教育改革セミナー in 札幌

1.日時

平成20年11月18日(火曜日)17時半~19時半

2.場所

札幌市男女共同参画センター
(札幌市北区北8条西3丁目札幌エルプラザ内1階)

3.出席者

文部科学省生涯学習政策官 惣脇 宏
中央教育審議会委員 無藤 隆

4.議事録

○司会(寺門)

 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、教育改革セミナーin 札幌を開催いたします。
 本日は、ご多忙のところご参加くださいまして、まことにありがとうございます。
 申しおくれましたが、私、本日の司会を務めさせていただきます文部科学省生涯学習政策局教育改革推進室長をしてございます寺門と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 当省では、教育改革に関する広報のために、昨年度よりこのセミナーを実施しております。本年度につきましては、この4月に閣議決定をされました教育振興基本計画をテーマに、全国7会場で開催しておりまして、本日の札幌をもちまして6回目のセミナー開催と相なります。
 本日のプログラムにつきましては、先ほどこの開会前に申し上げましたとおり、前半に、中教審の委員でいらっしゃいます無藤隆先生よりご講演をいただきまして、その後、無藤先生のご講義に対する質疑、その後に、文部科学省の方より教育振興基本計画をめぐる行政説明、並びにその質疑応答に充てたいと思っておりまして、予定時刻は変更せずに19時半の予定としてございます。よろしくお願い申し上げます。
 それでは、まず、初めに、中央教育審議会の委員でいらっしゃいます無藤隆先生にご講演いただきます。
 先生のご経歴を簡単に申し上げますと、無藤先生は、現在、白梅学園大学の教授でいらっしゃいますが、お茶の水女子大学の教授、また、白梅学園大学の学長などを歴任されておられます。また、中央教育審議会の初等中等教育分科会の幼児教育部会の副部会長を務めるなど、国の教育政策の形成に大変にご貢献をいただいてございます。特に近年では、この中教審の教育振興基本計画特別部会の委員としてこの振興計画の作成に多大なご尽力をいただいたところでございます。
 それでは、無藤先生、ご講演の方、よろしくお願い申し上げます。

