家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会(第1回)議事概要

日時

平成28年7月15日(金曜日)18時15分~20時15分

場所

文化庁特別会議室(旧文部省庁舎2階)

出席者(敬称略)

委員

伊藤亜矢子、稲葉恭子、岡田淳子、奥山千鶴子、川口厚之、鈴木みゆき、西館慎、松田恵示、水野達朗、山野則子、吉見和子

オブザーバー

小林厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課少子化総合対策室室長補佐

文部科学省出席者

有松生涯学習政策局長、德田大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、里見政策課長、高橋男女共同参画学習課長、関家庭教育支援室長、髙橋家庭教育支援室室長補佐

議事概要

(1)座長に山野委員を選任。本検討委員会の公開について、資料3のとおり決定。
(2)有松生涯学習政策局長挨拶。続いて山野座長挨拶。
(3)事務局より、資料1、資料2及び資料4に基づき、検討委員会設置の趣旨及び検討の経緯について説明。また、参考資料1、参考資料2、参考資料3及び参考資料4に基づき、第3期教育振興基本計画の策定及び企画部会の設置について説明。
続いて、家庭教育支援の現状等について、資料5-1及び資料5-2に基づき説明。
以下、質疑・意見。

○ 本委員会における「家庭教育支援」について、子供の対象年齢を定義しているか。

○ 家庭教育支援は、非常に幅広い内容を含むもので、主に文部科学省は学齢期について、厚生労働省では乳幼児期、幼稚園・保育園の段階について強みを持っているため、互いに連携し、切れ目を作らない形で家庭教育支援を推進することが必要と考えている。そのため、本委員会における議論では特に対象年齢を限定することなく、切れ目なく支援していくという観点で御議論いただきたい

○ 家庭教育に関して関心が低い家庭や困難を抱える家庭も対象としていくのか。

○ 家庭教育支援の取組の中で、そういった状況に陥る前の段階の支援が可能ではないか、またそうした状況に陥った方を見付け出すことができるのではないかと考えている。ただし、深刻な困難を抱える家庭に対しては、専門機関等との協力の中で解決につなげていく必要がある。

○ 教育委員会で小中学生を中心に家庭教育を充実させる取組を進め、全戸訪問事業を行っているが、非常に手応えを感じている。ただし、学齢期は文科省の予算、就学前は厚労省の予算となると、一つの事業として実施したいものの、難しい。予算の面でもつながりのあるような形で事業が実施できると、自治体としては取り組みやすくなる。

(4)事務局より、主な論点について、資料6に基づき説明。
以下、討議。

○ 全ての保護者の学習を支援するための方策について、ICTの活用が挙げられる。家にいながら時間を問わず、専門家や支援者とつながることができ、実際にアプリを活用したり、メールを活用したりという例もある。ただ、予算面で実施が難しいという声も聞いている。
  次世代の親を育てるための方策について、中学生の家庭科の授業にて、地域の乳幼児を中学校に呼んで、実際に親体験をしてみようという取組があり、効果があがっていると聞く。また、中学生に対する家庭教育の講演会を行ったが、ひとり親家庭等、お父さん、お母さんのいない中で育っている子供たちに対して、「保護者」という表現の方が適切なのか、やはり「親」という表現をすべきなのか、親のイメージ図を話す際に、配慮が必要と感じた。

○ 働く親のためのインターネット家庭教育講座を行う自治体があるが、その取組の中で、例えば、文科省で作った資料を使い、都道府県と連携して講座を実施できたらよい。
  また、幼稚園は地域の幼児教育センターとしての機能を持っていて、子育ての支援をすることになっている。同じ年齢の子供を持つ保護者同士が出会って、そこでワークショップを実施するなど一歩踏み出せると、家庭教育支援チームの活動等につながっていくのではないか。

○ 親子の交流や親同士の交流の時間をとることが難しく、ICTの活用ということもあるが、対面で関係性を乳幼児期から作っていくということも重要であり、その際に保育付きの講座で悩みや不安を話しても大丈夫という関係性を作っていくことが必要。まだ保育付きではない講座も多く、学びの場の保育を充実していくことは重要と考える。親たちの学びの場を学校等で実施する場合、下の子がいると、預け先がなく困ることがあるので、学校の中に託児所を設けて、親たちの学びの場を確保するということも重要と、現場を見ていて感じる。
  また、次世代の親を育てるための方策について、中学校に地域の乳幼児家庭、親子が出向いていってお話をさせていただくなどの機会を家庭科の授業の中にもたくさん取り入れていくことが重要と思う。

