教育改革セミナー in 名古屋

1.日 時

平成20年10月30日(木曜日)18時〜20時

2.場 所

ウィルあいち
(愛知県名古屋市東区上竪杉町1番地)

3.出席者

文部科学省生涯学習政策局長 清水潔
中央教育審議会委員 衞藤隆

4.議事録

○司会(白井)

  それでは、定刻となりましたので、ただいまから教育改革セミナー in 名古屋を開催いたします。
 本日は、ご多忙のところご参加いただきまして、まことにありがとうございます。
 私は、本日の司会を務めさせていただきます文部科学省生涯学習政策局の白井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 文部科学省では、国の教育改革に関する広報・啓発のため、昨年度から教育改革セミナーを実施しておるところでございます。本年度につきましては、7月に閣議決定をされたところである教育振興基本計画をテーマとしまして、全国7会場でセミナーを開催してございます。本日の名古屋は、本年度で3回目のセミナーの開催となるところでございます。
 お手元に本日の次第をお配りしてございますが、本日のプログラムとしましては、18時から45分程度、中教審委員でいらっしゃる衞藤�髏謳カから、教育振興基本計画を受けた今後のあり方、今後の教育のあり方についてご講演をいただきます。
 その後、18時45分ごろから19時半ごろまで、文部科学省生涯学習政策局長である清水から、教育振興基本計画をめぐる行政説明をさせていただきます。
 最後に30分程度、19時半から質疑応答の時間を設けさせていただきたいと思っております。
 おおむね20時ごろに終了の予定でございます。
 それでは、早速でございますが、まず初めに中教審委員でいらっしゃいます衞藤�髏謳カからご講演いただきたいと思います。
 衞藤先生は、東京大学教育学部附属中等教育学校の校長先生としてご活躍され、現在は東京大学大学院教育学研究科の教授をされています。また、中央教育審議会におきましてもスポーツ・青少年分科会長として、また、教育振興基本計画につきましても、教育振興基本計画特別部会の委員として、その計画の策定に携わられてご尽力をいただいたところでございます。
 それでは、早速でございますが、衞藤先生、よろしくお願いいたします。