○無藤隆氏

 ご紹介いただきました無藤でございます。
 私は、特に独自の資料がありませんので、お手元にいろいろな教育振興基本計画のご説明がありますけれども、細かいことというよりはその背景ということをご説明したいというふうに思います。
 先ほどご紹介をいただきましたけれども、教育振興基本計画というのが国としてどういうふうに学校教育、生涯学習を進めるかという、これからの5年間、10年間の計画を示したものだと思いますが、具体的に、特に本年度について言えば、この3月に学習指導要領、優先教育要領が改訂されたわけでありますので、ここにおいでの方々が学校教育、特に初等中等教育の方だけではないと思いますけれども、恐らくそういう方も多いと思いますので、指導要領の今後というところを主としてお話ししたいというふうに思います。
 もちろん、今、指導要領の説明会をしたいわけではありませんので、その詳細というよりは、そこが目指すところというところでお話ししたいというふうに思っております。
 今回、指導要領が改訂されたということもありますけれども、それ以外に、お手元の資料にあるようなさまざまな施策というものが展開されつつあるわけです。それが、一体何を全体としてやろうとしているかということなんですけれども、私、中央教育審議会の委員であったということもありますけれども、国の施策形成の一端にいながらいろいろなことを考えてまいりました。
 そういうところで見てみますと、この10年間、特に2000年代に入って、日本の学校教育に対しての国の役割、あるいは文部科学省の役割というものが随分変化してきたように思います。それは、例えばゆとり教育とか何とかというのはいわば中身の問題ですけれども、それを学校の枠組みとして、特に中央政府であるところの文部科学省なり国と地方自治体との関係であるとか、さらに、行政と学校現場との関係であるとかというあたりの見直しというものが進んできたということだと思うんですね。
 一番大きなことは、この10年間、あるいは恐らく国際的に言いますと1990年代の後半からだろうと思うんですが、ですから10年から15年というところだと思いますけれども、世界中の国々——特にOECD諸国と東アジアの国々ということになると思うんですが——におきまして、学校教育、これは義務教育はもちろんですけれども幼児教育、あるいは高校や大学教育を含めてでありますけれども、学校教育を非常に重視するという形に変わりつつあるということだと思います。
 後で申し上げるように、それに対して日本が十分追いつくと言うんでしょうか、伍してやれているかということが大問題になるわけですけれども、少なくとも、特にOECD諸国と東アジアの、例えば中国や韓国、台湾、シンガポールなどの国々の状況を見ると、学校教育への教育投資というのをかなり増やしてきているということが顕著だと思うんですね。
 その代表は、しばしば引き合いに出されますがイギリスだろうと思いますけれども、イギリスの具体的な教育改革のあり方が日本としてモデルにすべきかどうか、これはまた別の話ですけれども、少なくとも学校教育に対して国が責任を持っていくとか、教育投資を増やしていくということ、これはヨーロッパ諸国すべてがそうだと思いますけれども、それについては、やはり我が国としては真剣に考えるべきことだというふうに思うわけです。
 そういう意味で、たしかこの基本計画のどこかにも、特にOECD諸国と比べて日本の教育投資というものが相対的にはどうも芳しくないのではないかという数字を含めて挙がっていたと思いますけれども、やはりそこのところが非常に気になるところであるわけです。
 で、教育投資というのは、要するに学校現場はもっとお金が欲しいよという、それは言い方にもよりますけれども、結局はそうなるかもしれませんが、実はもっと大きな意味があると思います。つまり、国としてやるべき課題は恐らく教育以外にたくさんのことがあるんでしょうけれども、その中で、学校教育というものの位置づけが従来にも増して大きくなってきたということだと思うんですね。別な言い方をすれば、学校教育というものがある種の国家戦略の一部として非常に強いものになってきたということになります。
 国家戦略と呼んでいるのは、学校教育を国として大いに統制していくと言っているわけではなくて、学校教育をより重視する、そして、そこに投資を加える中で充実させていかなければ、将来の社会、国、さらに言えば国際社会そのものが成り立たないと、そういう危機意識のあらわれであるというふうに思うわけです。
 特に教育というのは、これは、最終的には一人一人の子どもたちが大人になって社会の中で活躍してくれなければ困るわけですね。そういった一人一人の力をどう育てていくのかというのが教育の課題です。そういう教育が重視されるというのは、逆に言えばこれからのグローバルな社会、中教審答申では「知識基盤社会」と呼んでいますけれども、そういう社会においては一人一人の持つ力というものが重要になるんだと。一部のエリートだけが頑張ればいい、そういうものではなくて、まさに日本人すべて、それぞれの立場において力を十分発揮してほしいということなわけですけれども、そして、その力というものが学校教育を通してまさに育っていき、培われるのだという見方ですね。
 そういった国家戦略としての学校教育というのは、昔から義務教育は重要だと言ってきたではないかというふうにお思いでしょうけれども、それはそうなんですが……。この10年間で特に変わってきたのは何かと言うと、義務教育をそのまま普通にやっていればいいということではなくて、それ自体をかなり充実させていかなければいけないんだということですし、また、人材育成という観点で言うと、その人材育成そのものが国際競争の時代に入ってきたということなんだと思うんですね。
 例えば、今後10年後において、日本人のかなりの人たちが国際的な舞台で仕事せざるを得ない、私はそういう時代に入っていくと思います。つまり、例えば人口の1割の人が国際的な活動をしてあとの人は国内で普通に仕事をすればいいというわけにはいかない。国際的と呼んでいるのは、文字どおりのことでありまして、つまり、例えばアメリカに行ってとかイギリスに行ってというのは、いわゆる英語圏の文明諸国ですけれども、そういうところだけ思い浮かべるのではなくて、例えばある人たちは韓国で仕事をするでしょうし、別の人たちは中国に行くし、別な人はベトナムに行くでしょうし、また中央アジアに行ったり、さまざまな国に行き、逆に諸外国の人たちが恐らく日本で在住し仕事をするという率がどんどん増えていくと思います。
 そういう時代に入っていく中で、日本の子どもたちが十分な実力を備えて、諸外国の人たちに伍して一緒にやっていけるだけの力を身につけないと困るだろうということです。そういったものの総体としての国家ということを申し上げたいと思います。
 その際に、私は特に中教審の議論の中で、小学校の部分の指導要領のまとめ役を仰せつかりましたけれども、それと同時に幼稚園教育についてもまとめ役をやってまいりました。そういう立場にあるものですから余計に思うのでありますが、この教育振興基本計画においても、義務教育の改善だけを取り上げているわけではなくて、生涯にわたる教育全体がそこにさまざまな改善プランが挙がっています。特に重要なこととして、幼稚園教育あるいは幼児教育というものがかなり正面切って取り上げられているということ。また、大学及び大学院教育——高等教育ですね——というものが改めて重視されてきているということ。その間に立って高校教育をどうしていくかということももちろん問題意識としてあります。
 つまり、義務教育を、期間を別に広げようと言っているわけではありませんが、義務教育だけをしっかりやればいいという時代ではなくて、義務教育を含めた極めて長い年数の教育というものを充実させていかなければいけないんだと。充実というのは、先ほどから言っているように、単に頑張ろうねという話ではなくて、具体的な投資をそこに入れていくということになるわけです。
 もう一つは、教育振興基本計画というのは国がやる仕事を書いたものでありますけれども、中教審答申の方でご覧いただくとわかりますが、その中で、「現場主義」ということを言っています。
 「現場主義」というのは、つまり、各学校においていろいろと努力していただかざるを得ないわけで、その学校現場における創意工夫というものを精いっぱい出してもらうためにはどうしたらいいかというところで、行政というものがむしろ学校現場に対するサポート役なんだということを打ち出してきたというふうに思います。
 今日は、後で文科省事務官、惣脇さんの方でいろいろ予算も含めてご説明があろうと思いますけれども、やはり現場で仕事がやりやすくなるために行政は何ができるのかということが文科省に課せられた非常に大きな責任になってきたというふうに思うんですね。
 それは単に学校現場に裁量を増やすということだけではないと思います。もちろん、一定程度の裁量が必要ですけれども、それとともにやはり国全体として学校教育がある方向を持たなければならない。例えば、中教審の答申では、あるいは指導要領として、「確かな学力を育てる」とか「生きる力を育てる」と言っておりますけれども、それは大きな方向ですね。で、そういう大きな方向が定まることによって税金をより多く投入するということも許されるわけだし、また、国としての大きな動きが可能になります。
 ですけれども、それは学校教育の、特に学校現場のいわば手足まで細かく縛ろうという意味ではなくて、やはり十分に手を使い足を使って学校現場の先生方が子供たちに相対して、面と向かって指導できる、そういう体制をつくろうというふうにしています。
 もちろん、実際にじゃあうまくいっているのかとか、そう口では言うけれどもできているのかと言われるとなかなか厳しい状況があるわけで、具体的な人材というよりも人手とか予算が学校において十分かと言われれば、私は十分でないと思いますけれども、少なくとも目指す方向はそちらであるし、それに向けて行政側として頑張っておられるのかと思うし、また、私はそれを期待していきたいと思います。
 ということで、やはり国としてより教育投資を高めるということが現在最大の課題であるというふうに思いますけれども、しかし同時に、その教育投資というのは当然ながら税金を使う話であります。税金を使う以上は、そこに説明責任というものが伴うと思います。説明責任というのは、英語で言えばAccountabilityの訳だと思うんですけれども、Accountabilityというときには、単にこれこれですよと説明するというだけのことではなくて、これだけの成果を上げていますということを示すということを含んでいると思います。
 そういう意味では、数値目標であるとか、あるいは、数値にできないまでも、学校教育に対して期待されているさまざまな課題に対してこたえてきているとか、あるいは、そのなりの国際的に活躍できる人材を確かに育成できていると多くの国民が思うような、そういうところに持っていく必要があるわけですね。
 ですから、数値化できる目標というのはできる限り数値化するけれども、学校教育全体としては、それを含めて多くの国民、というのは具体的に保護者であったり町の人々であったり、あるいはもちろんその代表は政治家の皆さんですから、政治家の方々であったり、そういう人たちへの納得を得るということが必要になります。
 そのために、具体的には例えば、4月の一斉の学力調査によって学力の状況を見ていくということも始まりました。あれは、小学校6年生と中学3年生の算数、数学及び国語、この2つの教科に限定されていますので、非常に限られた学校教育の成果ですけれども、一つの指標には違いないと思うんですね。
 しかし、それは非常に限られたものですから、学校教育の活動、やはり全体を見ていく必要があります。そのためにこれから重要な役割を果たすと思うのが学校評価であろうと思うんですね。学校評価というものが学校教育法の改訂に伴いまして各学校に義務づけられております。自己評価ということでありますから、学校にランクをつけるとかそういう意味合いはありませんけれども、既に文部科学省として今年の初めでしょうか、ガイドラインを出しておりますので、それに基づいて恐らく各学校現場でどのような自己評価を行うかというものを検討されていると思います。
 その学校評価において重要なことは、学校の教育活動の全体をわかりやすく示すことと、また、それを情報公開していくことにあると思うんですね。ですから、単に学校ではこういうことをやっていますよということの情報が集まっているというだけではなくて、それを地域あるいはもう少し広く世の中に対してアピールしていく働きがあります。
 そういったものが学校評価ですので、これからそれが進むことによって学校教育というものの意義であるとか、それが何を目指そうとしているのかということを、より広く世の中の人々に理解してもらえることを期待したいわけです。
 その際に、学力調査や学校評価で見ていくのもいいんですけれども、そこにもう一つ加わる必要があります。それが学校において自己改善システムというものをどう根づかせていくか、つくり上げていくかということだと思うんですね。よく最近はPDCAサイクルと言いますけれども、要するに、計画したものを実施した上でそれを評価して、評価でとどめることではなくて、それからさらに改善のためのアクションを起こすということかと思います。そういった改善システムというものをさまざまなレベルでつくっていくこと、これが私は本年度、来年度の最も大きな課題であると思います。
 この改善システムというのは、例えばもちろん文部科学省のような行政においてもなされるべきことだと思います。また、例えば教育委員会も本年度から外部委員による評価が義務づけられたようですけれども、特に学校現場においては、自分たちの学校をどういうふうによくしていくのかという観点から先ほどの自己評価を行う必要があります。そういう意味で評価というのは、単に自分たちはよくやっているとか、よくないとか、そういうランクづけをすることを言っているわけではなくて、そうではなくて、うまくいっていることとうまくいっていないことがあるだろうと。
 どんな学校現場で非常に優れた先生たちが集まってやっていたとしても、必ず改善ポイントはあるだろうと思うんですね。100点満点の学校というのはあり得ないわけで、それは校長先生以下全員が優秀ですごくやっていたとしたって、先ほどから申し上げているように、十分な人手・予算が完全にそろっているところなんてないと思いますので、いろいろな意味で不十分に違いない。そういったところをどうやって次に改善していくのか、それを明らかにしていく必要があります。
 で、もちろん改善のあるものは学校内の先生方の努力によって何とかなるものでしょうけれども、しかし、あるものは実は予算がつかなければ、あるいは先生の人手が増えなければできないことかもしれない。そうなりますとそれは教育委員会の問題であり、さらに言えば教育委員会が予算を全部持っているわけじゃありませんから、自治体、さらに国の責任になってまいります。
 そういったことを含めて、改善システムというのを小さい現場からさらに大きなところまで、さまざまなところで動かしていくということが、実は現在進みつつあるというふうに思います。
