家庭教育応援ネットワークモデル事業(宮崎県延岡市)

家庭教育応援ネットワークモデル事業

1  自治体・団体名: 宮崎県延岡市,延岡市教育委員会

2  自治体・団体の概要
 宮崎県の北部に位置する延岡市は平成18年2月に1市2町の合併を行い,水と緑の豊かな自然に恵まれた人口約13万人の都市である。平成11年には4年生大学が開学し,現在,『共に輝き創る交流拠点都市のべおか』を都市像として掲げ,高速道路網の整備とともに,産学官連携のもと,交流人口の増大を図りながら,東九州の交流拠点都市づくりを目指している。

3  地域の特徴
 延岡市の未就学児童数は約8,000人である。工業都市であるため,転勤族も多く,近隣に子育てを手伝ってくれる身内もいないという家庭事情を抱えている保護者も見受けられ,行政や団体等による子育て支援事業への関心も高い。家庭教育応援ネットワークモデル事業を実施する中学校区は,市全体の1割強の未就学児が在住する地域で,新興住宅やアパートも多い地域である。

4  連携の取組状況
1 連携にいたるまでの経緯等
 家庭教育応援ネットワークモデル事業は,関係機関等との連携によるネットワークを整備し,孤独な子育てに陥りがちな親等を対象に,家庭教育支援者が戸別訪問を実施し,地域における身近な相談相手として家庭教育のきめ細かな支援を行うとともに,地域ぐるみでの子育て支援の気運を高めることを目的とした県の委託事業である。本事業を実施するにあたり,家庭教育支援者の選出や地域の特定など不安な材料ばかりの実施であったが,当初の平成17年度は関係機関との連絡調整やモデル地域への協力要請などに十分時間をとり,10月からのスタートとなった。モデル地域には,子どもと親の相談員が配置されている小学校(児童数820人,学級数27学級)で延岡市では大規模校にあたる学校を中心に,未就学児のいる家庭を訪問することにした。家庭教育支援者には,子どもと親の相談員と地域の主任児童委員の2名を選出し,小学校・地域(特に民生委員)への理解をお願いした。

2  連携した取組の具体的内容・方法・実施状況
 事業内容は月に2~3回程度,県作成のリーフレットを配付しながら戸別訪問をし,子育ての悩みを聞き,必要であれば関係機関に連絡をしたり,孤独な子育てをしている親等には子育てサークルなどの情報を提供するなど,きめ細かな支援を行うというものである。
 最初はセールスや勧誘ではないかと警戒されたり,「小さい子どもはいません」と断られたりしていたが,訪問回数が増えるにつれて,家庭教育支援者も干してある洗濯物で小さい子どもがいる家庭かそうでないかを判断したり,公園で遊んでいる親子連れに声をかける場合は,遊び終えてほとんどの子どもが帰った後のお昼前の時間帯に1組だけで遊んでいる親子に声をかけるようにすると,子育ての悩みを話しやすいということもわかってきた。
 また,高齢者の方から「近所でよく子どもの激しい泣き声が聞こえるが虐待ではないだろうかと心配している。」という情報を得て,民生委員と同行して訪問するということもあった。

 関係機関との連携
 本事業の実施にあたり,情報交換会(構成員は下表のとおり)を実施し,関係機関に理解を求めると同時に,家庭教育支援者への助言をお願いした。
 第1回の情報交換会では,庁内の各課が担当している事業の説明を聞き,事業を実施していく上で,家庭教育支援者が大きな問題を抱えすぎないように,各課が連携して問題にあたっていくようにするなどの方法をとることにした。

 〔情報交換会構成員〕
所属・役職 備考
子どもと親の相談員 家庭教育支援者
主任児童委員 家庭教育支援者
延岡市社会福祉協議会地域福祉課  
延岡市役所健康管理課保健師  
延岡市役所児童家庭課家庭児童相談員  
延岡市教育委員会学校教育課指導主事  
延岡市教育委員会社会教育課課長  
延岡市教育委員会社会教育指導員(家庭教育担当)  