○衞藤隆氏

  皆さん、こんばんは。ご紹介いただきました東京大学大学院教育学研究科の衞藤でございます。中央教育審議会の委員を3期、4期とさせていただいておりまして、教育振興基本計画の準備段階から会議に参加いたしましたので、そういったかかわりもございましてお話をさせていただきます。
 先ほどご紹介の中で、附属中等教育学校の校長を務めていたと言ってくださったのですが、この3月で一応任期が満了になっておりまして、校長の方は今はしておりませんが、大変貴重な2年間を子どもたちとともに過ごすことができました。
 そういったことも踏まえてまたお話ができればと思います。
 簡単に私の自己紹介をしておきますが、私は実はもともと臨床の小児科医でございまして、病院勤めも10年ぐらいはしていたんでありますが、その当時は、B型肝炎だとか胆道閉鎖症のような子どもの肝臓の病気を診断したり治療したりするのが主な仕事でございましたが、その後、研究生活に入って研究所の、国立公衆衛生院という、現在の厚生労働省の附属の機関で母子保健や学校保健について研究してまいりました。
 ちょうど13年前の1995年、平成7年から現在の東京大学の教育学部に赴任しておりまして、ヘルスプロモーションあるいは健康教育を中心にしております。
 中央教育審議会の方では、先ほどもご説明がございましたように、スポーツ・青少年分科会の方の関係で、いろいろな部会等で審議したりというようなことが比較的時間的には多いですが、そのほか、初等中等教育審議会、教育制度分科会、それから、教育振興関係特別分科会等でいろいろ審議に加わらせていただきました。
 今日は、私の方からは、主に教育振興基本計画をめぐる考えについてお話しするんですが、その前の前段として、今日の我が国の子どもや青少年の現状というお話を少しさせていただきまして、その後、教育改革の一環としての教育振興基本計画から考えることについてお話ししたいと思っております。
 では、まず最初の我が国の子どもや青少年の現状でございます。まず、これはどなたもご存じだと思いますけれども、人口の将来予測というのがいろいろなところからなされておりまして、これは国立社会保障・人口問題研究所が出しているものです。少子高齢化が当分続くだろうと、老年人口がやや、いずれはプラトーに達するにしても当分の間はまだ増えて、なおかつ年少人口の減少ということはとまらない、まだ当面とまらないという、そういうことがここ10年、20年という単位では少なくとも続くだろうということで、少子高齢化ということを一つの人口構成の認識としては当分持ち続けなければいけないだろうというふうに思っております。
 これは、文部科学省の学校基本調査で発表されているグラフをお借りしてきたものですけれども、学校での在学者数の推移というのは、現在の人口構成の推移をもろに反映しているわけで、大学を除きますと、現在どんどん減っているという状況があるわけであります。
 大学、短期大学も合わせますと、進学が増えているというような状況になって、ここだけが少し動きが違うというような状況があると思います。
 これもやはり学校基本調査から作成したものですけれども、市町村合併等もございまして、小学校の数はかなり年々減っているというような様子がうかがわれます。
 中学校、赤いのが中学校ですが、中学校も若干は減っているんですけれども、恐らく小学校3つぐらいに対して中学校1つというような、校区の関係はそのくらいになっていると思いますので、小学校の減少が顕著に見られるということで、これは例えば通学区域が拡大するとか、子どもの安全の問題だとか、あるいは体力の問題とか、いろいろそういうことにかかわってくることではないかと、私の立場はそんなことを思っております。
 子どもの現状、これ、それぞれいろいろデータはあるんですけれども、今日は時間の関係でそれほどたくさん紹介はできないんですけれども、一つは日本人の子どもの体格というのは、これは学校保健統計調査報告というのが毎年度出されますので、これを連ねていきますと大変よくわかります。
 戦争中、一時中断していた時期はございますけれども、身長と体重に関しては明治33年ぐらいからデータがありまして、わが国は世界的に見ても、子どもの体格をきちっと把握している類まれな国であると思います。
 そのデータを見てみますと、戦後子どもの体格はどんどん大きくなっているということが見られました。特に、1970年ぐらいまでは、つまり下の学年は上の学年より必ず体格が上回るというのが実感できるくらい、子どもたちはどんどん毎年体格が大きくなっていくということがございました。
 しかし、70年代の半ば過ぎぐらいから、その増加の程度がだんだん緩やかになってきて、大体この21世紀を迎えるころには、ほぼ定常状態といいますか、それほど伸びがなくなってきました。
 例えば、身長で言えば、それほど前年値を上回るということはもうなくなってきて、年齢で見ますと、平均で見ると少し下がるなどというところも出てきたりしていまして、かなり大きくはなってきたんですけれども、上げどまりというような状況になってきています。
 それから、これは余り広範な調査はないんですけれども、女子の初経、それから男子の精通、そういったようなもの、あるいは二次性徴と言われたようなものを見ても、早熟化というんですか、早く思春期も来るというような傾向がやっぱり見られています。
 それから、昭和39年に東京でオリンピックがあって以来、毎年10月に体力・運動能力調査が発表されていますけれども、これで見てみますと、大体昭和60年ごろから、どの年代も押しなべて体力・運動能力は低下傾向にある。細かく見ますと、やや持ち直したかに見えるような年代も一部には見られるのですけれども、それは本当にそういう傾向なのかどうか、もう少し長く見てみないとわからないという状況で、総じて言えば、やっぱり長期低下傾向があるということで、これからの日本を支える子どもたちの体力の問題というのは、大変深刻になっているということがあるかと思います。
 それから、子どもたちが自然に触れるとかいう体験が不足しています。そのために、学ぶべきものがきちっと身についていないというようなことがあったり、これは、いろいろなこれまでにも中央教育審議会の方でも青少年の意欲の問題であるとか、その他体験活動をふやそうと、そういったようなことをいろいろ議論してまいりましたけれども、今のところ、やはり10年前、20年前の子どもに比べると、自然体験が不足しているという状況です。
 それに対して、携帯電話であるとかパソコンであるといった情報メディアに早期からさらされていて、これをめぐっていろいろ情報の収集等が得意であるとか、パソコンのキーボードなどになれているとか、いろいろよい面もあるんですけれども、友達同士でのいじめにその携帯電話が使われたりとか、同報メールでうその情報を送って一人の子どもが傷つくとか、こんなようなことがかなり起こっていて、子どもが成長する途中で、さまざまなメディアの影響を受けているというようなこともございます。
 それから、生活が夜型化と書いてございますが、これは、例えばいろいろな調査がありまして、子どもがいつ寝ているかとか、何時に就寝しているか、何時に起きているかというようなことがあるんですけれども、日本の場合、大変夜遅くまで子どもが起きているというのが特徴です。これは、既に1歳、2歳という年齢で、例えば夜10時まで起きている子どもの割合というのは、1歳半あるいは2歳というところでは半数を超えています。これは世界的に見ても、夜遅くまで起きているというのは特徴だと思いますね。1歳、2歳の子どもが好んで自分で決めているわけでは当然ありませんので、それは暮らしている親の生活スタイルが夜型化しているということでございますが、これは学校に上がる年齢になってからもその傾向は続いておりまして、小学校、中学校と上に上がるに従って就寝時間は後ろへずれています。
 学校の始まる時間は変わりませんので、結局、結果としては睡眠時間の減少、それに伴って、例えば生活リズムが崩れて保健室に午前中やってくる子どもがいて、聞いてみると、やっぱり夜余り寝ていないとか、あるいは夜遅くまで起きていますから、やっぱり何か夜食のようなものを食べたりすると、朝起きても食欲がわかないとか、あるいはもう食べる時間がないからとかいうようなことで朝食を食べてこないとか、そんなことにつながったりして、生活の夜型化というのは、さまざまな子どもの生活なり健康なりの行動に影響を与えているという現状が長く続いております。
 これも、いろいろ早寝、早起き、朝ご飯とか、そういったような運動もございますし、何とかこれをやはりもう少し是正していかないと、人間の生理的なメカニズムといいますか、私たちのこの体にはやっぱりリズムがございまして、これは不思議なことに25時間の周期らしいですね。
 これは、閉山した鉱山の中に実験室をつくって、時間が一切わからないようにして人に生活してもらいまして、さまざまな測定をすると、だんだん本来のリズムがわかるんですね。それで見ますと、25時間だと地球の自転の24時間とずれているんですね。なぜそれがそうなのかという本当の理由はよくわかりませんけれども、でも、我々の体は1時間ずつずれていると、昼間が眠かったりとか、具合が悪くなるはずなんですけれども、朝、目が覚めて光に当たることに意味があります。目というのは脳の出店ですので、目から光の刺激を受けますと脳にその刺激が行きまして、実はその1時間のずれを直しているという、そういったようなことがあるらしいですね。
 夜型の生活というと、例えば、それもテレビであるとかパソコンであるとか、かなり輝度の高い光を目に浴びているというようなことは、かなり脳に対しては、リズムを狂わせている刺激になっている可能性があるんですね。
 事実、不登校のお子さんの中には、かなりこういった夜、昼のリズムが狂ってしまってもとに戻れないような状態のお子さんもいるというような、そういった研究結果もございます。
 ということで、この生活の夜型化というのは、なかなか深刻な問題であって、私たちの子どもだけの問題ではもちろんなくて、日本の人々の暮らしの中で、何とかこのことは真剣に取り組まなければいけない問題だろうというふうに思っております。
 それから、あとは、子どものことでは、塾や習い事の機会が多い、これは大体小学校の高学年になるとかなり複数の習い事、塾に、ごく普通に、これは都会だけではなくて、地方の小学校なんか訪問しても、大体子どもたちと話し合う機会なんかを通じて見ますと、英語を習っているとか、柔道の教室に通っているとか、そういうものを含めますと、かなり習い事をしている子どもが多い。
 このこと自体は、いろいろな文化に触れたり、スポーツを学ぶ機会があったりして、プラスの面がかなり多いと思いますけれども、そのためにかなり子どもたちが多忙化しているということの原因にもまたなっているかもしれません。
 一方、ご承知のように、いわゆる基礎学力が低下しているということとか、子どもたちの意欲が喪失しているというような、こういったような現状が強く、特に諸外国と比較してみた場合、日本では何かかなり大きくなってくるのではないかと思います。
 何か非常に悪いことばかり連ねたようなところもございますけれども、これはあるおもちゃのメーカーが親に聞いたことで、子どもの、ではいいところ、長所はどんなところがあるでしょうかということを子育てをしている、0歳から12歳の子どもを育てている保護者2,000人に聞いた結果です。今の子どもたちの少しいいところ、長所というのはどんなところだろうかと、親から見た長所というと、優しい、思いやりがあるというのが圧倒的に多くて、その次が、人見知りをしないとか、明るいとか、笑顔とか、元気、面倒見がよい、一生懸命だ、素直だ、あいさつができる、よく手伝ってくれるというようなことで、優しいとか人見知りをしないとか、そういったようなところに、現代の子どもの特徴があらわれているような気がします。
 それから、これは三井住友銀行の関係の経営懇話会という雑誌に出たという記事というものをまた二次的に見たものなんですが、若者の離職防止策というような小論文の中に、現代の若者の長所、短所というのが出ておりました。
 これを見ると、長所としては、合理的な考え方をするとか、バランス感覚がよいとか、これは、働いている若者のどういうふうに離職を防止させるかという観点ですから、働いている人、経営者から見ると、アルバイトを通してかような職業経験をしているという、そういったような点は昔と違ってよい点じゃないだろうかというふうに評価していますね。
 短所としては、利己的な面が強いとか、楽なことを優先するとか、偏差値教育の弊害と言っては内容はちょっと何なのかよくわかりませんけれども、こういったような、企業の経営者のような立場の人たちから見ると、現代の若者というのはこんなような特徴があるというふうに見ているようであります。
 それから、これは中央教育審議会が昨年の1月に答申しました青少年の意欲の向上に関する答申の中に引用されたデータですけれども、NHK放送文化研究所が平成15年に中学生、高校生の生活意識調査という中でこういったことを調べています。早く大人になりたいかということに高校生や中学生がどのように答えているかということで、早く大人になりたいかというのに「はい」と「そう思う」と答えたのがこの肌色のところですけれども、これは大体3分の1、34%、33%、ほぼ3分の1ぐらいであると。それ以外の残りの6割以上は、そうは思わない。6割近くですか、56.6%と57.7%は、早く大人にはなりたいとは思わないと、積極的に思っていないということで、よくわからないとかどちらとも言えないというのが約1割弱ということですので、結局、タイトルに書いてありますように、中学生、高校生の半数以上は、早く大人になりたいとは思わず、大人になることに負担感とか不安や自信のなさを感じているという、これはそれぞれまた理由を聞いておりまして、その理由が明確でないような何となくとかいうのもあるんですけれども、やはり何か大人になるということへ魅力を感じなかったり、少しちゅうちょしたり不安があったりというようなことが、今のどうも子どもたちにはそういう傾向があるようです。
 それから、これはまた全然別の面なんですけれども、厚生労働省の方の医薬食品局というところに献血のことを担当する血液対策課というのがあります。献血という制度があって、日本の輸血というのは献血で成り立っております。
 世界的に見ますと、売血制度といって、血液を買い取って、血液銀行というようなものがあって、それで輸血ができる、供給すると。日本もかつてはそういうことをしていた時代があるんですけれども、昭和30年代に、当時の駐日アメリカ大使であったエドウィン・ライシャワー大使が暴漢に刺され、日本人の供血者からの輸血を受けたんですけれども、それが原因で肝炎になりまして、ライシャワーさんは、結局その後たしか肝硬変になったりして、慢性の肝疾患になって亡くなられているわけです。そのころ、やはり血液の供給は売血制度ではだめだということになりました。やっぱり質の悪い血液が集まってくる可能性がありますし、血液を通じていろいろなウイルスであったり、肝炎を含めて病気が移る、そういったリスクの高い血液が集まる可能性があるから、やはり血液は献血一本に絞るべきだということで、これはいわゆる「黄色い血」というようなことで新聞報道なんかされましたけれども、輸血後の肝炎ということが非常に大きな問題になりまして、質のよい血液はボランティアとして差し上げるというような仕組みが日本赤十字社を中心にでき上がりました。そして、昭和43年に全面的に献血のみになったんですね。
 それで、時々いろいろある種の血液が足りないとか、そういうようなことはありながらも、まあまあ何とか日本で医療で使われる輸血の血液が確保できていたんですけれども、平成7年から平成19年まで見てみますと、最近、10代と20代の献血をしてくださる方の数がどんどん減っているという状況があります。
 もちろん10代、20代の年代というのは人口も減っておりますので、少子化で、それも考慮すると、この実数、ここにあるグラフは実数なんですけれども、人口で割って、率で出してみても、やっぱり10代と20代はほかの年代と違って、ここ十二、三年の間にどんどん減ってきている。
 このままほうっておきますと、輸血用に使う血液が確保できなくなるということも懸念されるので、そういったことで、今検討がなされているのですが、これは単に献血という行為をしてくれる人が減ったということだけではなく、もうちょっと技術的な理由もあります。例えば、献血バスというもので余り集めなくなったとか、1回の輸血の量が200ミリリットルでなく400ミリリットルが主流になってきて、それは18歳以上でないとできないとか、そういったような技術的な理由も若干関係はしているかもしれません。でも、20代はとりあえず、献血量の問題は当てはまりませんから、やはり人のために役立ちたいから献血しようという意識が低下してきているというようなことがあるのではないだろうかということが懸念されております。これをどのように解決するかということが、今厚生労働省の方で検討会を開きまして検討をしているというところですが、現代の若者の一つのある行動の結果をあらわしていることではないだろうかと思いましたのでご紹介いたしました。
 では、これから教育振興基本計画から考えることということをお話をしていきたいと思います。
 私自身がここ2年ぐらいの間にかかわった答申があり、1番目のが、先ほどから幾つかデータをご紹介した「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」というものなのですけれども、そのほか学習指導要領の改善であるとか、子どもの心身の健康を守り安全・安心を確保するために学校全体として取り組みを進めるための方策等に、かかわってまいりました。今日お話しするのは、この一番最近といいますか教育振興基本計画について関連してお話をいたします。
 これは、7月1日に、先ほどの答申の後、約3カ月弱で閣議決定をされて教育振興基本計画になったというものでありまして、これは後ほど行政説明の方で詳しくご説明があると思いますけれども、教育基本法の中に教育振興基本計画を含むことが義務づけられておりまして、それにのっとってつくられたものだというものであります。