 そういうところで、学校教育の改善というのを行うというふうに考えてみますと、最初に言いましたけれども、国の戦略としてこれから学校教育をもっと重視していくんだということと、同時に現場主義をやっていくんだということを言いました。この2つは、それだけをとらえるといささか矛盾しているように見えると思いますけれども、今申し上げたように、一つは文部科学省のような行政が現場をどうやってサポートするか。間にもちろん教育委員会が入っていますけれども。そういうサポートの関係としてとらえるということが第一。
 もう一つは、今言ったように、さまざまなところで改善のサイクルをつくり出す中で、現場も改善していかなければならないし、文部科学省は国全体に責任がありますので、そこを見定めていかなければいけない。そのさまざまなところでのサイクルを動かすという中で現場を生き生きとした元気のあるものにしながら、先生たちが毎日を頑張って授業にいそしむことができ、そこで子どもたちが元気よく暮らし、また学んでいけるような、そういう学校をつくっていくことを可能にしたいということなんですね。
 それは確かに理想論でありますけれども、何度も申し上げているように、十分なリソースが、資源が学校に与えられていると私は思いませんけれども、しかし、その中で学校が改善できることもあると思います。そして、できないことはやはり行政側で、教育委員会なり国として努力すべきことも明確になっていくだろうと思います。
 特に、教育投資を増やすべきだと私は何度も言っていてそう思っておりますし、教育振興基本計画もせんじ詰めれば教育投資が要ると書いてあるわけでありますけれども、具体的にはじゃあどこにどうやって投資すればいいのかとか、投資する結果としてどこがどういうぐあいによくなっていくか、それをもっときめ細かく明らかにする必要があると思うんですね。漠然と投資を増やせば漠然と教育はよくなると言っても、これは納税者への説得力は一切ないわけですから、やはり丁寧な改善の計画というものが要るのではないかというふうに考えています。
 教育振興基本計画というのは、ですから、そういう立場で見ると国としていろいろやりますよと言っておりますけれども、こういう名称でなくて言いと思うんですが、それぞれの自治体なり教育委員会なり、現場、学校なりにおいて、やはり改善の計画をつくっていく必要があるということですね。それはお題目では決してないので、すべて予算の裏づけをとって、実際に成果を出していく、そういう計画であるというふうに思います。
 さて、私に与えられた時間はそう多くないので、もう少し今度は学校教育、特に初中教育についての幾つかのポイントをお話ししたいと思います。
 今回、中教審答申及び学習指導要領の改訂の中で、「確かな学力を育てる」ということを打ち出しています。
 「確かな学力」と言うときに、私はそれに加えて、「確かな学びの過程をつくる」というふうに言っています。確かな学びの過程をどうつくるか。確かな学びの過程と——プロセスですね——呼んでいるのは、授業の一コマ一コマにおいて子どもが確実に学ぶような、そういう指導のあり方をきちんと先生の方でやっていくことを言っています。
 確かな学力というのはいわば結果ですよね。どの子どもにも学力が身につくようにしたいということですけれども、実際には学校は結果がすぐに出るわけではなくて、やはり日々の授業はその途中にあるわけで、つまり指導、プロセスです。その指導のプロセスをより確かなものにしていくと。それは、それぞれの指導のプロセスの一コマ一コマにおいて、子どもたちが学習する、学ぶということをきちんとやっていくということです。
 非常に当たり前のことを言っておりますけれども、その一人一人の子どもがきちんと学ぶということはじゃあどうやったらいいのか。中教審答申ではそのことを習得と活用と探究、この3つの指導過程を出しまして、そのバランスをとっていくんだと言っているわけです。
 今、その一つ一つを詳細に説明する時間はありませんけれども、お手元のパンフレットにも出ているわけですが。そういった習得、基礎的・基本的に知識・技能を身につけるということと、それをきちんと指導していこうと。だけれども、学習というのは基礎的・基本的な知識・技能だけで成り立つわけではなくて、それをもっと実際的な、現実的な、あるいはより高度な場面の中で活用する必要がある。そして、その活用を通して子供たちの思考力というのが身についていくんだと、こういうふうに考えています。
 ですから、私から見れば、特に教科教育の一番の中心というのはこの活用というところにあります。従来の教科教育の最も優れた部分、それを活用と改めて呼んでみたということですね。ですから、習得とか活用とか探究と言っても、別に殊さら新しいことがそこにあるわけではないですね。従来から教科教育でやってきた部分、それを例えば習得と呼び、また、活用と呼んでいます。
 ただ、何が新しいかと言えば、ただ名づけただけではなくて、その習得なり活用なりを確実に進めるような指導の手立て、そこをちゃんとやろうということです。それは、例えばうまくいっていない例を挙げれば、今、小中の連携、一貫ということが全国的に進んできておりますけれども、その中で、例えば、中学校の先生から小学校に対して、十分な計算技能が身についていないままで中学に進学する子どもが結構いると。もう少し小学校の方できちんと指導してほしいと、そういうことが小中連携の会議で出たりいたします。
 もちろん、すべての子どもが100点満点というわけにはいきませんけれども、しかし、習得についてもやはり一定の努力が要るだろうと。また、活用などで言えば、4月に実施された学力調査で言えばB型問題がそれに近いのかと思いますけれども、やはり全国的な平均正答率を見る限りにおいては十分ではないところがあります。
 そういう意味で、それをどう進めるかということは、やはりさらに工夫が要るのではないかというふうには思うんですね。特に、今回の指導要領の細かいところをご覧いただくと、その習得ということと活用というところの指導をどう進めるか。その点はかなり意識して、各教科の内容に入れてあります。ぜひそこをご検討いただけるといいのではないかというふうに思うんです。
 もう一つが、探究ということなんですけれども、探究というのは、今回の指導要領の解説、パンフレットなどにも、総合的な学習の時間とつなげて説明してあります。総合的な学習の時間については、小学校、中学校について、中学1年は年間50時間ですが、あとは70時間という形で縮小されています。縮小されていますけれども、しかし、年間70時間というのは他の教科やさまざまな時間と比べたときに、やはり相当な長い時間だと思うんですね。つまり、改めて70時間を十分に生かして総合的な学習の時間を指導するということを考えてみれば、そこでかなりのことができるんではないかと思います。
 で、そのかなりのことができるというときに何をするか。今回、指導要領においては、総合的な学習の時間というものが独立した章になりまして、その目標というものが明記されています。それはご覧いただければと思いますけれども、要するに、総合的な学習の時間の学習活動というものが、横断的、総合的であり、また、探究的であるというふうに定義しております。これは、従来の総合的な学習の時間の、私は良質な部分と言いますか、優れた成果を生かしながら今後の総合的な学習の時間の方向を明確にしたものだというふうに思います。
 総合的な学習の時間の方向とは何かというと、つまり、探究ということでありますけれども、特に探究という活動に言語力の指導を加える中で、いわゆるPISA型の学力、特に読解力の育成につなげていこうという発想が非常に顕著であるというふうに思います。そういう意味で、総合的な学習の時間を生かす中で、ぜひ当然ながら国語とかその他の教科とも連動しながら、いわゆる読解力、PISAの調査で言う読解力の育成に進めてほしいというふうに願っています。
 あと、2点、3点ほど申し上げておきたいと思うんですけれども、もう一つ申し上げたいのは道徳教育の問題です。さまざまな報道もありましたけれども、道徳教育というのが、時間はこれまでと同じですけれども改めて強調されてきております。私としては、ぜひ指導要領の総則において道徳とは何か、道徳教育とは何かということを書いてありますけれども、そこをご覧いただきたいと思います。
 なぜそういうことを申し上げるかと言えば、そこを丁寧に読んでいただければわかりますように、やはりこれからの日本を構成する人たち、つまり今の子どもたちがこれからどういうふうに生きてほしいか、その願いというものをはっきりと示していると思います。それは、日本人として生きつつも国際的な社会の中で活躍していく、そういうイメージです。
 地球規模の環境問題などにも対応していってもらわなければならない。別な言い方をすれば、それぞれの子どもたちがみずからの価値観というものをしっかり持って、開かれた社会の中で真剣に生きてほしい、そういう願いというものが出てきているように思います。日本の中でも、また、国際的な場においても、これからさまざまな問題がその時々に生まれていくだろうと思います。そういった問題に対して積極的に立ち向かっていけるような子どもたち。この世の中に、大げさに言えば正義、公正というものを実現できるような、そういった志と、また、力を持った子どもたちを育てていく。これが学校の仕事です。
 もちろん、学校だけでできるわけではなくて、家庭、保護者もそこに当然ながら中心となるし、地域、社会全体がかかわらなければならないと思いますので非常に難しい課題ですけれども、単に子どもたちが勉強ができていればいいわけではなくて、やはりその学んだことを社会の中にどう生かし、意味あるものにしていくか、そこのところに道徳という課題、あるいはもう少し広く言えば、学校の用語で言えば特別活動その他の社会性を育てるところがかかわっていくように思います。
 最後に、いろいろお話ししたいことはありますけれども、時間の中でもう一つだけ加えておきたいのは家庭の問題です。保護者、家庭との連携とか、かかわりということです。これは、文科省の学力調査に伴うさまざまなアンケートとかその他でも明らかなように、学力を規定する要因として学校の指導のあり方とともに家庭生活のあり方というのが非常に関係しています。
 その家庭生活というのは、もちろん、例えば家庭の経済的な要素も関係すると思いますけれども、それだけのことではなくて、やはりその家庭においてしっかりと生活を行い、学んでいくというような習慣ができているかどうかですね。よく、朝御飯を食べているかどうかということが学力その他と関係があるのかという話題が出ますが、恐らく、朝食を食べること自体というよりは、もう少し広く生活の安定さ、あるいは逆に言えば生活の乱れということと関係していると思います。
 私もそういった調査をいろいろいたしますけれども、子どもたちの適応とか学力とか、さまざまなこととの関連で言いますと、実は夜遅くまで起きているということが割と関連するんですね。夜遅くまで起きていれば恐らく朝御飯はなかなか食べられなくなるだろうと思います。夜遅くまで起きていると言っても、もちろん受験勉強なりいろいろな勉強をして遅くなるんなら意味があるかもしれませんが、多くの子どもたち——特に小学校高学年から中学ですけれども——というのは、夜遅くまで起きているというのは実際にはテレビを見ている、テレビゲームをやっている、また、携帯電話やインターネットで友達と話していたり、何かブログをつくっているとか、そういうことのように思います。
 そうなってきますと、そういう夜中まで、ちょっと札幌はわからないんですが、東京で見ますと、小学生高学年であっても夜11時、12時まで起きている子どもというのが少数ではないと思います。1割以上、場合によって2割ぐらいおります。
 で、12時まで起きていると言っても、朝、学校に間に合うようには起きて行くわけですので、当然ながら睡眠時間は足りない。睡眠の科学的調査というのは私の専門ではありませんが、小児科医などの調査によりますと、そういった子どもたちはかなり午前中は実は脳の方は眠った状態に近いということでありますので、当然ながら勉強はおろそかにならざるを得ないわけです。それ以外にもいろいろな問題が出てくるわけですけれども。
 じゃあ、そういう子どもたちに対してどう考えたらいいかというときに、もう一つ重要なことは、保護者、親御さんがそういったことに対する問題意識を持って、一緒に子どもたちの生活をただし、子どもたちが将来どう生きていくのかということを真剣に考えていただく必要があります。その辺は非常に難しいわけで、世の中にはさまざまな価値観の大人がいるわけですので、なかなか学校が何か呼びかけるとすぐ変わるということはありませんけれども、やはり学校教育だけでできる限界がありますので、その辺は家庭のあり方、地域のあり方というものを、学校の担任の先生、校長先生が何かするということだけではなくて、地域全体として家庭の状況をよくしていくということをやはり考えなければいけないのではないかというふうに思うようになりました。そういう意味では、家庭のあり方と、また、学校教育の改善と、その両方を含みながらでないとなかなかうまくいかないのではないかというふうに思っています。
 もう一つだけ申し上げておきたいと思います。途中で学力調査の問題に触れました。今、各市町村で公開するか否かとか、さらには、各学校で公開するか否かと、いろいろと地域でそういう議論があるようですけれども、公開するかどうかはともあれ、これも中教審答申にありますけれども、学力調査はその地域の子どもたちの学力状況をあらわす指標ではありますが、同時に、その学力の状況を用いながら各学校なり、あるいはその地域の全体の教育のあり方をどうよくしていくか、そのための資料として学力調査の結果があるわけですね。
 ですから、実は全国的にうちは何番とか、そういうことは余り重要ではないわけで、それはどうしたってマスコミとしては気になるでしょうけれども、しかしそこが問題ではなくて、全国的に秋田県が非常にいいそうですけれども、だからといって秋田県が万々歳ではないわけで、やはり秋田県は秋田県として頑張らなければいけないことは多々あるわけです。そういう意味で、それぞれの学力調査を含めたさまざまな調査結果を、やはり各学校の改善にどう使うか、そこがポイントです。
 とりわけ、各地域においてある学校なり、ある地域の学力の落ち込みがかなりあるようであるならば、それに対してどういう支援を、行政やあるいはさまざまな関係者が行えるのか、そこのところを集中的に考えるべきだというふうに思います。
 ちなみに、私は、今は北海道札幌におりますけれども、今週後半は沖縄にいなきゃいけないんですけれども、沖縄に行って何をするかというと、ご存知のように沖縄の学力調査の結果は芳しくないわけでありまして、それに対してどういう取り組みをすべきかというシンポジウムに出るんですけれども、沖縄として一生懸命考えている最中であります。
 そういう意味で、途中で申し上げたように、改善のサイクルというものを各学校なり、教育委員会なり、行政なり、いろいろなところでつくり出す中で、どうよくしていくかということをぜひお考えいただきたいし、そのために不足のところがたくさんあるならば、それはやはり行政に対してさらに投資をするようにと求めていくべきであろうというふうに思っています。そして、文科省はぜひそれを受けて、予算獲得その他でご努力いただきたいというふうにも願っているところです。
 さて、私が与えられた時間が18時15分まででありまして、大体そのぐらいだと思うんですけれども、最初にお話しいただいたと思いますが、私は今日中に東京に戻らないと困るので、私の質疑についてはこのすぐのところで行いたいと思います。じゃあ、よろしくお願いします。

