の状態がいいとは言いませんが、今のこの環境の中で何ができるかを考えないといけないと思います。私子どものときそれほど勉強した思い出がないのですが、今の子どもには勉強してもらわないと困るので、勉強もさせなければいけないのですが、やはり子どもたちが伸び伸びと生活する環境というのは、大人社会が準備すべきだと思います。
 例えば、また英国の話で恐縮ですが、英国では、公園が非常に整備されており、サッカーフィールドが整備されたりして、子どもたちがサッカーを思う存分できるし、遊べるのですが、それでも昔に比べると遊ぶところ少なくなっています。そんなこともあるのか、英国の家庭は、かなり生活が大変なところから裕福なところまで、夏休みに集中的に子どもを外へ連れ出すことが社会習慣になっています。
 例えば、ある程度裕福な層は、サマーキャンプみたいなお金をとってりっぱなナショナルトラストになっている昔の寺院とかそういう大変歴史的な建物の中で、自分たちだけで生活をさせる、そういうところへ50日とか60日、子供たちを送ります。親から切り離して独立して生活させる。そういうところで自然にも触れることができる。
 そういう大きな支出ができない層は、物すごく安い、日本でいうとキャンピングカー、トレーラーと言いますけれども、それがたくさん置いてあって、食料は持っていきますが、一日1,000円以下で生活できるようなところが準備されています。そういうところへ連れていって、自然に、英国人に言わせるとエクスポーズさせる、つまり自然に触れさせる。そういう工夫をしています。それを国全体で、システムとしてつくり上げている。
 そういうことを日本もやっていかなきゃいけないと思います。個々には、そういう努力が随分進んでいまして、例えばある会社、教育改革国民会議のメンバーであった方の会社は、大きな畑を買って、夏休みに子どもたちをそういうところに呼んで畑仕事やらせるとか、それでトンボつかまえたり、セミつかまえたりということもやらせています。
 それから、私の友人で北海道に竹田津実さんという、もともとは獣医さんなんですが、今は有名な写真家、文筆家になっている方がいます。彼はオホーツクの森というのを自分たちでお金をためて買って、そこへ全国から子どもを呼んで、夏休みじゅうそこへ子供たちを全部放すというプロジェクトをやっています。
 そういう運動が個々には着々と進んでいます。国の施策としては未だ完備されていませんが、民間の力が徐々に広がっていますから、私はこの国もそれほど捨てたものではないと思っています。
 民間の力あるいは企業の力で我が国の子どもたちに余りストレスがかからないような環境をつくっていくということが大切ではないかと思っています。

○司会(寺門)

 それでは、時間となりましたので、木村先生のご講演を終わりとしたいと思います。先生、どうもありがとうございました。(拍手)

※セミナー開催にあたってのお願い・事務的な説明については、一部省略しています。

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-- 登録:平成21年以前 --