 この教育振興基本計画の中においても、現代の子どもというものの、どういうものであるか、どういう特徴があるかということが記述してありまして、子どもの学ぶ意欲や学力、体力の低下、それから問題行動、家庭、地域の教育力の低下と、そういった課題が発生しているという、そういう認識が示されています。そして、周辺の状況としては、少子高齢化、環境問題、グローバル化というような、そういったような国内外の状況が急速に変化しているという認識があって、そういったものを踏まえて教育立国というのを宣言しているということが書いてあるんですね。
 この中教審の特別部会においても、いろいろデータに基づいて議論をし、論点を整理してまいりました。
 子どもたちの状況だけではなくて、国の内外の社会事情とか自然環境とか、そこに向けて、現状から近未来を予測したというものであります。
 「教育立国」という言葉が出てくるわけでありますけれども、これは、やっぱり今後の社会を形成する上において、教育の重要さというのを改めて認識したということを示しているんだろうと思います。
 これは、世界の中の日本という目で見たときに、では、日本はどのような役割を果たし、また、諸外国からはどのように認識されるのかということにもかかわってくることだと思います。この「知識基盤社会の形成を目指す」ということが言葉として出てまいりまして、この知識基盤社会とは一体何であり、そのために何をすればよいのかということがやはり大きな問題になってくるのだろうと思います。
 この人材育成が重要だという議論の中で、日本は天然資源が少ないから人材育成が重要だというようなロジックが用いられたときもあったんですけれども、これは本質的には正しくない議論ではないかと思いますので、そういった観点には立つべきではなくて、やっぱり本質的に人材育成はどういう状況であれ重要なことであることは間違いないことだと思います。
 教育立国ということのためには、さまざまな政策なり戦略が必要になってきますけれども、それが単なる夢ではなくて、実際に実現できるような、具体的なそういった方策というものをとっていく必要があるだろうと思います。
 この教育振興基本計画の中では、ここ10年を目指すというようなやや中長期的な見通しと、この5年というような形で示されていて、その10年という中には「義務教育終了までに、すべての子どもに、自立して社会で生きていく基礎を育てる」という基本的な方針が示されていて、そのためには「公教育の質を高めて信頼を確立する」というようなことですけれども、これは現在もう既に進めているさまざまな教育改革、学習指導要領なども含めて、そういったようなものの成果というものが出てくることによって、これが実現されていくことなのだろうというふうに思います。
 それから、「社会全体で子どもを育てる」、子育てをしている人だけではなくて、社会全体、お年寄りも、子育て経験がある人もない人も、すべての人がやはり子どもを育てるということにかかわってほしいという、そういうことだと思います。こういった「社会全体で」という概念がどういうふうに共有されるのか、どういうふうに実現するのかということが一つの大きな課題す。これはほっておいてもできることではないので、どういう仕掛けをしていくのかというようなことがやっぱり大事だなと思っております。
 ここ10年の中のもう一つに「社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てる」ということで、これは、主に高等教育などがかかわってくることかもしれませんけれども、特に大学に進学者が、同じ年代で見ていくと半数を超えてきた、短大も含めますと半数を超えてきたという中で、その大学教育の質なり、それをどういうふうに担保していくかというようなことにもかかわってきますし、さらに現在各大学、大学院で進めている改革というものが、やはり非常に意味をなしてくるだろうと思います。留学生のことも含めて、世界最高水準の教育研究拠点であるとか、そういったようなことが実現するように、これからさまざまな改革が大学には求められてきているんだということを大学人の一人として感じます。
 それから、5年というのがたくさんあって、幾つか基本的な方向というのは、4つですか、になっているわけですけれども、基本的な方向、先ほど言いました「社会全体で教育の向上に取り組む」という中には、(1)というところに「学校、家庭、地域の連携教育の強化をして、社会全体の教育の質を向上させる」ということで、やはりここでも、学校、家庭、地域の連携ということが非常に重要なキーワードになっているように思います。
 これは、例えば、私が関連したものでは、今年の6月に国会で成立した学校保健安全法という、学校保健法の一部改正によって来年の4月から施行される法律においても、盛んに各学校、家庭、地域の連携というようなことを、あるいは地域の医療機関とか、警察とか、そういったようなこととの連携というようなことが出てまいります。具体的に学校のみで担える部分というものではなくて、関連関係機関との連携を実際に進めていくということが、さまざまな場面で進められる必要があるだろうと思います。
 小学生と中学生ぐらいのことを想定しますと、地域が支える学校、地域にその学校の卒業生がいたり、学校を私たちが支えているという、そういった人々の力によって学校が守られているような姿であるとか、町で出会えば、地域の人々と教師や子どもが声をかけ合うような関係をつくると、そういったような地域での細かな実践の積み重ねというものの中で、具体的に社会全体の教育力を向上するということが生まれてくるんだと思います。
 それから、「家庭の教育力の向上」です。これも非常に重要なテーマであって、特に学校に上がるまでは幼稚園、保育所がありますけれども、人間の基礎がつくられるときに家庭でどのように教育がなされるか、また、学校へ上がってからも家庭の役割というのは、大きな役割があるわけです。なかなか実際に家庭の教育力の向上を図るために、ではどこからアプローチすればいいかというと、一つは、子育てをしている時期の親に、子どもが例えば幼稚園に行っているから、保護者として来る機会があるんでしょうといった、子どもを通じて子育てをしている時期の親の教育力を高めるようなアプローチがあるだろうと思います。
 ただ、よく言われることですけれども、こういったものはすべて自由参加でございますから、熱心な方は来てくださるんですけれども、実際にいろいろ、例えば虐待であるとか、リスクがある家庭の保護者の方は、なかなかそういった呼びかけのときには来ないというようなことがあります。
 そのほか、ここには具体的に、親と子の手づくりおやつ教室とか、親子で学ぶ昔の遊びとか、そういったようなものも、特に小学生ぐらいですと、こういったようなことを通じて子どもとともに親もいろいろ学び、子どもが育つということの意味を考える機会になるかと思います。
 そのほか、日本ではPTA活動がかなり盛んなところが多いですので、PTA活動とか、あるいは保護者向けの成人教育であるとか、学校活動へ保護者がボランティアとして支援していただくと、そういったような形があり得るのではないだろうかと思います。
 それから、地域の中の、同一地域の中の複数の学校とか保育所が連携すると、あるいは情報交換するというようなことも意味があります。この中に書かれているんですが、私の関係している領域では、各学校には学校保健委員会というのがあるわけですが、それを地域で合同し、地域学校保健委員会というものが提案されています。地域で、ある共通のテーマについて議論をするというようなことも大きな意味があるのではないだろうかと思います。
 それから、「人材育成に関する社会の要請に応える」というようなことが、この5年間に進める施策の中にありますけれども、この教育振興基本計画の特別部会でも、キャリア教育ということに関しては随分いろいろな議論がありました。それが、やはり子どもがいろいろ体験、社会体験というような意味も含めて、将来自分がどういう職業につき、どういう人間になるのかということを、そういった情報を得、あるいは動機づけを得るために、キャリア教育、これは企業の力も借りながら、どうあるべきかというような議論がさまざまございました。それを小学校段階からというような形で書いてございます。
 これは、家庭とか学校現場にどうしてそれが大事なのかということ、どうやって浸透させるかということは、一つまた大きな課題だと思いますし、学校では、やはり授業時間のことが非常に深刻でございますので、この時数をどうやって確保するかというようなことも、いろいろな関係とか調整が必要になってくると思います。
 これは、やはり意味のある、その成果が上がってこないと意味がないですので、形式的な体験活動になってしまったら意味がないのではないだろうかというふうに思います。
 子どもがやはり夢を抱くといいますか、将来の自分ということに対して夢を抱けるようになるように、そこに目標を設定することが大事だと思います。
 今の子どもたちの話を聞いていると、何か、何をやっているんだとか、自分には関係ないというような、自分という存在と社会のつながりというものの糸が切れてしまっているような発言がしばしば見られるので、そういった思いを打ち破って、何か夢が描けるようになれるといいと思います。
 やはりそれは一方的に教えるのでなくて、やはり参加と対話といいますか、実際に子どもたち自身もそこに主体的に加わるような設定が必要だろうと思います。
 それは、言うのは簡単なんですけれども、その準備をするには時間がかかるということだと思います。
 それから、もう一つは、やはり将来ということを考えるときに、子どもにとっては、大人が、身近な大人がモデルになるわけですけれども、それが果たして魅力的なモデルになっているだろうかということがあろうかと思います。
 その次は「いつでもどこでも学べる環境をつくる」ということに関して、これは、地域の図書館の充実ということがやっぱり大変重要であろうと思います。諸外国、特に欧米に比べて日本の図書館、まだまだやっぱり住民にとって身近で気軽に利用できる場所かどうかということで、さまざまだろうと思うんですね。あとは、やっぱり何か相談をしたときに、きちっと対応をしてくださる専門的な知識を持った図書館員が育成されているかどうだろうかということも気になるところであります。
 そのほか、いろいろな地域の公共施設が、住民にとって利用しやすい場所であるということが大事だろうと思いますし、スポーツ関係で言いますと、今年度から特定健診というのが始まって、メタボリック症候群が話題になっております。少なくとも週に1回か2回は汗を流すような運動を誰もがするようにするということが望ましいわけです。誰もがスポーツに気軽に親しめるような環境が身近な地域にあるということが大事です。仮にそういうものがあっても、動機づけされていなければやりませんから、実際に気軽に参加しようという、そういった動機づけがすべての年齢に対して行われる必要があろうかと思います。
 それから、この基本的な方向の2というのは、「個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる」ということで、これは、確かな学力であるとか規範意識、生命の尊重、他者への思いやりとか、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣、意欲、能力を育成すると、こんなことからなっております。
 「知識・技能や思考力・判断力・表現力、それから学習意欲等の『確かな学力』を確立する」ということは、これは、新しい学習指導要領を検討する中で、随分考えてきたことでありますので、新しい学習指導要領の学校現場で、どのように理解され、工夫されるようになるかということが大切です。このための理解を得るためのさまざまな努力といいますか、今年は多分そういったことに力を入れられ、いろんなところで講演会等があるんだと思いますが、実際に、学習指導要領の考え方が、学校の中で活用できるようにするというところまで持っていくのがこれからの一つの課題だと思っております。
 子どもたちが意欲を持って学び、家庭における反復学習、実践できるようにするということが大事だろうと思います。学校で幾らよい授業があったり学ぶ体験があっても、例えば、今調べてみると、高校生というのは、ほとんどうちへ帰って勉強していないというデータがいっぱい出てまいります。
 やはり家庭できちんと反復学習をするという習慣をつけるということが、小学生の時代からずっと積み重ねていくことが大事だろうと思います。現実には、試験の前だけに勉強するというような高校生、中学生、かなり多いようでございます。このあたり、どうやって切り込むべきかということがあろうかと思います。
 「規範意識を養い、豊かな心と健やかな体を育成する」ということで、いろいろな意味で道徳というのが今後ますます重要になるのではないかなと思っています。今年は、健康とか安全など、そういう立場の審議であるとか研究をして参りました。例えば健康問題ですと、学校で保健室に来る子どもたちのかなりは、体の訴えで来ても、実は心の問題があって来ているということがあります。友達の関係とか親子の関係とか教師との関係とかいろいろありますけれども、心にかかわる問題が健康上の問題のかなりを占めているということがあります。心の問題というのは、学校で教科ではありませんが、道徳がかかわってくるところであります。この中では、命の意味を考える、命を大切にする、自分がかけがえのない存在であるということがちゃんと理解できるようにすることが大事だと思います。
 外国では、命の教育や生命教育などがとりあげられています。例えば台湾では、生命教育が健康増進とは別に何か一つの柱として立てているようであります。命を大切にする教育というあたりが道徳と関連づけていけるといいのではないかと思います。
 それから、体力が低下しているということがあって、それを何とかしたいというのは、喫緊の課題です。体力は、ある意味で、生活習慣なり運動習慣なりの結果でございますので、日々のどういう暮らしをするかということの中に運動を位置づけてくることが大事なんだろうと思います。
 それから、「教員の資質の向上を図るため、一人一人の子どもに教員と向き合う環境をつくる」ということで、これは、学校教育法が改正されてから、そういった方向の努力がなされていると思います。私も附属の中等教育学校で校長をしていたときに感じたのは、現場の先生方は忙しくてとても余裕がない。本当に気の毒なくらいさまざまな業務で追われているということです。先生方はもう少し自信を持って伸び伸びと本来の教育に従事できるようにしてさしあげるのがよいだろうと思います。そのために、何をすればよいかということが課題となってくるわけです。
 5番目は「教育委員会の機能を強化」と「学校の組織運営体制」ということですね。そういった、これもいろいろ既にいろんなことがなされていると思うんですけれども、一つは、学校は閉じた系ではなくて、地域に開かれているということに意味があるのだと思います。ちょっと時間がなくなってまいりましたので、少し急ぎます。
 あと、「幼児期における教育」、これは、やはり幼児期は、先ほども申し上げました通り、愛着形成や、心のはぐくみなど、また基本的な生活習慣の形成、規範の形成、基礎体力の形成や、人生の基礎を築くとても大切な時期であり、家庭教育が担う部分は非常に大きいと思います。
 そのほか、例えば5歳児であれば、今、9割方の子どもは幼稚園・保育所合わせた集団の保育に入っております。集団保育の役割というものの意味もまた大きくなってきていると思います。
 「特別なニーズに対応した教育」ということで、これは、特別支援であるとか、外国人児童・生徒、それから海外子女教育というようなことです。スペシャルニーズということになりますが、スペシャルではあるんですけれども、誰にでもある、あるいはごく普通にあるという認識が必要であろうと思います。
 バリアフリーという言葉も出てくるのですが、単に環境に車椅子のためのスロープをつくったりということだけではなくて、心のバリアフリーといいますか、人間の内にあるバリアを取り除くということも必要です。それにはやはり多少経費もかかりますので、予算として計上することもあわせて考えていく必要があろうかと思っております。
 基本的な方向の3は、主に「教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える」ということでございますが、この若者の世代人口に、先ほど申しましたように大学入学者の割合が半数を超えてきたということに対応して、やはり大学教育、短大の教育の中身というものの充実ということが課題になっていると思います。
 それから、基本的な方向の4ですけれども、これは、子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備するというところです。学校の耐震化のことはもちろん大事なことですけれども、そのほか事故による障害とか犯罪被害の防止であるとか、自然災害に対応するというようなことがあります。学校保健安全法が来年の4月に施行されるということであり、この辺にかなり配慮された法律に変わってきております。セーフティープロモーションという、安全に関して前向きに考えていくという考え方が学問的には確立しつつあります。こういった考え方も大事かと思います。
 私なりに、まとめてみたのですが、これからの教育を考える上で留意することとしては、一つは、教育振興基本計画の中にもPlan-Do-Check-Actionということが書いてございますが、これを確実に計画的に行うということがまず大事だと思います。それから、学校教育を考えた場合、集団教育なのですが、その場合、集団としての意味と個人としての観点、2つに切りかえて考える必要があると思います。集団として平均で見るだけではなくて、やはり個体差ということを常に考えていく、その両方のバランスというものが大切です。また、時間軸から見ると、歴史とか伝統とか文化の継承とか発展とかそういうことが一つの機軸になってきましょうし、空間軸から見たら、まず身近な家族・家庭から、学校あるいは地域、地方、国家として、やがては世界あるいは宇宙というような、そういったところに広がる中で考えていく必要があろうかと思います。
 対象者、当事者、これは子どもたちであったり教師であったりする訳ですが、意欲をかき立てる教育というようなことがいかに成立するかということが大事なことではないでしょうか。このように私は思っております。
 以上です。
 どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