○司会(寺門)

 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの無藤先生のご講演に対しましてご質問のある方は、その場で挙手をいただきたいと思います、マイクをお持ちしますので。これに関する内容につきまして簡潔に、時間の関係もございますので、ご質疑のある方はお願いしたいと思います。
 一番中段奥の女性の方でしょうか、お願いいたします。

○参加者

 札幌で小学校の教員をしています。よろしくお願いします。
 まず、こういう直接お話しをする機会を私が得られたということを大変うれしく思っております。
 2つあるんですけれども、ちょっと大きな質問になっちゃうかと思うんですが、まず、日本が目指すのは詰め込み型中央集権的教育でいいのか、すごく大きな問題ですよね。そんなことを考えるようになったのは、私も最初はそんなことは考えなくて、日本型の教育しか知らなかったときはそんなことは全然考えてなかったんですけれども、この教育振興基本計画の中などにもたくさんある、「国際社会の中で」とか、「グローバル」という言葉が出てくる中で、世界の動きを見ると何か日本とは違う形の地方分権的で詰め込み型ではない、創造力とか表現力とか思考力とか読解力とか、話し合う時間を学力と位置づけてやっている国もあるということを知り、何かすごく魅力を感じるんですよね。
 日本は、詰め込み型中央集権的教育を目指していていいのかという1点目の質問と、2点目は、これも気になるんですけれども、一般的にはそうなのかなと思うんですけれども、「世界トップの学力水準を目指す」と書いてあるんですけれども、本当にそれでいいのかなというか……。
 私、教師をやって27年目に入っているんですけれども、やはりいろいろな調査の中で、学力ももちろん気になるんだけれども、日本の子どもたちが自信がない、希望がないというところで際立っているということに教師としてはショックを受けるんです。ああ、かわいそうだなというか、ああ、そうなのかなというか……。
 そういうことを考えると、やはりやればやるほど勉強が嫌いになるんじゃなくて、やればやるほどもっと学びたいというような教育、そういうものを目指すべきで、さっき言ったように世界トップの学力水準を目指すということとは随分教育の質が違うんじゃないのかなって思うんですよ。
 かなり大きな2点なんですけれども、本当に目指すべき方向はこれでいいのかなという、ちょっと疑問なんですけれども、よろしくお願いします。

○無藤隆氏

 今、お二つのことについてご質問、ご意見ちょうだいしまして、私は、半ば以上今のご意見の共感いたしますけれども。
 で、多少分けて考えると、中央集権か否かについてはまだまだ整理が要ると思うんですけれども、中教審でも大分議論いたしましたけれども、国としてなり文部科学省として決めていくべき範囲と、地方分権ということですから、都道府県・市町村として決めていくべきこと、さらに各学校現場で決めていくべきこと、各学校現場あるいは各教室になると思うんですけれども、やはりそれの分担の整理が要ると思うんですね。
 私は、今回、ある程度整理ができたと思いますけれども、まだまだ詳細については試しながらやっていく必要があります。そういう中で、もっと各学校現場に予算、人事の裁量権も含めて委ねていくというのは、一つあり得る方向だと思いますので、その辺を数年かけて、私は少しずつ広がっていくと思いますが、試していく必要があるというふうに思います。
 それから、もう一つは、詰め込みかどうかということですけれども、一つは、途中で申し上げたように、習得・活用・探究のバランスをとっていくという考え方に今回の指導要領の改訂は立っていると思いますので、そういう意味でいうと習得を詰め込みとイコールかどうかわかりませんが、基礎的・基本的な知識・技能を確実に身につけるという部分はある意味では詰め込み的かもしれません。
 そういうところが必要だとは言っています。私も必要だと思いますけれども、それが学校教育の相当数を占める必要はないと思います。ご指摘のような、例えば創造性であるとか、人と協力することその他は、非常に重要なところで、特にこれからの知識基盤社会においては中心的な学力になります。
 ただ、例えば例としてフィンランドを挙げるとすれば、フィンランドにおいて知識を確実に身につける部分がないわけではなくて、やはりやっているんですね。フィンランドの教育というのは、実は、義務教育が過ぎてから大学に進む段階では相当厳しい試験があります。大学入試とは違いますけれども、入学資格みたいなですね。そこではかなり知識試験が入っておりますので、やはり基本的なものを身につけるべきではあるのではないかというふうに私は思っています。ただ、それで終わっては困るのではないかということですね。
 もう一つのご質問は全く同感ですが、自信、希望というものを十分日本の子どもたちは持っていないではないか。これは、さまざまな調査から明らかですけれども、どの国でも小学校高学年、中学になると幼児よりは自信が減っていく。それは自己中心的でなくなるという意味で当然なんですけれども、特に日本は、東アジアの国々と比べても、あるいはアメリカ、ヨーロッパと比べても、子どもたちの自信、それから、将来への希望、非常に低いわけですね。
 これはどうしてか。本当に我々は一生懸命考えなければならないと思いますが、学校教育を通して何ができるか。子どもたちにとって、学ぶ経験を通して確固たる自信、根拠のある自信というものを身につけさせる必要があろうと思います。
 学校教育を通して確固たる自信と申し上げているのは、実は、いろいろな調査を見ると、結構一見すると自信を持っている子どもたちというのは中高生に結構おります。おりますけれども、どうもその自信というのは非常にもろいような感じがします。つまり、現実の厳しさに遭った瞬間に壊れていくような、そういった自信というのが目立つような感じです。ですから、そうではなくて、しっかり自分たちが学ぶことができて実力を身につけたという上での自信をどうつけていくかというのが、学校教育に課せられていると思います。
 それとともに、日本人は学力テストで下がったとか、今不景気であるとか、いろいろなことを言っていますけれども、そうは言ってもやはり日本は世界の中の大国でありますし、学力調査でも世界のトップランクの中に入っております。そこは自信を持ち、また、これからの日本社会に対して希望を持っていくことはできるのではないか。いろいろな困難、現在、日本にも来ている不景気も含めて大変なことはたくさんあると思うんですが、それは逆に言えばこれからの子どもたちにとって力を振るうべき課題がたくさんある。そういう意味で希望というものを子どもたちに持てるような、そういうことが何かできないかということで、余り具体的なお答えではありませんが、ご質問には非常に共感をするところです。
 以上です。

○司会(寺門)

 ありがとうございました。
 他にはいかがでしょうか。じゃ、お願いいたします。

○参加者

 私立の学校で、たまたま私がここの学校の中でいろいろ役割をいただいたのでこの機会にということで。なかなか来られなくて北海道まで飛んでまいりました。ありがとうございました。
 それで、先生が、「ゆとり」から講演が始まりましたよね。いわゆる今までの流れとしましては、学力の向上というのは単に今までもいろいろ考えてはありますけれども、ゆとり教育というのから今脱皮して、また、学力向上のために何をするか、一生懸命やっているということはわかりますけれども、そうしたゆとり教育を示唆したのは中教審の方であり、文科省の方であったというふうに思うわけですけれども。本当にこの辺の軌道修正というのは、学校を運営する者としましては、やはりそういう点では土曜日の活用だとか何かを積極的に対応していかなければいけないんじゃないかな、なんてことを今考えております。
 時間の問題もあるでしょうから、この1点だけお答えいただきたいと思います。

○無藤隆氏

 授業時間を増やすという意味での土曜日の活用ということであれば、中教審答申に即して申し上げれば、授業時間というのは現在、基本的には指導要領では標準時間とは書いてありますが理解としては最低基準ですので、各学校現場あるいは教育委員会などで授業時間を増やすことはこれは自由であるというふうに理解していいと思います。その上で、どこまで増やすかということについては、土曜日については、これは地域との連携の中での活動をする分には、公立学校においてもそれはできますよというふうに記されております。実際には、それが望ましいかどうかは別なことだと私は思います。
 で、多くの公立学校では、現在、むしろ2学期制であるとか長期休業の活用等で年間の授業時間を増やす形をとっているようでありますけれども、例えば、これからの日本全体を考えたときに、土曜日の休みをやめた方がいいのかということで言えば、先ほど例に挙げたフィンランドなどは日本よりも全体の授業時間は少ないですし、ヨーロッパのほとんどの国は土曜日は休んでおります。東アジアについては土曜日やっている国が多いわけでありますけれども。その東アジアの国々は世界的に言えば例外的に授業時間が長いわけですね。
 ですから、我が国に即して、別にヨーロッパのまねをする必要はないでしょうから、土曜日もあえてやるべきか。いや、そうではなくて、週休2日の中で工夫していくべきか。これについては、さらに実践を重ねる必要があろうというふうに思います。中教審の議論の中でも、もう土曜日はやってもいいのではないのかとか、各学校現場に任せて選ばせたらどうかとかいうこともありました。その一方で、やはり各教員の労働時間の問題もありますので、土曜日やれるといってもそう簡単ではありません。そういう中で、最終的には週休2日・学校週5日制を保っていくという方向になりました。
 で、私個人の意見を申し上げれば、大人たちが土日を休むという社会にしようとしているのであれば、子どもがそれに合わせる中でやれるだろうというのが第1点と、それから、特に土曜日について言えば、狭い意味での学校教育で学ぶような勉強以外の、広い意味での学習活動や体験活動その他、あるいは場合によっては補習なども含めて活用していってもいいのではないかというふうに思います。各授業において、その学力をきちんと身につけるために、私はさまざまな形の補習が必要と思いますので、それを月曜から土曜の学校にいる時間で行えるのか、放課後でやるのか、土曜日なども使って行くのかということについては、これは学校、地域の事情で変わると思いますけれども、それも含めて検討してはどうかと思います。
 ただ、補習あるいは学校部活動とか、あるいは広い意味での学習活動や体験活動というものを、学校の責任のもとで、学校の指揮のもとで行うのか、もっと広く教育委員会が責任を持つのか、あるいは、地域の保護者やNPOその他に任せていくか、これまた地域で検討していく方がいいのではないかと思います。
 ということで、中教審の立場と個人の意見を申し上げました。
 以上です。

○司会(寺門)

 ありがとうございました。
 それでは、予定した時刻になりましたので、これで無藤先生のご講演を終わりにしたいと思います。改めて先生お礼申し上げます。先生、どうもありがとうございました。

○無藤隆氏

 ご清聴ありがとうございました。(拍手)