 戸別訪問をしていく上で,大事なことは支援者と保護者に信頼関係ができてこないと子育ての悩みを話す状態にはなれないということである。その点,家庭教育支援者は月2~3回,訪問し,時間のない時でも必ず玄関先で声をかけるということをくりかえすことで,保護者との信頼関係をつくり悩み相談に入っていった。その際,家庭教育支援者が元幼稚園教諭や元保育士であったことが幸いし,保護者が教え子であったり,家庭教育支援者がその地域の幼稚園や保育所に勤務したことがあるという話しをすることで,保護者の気持ちをほぐしていったということも多々あったようである。
 また,子どもの障害など,専門的知識で対応する必要のある場合は健康管理課の保健師と同行したり,虐待の疑いのある場合は児童家庭課を通じて児童相談所への連絡をとるなどの措置を行ってきた。その際も家庭教育支援者と保護者が十分に話し合い,保護者の立場にたった方法で対処するように努めた。逆に学校教育課から就学児検診を欠席した子どもの相談を受け,戸別訪問を行い,後日無事検診を受けることができたということもあった。
 第2回、3回の情報交換会は家庭教育支援者と担当者で実施し,訪問家庭について,関係機関との連携が必要であるかどうかの相談を行ったり,今後の訪問について話し合いを行った。
 第4回の情報交換会では,支援家庭の報告を行い,今後の対応について協議を行った。

 〔情報交換会〕
日時 協議内容 開催場所
1 10月12日(水曜日)
14時30分~16時
事業の内容説明
家庭教育支援に関する情報交換
社会教育センター
2 11月9日(水曜日)
10時~12時30分
家庭教育支援者と社会教育課担当との情報交換 小学校相談室
3 2月17日(金曜日)
10時~12時
家庭教育支援者と社会教育課担当との情報交換 小学校相談室
4 3月3日(金曜日)
14時30分~16時
家庭教育支援に関する情報交換
実績成果の検証
社会教育センター

3  連携した取組の成果
 年度末の情報交換会で,出席者から「これほどきめ細かな支援はどの機関もできないと思う」と言うほど,家庭教育支援者は親身になって訪問を行い,最後の訪問時には「こんなに気にかけてくださってありがとう」と感謝を述べる保護者もいたくらいである。近所の人たちと今まではあいさつをする程度だったものが,近くの子育てサークルを紹介し,参加するようになって近所の人たちと話しをするようになったという事例もあり,家庭教育支援者にとっても苦労が報われる出来事だったように思う。

4  連携した取組の課題
 本事業を行う上で,子育てに悩んでいる保護者に対して,どこまで入り込んで支援をするのかが大きな課題である。プライバシーを考慮して,あまり家庭の事情を根ほり葉ほり聞くことができないと単なる声かけだけに終ることになってしまう。その点,地域の民生委員や子育ての先輩からのアドバイスは,保護者に安心感を与えるものである。情報交換会のなかで,保健師が「ちょっとしたことでも電話してきて『これでいいんですよね?』と確認をする母親が多くなったように思う。」と感想を述べたが,子育ての仲間や先輩との雑談で悩みやぐちを話したり,聞いたりすることのできる地域づくりが必要であり,本事業はその気運を高めるきっかけになったといえる。

5  今後の方向性や展望
 主任児童委員が家庭教育支援者として地域を訪問することで,顔なじみになり,その後も声をかけあうなど,交流が続けられている。地域の中で培われてきた人と人とのつながりが再び生まれ,母親が子育ての相談を気軽にできる地域づくりの芽が生まれてきていることを実感している。
 戸別訪問をする中で,「小学校から来ました」というと地域の人は親近感を持って接してくれると,家庭教育支援者が話していたが,地域にとって小学校がいかに重要であるかを感じさせられると同時に,小学校を核にした地域づくりの効果が現われているのではないかと期待している。

6  担当者連絡先
 延岡市教育委員会社会教育課 岩村 菊代
 〒882-0812 延岡市本小路39番地1
  TEL  0982-22-7032
FAX  0982-33-6874

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