○司会(白井)

  衞藤先生、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、文部科学省生涯学習政策局長の清水より、教育振興基本計画を踏まえた行政のあり方についてご説明申し上げます。

○清水生涯学習政策局長

  文部科学省の生涯学習政策局長の清水でございます。本日は、教育改革セミナー in 名古屋に、本当、ようこそお越しいただきました。
 私の方からも時間をちょうだいいたしまして、教育振興基本計画のご説明をさせていただこうというふうに思っております。若干、そういう意味では、今、衞藤先生からお話あったのとダブると思いますし、私の方はどちらかと言えば、主として教育振興基本計画の全体像と同時に、それぞれは、現実にそれぞれ計画としてということは、政府の計画ですから、逆にそれぞれが具体的にどのような施策の裏づけのもとに進めていこうとしているかというところにどちらかと言えば焦点を置きたい、そのための資料も準備させていただく、こんなふうな感じでございます。
 そういう意味で、実際上、かなり資料を差し上げております。その資料を、実は限られた時間でありますので、資料と一つ一つの資料を説明して、今、衞藤先生の方からバックグラウンドも含めて、いわゆる子どもたちの現状と課題、あるいはそこで振興基本計画でポイントと思われることということをご説明いただいたわけですけれども、私はどちらかというと、限られた時間ですので、それぞれの振興基本計画の全体の構造の中に、各それぞれの施策が具体的にどんなこととして、どんなことが今考えられ進めようとしているか、そしてそのバックグラウンドとなるデータはどんなものである、そういうものを駆け足で紹介する、そんな形で進めることにならざるを得ないというふうに思っております。
 さて、そういう意味で、教育振興基本計画のこの資料を、実はお手元にあるかと思いますが、実はこの資料はこういうふうに開きます。そして、こういうふうに開くと、それぞれの基本的方向の柱と、それぞれの基本的方向についての具体的な取り組みの柱というのが見える構造になっています。
 実は、これをご覧いただきながら、ちょっとややこしいのですけれども、まずこの資料で、この資料をベースに、そして、データはこちらを大体どこを参照していただきたい、こんなふうな形でちょっとこの3種類の資料を行ったり来たりしながらご説明する、こんなふうな進め方になると思います。
 それでは、まず、最初のここの資料ですね。教育振興基本計画とはということで、先ほどご説明ありましたように、基本法に基づいて政府として初めて策定した、これは本当に初めてでございました、政府として、つまり、手続的に言えば文部科学省、文部科学大臣が決定したというだけではなくて、閣議にかけて、閣議決定というプロセスを経て、要するに総理のもとに各省大臣がそこで了解をするという構造であります。
 すなわち、それは、政府でありますけれども、政府挙げての計画と、こういうことになるわけでございます。
 それで、もう一つのポイントの部分は、先ほどご説明ありましたように、10年間を通じて目指すべき姿と、今後5年間に取り組むべき施策を総合的に計画いたしましたという特徴づけです。
 通常、基本計画というのはいろんな形、各省各分野の中でございます。
 そういう中で、通常は大体5年間で総合的、そういう政府としての基本計画という場合には5年間というものを一つの計画の期間として、例えば、ご案内のように科学技術基本計画がそうでありますけれども、5年サイクルで計画いたします。
 ただし、教育振興基本計画については、10年の姿のというのはあえて。ちょっとここの点だけ後でまたご説明しますので、保留いただければと思います。
 もう一つのポイントは、各地方公共団体で、それぞれその地域の実情に応じた教育の振興のための基本的な計画の策定を努めてくださいということをお願いした、こういうふうなことでございます。これは、基本法の17条2項、こういうことになるわけであります。
 さて、そういう中で、基本計画策定の経緯のお話を。これは、もう皆さんご案内のように、中央教育審議会から答申をいただいて、基本計画として策定、閣議での了解を得るまでに、随分実は時間がかかりました。このあたりのところについて、いろいろ報道等もございました。これも後で触れさせていただきます。次をご覧いただければと思います。
 これが、振興基本計画の今申し上げた構成ですね。基本的な現状と課題、そして10年間と5年間。10年間を目指す施策の姿と、それから5年間、いわゆる基本計画という中では、第3章の部分がいわゆる基本計画というもので言われるものの本体そのものであるというふうに考えます。要するに4章構成になっていると、こういう構造になっているということであります。
 したがいまして、まずそういう中で、今、なぜ10年間かという次の資料で、これ、今、衞藤先生からご説明ありましたわけですけれども、なぜ10年間を通じて目指すべき姿というのが、こういう考え方が必要になってくるかということでございます。これは私の理解でありますが、いわゆる教育振興基本計画について教育の分野が持つ計画のカバーするエリアは余りに広くて、逆に言えばそれをどういう形で収れんするかということが非常に難しい。そして、難しいと同時に、5年間の計画で何をどうどこまで達成するのか。つまり、計画の前にいろいろ議論ありましたけれども、やはり目指す姿、アウトカムとして出てくる、成果として出てくる姿というものを何らかの形でクリアにできないかと、こういう問題意識の中で、5年で本当にどこまでというのができるのというのが教わった。だから、10年間の姿をできるだけ集約した形で2本の柱にまとめた。中長期の姿というものを、教育という分野の性格にふさわしく中長期の姿を示したいという観点もありますし、もっとさまざまに多様に広がるものをもっと収れんさせた形の焦点をはっきりさせたい、こういうわけです。
 ここでポイントは、義務教育終了までというのと、それから、それ以後ということにはっきり区分した。教育基本法に義務教育の規定が設けられていたのと符節を合わせて、義務教育で果たすべきことは何かということを明確にして描きたい、こういうふうな問題意識だったと。
 実は、10年間を通じて目指すべき教育の姿、もう一つの問題、これはまさにいろんな投資の問題。教育振興基本計画の中で、実は投資について数値目標を掲げている基本計画というのは実は科学技術基本計画だけなのです。科学技術基本計画だけが数値目標を掲げている。これは、ただし、科学技術というのは、いわゆる文部科学省のみならず、経済産業省、国土交通省、農林水産省、ありとあらゆる分野にわたる科学技術の、というものの全体のそれらを合わせたさまざまな民間のあれも合わせた全体の投資総額、民間も合わせた科学技術の姿の中で、国としての投資目標というのを掲げて、それを数字で書いている。
 実は、教育振興基本計画は、当然、科学技術基本計画が唯一の例でありますけれども、そういうものを目指しているという思いがあるということであります。
 目指すべき教育投資の方向について、ここであれば。我が国の教育に対する公財政支出は、他の教育先進諸国と比較して低いというご指摘。そして、資源の乏しい我が国では、教育は最優先の政策課題であり、そういう意味で、教育の公財政支出は個人社会の発展の礎だと、礎となる未来への投資だと。いわば、国の形、あり方の形でもあるという認識。
 そして、上記の教育の姿の実現を目指し、OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ、必要な予算について財源を措置する、と。
 ここについて、バックデータとして、次の5ページ、6ページをご覧ください。その特徴が明らかになります。いわば教育全段階についてOECD平均で言えば5%、3.4%ということで、OECD加盟28カ国の中で低い状況。とりわけ、高等教育の段階の公財政の部分ではいわば一番低いという状況。
 次の資料を見ていただければ、そのOECD負担の割合で言えば、就学前教育と高等教育段階、額としてはともかくとして、それが実際上公私の負担割合ベースという形で、公財政支出と私費負担という関係で言えば、とりわけ高等教育は、非常に私費負担に依存している状況であると。下側のグラフを見ていただければ66.3%、OECD平均は26.9%という状況、こういうバックデータをもとにということなんでありますが、実は、ここのところで、ある部分で言えば、5.0%を上回る水準を目指す必要があるということを振興基本計画の中で書こうとする原案で、関係各省の中では非常にぶつかる。
 ただ、実は、ここの部分は、結果として、先ほど申し上げたような教育投資の状況を参考の一つとしつつという形にしてということであります。
 実は、先ほどなぜ10年間かということとの関係で言えば、理由が率直に教育投資の方向をできるだけ示したいというのは、中央教育審議会の大きな論争です。
 ところが、実はここのところでは大きな、先ほど申し上げたように、基本計画というのは、5年間の計画が普通、通常であり、5年間だということを申し上げました。5年以上では間延びがすると。
 ところが、実はここのところのお手元に差し上げている資料の39ページをご覧いただきたい。39ページでやれば、実は、今、我が国の経済財政状況は非常に厳しい状況にある。そういう意味で、歳出改革というのが進められていると。
 実は、教育振興基本計画は、20年度から5年間ですから、一番上のチャートにあるように24年度まで。20年度から24年度まで。
 ところが、一方で歳出改革、全体として、例えばいろんな大きなもの、特に高等教育の部分で言えば国立大学法人あるいは私学助成はマイナス1%ということで、歳出改革が進められ、一方で人件費改革も22年まで進める。いわゆるこれは行革法の議論ですね。児童生徒の減少に見合う数を上回る数の純減あるいはこの人件費を5年間で5%削減、これも実ははっきり言ってこういう状況。
 つまり、歳出改革で言えば、基本計画の5年間のうち4年間、あるいは人件費改革で言えば5年間のうち3年間、5年間のうち3年間とか4年間というのは、結構大半なんですね。大半がもう閣議決定、同じように基本計画が目指す閣議決定と同じレベルでの閣議決定、既にカサがある、ここの状況をどうするかという問題意識、課題意識というのはあります。ある意味で、歳出改革というものの期間終了後、我が国のそういう中で歳入改革が仮にどういう形で、歳入改革というのは税制改革ですね、そのあたりも含めて、我が国の歳入歳出構造が、財政の構造が変わるということも念頭に置きつつ、その期間後ということを政府として矛盾しないためにはそういうことを前提とすると、そういう観点。つまり、ですから、ある意味で、10年間というのは、まさに教育の特性あるいは10年間の中で教育の目指すものというのが非常に多様でありつつ、あるためにそこをどうやって具体的に収れんさせた形とするか。また、それを裏づける財政というものを少しでも幅があり、余地があるものとして、目指す目標を明記するためにはどうすればいいか。そういう問いの産物であったということをご理解いただけたかというふうに思っています。
 さて、それが、今、第2章、10年を目指すべき方向の話で、これから先ほど衞藤先生がお触れいただいた総合的かつ計画的に取り組む施策について、駆け足でスケッチしていきます。
 ですから、まず、先ほど冒頭申し上げましたようにこれを開いておいてください。開いておいて、そしてそこの中で今お手元に差し上げている資料と、今こちらの方は次のあれを開いてください。
 まず、基本方向1の「社会全体で教育の向上に取り組む」、ここはもうお話が済みました。そして、ここの中で、この基本方向の2つの方向の中で、実は4つの柱があります。次の方に移動してください。
 そこで、実はここのところは開いていただきたいというのはそういう意味なんですけれども、基本的方向1の中で4つの柱と。先ほど話もありましたように「学校・家庭・地域の連携・協力を強化し、社会全体の教育力を向上させます」、こういうふうな内容になるわけですけれども、まず、振興基本計画との関係で、例えば、今ご覧いただいているような学校、まさに子どもを取り巻く環境の大きな変化の中での教育力の低下、これに対するためにどうするか、そういう中で学校支援地域本部事業と放課後子ども教室推進事業というのをやっているわけであります。これに関連するバックデータは、別添の資料集の2ページ、3ページ、4ページをあわせて後でご覧いただければと思います。例えば、2ページは、大人から注意された経験や、子どもを育てる上で地域が果たすべき役割、地域の活動への大人の参加状況、そういうバックデータがあります。これは、後でご覧いただければと思います。