○司会(寺門)

 それでは、続きまして、教育振興基本計画の概要等につきまして、文部科学省の惣脇生涯学習総括官よりご説明を申し上げます。

○惣脇生涯学習総括官

 皆さん、こんばんは。
 改めまして、本日、この教育改革セミナーin札幌へのご参加、お足元の悪い中でございますが、改めて感謝を申し上げたいと思います。また、それぞれのお立場で教育の充実・発展のためにご尽力いただいておりますことにも厚く御礼を申し上げたいと思います。
 私、このスライドの右下にございますように、文部科学省で生涯学習総括官というポストについております惣脇という者でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 ちょっと個人的なことで恐縮なんでございますけれども、私、札幌市立の二条小学校の卒業でございまして、教育大学の附属札幌中学でも学んだことのある人間でございます。ご縁のある方もおられるかもしれません。どうぞよろしくお願いを申し上げればと思う次第でございます。
 ただいま、無藤先生から、中教審の委員としてのお立場、また、有識者のお立場から、教育振興基本計画にかかわりまして、その背景になる大きな考え方の部分と初中教育について、幾つかの点につきましてお話があったわけでございます。私からは、行政説明ということになってございます。そういうことで、教育振興基本計画の概要とそれに対応いたしました文部科学省の施策、この施策、特に予算面での施策につきましてご説明をさせていただきたいと思います。
 資料は、お配りしております資料をここにスライドで出します。他にもパンフレットその他幾つか参考の資料がお配りしてございますが、基本的にはスライドでご説明をさせていただきます。それでは、次のページをお願いいたします。
 まず、教育振興基本計画とはどういうものかということでございますけれども、政府として初めて策定をした教育についての総合計画だというのが第1点でございます。それから、具体的には今後10年間を通じて目指すべき教育の姿を明らかにするということと、5年間に取り組むべき施策を総合的・計画的に推進をすると、こういう形になってございまして、全体として教育立国の実現を目指すというものでございます。
 これは、国の計画でございますけれども、各地方公共団体におきましても、その地域の実情に応じて計画を策定していただければ大変ありがたいということでございます。既に都道府県版あるいは市町村版の計画を策定されているところもございますし、また、これから策定するというところも伺っているところでございます。
 次のスライドは、この経緯を書いてございます。平成12年の12月に教育改革国民会議の報告が出まして、ここで提唱されたのが最初のきっかけということになります。その後、平成15年に答申が出、教育基本法が改正されたものを受けまして、改めて具体的な中身につきまして今年の4月に答申をいただき、その後、7月1日に閣議決定をしたと、こういう流れになってございます。
 次に、計画の構成でございますけれども、全部で4章からなってございます。第1章は、先ほど申しましたような教育立国ということでございますが、総論的なことを言ってございます。それから、第2章で今後10年間を通じて目指すべき目指す方向。第3章で5年間のことにつきましては、基本的方向として1から4まで柱立てをしまして具体的な施策を記述をしていると。最後に、第4章で、関連して計画の推進に必要なことの事項を書いてございます。
 この後、まず最初に、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿と教育投資の考え方をまず最初にご説明をします。その次に、この4つの基本的方向に沿いまして、それぞれの項目につきまして対応する文部科学省の施策の予算面を、特に来年度どういう予算要求をしているかということにつきまして、新規あるいは拡充を中心としてご説明をさせていただきます。これが一番中心の説明事項になります。最後に、第4章でございますけれども、推進に関連することを述べさせていただきます。
 それでは、最初に、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿ということでございます。大きく2つの柱がございまして、一つは、「義務教育終了までに、すべての子どもに、自立して社会で生きていく基礎を育てる」ということでございます。もう一つが、「社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てる」ということでございます。
 上の義務教育の方は、無藤先生の方からも教育の充実、とりわけ義務教育の充実ということのお話がございましたし、下の方も、国際的な面からもこういう国際社会をリードする人材を育てるということが求められているというお話がありました。この2点を10年間で目指すべき姿ということで挙げているわけでございます。
 その際、無藤先生も重視をされております教育投資についてどう考えるかということなんでございますが、先ほどのお話にもございましたように、OECD諸国などに比べますと、現状では確かに少ない面があるわけでございます。したがってそういう状況を参考の一つとしつつ必要な予算について確保していくことが必要であるということを決めているところでございます。
 この数字につきまして具体的に申しますと、次でございますが、OECD平均でいきますと、GDPの5%が教育投資になっているところでございますが、教育投資と言っても公の投資になっているわけでございますが、日本は3.4%にとどまっているわけでございます。で、特に就学前教育、初等中等でももちろん少ないんですけれども、就学前教育では3分の1、高等教育段階では2分の1以下というふうになっているところでございます。
 これは、子どもの数などを反映しておりませんので、1人当たりで見るとどうかというのが次のものでございます。実は、統計の取り方がありまして、上の方の表は公財政支出と私費負担、個人負担のものを足したもので見たらどうかという数字が載ってございます。これで見ますと、どの段階もほぼOECD平均並みの支出が、最終的に公的な支出と私的な授業料等の支出を足した全体のレベルとしてはほぼ同じような水準に行っているということでございます。
 で、これの内訳というわけではないのですけれども、ただ、公費の負担を見てみますと、残念なことでありますけれども、就学前では日本はOECD平均の半分ぐらいになっておりますし、高等教育ではもっと少なくて半分以下ということになっているわけでございます。こういうことを参考にして教育投資を確保していくという方針になっているわけでございます。
 それでは、次に、第3章の部分でございますけれども、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策の基本的方向を4つございましたが、4つのうち一つ目は、社会全体で教育の向上に取り組むということでございます。柱は2つございまして、一つは、身近な場所での子育てなどの支援、もう一つが、身近な場所での学習機会の充実ということでございます。
 で、次のスライドには、まず、学校・家庭・地域の連携・協力を強化して、社会全体の教育力を向上させるという事柄になっているわけでございますが、具体的に申しますと、一つは、放課後子ども教室推進事業でございます。これは、放課後や週末などに小学校の余裕教室などを活用して子どもたちの居場所を設けると。また、地域の方々の参画を得て、子どもたちに学習活動や交流活動などの機会を提供する取り組みを支援するというものでございます。
 もう一つの、学校支援地域本部でございますが、こちらは、地域住民の方々にボランティアとして学校の教育活動を支援していただきたいということでございます。このことによって学校教育が充実し、また、住民にもその知識・経験を生かす場となるというようなことでございます。現在、約1,800カ所、今年度設置されているわけでございますけれども、まだ設置されてない市町村もございます。来年度は少なくともすべての市町村に1カ所を含めて、3,600カ所を設置したいということで予算を確保したいというふうに考えております。北海道におかれましては、この点、大変力を入れていただいているというふうに伺っているところでございます。
 それから、次のスライドでございますけれども、家庭の教育力の向上でございます。無藤先生からも家庭のことにつきましてはお話ございましたけれども、いろいろなところで家庭の教育力の低下ということが指摘されておりまして、社会全体で家庭教育を支援するということが必要になっているわけでございます。
 文部科学省としましては2つの施策を考えてございまして、一つは、地域における家庭教育支援基盤形成事業というものでございます。子育てサポーターリーダーとか民生委員とか、保健師、臨床心理士などの方々に家庭教育支援チームを構成していただくような形で、保護者のもとに出向いて支援を行うというような、そういうモデル事業を進めているところでございます。
 それから、2つ目でございますけれども、これは、「早寝!早起き!朝ごはん!」のキャンペーンを、一昨年から今年まで3年間やってきているところでございます。大変成果も上がっていると思っておりますけれども、来年度以降はこの成果を広く普及をして、地域ぐるみでの基本的生活習慣づくりを定着させるための方策、効果の研究ということをやっていきたいというふうに考えているところでございます。
 それから、次は、発達段階に応じたキャリア教育総合支援事業ということでございます。人材育成に関する社会の要請にこたえますというのが計画の事項にあるわけでございますが、具体的には、キャリア教育を初めとする人材育成に関する社会の要請にこたえていきたいというものでございます。
 これまでも、文部科学省ではこの点に関していろいろ取り組んできたわけでございますが、この中で、例えば小中連携というのも一つの課題があるのではないかということ。また、地域、保護者・住民・事業所などに対して協力を促すには効果的な広報活動が必要だというような課題もございます。それから、産業構造や地理的制約など、いろいろな地域の実情を踏まえるためにはどのような対策を講じたらいいかというような、いろいろな課題がこれまでにも出てきているわけでございます。今後は、これらの課題に対する解決策を、モデルケースにつきまして普及・定着を図るために調査研究を実施していきたいということでございます。次をお願いいたします。
 それから、次は、いつでもどこでも学べる環境をつくりますというのが基本的方向の4番目に入っているわけですけれども、具体的にどのような施策を考えているかということでございますけれども、一つは、図書館・博物館でございます。図書館の方は、例えば未設置市町村でどのようなサービスが考えられるか、また、博物館でありますれば博物館同士のネットワークを考えていく必要があるのではないか。
 また、社会教育で優れた取り組みが各地域で行われていますので、それについて普及を行う、支援を行っていくためのプランというもの。それから、環境教育に関して総合的なプログラムを開発したいと。また、専修学校を活用した学び直しのプログラムというのもございます。
 それから、これはちょっと学校の中にかかわるものでございますが、デジタルテレビに移行しますと、テレビを買いかえなければいけないわけでございますけれども、学校におけるデジタルテレビの活用につきましては、いろいろ効果があるということがわかっております。このためにどのような財政支援が考えられるかというところで補助金を要求しているところでございます。これについては、別途パンフレットも入れてございますので、ご参考にしていただければというふうに思います。
 それから、一つ言い忘れましたけれども、改正された教育基本法の中に、こういうことも含めました生涯学習の理念というのを初めて規定をしてございます。生涯にわたってあらゆる機会にあらゆる場所において誰もが学習することができる、そういう社会を目指すということが法律にもあり、それを受けて基本計画にも明記しているということでございます。
 基本的方向2の方に移ります。基本的方向2は、「個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる」ということで3つの柱があります。知・徳・体の3つをそれぞれ柱にして実現すべき目標としているというふうにご理解いただければと思うわけでございます。そこで、まず、最初の施策でございますが、学習指導要領につきましては、学校関係者や保護者の方々とその趣旨や内容につきまして共通理解を図ることが大変重要だというふうに考えているところでございます。そういうことが振興基本計画にも書かれてございます。
 今年度、そのための説明会をやってきているわけでございますけれども、来年度以降も中央説明会、これは学校関係者を対象としているものでございます。それから、地方説明会、それから、保護者の方にもご理解をいただければということで公開説明会を計画しておりますとともに、インターネットを通じた取り組みも進めていきたいというふうに考えております。
 次は、移行措置に関することでございますけれども、新しい指導要領では、算数・数学、理科の内容を充実しまして、その一部を来年度の移行期間中から先行して実施することになっておりますが、来年度から追加される内容は教科書には含まれておりませんので、それを補完する教材というのが必要になってくるわけでございます。この教材の作成・配布のための予算につきましては、既に成立をしております補正予算の中で既に措置をされているところでございまして、これで来年度分のものをつくりたいと。さらに、再来年の分については新たに要求する中でやっていきたいというふうに考えているところでございます。
