まなびのためのボランティア名簿の作成・配付(島根県江津市)

まなびのためのボランティア名簿の作成・配付

1  自治体・団体名: 島根県江津市,江津市教育委員会

2  自治体・団体の概要
 昭和29年4月に江津町など2町7村の合併より市制を施行し,「江津市」が誕生した。同年10月には桜江町井沢・清見地区,同31年8月には国府町の上有福,本明地区を編入した。
 平成16年には市制施行50周年を迎え,同年10月1日,昭和29年に5村の合併により誕生した邑智郡桜江町を編入合併し,新生「江津市」が誕生した。新生「江津市」は,「元気!勇気!感動!ごうつ」をキャッチフレーズに,「小さくともキラリと光る誇りの持てるふるさと」「好きと言えるまち・ごうつ」の実現に向け,新市建設計画を核にしたまちづくりを進めている。

3  地域の特徴
 江津市は,島根県の中央部よりやや西寄りに位置し,中央を中国地方一の大河である江の川が流れている。北は日本海に面し,南は中国山地の北斜面に位置し,総面積は268.51平方キロメートルで,島根県の総面積6,707.32平方キロメートルの4.0パーセントを占めている。市街地は海岸線沿いの平野部に広がり,それ以外の7割以上を山林原野が占め,10余りの河川が日本海に注いでいる。気候は,北九州気候に属し,平均気温15度と温暖で,年間降水量も1,500ミリメートル前後であり,降水量も少ない。
 南北朝時代から開かれた江の川の舟運は,山陰と山陽を結ぶ交通手段として産物の集積に利用され,江戸時代には全盛を誇りました。
 万葉の歌人「柿本人麻呂」が「石見のや 高角山の木の際より わが振る袖を 妹みつらむか」と歌ったのは,島の星(別名 星高山)といわれ,市内には「人麻呂」とその妻「依羅娘子」の歌碑や万葉の伝説地が数多く残る歴史のまちでもあります。
 江津市は,古くから地元産出の良質の粘土を使い,瓦や日用雑器が作られていました。江津市の属する石見地方内の25社でつくる石州瓦工業組合は,年産約2億枚で出荷量全国2位を誇っており,石見地方の独特な来待色(赤茶色)の甍の風景を市内いたるところで見ることができます。