○ 家庭教育支援だけで解決するのではなく、地域全体でいろいろな支援機関が連携・協働してやっていくという観点が重要。山口県は今、県内すべての市町立小中学校がコミュニティ・スクールになっており、コミュニティ・スクールと社会教育課の分野で実施している地域協育ネットを一体的に推進することにより学校運営の質の向上や、保・幼・小・中の縦のつながりと地域における各関係機関の横のつながりの連携・協働の中で、子供たちの学びや育ちを見守り育てることを目指している。福祉部局からもいろいろなアプローチがあり、県教委が子育てサークルを対象とした福祉部局の研修会に出向いて説明を行ったり、県教委が行っている家庭教育アドバイザー養成講座等について福祉サイドに情報提供したりという動きが出てきているところ。
  次世代の親を育てるための方策に関連して、学校に多くの人が入ってこられるようなシステムを検討中。福祉部局や子育てサークルの方がお母さん方と赤ちゃんを連れて、中学生と体験活動をするなどしている。
  また、県教委の職員による家庭教育応援出前講座を学校・企業で行っており、ワークショップ型の家庭教育支援の講座を実施しているが、昨年度ぐらいから、そこにコミュニティ・スクールで地域人材が常に学校に入っているため、保護者だけでなく子育てを終えた方も一緒にワークショップに参加されるようになった。その中で、悩み相談等を受け、保護者が安心するといったことがあり、子育てを終えた方も自己有用感が高まるということがあった。
  また、コミュニティ・スクールの活動の一つとして、民生委員・児童委員の会議等を学校で行うことも試みられており、学校と空気感を共有することで、必要な学校の情報を早く知ることができるというメリットがある。乳幼児期までは福祉の方が一番前面に出て、いろいろな情報もつかんでおられるが、学齢期になり小学校に入った途端、なかなか学校での情報がわからない、開いてもらえないということを悩みとして聞いている。その際、学校にいろいろな人が入ってくるような状況を作っておけば、早くヘルプサインに気付く、あるいは支援が必要な保護者に気付くことができるのではないかと思う。

○ 子育て応援のNPOで就学前の子供たちの親子支援を続けているが、活動の中で就学前の子を持つ家庭への、生まれたところからの支援が必要と感じる。第1子が誕生した親子を集めて、子育てについていろいろ話し合えるようなワークショップを開催したところ、それ以後、自分たちで子育ての悩みを話し合いながら、みんなで子育てすればよいという関わり方で、幼稚園になるまでそのグループが継続するというケースもあり、0歳児からの子育て支援の効果を実際に見てきているところ。
  0歳児から高校生までが集まる「子育て支援ひろば」は、関わるスタッフが全市に広がっており、その中には民生委員・主任児童委員、学校関係者もおり、問題があった際、どこの関係機関へつなぐかについてグループで相談し、行政と連携し支援を行うことができている。

○ 臨床心理士でスクールカウンセラーという立場で子供たちと主に関わっているが、児童・民生委員等との関係の中で、予防や発見することを重視する活動が重要と感じている。
  循環型の人材養成や、多忙な保護者へのアプローチに関して、例えば、ふだんは仕事で多忙な父親等、どのように参加するか分からないという方のために、企業でのワークショップ等、経済団体等との協力ができるとよい。
  また、地域人材の力も引き出すことを考えたときに、特別支援関係等ニーズのある分野の学習についてはICTの活用が効果的と思われ、関心を引っ張り上げる啓発活動と、関心のある人たちに深める啓発活動と、それをつなげていくような活動を考えられたらよい。

○ 私たちの家庭教育支援チームは、結成して9年目を迎えているところだが、ある程度の成果はあるものの、課題も多い。孤立した家庭への支援について、保育園、幼稚園、小学校、中学校に通っている子供たちは先生がいるため何らかの形で支援を受けることができるが、就学前の子供たちにはなかなか支援の手を差し伸べにくい。そこで訪問型家庭教育支援を実施するに当たって、例えば主任児童委員は厚生労働大臣から委嘱状を受けて、身分証があり、信用度が高いが、家庭教育支援チームは認知度が低く信用してもらえないことがある。市町村では生涯学習課と学校教育課とが分かれていて、学校の先生方が家庭教育支援チームをよく御存じないことも多いので、学校・教育委員会への啓発が家庭教育支援チームを普及させるために大事である。