 次に、全国的な学力調査でございますけれども、これは、教育振興基本計画の中では児童生徒の学力や学習状況を把握し、教育施策や指導の改善に活用するために必要だということで、継続的に実施するということが明記されているところでございます。これをどのように活用するのかということについては無藤先生からもお話がございましたが、私どもの予算としましては2本ございまして、一つはこちらの方でございます。調査結果をより有効に生かすための調査研究というのが一本でございます。それから、もう一つが、課題改善に向けた取り組みを支援するための経費を要求しているものでございます。そういうことで、全国的な学力調査の結果を活用して改善を進めてまいりたいということでございます。
 次に、道徳教育でございます。道徳教育につきましても無藤先生からお話がございましたけれども、振興基本計画におきましても、子どもたちの豊かな情操や規範意識、公共の精神などを育む観点から道徳教育の推進ということについて記述がなされているわけでございます。これがこの部分でございます。具体的なことといたしましては、この真ん中にございますけれども、学習指導要領の趣旨を踏まえた適切な教材が教科書に準じたものとして十分に活用されるよう、国庫補助制度等の有効な方策を検討するということが計画に書かれておりまして、それに必要な予算要求を現在しているところでございます。次をお願いいたします。
 全国体力・運動能力、運動習慣等調査ということでございます。これについては今年から始めたものでございます。12月に結果を公表して、1月には各学校に提供したいということでございますが、これを継続的に実施する経費ということでございます。
 次に、豊かな人間性や社会性を育む体験活動ということでございます。自然の中での長期宿泊体験活動や、社会奉仕体験活動などが重要だということで計画上位置づけられているところでございます。特にご紹介しておきたいのがここの部分でございまして、今年度から文部科学省、農林水産省、それから総務省も入れて3省で連携をしまして、小学校における農山漁村での長期宿泊体験活動を推進するためのプロジェクトを実施しているところでございます。
 次が、教職員定数の改善でございます。基本的方向の2の中には、教員の資質の向上を図るとともに一人一人の子どもに教員が向き合う環境をつくりますというような趣旨のことが書いているところでございます。来年度の概算要求では、まず一つ、こちらでございますけれども、行革推進法の範囲内での要求になるわけでございますが、定数改善として1,500人の教職員の増を要求しているところでございます。
 それから、2つ目がこちらでございますけれども、退職教員や経験豊かな社会人等の積極的な活用を図るために、外部人材活用事業ということで、7,000人を1万500人に拡充をしたいということでございます。
 それから、3点目がこちらでございますけれども、新しい学習指導要領の円滑な実施のための指導体制整備ということでございます。特に小学校における先行実施に伴う授業時数の増がございますので、1万1,500人の非常勤講師を配置するための経費を盛り込んでいるというものでございます。
 次が、免許状更新講習開設事業費補助ということでございます。ここのあたりでございますけれども、来年度以降、制度の円滑な実施に向けまして、講習開設費の補助などの予算を要求をしているところでございます。
 次が、認定こども園でございますが、別途資料があると思いますけれども、基本的方向2の中では、幼児期における教育を推進しますという柱もございます。そのため、認定こども園につきましては、施設面も含めた補助金と、それから、もう一つは事業面での補助金というものを厚生労働省と共同で新たに103億円を計上しているところでございます。
 次が、発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業でございます。基本的方向の2の中に、特別なニーズに対応した教育を増進しますという項目があるわけでございます。改正された教育基本法の中にも、障害のある者への教育上の支援について新たに規定が置かれたところでございます。これを踏まえて計画にも位置づけられておりますことから、学校の教職員の研修がまず1番目にございますが、それから、専門家の派遣をするというような支援策、それから、厚生労働省と連携してやるものでございますけれども、乳幼児期から就労まで一貫した支援を行うモデル地域の指定というようなことで考えているところでございます。
 では、次に、基本的方向の3でございます。教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える。主として高等教育に関する部分でございます。柱が3つございます。学士課程で共通に求められる能力、それから、国際的に求められるもの、それから、地域に貢献できる大学と、その3つの柱でございます。
 次のスライドでございますけれども、大学教育には充実が必要でございますとともに、機能分化ということも言われているところでございます。大学全入時代ということでございまして、大学の教育の質の確保が重要な課題になっております。このため、振興基本計画では、大学が社会的ニーズや学習者のニーズに的確に対応するとともに、それぞれの掲げる教育研究上の目的のもとに、教養と専門性を備えた人間の育成の推進を図るということが必要だということが書いているところでございます。
 このため、基盤的経費というのはもちろん必要なわけでございますが、国公私立大学を通じて各大学の創意工夫ある取り組みを支援するというような予算になっているわけでございます。また、ここのところに載っているものでございますけれども、大学における補完教育でありますとか、大学院でのコースワークの充実というような取り組みが一つございます。もう一つは、国際的に卓越した教育研究拠点をつくるというようなことがございます。これらの取り組みを通じまして、各大学の教育の充実や個性化、特色化を進めていきたいということでございます。
 具体的な予算でございますけれども、まず、学士課程教育、次のスライドでございますが、学士力確保と言っています。学士課程教育、従来学部教育と言っていたものでございますけれども、優れた取り組みを行っている大学を支援するということが振興基本計画の中に書かれているわけでございます。具体的には、各大学がさまざまな取り組みをするわけでございますが、その中から優れた取り組みを選定し、支援をしていくというプログラムになっているわけでございます。
 次が、グローバルCOEプログラムと言いまして、これは、国際的に卓越した拠点をつくりたいというものでございまして、これも計画に明記されているわけでございますけれども、各大学の取り組みの中から優れたものを選定して支援をしていくと、こういうものでございます。
 次のスライドでございますが、留学生30万人計画でございます。大学の国際化ということでございますが、今年7月に30万人計画が取りまとめられたわけでございます。日本留学への動機づけとか、大学自体のグローバル化の推進とか、留学生への就職支援など、入り口から出口まで体系的に幅広い施策が必要でございます。関係省庁が総合的・有機的に連携をして計画を推進することになっているところでございます。例えば、留学生宿舎というようなことであれば、国土交通省にもご協力をお願いしなければいけませんし、法務省には入国管理、ビザの問題などでもご協力をお願いすると、こういうような形になってございます。
 次が、大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラムということで、これは地域に貢献する大学ということでございます。これも基本計画にそういうことが明記されているところでございます。国公私立を越えた大学間の連携というものに対して支援をしていきたいと、こういうものでございます。
 次のスライドは、医師不足、大学の地域貢献のこの分野での一つのあらわれということでございます。計画には、「医師育成システムの強化」というふうになっているところでございます。まずは、早急に医師養成数を過去最大程度まで増員する必要があるわけでございまして、今回の概算要求では、地域医療に貢献する大学に対して新たな支援策を要求をしているというものでございます。
 次のスライドは、第2次国立大学等施設緊急整備5カ年計画というものでございます。これも計画に位置づけられているものでございます。耐震化など老朽対策でありますとか、イノベーションの創出とか、国際競争力強化に対応した拠点形成というのに必要な施設を整備していきたいということでございます。
 次が、基本的方向の4でございます。子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備するということで、2つの柱があります。一つは、安全・安心な教育環境、もう一つが教育の機会均等ということでございます。
 次のスライドは、学校耐震のことについて書いているものでございます。子どもが一日の大半を過ごす学校の安全の確保が何よりも大事でございます。先般成立しました補正予算も含めて前倒しを目指すということで、学校耐震化の取り組みの加速化ということを言っているわけでございます。封筒の中の資料の中に、大臣の名前で地方公共団体にあててお願いをしている要請文書のコピーを入れているところでございますので、参考にしていただければと思います。
 次が、子ども安心プロジェクトというものでございます。一つだけご紹介をしますと、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業というものでございます。これは、学校や通学路で子どもたちを見守る学校安全ボランティア、スクールガードの養成研修や、警察官OBなどからなるスクールガードリーダーによる、各学校やボランティアに対する警備のポイントなどを指導していただくような、そういう体制整備の事業になってございます。
 次が、学校教育情報化の総合プランでございます。質の高い教育を支える環境の整備を行うというものでございまして、こちらにありますようにICT教育の充実から環境の整備、教員の指導力、校務の情報化、情報モラルというふうに、それぞれ事業が当たっておりまして、必要な予算を供給しているところでございます。
 次が、私学助成でございます。私立学校の果たす役割は大変大きいわけでございまして、計画にもその位置づけが明記されております。それに対応した概算要求をしているところでございます。
 次が、奨学金事業でございます。やはり、教育の機会均等という意味で教育費の負担の軽減の観点から、意欲と能力のある学生が勉学に励めるという点で計画にも重視されております。このグラフにございますように、国の財政がどんどん減少している中で、奨学金につきましては毎年充実を図っているということで、これの充実を図りたいというものでございます。
 以上が4つの柱にそれぞれ対応した予算のご説明でございます。
 次が第4章ということになりますが、どういうふうに推進するかということでございます。まず、国、都道府県、市町村のそれぞれの役割分担ということで、無藤先生からもお話がございました。
 まず、国の役割ということでございますが、教育制度の枠組みや学習指導要領等の全国的な基準を設定するということ。また、全国的な教育の機会均等、それから、高等教育に関する質の保証・向上のための支援というのが国の基本的な役割でございます。そして、都道府県・市町村それぞれ役割がございまして、全体として日本の教育を進めていくということでございます。
 で、それに伴う財政支援ということなんでございますけれども、最初の話と重なる面がございますが、もう少し詳し目にご説明をいたします。財政面でも、国と地方の分担というのが必要なんではございますが、国の財政についてまず申し上げますと、大変厳しい状況にあるということから、施策の選択と集中が必要だと、また、コスト削減が必要だということになっているわけでございます。一方、地方の支出が7割を占めるということから、地方公共団体の取り組みも必要だということでございます。
 まず、最初に、国の財政につきまして次のスライドで申し上げますと、一つは、歳出改革というのが22年度までに行うことになっているところでございます。これがここになってございます。それから、総人件費改革というのもございます。これは、人件費を児童生徒の減少に見合う分を上回る減少を図らなければいけないということが法律で決まっておりまして、これが22年度までそういうことが決まっているわけでございます。また、その歳出改革は予算全体を縮減するということがここまで決まっていると。人件費改革はこういうふうに決まっていると。
 で、今回の基本計画は、こうした中で今年から5カ年の計画でございますので、最初の3年は人件費改革、最初の4年までが歳出改革というのにかかっております。こうした中で、学習指導要領の改訂を新たに実施するということになっております。先ほど、教職員の非常勤講師も含めた改善につきましてご説明をしましたが、そういう要求になっているのはこういう事情があるということでございます。
 次が、これは地方の役割ということでございますが、地方の役割が76%ということで大変大きいということでございます。全体としてみても教育費がだんだん減ってきておる中で、国と地方がそれぞれ確保していく必要があるということでございます。
 最後に、振興計画をどのように推進していくかということでございますが、まず、5年間の計画でございますが、各年度毎年アクションプランというのをつくっていきたいということでございます。もう一つは、点検・見直しということも毎年やっていきたいということでございます。このために、今年の9月に中教審の総会のもとに教育振興基本計画部会というのを新たに設置したところでございます。この部会の中でいろいろご審議、ご指摘を受け、また、進捗状況を報告をという形で進めてまいりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
 以上、非常に事務的な行政説明でございましたけれども、振興計画の概要とそれに対応した予算面でのご説明ということで私の説明を終わらせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)