 学校支援地域本部あるいは放課後子ども教室というのは、学校支援地域本部であればまさに地域住民が学校の教育課程内の活動に対してボランティアとして教科内の教科活動に、あるいはさまざまな学芸的、スポーツ的、いろいろな形の授業にボランティアとして応援をいただこう、それによって地域の方々は、できるときにできることをできる人がという形で、まさに学校の教育を一つの地域の、学校の教育力を応援していただけると同時に、それを通じて地域のまさにきずな、あるいは地域の教育というのを固めていくという事業です。
 これは、20年度、今年から今スタートしているんですけれども、来年は3,600カ所に広げたいというふうに思っておりますし、これは目標としては中学校区単位ですので1万、全中学校区に展開するというのを念頭に置いてあれしております。
 今、これは非常に地域についての取り組みのさまになる。また、これは、放課後子ども教室推進事業は、むしろ学校の課程外、放課後や週末等に余裕教室等を活用しながらさまざまな活動、地域の方々の参画を得ながらさまざまな活動を行いましょう、こういうふうなことで、そういうことを通じて、家庭や地域に教育力ということに一つの取り組みをしていくということだと思います。次にいきます。
 「家庭の教育力の向上」の問題ということについて、先ほど衞藤先生からもお話も。要は、孤立しがちな親、あるいは無関心な親たちについてそれぞれの状況で、そういうさまざまな状況ある保護者に対してよりきめ細かな家庭教育支援というものができないか。要するに総合的な支援、むしろ積極的な支援というのを目指そうということでありますし、またもう一つは、子どもの基本的な生活習慣として、今年度までということで実施しているそういう成果を、プロジェクトの成果を広く普及していこう、こういう考え方、関連するデータとして、資料集の5ページ、6ページを参照いただければと。
 次のあれは「発達段階に応じたキャリア教育総合支援事業」ということで、これは、今、非常に注目されている。要は学校から社会へ、あるいは学校から職業への円滑な移行というものを、学校の今ニート、フリーターあるいは離職率、とりわけ例えば普通科、進路多様校と言われるところでのいわゆる離職の問題は非常に悩ましい。そういう中で、むしろキャリア教育、職業教育というものをどう支援していくか、これが、今、今年取り組んでいる事業でありますけれども、これは我が国のむしろ高等学校の段階、あるいは高等教育段階も通じたキャリア教育、職業教育のあり方ということを、はり基本的にその接続の問題を含めて見直していかなければならないなという問題意識を実は持っております。
 そういう意味で、今、省内で、まさにそのためにどういう、あるいは制度改革を含めて取り組むとしたらどのような制度改革が必要なのか、そのあたりも含めて今議論をしていると、こういうふうな状況であります。
 それから次のあれが「いつでもどこでも学べる環境の整備」をということで、いろんな事業、それぞれの、まさに地区市町村でいろいろ取り組まれている、誰もがあらゆる機会にあらゆる場所にというものを、それぞれまさに地域づくりの観点から、学習の観点からいろいろ取り組まれているものをどうやって国としての立場で応援していく、あるいはそういう新しいフレームを築いていくとか、そういう問題意識のもとに幾つかの事業を組み立てていくというふうなことであります。
 資料としては、資料7ページ、8ページを開けてご覧いただければと思います。中身についての説明は、いろんな資料をあとご覧いただければというふうに思います。
 さて、それからが今度、基本方向2であります。
 主として、初等中等教育にかかわるものであります。だから、基本方向2は、まさに確かな学力でありますとか規範意識、生命の尊重、思いやりでありますとか、あるいは生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣、意欲、能力を育成する、こういう話です。
 そこで、具体的にそれぞれの施策というのは、全体で6つの柱、6つの柱というのは、柱の全体像はここの中にありますから、ここをご覧いただければと思います。その6つの柱の枠組みの中で、いろんなあれをやろうとしているわけです。
 一つは学習指導要領であります。学習指導要領は、まず小中学校については本年3月に改訂し、そしてそれをどう円滑に実施するかという段階になる。そこでの共通の理解というのが 必要になる。それは、学校関係者だけが対象ではない。そういう意味では、保護者の方々も含めて説明会、あるいはインターネットを通じた趣旨、内容のご理解をいただくための取り組みというのが重要になってくるわけでありますし、次の資料を開けていただければ、まさに移行関係にどう、いわゆる算数、数学、理科の内容の、その移行をどういうふうに進めていくかという問題にもかかわる。そのために、補助教材の作成、配布というのが課題になるわけでありますけれども、この16日に整理した20年度補正予算に計上されて、今年中にすべての児童生徒、担任教師用に、教材を配布できるように準備を今進めております。次の資料を開けてみましょうか。
 もう一つは、学力にかかわって「全国的な学力調査の実施」であります。今年度、小学校6年生、中学校3年生の全員を対象に実施し、8月末に結果を提供・公表したわけですけれども、毎年度の実施に向けた準備を進めるときに、よりその調査の結果をどう有効に生かせるかという観点からの調査研究、あるいは課題改善に向けた取り組み、支援に関する経費というのが、今、私ども、予算で苦慮しているというところであります。このあたりにつきましては、基本方向2の(1)に対応しますし、関連データとしては、資料集の10、11ページを参照していただければと思います。ちょっとパンフレットとの対応状況を申し上げていなかったんですけれども、今から申し上げます。
 その次が「道徳教育の総合的推進」、これは、このパンフレットの基本方向2の(2)に対応します。道徳教育の総合的な施策の推進の経費として47億円ほど盛り込んでいるわけですけれども、道徳教育用の教材費補助事業として、小・中学校において道徳教育用教材の購入等を行う際に必要になる経費の補助ということで、予算をうまくまとめております。関連データとして、バックデータは12ページ、13ページ、14ページをご覧いただければと思っています。
 それからもう一つが、体力、運動能力あるいは運動習慣等の調査です。これは、パンフレットの基本的方向の2の(2)、「規範意識を養い、豊かな心と健やかな体を育成します」に対応しているところです。いわば子どもの体力の低下と、先ほど衞藤先生も触れられましたけれども、その全国的な子どもの体力の状況を把握、分析して、それを指導法の改善にどうつなげていくかということであります。
 20年度よりこの調査を実施しているわけでありますけれども、12月に全国都道府県の状況について公表して、来年1月に各学校に提供できるように現在分析作業を行っております。
 関連データとしては、資料の15ページをご覧いただければというふうに思っております。
 次が「豊かな人間性や社会性をはぐくむ体験活動の推進」であります。パンフレットで言えば、基本的方向2の(2)にやはり対応するわけでありますけれども、豊かな人間性、社会性をはぐくむという観点から、自然の中での長期体験活動、宿泊体験ですね、それから社会奉仕体験活動、そういうものの重要性を一つのモデル、モデルとなるさまざまな体験活動を実施する学校を指定して、成果を普及するという形の事業を組み立てています。20年度より、特に、文部科学省だけではなくて、農水省、総務省と3省連携によりまして、農山漁村での生活体験活動を推進する、そういう子ども農山漁村交流プロジェクトを実施しているということであります。
 次の資料は「教職員定数の改善等」であります。これは、パンフレットの基本的方向2、(3)、「教員が向き合う環境をつくります」というところに対応します。
 21年度の概算要求では、行革推進法の範囲内で、1,500名の教職員の定数改善を盛り込みました。また、充実という観点から退職教員あるいは経験豊かな社会人等の積極的な活用というためには、退職教員等外部人材活用事業を1万500人に拡充しというのが内容でありますし、もう一つは、学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備という観点から、授業時数の増等へのいわゆる先行実施、先行実施に関する授業時数増ですね、それに対応するために1万1,500人の非常勤講師の配置の経費を補助するというものです。
 それから、次の資料が「向き合う環境づくり」、同じ(3)のところでありますけれども、19年6月の免許法改正によって、平成21年から免許更新制が実施されます。本年度は、教員への周知、それから更新講習の施行という制度実施のための準備に取り組みますし、来年度以降の円滑な実施に向けたいわゆる講習開設費の補助という予算を今概算要求しているという状況であります。
 次が、基本的方向2の(5)、幼児期における教育の推進についてであります。幼稚園、保育所の枠組みを超えた総合的な支援策として、認定こども園幼保連携型移行・設置促進事業という予算を文部科学省と厚生労働省の連携によって進めるということで計上しております。具体的には、認定こども園に対する幼保の枠組みを超えた施設整備費、あるいは保育所機能、あるいは保育所の幼稚園機能、幼稚園型の保育所機能ですね、そういう事業費の助成でありますとか、連携型の認定こども園の移行促進を図るための設置促進、そういうふうな財政支援を内容として要求をしております。
 次が、22ページが「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」です。これは、パンフレットの2の(6)「特別なニーズに対応した教育を推進します」に対応するわけで、発達障害を含むすべての障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた指導、支援の実現という観点から、教員等の研修でありますとか外部専門家の巡回・派遣、あるいは乳幼児期から就労までの一貫した支援を行うモデル地域の指定という形で、学校の特別支援教育を総合的に推進するというのがその施策の内容のところに書いてございます。
 さて、続けては基本方向3です。高等教育の方であります。高等教育の基本的方向の3は、3つの大きな柱の中で、施策としては全体で6つの柱ということになります。
 資料の17ページにありますように、いわゆる大学・短大の進学率の推移の中で、まさに大学等の教育の質というものをどう担保していくかというのは実は大きな課題であり、これは我が国だけの話ではありません。グローバル化した、そういう国際的な通用性を持つ大学教育の質、まさにそれが我が国の大学の課題でもあると同時に、例えば今年1月にOECDの非公式教育大臣会合がお台場で開かれたときにOECDから提案があったように、学士課程のいわゆる学生という観念、感覚、むしろアウトカム、学生が何を得たか得なかったのかというものを測定しない、つまり、ここはいろんな大学関係者から議論はあったんですけれども、あるいは大臣の中でも国によっては大学団体が、例えばカナダの大臣のところに会議の最中に、絶対我々は反対であるというようなことだとかいろんなことがあるんですけれども、要は、高等教育の部分でも、学生のアウトカム、つまり学生が何を得たか得なかったか、得られたのか得られなかったのか、それの測定をなくして教育体制あるいは教育機関の側がこうやってまずいからこういうすばらしいことをしなさいということは、それとは、学生の側とは違う、ということであります。
 高等教育機関、あるいは国ごとの制度の多様性ということを前提としつつ、その分野ごとにその学習で得たものを成果するためのいわゆるテスト、これはPISAとは全く違った観点でありますけれども、問題意識としてはかなり。