○ 子供がどう育ってほしいかというような、家庭教育の目的を保護者がしっかりと持てるようにする方策を考えることが重要。また、地域と家庭教育は密接に関係する一方で、地域が様々な形で変容しており、職場や職域での家庭教育支援が議論として必要。また、支援人材の循環システムについて、時間軸を置いて考えることが多いが、例えば、学び合いを通じて、非常に厳しい状態でも誰かを逆に支えていくという支援の同時性、空間の軸での循環ということも、視点としてありうる。

○ 家庭の基盤をしっかりするというところが教育の全てに関わってくると感じており、家庭教育支援チームの取組を行っているところだが、孤立傾向の家庭に対して、うまく介入できる場合とそうでない場合があり、地道に続けていく必要があると考える。
  普及啓発の関係で、例えば家庭教育支援チームは、近隣の市町村では余り知られていないため、PRに力を入れたいと考えている。ただし家庭教育支援チームの活動の在り方は多様なので、普及啓発の仕方には工夫が必要。
  家庭教育支援チームが支援の必要性や問題を抱える家庭を発見した際に、関係機関と連携し支援につながるような市町村の体制・モデルづくりが重要。

○ 福祉と学校教育、社会教育の部分で、誰が何をするかという役割分担を明確化させることが大切。

○ 生活習慣づくりに関しては、平成18年度から「早寝早起き朝ごはん」国民運動により啓発が進み、改善が見られた。また、一昨年度には中高生及び指導者に向けた資料を作成した。生活習慣づくりについても、講座を開いても一番聞いてほしい保護者は来てくれないということがあるが、諦めず丁寧に続けることが大切。

○ 家庭教育支援チームによる訪問型支援を全国に普及させる方策について、家庭教育支援チームの説明の仕方として、家庭教育を取り巻く背景があり、事業の目的があり、そして、手法の説明という議会や教育委員会に向けたものと、実際に地域のボランティアや訪問員の方々に向けた具体的な説明の仕方を分けて考える必要がある。
  また、家庭への周知も重要であり、保護者向けに訪問員さんが訪問しますが、いろいろな子育て情報を提供しますので受け取ってください、というふうに、入り口を下げておくなど、家庭教育支援チームの説明の仕方を各立場に合わせて作ることが普及につながっていくのではないか。

○ 主体的に育っていく人、育てる人の立場を考えたときに、文化という問題があり、海外の多文化の理解、貧困や、障害のある方、女性などをどう理解するかということも含め、それぞれの当事者及びその文化をどういうふうに理解し取り組んでいくかという視点が重要。
  その一方で、生活習慣づくりの普及啓発に関して、例えばラジオ体操は本当に普及啓発を積極的に行っていたと思われ、「早寝早起き朝ごはん」も同様と思うが、そうした共通の文化の形成と、そうでない、それぞれの立場・文化との両方が考慮されるとよい。

○ 平成27年12月21日の中央教育審議会答申の中では、地域人材とつながりながら、社会教育、学校教育、家庭教育を中心に置いて、縦と横に地域のいろいろな人材を巻き込み、重点がその時々で変わりながら、全部を網羅していく方針が示された。
  本日はキーワードとして、「予防・発見」や「スクールカウンセラー」ということが挙げられたが、学校におけるカウンセラーと同じく、支援の必要なところを、地域人材と家庭教育の力を借りながら拾い上げ、動いていくということが学校教育の中で重要となり、家庭教育もそうした連携をすることで力が付いていくのではないか。
  普及啓発について、職域での家庭教育ということが挙げられたが、全社協で調査や子育てキャラバンが企業に出向く等の取組の実績がある。多様性という意味で、様々な主体があって、それをひっくるめながら、リンクしながら家庭教育が強化されていき、そのことが貧困家庭や困難を抱える家庭を含め支援していける一つの方策になっていくのではないか。
  保護者同士、当事者同士が縦と横に関係性を作ることも重要で、その関係性をどうやって作っていくのかというところへの支援も検討課題として挙げられた。
  困難を抱える家庭に対し、ちょっと後押ししたり勇気付けたりという支援の網の目をどうやって広げていくかということを、地域の家庭教育支援チームが中心になりながら、どうやって作っていくかが重要。次回から、本日頂いた御意見や具体的な推進方策、事例発表も含めて、論点整理を更に続けていく。

お問合せ先

生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室

(生涯学習政策局男女共同参画学習課家庭教育支援室)

-- 登録:平成28年09月 --