○司会(寺門)

 それでは、これより、ただいまの説明に関する質疑応答の時間とさせていただきたいと思います。
 本日、質問にお答えをさせていただきますのは、壇上でございますが、皆様に向かいまして左側より、ただいまご説明申し上げました惣脇生涯学習総括官、それから、初等中等教育局の初等中等教育企画課から堀野課長補佐、それから、高等教育局の国立大学法人支援課より蝦名企画官、以上3名で対応をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、ご質問のある方、挙手をお願いいたします。マイクをお持ちいたします。

○参加者

 私は、札幌で15年間不登校の子どもたち対応のフリースクールをやっています。それで、文科省からも不登校対応実践事業ということで委任を受けて4年目になっているんですが、これらの取り組みの中で、この基本計画が提案されたときに私たちも意見を申し上げました。それが一定程度反映されていると思うんですが、要するに、子どもたちの育ち方が非常に多様になってきていると。公の学校だけでは賄うことができない教育のあり方というのが不登校の増大になっているんじゃないかというぐあいに思っています。
 そういう観点で、さまざまな不登校の子どもたちに、単に学校に戻るというだけではなくて、教育の機会を保障するというか、支援するというか、そういう点で教育基本計画を補強してほしいという要求を、希望を出しました。それが、これではわずか1行半ではありますが、「不登校の子ども等の教育機関についての支援」という形で表現されたことは、一歩前進だと思います。
 それと同時に、いわゆるNPOだとか、今も話がありましたが、そういうものに対する支援、社会全体で子どもたちを育てるという、その観点での計画基本計画の補強というか充実というか、それをぜひこれからも進めていただきたい。NPOだとか民間に対しても積極的な支援を、私たちも多少の支援はいただいているんですが、さらに広い意味で支援をいただければありがたいと思います。希望として申し上げました。
 以上です。

○惣脇生涯学習総括官

 ありがとうございます。大変ご尽力いただいていることに心から感謝を申し上げたいと思います。
 計画にも位置づけがありますとともに中教審でも検討することになっておりますので、ぜひ見守って、私どもの検討にご意見をいただくことも含めて見守っていただければと思います。

○堀野(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 初等中等教育局の堀野と申します。
 今、お話しございましたとおり、現在の教育というのはまさに学校の先生だけではとてもやり切れない、できない大きな問題をたくさん抱えていると思っております。ですから、やはり、不登校の子どもの居場所という意味で、学校外に居場所を求める、当然必要なことですし、そこでご協力をいろいろな方にいただくことにもなります。
 また、不登校でない子どもについても、当然のことながら「早寝!早起き!朝ごはん!」、大切だと言った場合に、学校の先生だけ頑張ってもできないわけです。家庭にご理解を得て一緒にやらないとできない。それから、キャリア教育というのもありましたけれども、子どもたちに職場体験をしてもらいたい、それも学校の中で、教育課程の中でやるわけですけれども、それも受け入れてくれる事業所がなければできません。
 だから、やはり今、学校の教育目標を達成するために先生方が取り組もうとしていることの多くの中で、地域の方々の協力を得なければできないことが非常に増えていると思いますので、我々としてもそうした方向で政策を進めていきたいというふうに考えております。

○司会(寺門)

 続いて、いかがでしょうか。先ほどの真ん中の方。

○参加者

 理容美容学校の経営をやっております。
 いろいろ教育改革ということでもってお話ございましたけれども、私ら、学校をやっていまして一番気になるのは、まず、本当に基本的なことなんですけれども、生徒として人として認めてあげるときに一番大切なのは、実は、中学校・高校とかで学習をやっていることはやっているんでしょうけれども、まず、あいさつ・返事ができない子がものすごく多いんですね。これはお金のかかる問題ではなくて、予算にも関係ない、学習でもない。あいさつ・返事、年寄りの者に対するあいさつだとか、お客様だとか、時と場所と場合によるそういった……、そこまでも行かないんですね。あいさつがまずできない、「はい」という返事ができない。
 それで、ここのところですごく子どもたち損していると思うんですね。何かやらせても、返事さえできないのかとなるともうぐっと下げられちゃうんですね。
 それで、まず、この教育改革セミナーの中身のまず一番最初、まずこれがなかったら予算組んだり学習したりが組んであっても、結局余り意味ないなと。そういった分野で、そこのところをまず教育の中に一番最初に入れてほしいなと思います。
 はっきり言って、難しいと言えば難しいのかもしれない。でも、生徒が信頼持って指導してくれる人が言ってくれると、すごく今の子どもははっきり言って素直過ぎるぐらい素直です。どうやってもそれを周りの方で認めてないものだから、「何だあいつは」というような雰囲気の扱いをしちゃうんだけれども、そういった意味では子どもがかわいそうですね。言うことを聞く人だったらちゃんと行動に移せるということは、やってみて僕は今とてもよくわかっています。
 そんなので、ひとつそういった本当に基本的な分野からまずお願いしたいと思います。
 これはまたちょっと話が変わるかもしれませんけれども、僕は実は、クラスでも一番の音痴という形でコンプレックスを持って大人までずっとやってきたんですけれども、つい四、五年ぐらい前、ある番組を見てて、音痴というのはいないよという話は聞いてはいましたけれども、でも、実際に歌うと僕は音痴だし、周りにもたくさん音痴います。それだけで、団体の中でコンプレックスを持ってやっていくわけです。
 でも、実は簡単に治っちゃいましたね。多分、音楽関係の先生たちだったらよくわかっている人いると思うんですけれども、僕が見たのは、裏声でドレミファソラシドをやりなさいというの。それをやっているアメリカの指導者がいたんですね、その方が日本に戻ってきてそういうふうに言っていたんですけれども。
 人前で裏声でドレミファソラシドはとても出せる声じゃないんだけれども、1人で車の中にいるときでも、実はひそかに試してやってみたんですけれども。実は、裏声の筋肉がそういうことによって鍛えられるんだということがわかりまして、だんだんと声が出てくるようになりました。
 そういった意味で、歌が歌えなくてというコンプレックスをすごく持っている人にとっては、ぜひお勧めを願いたいなと。どなたかよろしくお願いします。そういうことです。

○惣脇生涯学習総括官

 ありがとうございました。
 生活習慣の問題であったり、また、道徳教育の問題であったりということだと思います。それのさらに基礎となるという意味で、あいさつ、返事ということのご指摘であったかと思います。
 道徳教育や生活習慣につきましては、施策としては先ほど私の方でご説明したようなことで準備をしているところでございますけれども、やはり無藤先生のお話にもございましたように、各学校での活動でありますとか、また地域、また家庭での教育というんでしょうか、そのあり方も課題だと思います。重要なご指摘として受けとめさせていただきます。
 それから、また音楽教育に関しましても、体験に基づいた貴重なお話をありがとうございました。

○司会

 他にいかがでしょうか。

○参加者

 札幌の中学校の教師をしております。最近のインターネットや携帯、裏サイトやブログはすごいものがあるんですけれども、はっきり言って規制した方がいいんじゃないかなと思っているぐらいなんですけれども。
 子ども安心プロジェクトにかかわることなんですけれども、そういった裏サイトやブログの常時見守るネットのボランティアというかサイバーパトロール、そういうのも今の時代必要ではないかなと私は思います。子ども自身、登下校するときにもちろん身の危険だとか、そういうことも教えていかなきゃいけないんですけれども、エチケットとかいっぱい今はネット上でのことを教えていかなきゃいけない時代なんですけれども、でも、実際に学校ではフィルタリングがかかっていますので、そういう裏サイトをのぞくことができません。ですので、今、起きているときには個人の先生の携帯からのぞいたり、個人のパソコンから夜のぞいたりとかということを、地道な作業をしているんですけれども、それも結構負担ですので……。
 もし、全国的にこういう裏サイトとかすごく問題になっておりますので、そのような安心プロジェクトに一つこういうことを入れていただければありがたいかなというふうに思っております。その点、どうでしょうか、質問です。