 PISAが15歳のあれを対象として、各国の、各国ではほぼ義務教育の段階ですから、それが、調査することによって、まさにその国の教育施策における義務教育段階における、まさにそれの成果というものをお互いに比較しながら、それぞれの教育施策、教育政策に反映することを目標としているのに対して、高等教育の多様性という観点から、しかし、大勢を占めて皆さんの合意を得たわけでありますけれども、それはやはり機関の側ではなくて、学生が何を得たか得ないかというものを高等教育の質を担保していく場合には避けて通れない。したがって、そういういわゆる試験、テストというものを開発していこうと。そして、それは、まさにコンピテンシーというか能力、批判的にどれだけ物事を分析でき、それを考えることができ、そしてそれを表現することができ、果てはコンピテンシーという、そういう枠の中にあって、しかも分野別に考えていこうと。
 これを、来年2009年までに試行を終えて、2010年から本格的に実施していくということなどが基本的に合意された、今、そういうふうな状況にあると。
 一方で、もう一つは、高等教育機関の中で大学は、どんどん今一方で18歳人口は減っている中で、大学の数は増加している。これは主に、短期大学や専修学校からの転換ということになりますけれども、非常にそれぞれの質あるいは目指すところというものが多様になりつつあるというもの、どんなふうに対応していくかというのが大きな課題となっておりますし、それがまさに学習成果として共通に求められる能力であると同時に、多様の中で国際的にも通用する存在感を備える教育の拠点、研究の拠点、教育研究拠点を各分野でどう形成するのか。あるいは、地域とのかかわりどうあるのか。今、高等教育はそういう意味で、新しい高等教育のあり方について、つい最近、1カ月前ですけれども、中教審の諮問が行われております。
 これからのある意味で、まさにそういう全体として、アウトカムも含めたいわゆる質の保証と。質の保証のために設置の基準のあり方、認可のあり方あるいは評価のあり方、そしてそれは当然財政支援の問題に連動せざるを得ないでしょう。
 まさに、そういう中で役割機能という分化、全体の18歳人口の減という中で、役割機能の分化というものをどういうふうな形で考え、それについて支援のあり方をどうしたらいいか、そういう問題意識。要は、次の資料を見ていただければ、それが「大学教育の充実と大学の機能別分化」と、この資料の中にあらわれてくるような、それぞれの現状課題と、それぞれの方向性と、具体のそれぞれの取り組み、こういうふうになるわけです。
 次のページを開けていただければ、まさにそういう中で、教育力の向上という観点から、まさにパンフレットで言えば3の(1)に対応するわけでありますけれども、優れた取り組みを支援するためのプログラムというものを考えましょうと。
 次のページを開けていただければ、まさに世界的な拠点となり得るような大学を形成し、育て、大学院教育を抜本的にどう評価していくかということについての、一つの施策の表れであるわけであります。
 それから、次のあれで見ていただければ、大学が、当然そういう中で言えば、今、留学生という市場をめぐって各国が、とりわけイギリス、オーストラリアが激しいですね。むしろ外国の留学生をいかに高等教育の中で獲得できるか。特に、優れた留学生を獲得できるかできないか。韓国も最近その課題に取り組み始めたわけでありますけれども、それをどうやって進めていくかということで、要は30万人計画と言っていますけれども、10万人を超えたばかりでありまして、ポイントは質という問題でございます。
 優れた留学生、優れた質を有する留学生を分野別あるいは地域別のあり方も含めて、どう戦略的に大学が、我が国が獲得できるか。そのために何をすべきかとか、これが一つの大きな進める柱になっているわけであります。
 留学生の割合については、資料の21を参照してください。
 それからもう一つは、ちょっと時間の関係で駆け足にもっとなるんですが、各大学が、それぞれ地域における大学が、いわゆるそれぞれ、今、特徴で起きていることは、それぞれの大学がどんどんある程度優位に、あるいわゆる一つの地位を確立した大学が大きくなると同時に、一方で地方の大学、特に私立を中心に非常に小規模あるいは定員割れ等の事態がある。
 一方で、そういう中で新しいチャレンジというものが、限られた数の分野、限られた教員数、限られた施設・設備、なかなかいわば差別化できない、あるいは打って出れないという悩みを抱えているのに対して、戦略的にそれぞれが連携する、もう国公私という区分を超えた連携というものを支援し、そういう支援して、そういう中で言えば、当然そこの中で、ご自分のあれの中で再編を選ぶ道もあるだろうというふうに思っておりますけれども、そういうことを支援しようというあれであります。
 次のあれが、次の資料をめくると、また、今、現実に課題となっている医師不足対策に対してどう対応していくかということもある。これは、パンフレットでは(4)に、連携の、地域振興のための取り組みに対応します。
 そして、教育研究を支える基盤ということで、次のページを開けていただければ、施設の緊急整備5か年計画というのが30ページにあります。
 さて、今まで、基本方向3、主に高等教育の部分をご紹介しました。
 基本的方向4ですが、これは、駆け足で行きます。
 次の資料、これがまさに「安全・安心」とまさに「質の高い教育環境」ということでありますけれども、次の資料をめくっていただいて、耐震化の取り組みであります。
 今回の補正予算によって、大規模地震による倒壊等の危険性の高い公立小中学校の施設整備については、完了時期を1年前倒しすることを目指すような形ができます。
 ただ、これは、特に地方公共団体の補助金でありますから、負担の問題があります。地方、いわゆる財政の中で、いかに市町村がそれに取り組んでいただけるかというのは、ある意味では補助率のかさ上げをしたとしても、なかなか課題はあるわけであります。
 ぜひ、そういう意味での地方公共団体へのご理解というのは、一番財政面も含めてというのは、まさにそのためには加速するための前提条件ということになるわけです。
 次の資料が「子ども安心プロジェクト」ということで、学校内あるいは通学路での安全・安心に対する対応としてお願いするものです。これは、基本的方向4の(1)に対応するものであります。
 次が学校の情報化、質の高い教育を支える環境ということで、まさにICT教育、これは実は政府としての戦略はあるんですが、日本のICTあるいは教員の方々のICT活用能力は非常に見劣りが国際的に見てもしているという状況があります。あと3年間で一定の目標を政府として達成しなければならないのですが、実は、ここのところなかなか現実には進捗していないというのが率直な状況であり、これ、どういうふうにしていくかというのは、私ども、非常に課題意識を持っていることでありますし、次の資料を開けていただければ、まさに「私学の支援」というのが、総合的な支援として、どのように行っていくかというのが重要でありますし、また、教育の機会均等、基本的方向4の(4)にありますように、「教育の機会均等」をどうやって確保していくかということというのは、奨学金あるいは就学、幼稚園の教育、幼児教育の問題も関係してきますけれども、そこのところがかかわりを持っているのであります。
 さて、少し時間が迫ってまいりました。次のあれで。
 今まで大体基本的方向の1、2、3、4に沿ってその施策の内容を説明してきたわけでありますけれども、いずれにしても、教育のシステムは、国、都道府県、市町村の役割分担の問題であります。次の資料を開けていただければ。
 それぞれがその役割を踏まえて、その次の資料、それぞれ財政上の措置を講じていくというのは非常に重要な問題であります。
 国の財政状況も厳しいし、地方の財政状況も非常に厳しいということをお聞きします。悩みもお聞きします。ある意味で言えば、効果的な施策を、そういう中でどう効率化を図りながら進めるのかということがポイントになるというふうなことであります。
 そこで、まさにそういう意味で、国と地方の連携というのは、次の資料を開けてその次、そういう中で、教育関係経費というのは、いわば76%地方の教育関連経費に依存している、こういうふうな状況で、非常に今厳しい状況になっているわけでありますけれども、やっぱりそこの中での努力というのをお互いにしていかなければならない、こういうことだというふうに思っておりますし、まさに一方で、なかなかここはジレンマで、厳しい地方の財政状況の中では、いわば分権という中で教育、さまざまな交付税の関係で、いわゆる補助金を廃止し、地方独自の財源をという話は、実は、それは必ずしも教材費にみられるように地方の教育予算になかなか、いわば。そこは、地方自治体の、まさにとらえようとする施策、それこそが施策なんだというもちろん判断があり得るでしょうけれども、そこに実は悩みがありますし、教育の重点的な対応に向けての努力というの、あと理解、あるいは共通理解というのが非常に重要になるということであります。
 そこで、次のあれを開けていただきたいのですが、このパンフレットの中でも、さっき衞藤先生からも、PDCAサイクルでありますとか、国民の意見というのは早く反映ということも提案して、私ども、今どういうことを考えているかということで、あと数分いただきますけれども、基本計画はこういう計画、したがって、一方で具体的にまず財政の問題で言えば、私どもこれからやっていかなければならないことは、施策の大きな柱というものを一つ一つ中長期的な観点から積み上げながら、その増を毎年努力しつつ、一方で、OECDの部分は非常に参考にはなるんですけれども、実は、それは、国際的な規格でこうなっているからこうなってる、国によって違うよね、少子化が進んでいる国もあればそうでないのも、大きい政府と小さい政府があるよねとか、いろんな観点が、いろんな議論があり得ます。そういう意味では決め手にはならない。大事なのは、まさにコンセンサスを得ることと同時に大きな施策の柱というもので毎年度積み上げていく。
 そして、そのために、それを、大きな中長期の計画とするためには、何をどう取り組んでいくかということについて。
 私ども、今、アクションプランをつくろうというふうに思っています。毎年度毎年度、どうしていこうかということ。
 そして、毎年度毎年度どうしていくかということは、今、教育の世界で言えば、実は、毎年度これだけの、私、今、申し上げた施策よりもおわかりいただけたと思う、今、それの教育の部分でのアウトカムをどうやってはかるかということについては、なかなか非常に教育の性格上難しい。それは、まさに私ども同じ思いであります。
 しかしながら、理解を得る、理解を得るための努力というものはしなければ理解は得られないという考え方。そういう意味で、私どもは、今、アクションプランを毎年度策定すると同時に、中教審に教育振興基本計画部会、これを設けて、毎年度毎年度それぞれ進めてきたことが、どういうふうないわば成果として、こういうプロジェクトにこれだけ取り組みましたじゃなくて、それが成果として子どもたちにどういうふうに返ってくるのか。本当、難しいあれですけれども、そういうことも含めて、そういうところの、いわば見えるような形で具体的にそれぞれ取り組んでいることのいわば結果、そしてその結果をもとにさらにレビューすると。これがどういうことになるか、それは、実は、本当、これは決め手となる指標はあり得ません。ないと思う。だけども、参考となる、そういう指標はあります。参考となる指標というものを、いろんな角度から私ども、それぞれ、学校の現場で先生方がおやりになっているように、そういうものを見ながら、しかしそういう中で改善を図り、そういうサイクルを考えて、それが、中長期的な次の振興基本計画の策定に結びついて、こういうふうなサイクルをつくりたいと思っております。
 いわば、教育振興基本計画は初めてつくられた。初めてつくられた計画であるということは、やはり次の計画は、当然どうするのかという問題がある。振興基本計画は進化する計画でなければならない。だけど、それは、なかなか進化というのは難しい課題であることも承知していますし、だけれどもそれはやらなければならない。こういう関係にあるのではというふうに私ども今理解しております。こういうふうな状況でございます。
 ちょっとお時間を四、五分超過いたしました。申しわけございません。
 ちょっと平板な説明になりましたけれども、そういうことでございますから、どうぞよろしくご理解をいただければと思います。

○司会(白井)

  それでは、これより30分程度質疑応答の時間をとらせていただきたいと思います。
 本日ご質問にお答えさせていただきますのは、先ほどご講演いただいた衞藤先生、生涯学習政策局長の清水に加えまして、初等中等教育局教育制度改革室長の佐藤、高等教育局高等教育企画課企画官の榎本でございます。
 なお、限られた時間でございますので、できる限り多くの方にご発言いただけますよう、発言は簡潔に、また、本日の講演内容に関する質問にしていただくようにお願い申し上げます。
 それでは、ご意見、ご質問等おありの方、挙手をお願いいたします。
 なお、指名をされた場合には、氏名をご発表いただくようにお願いいたします。
 いかがでございましょうか。はい、どうぞ。

○参加者

  すみません。ちょっと外れちゃうかわかりませんが、ご質問ということで。免許更新制で、私、小学校の教員なんですが、そのことが一番気になっております。
 一番バッターということで、愛教大で県の方や、練習ということで、私は外れてしまったわけですが、今、あちこちインターネットで答えて、勤務時間2倍ぐらいになってしまっていて、寝るのを削ってインターネットでやっているわけですが、そういう状態ということ自体がとても大変というか。
 一つ思うことは、愛知県の大学で枠組みを決めて無理なくやれないのかということですね。それが、文科省が全部やるわけにはいけないわけですから、教育委員会に委託して、枠組みを決めて、あなたの市はここの大学とか、そういうふうにやれないのかなと。
 私は、八王子セミナーと、それから人の2倍とっているわけですが、合格する保証がないから、ずるい話がどんどんとってしまう。普通の30時間でいいのを、今、60時間を一応予約しましたが、とれなければどんどんとるだろうと。北海道でも鹿児島でも行こうと思っていますが、その辺の、申し込んでいるわけですが。
 だから、とっていく人が早い者勝ちで、結果が遅いとどんどんとっていくしかない、自分の首がなくなるわけですから。その辺のところを、教員の立場として、人と仲よくできないですよね、自分の情報を流せば、自分の授業をとらせてもらえない確率が高まるわけですから。
 その辺で、教員同士が共通理解を図れて、みんな仲よく子どもさんに全力投球できるように方向づけを、文科省の方、今おられてとても私ありがたいと思っておりますが、子どもさんに全力投球をできるような枠組み、見方を、方向づけをしていただきたいということで。
 すみません、長くなりました。

○佐藤(初等中等教育局初等中等教育企画課)

  ご質問、ありがとうございます。
 今の件でございますけれども、免許更新制の資料として、今日お配りさせて、先ほど清水局長の方からご説明した資料の中に20ページにちょっと更新制の資料が入っていますので、そこに少しプログラムの話とか若干ございますが、そちらもご参照いただければと思いますが、今のご指摘は、できるだけ免許更新に当たってのご負担といったものを軽減していくと。できるだけ、当然子どもと向き合う時間というのを確保していくためにも、当然そういったことは必要だというのはよくわかります。
 やり方に当たって、できるだけその更新をするのは、当然ご地元の大学とかいう教育機関がそういったプログラムを使いながら、地元でとっていただけるようなやり方というのは、これは、当然設計の中の基本にはなっているのですが、どういう形で、どういうプログラムを組むかということを国もある程度は決めていますけれども、個別具体の授業の内容とかやり方とか、そこまでは一律に国でまだ、一定のラインはお示しはしていますけれども、お任せしているところが当然ございます。
 もしもそういうことによって何か弊害のようなものが生じていて、今のようなご指摘があるのであれば、そこはちょっと、まさにそのために今年予備、来年4月から本格的なスタートでございますので、今年そういったいろいろその実施に当たっての課題のようなものがあるのかどうかということを検証していこうということで、この1年、いろんな地域で予備的なことをやらせていただいています。そういった情報もいただきながら、実際の実施に当たって十分見直しを、もし当初計画の中で必要があるのであればやっていく必要があるかなと思ってございますので、今のようなお声も、むしろこうやってお聞きできましたので、担当課の方に伝えてまいりたいと思います。ありがとうございます。

○司会(白井)

  よろしゅうございますか。
 ほかにご意見、ご質問等ございますでしょうか。後ろの方。

○参加者

  岐阜県の者です。
 衞藤先生、清水さん、本当に短時間に大変多くのことを語られて、大変だったと思います。
 質問といいますか、今、ずっと清水さんが説明された資料の9ページですが、家庭教育の教育力の向上という点ですが、その中の文言に、「子育て経験者」、その後に「民生委員」とありますが、今回の場合は、これは民生委員ではなくて児童委員というのが適切ではないかというふうに思います。
 私、主任児童委員を10年以上やっていまして、ここでは児童委員が適切ではないかということを思っております。
 それから、あと、特別に配慮を要する子どもさんの支援に関してですけれども、ここのあたりで児童虐待とか発達障害ですね、いろんな社会背景が考えられるわけなんですけれども、そういった部分に関して、もう少し厚労省等と横の連携がどのように図られていくのかというようなこと、そして、現状、私がいつも感じているのは、いわゆる発達にかかわるところの小児科の専門委員、また専門医療機関が非常に少のうございます。
 この東海地区では、愛知県に1カ所、それから三重県に1カ所、岐阜県にはありません。そういう状態がありますので、ぜひこのプランを進めると同時に、医師会等々専門家による判定というものを現場では非常に欲しております。ですので、これ1ページで終わらず、さらに広げていただけるとありがたいということと、それから、幼保でいろんな子育て、いろいろな個人情報にもかかわることなんですけれども、子育ての間、幼児教育の間にいろいろとスペシャルニーズに応じたプログラムを組むわけなんですけれども、そのことの情報を小学校の方にどのように伝えていくのかということで苦労しておりました。
 今年度から、地元の教育委員さんの方でいろいろとコーディネートしていただいて、情報が徐々にではございますが、流れるようにはなってきております。
 そういった点で、地域はどういう状態にあるのかなということと同時に、この個人情報ともに守秘義務が課せられているもの同士が、守秘義務があるということで情報の開示ができないという、そういった部分でのラインを早く整理していただけると、さらに進めやすいんじゃないかなということを考えております。
 まだまだほかにもありますが、これぐらいにしておきます。

○清水生涯学習政策局長

  では、私の方から、少し今お尋ねのあったことについて、あと、何か補足してもらえれば。
 まず、おっしゃるように、それぞれの地域で、例えば、今ご指摘の例に挙げられました、これ、予算事業、モデル事業なんですね。私ども、そういう意味でこの予算モデル事業というもののこのコンセプト、例えば家庭教育支援の基盤形成でありますとか、放課後子ども教室の学童あれと、いろんな形で、地域にあってはいろんな形の連携は当然必要となるし、連携が一番必要だし、連携をしてもらわないと困るというのが私どもの基本的なスタンスです。
 例えば、そういう意味で言えば、あくまでこのいろんな支援チームは、それぞれの例示であります。いわゆる地域で、それぞれで最も適切ないろんなアプローチを可能にするような方で支援を組んでもらい、こういうことが一つのポイントであります。
 ただ、例えば今のところで言えば、実際上、この家庭教育支援という問題は、例えば個別に虐待の問題とかいろんなそれぞれのニーズ、特別支援教育にもかかわる場合もあるかもしれませんし、あるいは児童虐待とかあるいはDV、ドメスティックバイオレンスの問題、いろんなところで、それぞれがそれぞれのある意味で専門性という部分と同時にそれらがどう連携していくか、連携の必要性はそれぞれの地域では皆さん非常に認識しておられる。いわばそれができない状況、できない事柄って何なのか、私どもそれは一つ一つ取り除いていかなければならないんだろうと思っています。例えば放課後子ども教室みたいなあれで言えば、まさに厚労省さんと一緒になってお互いに全体の調整の窓口をつくろうよとかやっているのですが、いかんせん、予算の組み立ての違いだけは、ここは何ともならんという部分がありまして、まだそれぞれの事業の目的、機能の部分での違いという部分で、できるだけバリアをなくすということが大事だろうと思っていますが、いろいろ課題はありますけれども、方向性としては同じような認識だと思う。
 ただ、その場合に問題なのは、まさに個人情報の問題ですね。実はこれ、今、内閣、実はそこの中で自立支援、特に総理が若者自立支援というものをもう少し考えていくたびに、いわばそこのところの各市町村あるいは都道府県における連携の問題、情報の共有という問題、本当に情報が個人情報保護法との関係で伝わらない、なかなか共有できないというのをどうやって取り組もうかという。そこで、場合によっては新規立法の可能性も含めて、その窓口あるいは情報の共有で何かできないかということ、今、関係省庁の会議が始まっているというのが率直なところです。
 この問題について、私もいろんな意味で別な場面では高等学校の中退の問題とか、あるいはそこにおけるまさに中退とニート、フリーターとその後の就労の問題とか、いろんなある部分で連携の課題があるということは認識しておりますので、ちょっとそこのあたりについて一つ一つ解きほぐしていかなければならないのかなと、このように思っております。