○惣脇生涯学習総括官

 大変地道な取り組みをしていただいているということでありがとうございます。
 規制の話というような大きい話になりますと、政府全体の話にもなるわけでございますが、私ども、先ほど説明はしなかったんですけれども、安心プロジェクトとはまた別にITの関係では、ボランティアの方々にもお願いしながら、ちょっと調査をしていくというような、そういう事業も一つやっているところでございます。これの充実ということを来年度考えておりまして、どの程度できるかはこれからなんでございますけれども、またご協力もお願いすることになると思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○司会(寺門)

 他にはいかがでしょうか。先ほどの白い洋服の先生、お願いいたします。

○参加者

 お話を聞いて、何点か質問させていただきます。
 最初なんですけれども、今回のお話の中で、いつでもどこでも学べる環境の整備というところで図書館の整備が挙げられていました。図書館は本当に、新聞でもこのごろよく載っていまして、とても大切なところだなというふうに感じているところで、ここが挙げられたのはよかったなと思います。
 しかし、学校図書館の方が、やはり学校図書館で図書館ですよね。子どもたちがいつでもどこでも学べる環境の整備といって、いつでもどこでも身近なところでというとやはり学校図書館がすごく大事になってくると思うんです。
 それで、学校図書館の整備というところで、文部科学省の方では図書館の1人当たりの本代で来ていますけれども、本代だけじゃなくて学校図書館そのものに、例えば司書教諭を配置するような取り組みを今後考えているとか、そういった学校図書館のレファレンス、子どもが学びたい、知りたいという気持ちを保障するレファレンス、それが生きる力につながっていくと考えるんですけれども、学校図書館に対する今後の考え方を伺いたいと思います。
 それから、2点目は、地デジに関してなんですけれども、先ほど、テレビが学校の中で活用されているというお話ありましたけれども、地デジに今後なっていくというところで、それらの学校関係の費用というのは今後どういうふうになっていくのか、再度、確認のためも含めてお伺いします。
 それから、3点目は、奨学金のことが書かれています。それで、小さな字だったのでよく見えなかったんですけれども、経済格差が教育格差につながっていると本当にいろいろなところで言われているんですけれども、やはり、子どもたちが学びたいという気持ちを保障するために、無利子のところと有利子のところがありましたけれども、無利子のところがすごく少なくて、有利子のところは結構大きく出てました。有利子の利率が、ちょっと小さくて見間違いかもしれないんですけれども、たしか1.8%と書いてあったんですけれども、そういった有利子のところで非常に奨学金を受けたいし、現在受けているけれども、返済に就職難で困っているという状況も生まれている中で、この奨学金制度というのをどんなふうに考えているのか、考え方を伺いたいと思います。
 それと、感想なんですけれども、先ほど不登校のことが出ていましたけれども、札幌市でもたしか不登校1,500人ぐらいと聞いています。近隣でも、私は石狩なんですけれども、100人は行かないですけれども、6万人ちょっとの人口でやはり非常に多くいるんですよね。なので、NPO等への支援、子どもが学びたいというところへの支援というのは、学校教育だけではなくてあらゆるところで教育を保障する必要があると思うので、それはこれからもぜひ、学校外に居場所を求めることが大切と今お答えいただきましたので、そこのところを充実させていってほしいということを、先ほどの方とともに要望したいと思います。
 以上、3点、お伺いいたします。

○堀野(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 学校図書館についてご質問がありました。
 文部科学省としても学校図書館の充実というのは非常に重要と考えておりまして、先ほどおっしゃったように、図書館の蔵書数自体がなかなか増えていないと。計画を立てて図書標準というのをつくってもっと増やしましょうということをやってきたわけですけれども、古い本を捨てて新しい本が入ってくるだけで全然増えないというような事情もあったものですから、たしか2年ぐらい前から新しい5カ年計画というのをつくって、予算を年間130億だったのを200億円ぐらいに増やして今力を入れているところです。
 司書教諭についても、もちろん司書がいてくれれば一番いいんですけれども、なかなか自治体によってそこまでいきませんので、学校の先生に司書教諭として働いていただこうということで、これは過去にいっとき一斉に各都道府県で研修をしてもらって、各学校でやれるような人数の司書教諭を研修で育ててくださいということを実施をしておりますけれども、今、それがどれだけ機能しているかということはいろいろあろうかと思いますので、引き続きその司書教諭による図書館での活動の充実ということについて、我々としても指導していきたいと思っております。
 また、不登校についても、さまざまな形での支援が必要と考えておりますので、NPO支援も含めまして、どういう形で不登校の子どもたちをサポートしていくかというのは引き続き研究していきたいと思っております。

○惣脇生涯学習総括官

 地デジにつきましては、先ほどもご紹介しましたように、パンフレットを入れているところでございまして、私どもとしては、これまでデジタルテレビなどを活用した教育につきまして調査研究を行ってきたところでございます。つまり、このような使い方があるとか、このような使い方が効果あるというようなことについて事例を集積してきたところでございます。
 で、これに関して、テレビそのものを買いかえることにつきまして、財政当局がどういうふうに言っているかといいますと、これは、市町村の仕事であると、こういうことを言うわけでございます。私どもとしては、これは国の政策で電波が止まるわけでありますので、国としても支援が必要だということで先ほどご説明したような補助金を要求しているところでございますが、これ、年度末の予算編成でどうなるかというところでございます。現時点で確たることは申し上げられないんですけれども、予算をできるだけ確保したいということで頑張っているところでございます。

○蝦名(高等教育局国立大学法人支援課)

 それと、奨学金についてご質問がございました。基本的に、私どもとして教育の機会均等の理念を踏まえて、学ぶ意欲のある子どもたち、学生さん方がきちんとそういった大学等に入っていただけるようにするために、それが経済的理由によって断念するようなことがないようにということで、奨学金については非常に重要であるというふうに考えております。
 特に我が国の奨学金は貸与制ということで有利子と無利子とあるわけですけれども、ここの資料にもありますように、有利子と無利子合わせますと、事業費全体で1兆円近い非常に大きな事業で、借りた人が適切に返していただくというふうなサイクルを繰り返していくことで次の世代にも安心して学べるような環境をつくっていくというふうな非常に大きな事業として実施しております。
 大きな事業ではありますけれども、最近、有利子・無利子、特に有利子の方の人数を増やしてきているという状況にございますけれども、特に現時点では借りる対象者がまだいるだろうというふうなことも考えまして、事業自体の規模を考えていかなければならないという中で、有利子と無利子を見てみますと、無利子も増やしておりますけれども有利子の方が現在増える幅も大きくなっているというふうなことでございます。
 ただ、基本的に有利子と無利子両方合わせまして必要な学生さん方にこの奨学金が当たるようにということで、まず、全体の規模を確保していこうというふうに考えた場合に、限られた財源の中では有利子の方から多くなっているというのが現在の状況でございます。
 そういったことで、非常に大きな事業ではございますけれども、最近、例えば経済的な状況等によって奨学金の返済が難しいというふうなことが、特に最近の経済情勢の中で指摘もされているところでございます。
 この制度には、経済状況等によって返済を猶予するというような制度もございます。大学の窓口で手続も可能であるというふうに考えておりますけれども、適宜そうした手続もしていただいて、在学中には安心して勉学に集中ができるようにしていただくとともに、就職等をした後にはきちんと返済をしていただいて、次の世代にそれをつなげていっていただけるようにしていただきたいと思っています。
 ただし、経済状況等によって返済が難しい場合には猶予制度もございますので、今後ともそうした方々に対する配慮も行いながら、全体の事業の確保をしていきたいというふうに考えています。

○司会(寺門)

 ありがとうございました。もう少し……。

○参加者

 すみません。今の1点目の学校図書館のところなんですけれども、司書教諭の方にまた力を入れていくというお話でしたけれども、担当の司書教諭の先生たちは非常に時間が少なくて……。学校図書館をずっと一日中開設しているところは子どもたちがすごく活用するんですよね。ですけど、司書教諭の先生が担任を持たれているとなかなかそこが思うようにできないのが現状なんですよね。
 そういう現状を非常に聞きますので、その辺を踏まえて学校図書館の充実というのを考えて行っていただきたい。ぜひ、専任の司書ということを国として考えていってほしいというふうに思うんですけれども。その辺、どのようにお考えなのか、再度すみませんが伺います。

○堀野(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 まさにいていただければいていただくのが一番ありがたいわけですけれども。先ほど来、教職員定数という話が出ておりますけれども、これは、人件費の話になってきます。1人専属で人を置けるかどうかというのは人件費の話になってきます。
 その中で、先ほどの説明にもあったように、行革推進法という法律もありまして、教職員の数そのものを減らすという法律がつくられております。その中で、ただ、我々としても教職員全体の数というのは増やしていきたいということで、制度のぎりぎり、予算のぎりぎりの中で最低限の増やせる部分を少しでも増やすというぎりぎりの努力をしているという状況でありまして、率直に言って、司書教諭の専任の人の数を増やすということは直ちには難しいかとは思っておりますけれども、全体の数を少しでも増やすように努力をしているということでございます。

○司会(寺門)

 ありがとうございました。
 もう少しご質問、ご意見等をお受けしたいと思いますが、予定の時間を超過しておりますので、申し訳ございませんがこの辺で質疑の時間は終了したいと思います。
 なお、貴重なご意見につきましては、本日のセミナーあてにメール・ファックス等でお寄せいただければと存じます。
 それでは、以上をもちましてセミナーの方を終了いたします。本日はまことにありがとうございました。(拍手)

※セミナー開催にあたってのお願い・事務的な説明については、一部省略しています。

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