○佐藤(初等中等教育局初等中等教育企画課)

  ご質問ありがとうございます。
 今、法令上の話を局長の方から少しご説明させていただきましたけれども、まさに幼保の例えば連携のお話、それから幼保に限らずその連携をどういうふうにしていくか、例えば小中の間、例えば小学校の小1プロブレムの問題、それから中学校に上がって生徒指導が一気に課題がふえてくるのが中1ギャップの問題、こういったものを克服する手段として、やっぱり連携の問題というのが非常に我々の大きい課題だと思っています。
 そのときに、おっしゃるとおりで、その情報をどういうふうに共有していくかと、関係者の間で。個人情報という壁はありますけれども。
 ですが、例えば生徒指導上の問題であれば、かなり従前、警察の方との連携というのは、学校組織として非常になかなかとりづらいところがありましたけれども、最近のネットいじめの問題なんか、先ほど衞藤先生のお話にもちょっと出ていましたけれども、ああいった問題を解決するには、やはりそれぞれの課題を関係者間が常に組織化して、警察の方に入っていただく組織は学警連という組織、今、大分機能している地域もございます。そういったところがネットいじめのことをチェックしていこうというようなことで動き出しているところもありますが、そういったところも個人情報の取り扱いについては、大変これはセンシティブな問題ですけれども、ふだんから顔の見える関係をつくっていくことによって、情報の共有化というのはかなり克服できているところもあります。
 ただ、一方で、先ほど局長が申し上げたように、法令上の壁をきちんと越えなければいけないという要請も一方でございますから、そこは同時並行で必要なのですが、ただ、かなりそういった部分の関係というのは、小中、中高、そして学校だけでなくて、いろんな関係機関との連携というところも大分進んではきていると思います。
 ですから、そういった面を両面からこれ行政としても支援していったりバックアップしたり、もしくはまたこういう取り組みをしてこういう成功事例がありますよというようなことの情報の共有化、こういったものを進めていきたいというふうに思ってございます。

○衞藤隆氏

  発達障害で専門医療機関が少ないということに関して、これはなかなかすぐにそういった専門医を養成するというのは難しいわけなんですけれども、恐らくこのことにかかわるのは小児科医と精神科医だと思います。日本小児科学会の会員、約1万7,000人ほどで、その中で、さらに精神とか神経を専門とする人はさらに少ないわけですね。それから、多分各地域に、どこにどういう専門医がいるのかというようなことが、少なくとも情報としてちゃんと把握できているような仕組みがまだできていないと思います。厚生労働科学研究の研究班の中で、日本子ども家庭総合研究所所長の柳澤正義先生を班長とする班が今、多分、その辺のことを少し検討しているように聞いております。
 それから、あとは、日本小児科医会という開業医が主体の会があるんですけれども、そこでもう10年以上、子どもの心の診療医の講習会を行っています。1年間に10回ぐらい講習を受けていただいて、子どもの心の診療医という看板を下げるためのトレーニングをしていただいています。地域にそういった資源がどこにどのようにあるのかというのがもう少し関係者に見えるようにしていくということが必要かと思っております。

○司会(白井)

  よろしゅうございますか。
 ほかにご意見ありますか。はい。

○参加者

  愛知県の者です。
 清水局長様のパワーポイントの24ページのところに「大学教育の充実と大学の機能別分化」というタイトルなんですが、大学教育の充実というのはこの内容を見るとよくわかるのですが、大学の機能別分化というのはどういう意味なんでしょうか。
 ここの中で見ると、例えば分野別とか形態別の教育活動とか、そういうふうなことは書いてあるのですが、機能別分化という、具体的にどういうふうな意味なのかよくわかりませんので教えていただきたいと思います。

○清水生涯学習政策局長

  実は、大学の機能別分化というのには、平成17年に中教審の将来の大学像ということで例示がされております。例示の、大体7つぐらいあったかと思います。要するに、世界的な教育研究拠点であるとか、生涯学習の拠点とか、幾つかの機能の例示がしておりますし、それは、担当がせっかく来ていますのでちょっと後で触れさせていただきたいというふうに思っております。
 要は、だから、すべての大学が世界で研究のあれでトップであれば、それは我々にとってこんな幸せなことはないわけです。そうは現実にはいかないという現実の中で、例えば教育研究拠点で世界的なレベル、国内的なレベル、地域的なという拠点もありましょうし、人材育成の目的という観点から、むしろ研究者養成、いわば比重の問題、あるいは高度職業士に、あるいはむしろそういう専門的な職業士にという人材という教育機能にどちらかと言えば特化した形もありましょうし、いろんな、あるいは地域とのかかわり方の部分で、それぞれの傾向性というのが既にもう分化ある程度しつつある。そういう現実の中で、もっともっと大学は組織としてある以上は、組織の教育戦略、組織の研究戦略のもとに、いわゆる自分たちの方向性というものを組織として、プログラムとしてつくっていかなければならない。そして、自分のまさにそういうそこから初めて自分たちのミッションと、それに基づくいわば次に目指すべきものというのはよりクリアになってくる。要は、緩やかに教員、大学の先生たちが集まって、何か分野ごとでやっているよということじゃなく、組織としての大学である以上は、組織戦略を当然の前提とし、そしてそこの中での目指すべきものもあるだろうと、こういう、あと結果としてそうなったのも含めて、そういうことだろうというふうに私は理解しております。

○榎本(高等教育局高等教育企画課)

  どうもありがとうございます。
 大学のあり方は、昨今非常に社会的にも関心事項になっております。進学率が大変伸びていて、現在大学と短大で進学率55%です。
 そういう状況の中で、学生も多様化し、また、それぞれ地域におけるいろいろな教育ニーズもある中で、全国の大学がそれぞれ強みを生かして、その強みをさらに伸ばしていく、そういった仕掛けが必要であるなと思っております。
 ただ、これは大学をいわばレッテル張りするようなものというふうには念頭に置いておりません。それぞれの大学が、自分たちの置かれている状況の中で、どういったところに力を注いでいくか。教養教育、あるいは専門的な教育、さらには世界トップレベルのいろんな研究、様々な要請がある中、また産業界との連携等の要請がある中、どこに強みを見出し伸ばしていくかということについて、各大学でぜひいろいろな検討してほしいという思いを持っております。
 中央教育審議会でも、つい最近、昨日なのでございますけれども、学士課程教育の構築という答申案をまとめたところでございまして、その中でも、大学が、それぞれうちの大学は何に強みを見出し何を伸ばしていくのか、そこをしっかり自ら考えていくということが必要であるという前提のもとの議論が行われたところでございます。
 ですので、ぜひこれから大学、いろんな形で地域で発展していくことを期待しているところであります。

○司会(白井)

  残された時間もあとわずかとなってきましたが、ご意見、ご質問等おありの方いらっしゃるでしょうか。
 はい、じゃ、後ろの列の方。

○参加者

  すみません、時間の押しているところで。
 名古屋の者です。先ほどの清水局長のご説明の中の20ページ目の免許状更新講習のことで、もう少し細かいところを伺いたいのですけれども、平成21年度の要求額が46億円に上っているかと思います。我々、聞いているところでは、30時間の講習で、1人当たり講習費用が3万円と。該当するのが10万人と見て30億というような素人の計算をするんですけれども、もしこの概算要求が通れば、大学にそれが補助金としておりて、大学がいわゆる受講者から集めようとしている受講料というのが減額あるいは無料になるという可能性もあるやに伺っているのですが、その辺のあたりはいかがでしょうか。
 現場には、いろいろこの制度に対する不満や不信や、いろいろな問題点の指摘があって、非常に不安感が強いんです。
 先ほどの先生も言われていましたけれども、やはり教員の足元が揺さぶられていて、いろいろなほかの施策も自分の身分が危ないとなれば、いろいろまじめに取り組むものも、何を優先するかという部分で、非常に混乱をきわめるかと思うんですね。
 そういったところを配慮したご返答をいただけたらと思います。

○佐藤(初等中等教育局初等中等教育企画課)

  ご質問ありがとうございます。
 更新制の話というのは、今の受講料の問題というのも大変これ大きな話でございますし、それ以前に、やはり先ほど来お話がありますように、そもそもこういったことを通じてどういうことを目指しているのかということをしっかり先生方、それから教育委員会の関係者の方々にご理解をいただいていくということが絶対に必要だなということを我々も感じております。
 ですから、本格実施の前に、今年からこういった予備的なことを実施して、いろんなお声を拾い上げていくということも、そういう意味でもやらせていただいているところなんですけれども、先ほどの予算の関係で、実際、概算要求の結果、どういう形で予算が、我々の方で政府予算案がつくられまして、国会の方でその予算案が成立して予算となったときに、その金額によってどういうやり方、どういう実施方法になるかというのは、またちょっと流動的なところはございますが、今のご質問いただいた趣旨から申し上げれば、その受講料については、できるだけご負担を軽減していくというようなやり方で考えているところでございます。
 ただ、その金額、最終的には予算額によってそこは決まるところがありますので、今、明確にご負担がどのくらいになるかと、全く無料になるかどうかということを含めて、ちょっとそこはまた、我々の方でシミュレーションが十分まだできていない状況でございますので、そういったものは、しっかり進捗状況に合わせて、現場の先生方におわかりいただけるように説明責任を果たしていきたいというふうに思ってございます。

○司会(白井)

  よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、定刻を過ぎましたので、本日の教育改革セミナーは以上で終了とさせていただきたいと思います。
 なお、本日ご発表いただけなかった意見等、もしおありでしたら、アンケート用紙にご記入いただくか、もしくは私どもあてにメール、ファクス等でお送りいただければと思います。
 アンケート用紙の回収の方をしておりますので、アンケートのご記入へのご協力もどうぞお願いいたします。
 それでは、以上をもちまして、教育改革セミナー in 名古屋、終了させていただきます。
 本日はどうもご足労いただきましてありがとうございました。(拍手)

※セミナー開催にあたってのお願い・事務的な説明については、一部省略しています。

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