4  連携の取組状況
 このタイトルにある「まなびのためのボランティア名簿」の始まりは,旧江津市においては,平成11年度に「江津市人材活用事業指導者名簿」としてスタートした。主な名簿の活用方法としては,地域における高齢者の人材を社会教育全般の指導者,公民館事業講師,学校の教育活動における外部講師等として活用するためのものである。当時は,市より講師謝金に対する補助がでていた。登録者としては,高齢者限定という枠があったにもかかわらず164名の登録者があった。しかし,この事業は平成11年度限りとなり,市より講師謝金の補助がなくなった。
 また,平成12年度当時に市内小・中学校を訪問して感じたことだが,地域の指導者・支援者情報の需要が多くなっていることは確かであった。そこで,高齢者の人材に限定しない,謝金を必要としないボランティア講師等として,市民全員を対象に学校・地域指導者ボランティアと学校・地域支援ボランティアの募集として,登録のためチラシを市内全戸配付したところ,すぐに市民の方から反応があった。しかし,チラシに書き込める情報も少なく,福祉や災害ボランティアと違い,学校・地域における学習指導者ボランティアと学校・地域支援ボランティアについて,当時はまだまだ,認知度は低く,平成12年度は23名の登録にとどまった。また,名簿を各学校や公民館等の社会教育施設に配付せず,指導者・支援ボランティアについての趣旨が記載してあるチラシを配付し,その趣旨を読まれた学校や地域の利用者が生涯学習課に問い合わせ,生涯学習課からボランティアの方に日程・内容等を交渉するシステムをとっており,その点が利用者にとってわずらわしいケースとなる場合もあり,学校や地域の利用も少なかった。
 これまでの反省点を踏まえ,平成13年度以降については,わかりにくいと指摘のあった,学校・地域指導者ボランティアと学校・地域支援ボランティアを一本化した「まなびのためのボランティア」として制度をスタートさせた。市民の方には,「まなびのためのボランティアとは市内の学校教育活動や各種団体・グループの生涯学習をより豊なものにするため,豊な経験を持つ地域の皆さんを学び支援のボランティアとして登録し,活用するものです。また,ボランティアの方々にとっては日頃の学習成果の場,社会貢献の機会にもなりますので,是非登録をお願いします。」と説明している。
 まずは,ボランティアの登録を市広報紙に掲載して市民に広く呼びかけた。次に,学校・公民館からこれまでの事業における講師等の情報を得て個別に登録を呼びかけた。また,別事業等で子育て団体と一緒になる機会があればその機会を通じて,市首長部局の子育て支援関係課と連携し,子育て支援団体を紹介してもらい,その団体主催の会議に出席させてもらう等の機会があるたびに「まなびのためのボランティア」の必要性や個人や団体としての名簿への登録を呼びかけた。その成果が徐々に出始め,平成15年度は105名の登録者となった。
 旧桜江町においては,平成5年度の文部科学省長寿化対策事業の助成を受けて,町内のすぐれた人材を活用して生涯学習を推進するため,「桜江町生涯学習指導者名簿」を作成した。この名簿は公民館を始め,各種機関・団体・施設等に配付し,合併までの間,町民に広く活用されていた。
 その後,平成16年10月に市町合併を行い名簿についての啓発活動を続けた結果,平成18年度には228人(11団体)の登録者となっている。
 活用システムについては,まずは登録者に個人情報として氏名・電話番号・指導できる内容を名簿に掲載していいか確認し,掲載しても構わない方については,名簿にそれぞれの情報を掲載し,利用者と講師との直接交渉とした。それ以外の方については,指導できる内容のみ掲載し,利用者と講師の間に生涯学習課が仲介役として入り,今まで通りのシステムとした。そして,名簿を「まなびのためのボランティア」情報が必要と思われる市内各小・中学校,公民館,市子育てサポートセンター等の公共施設に広く配付した。
 そのシステムのおかげで,市内小学校における定期的な本の読み聞かせに子育て支援団体が講師として招かれるようになっている。また,市子育てサポートセンターの定期交流会に様々な子育て支援団体の方にご協力していただいて事業を実施している等,ボランティアの利用件数について正確な数字を把握できていないが,利用件数は年を追うごとに増加している。利用者からは,利用し易いシステムと登録者拡大により,狙いどおりの講師を招いて事業が実施できているとの声を多くいただいている。
 しかし,今後は利用者及びボランティアの方々の負担にならないように利用件数(特に講師別の利用件数)や実施内容やそれについての評価等を把握していく必要があると考える。それを正確に把握することにより,ボランティアの方々の指導力向上と利用のないボランティアの方々についてのフォローにつながると考える。

5  今後の方向性や展望
 江津市は,総合振興計画内の次世代育成プランとして,島根県教育委員会が平成17年度から平成19年度まで進める「ふるさとに愛着を持ち,心豊かでたくましい心を育てる」ことを目標とした「ふるさと教育」を引き続き進めていく方針である。また,文部科学省の「放課後子どもプラン」においても地域の子育てボランティア団体等が必要不可欠である。
 そういった点から,江津市では市役所の情報公開や職員の研修,その他公的機関(江津市警察署・江津市消防署・江津市社会福祉協議会 等)の活動PRの意味を含めた「江津市出前講座」を実施している。(※「江津市出前講座」とは市民の皆さんが,受講したいと思う講座を市が作成したメニュー表の中から選んでいただき,その講座を担当する市役所の職員や公的な機関の職員が市民の元へ出かけてお話をするものである。)現在は,市主催の講座ということで,市役所や公的機関のみが講師となっての講座としているが,将来的には,この「まなびのためのボランティア」を取り込んで,市民による市民のための講座を含めた「江津市出前講座」としていく構想をもっている。また,江津市社会福祉協議会が主管している社会福祉ボランティアバンクとの融合も今後の検討課題である。
 そのためには,「まなびのためのボランティア」の方々の指導力の向上と講座に対する責任が必要となってくる。よって,上記にも記載したが,利用者及びボランティアの方々の負担にならないように利用件数や実施内容についての評価等を把握していく必要があると考える。それによって,講座として取り扱っていくのか,講座とするために研修をする必要があるのか等の様々な課題が山積している。今後,地域の利用者や「まなびのためのボランティア」の方々の意見を取り入れながら構想に向かって進めていきたい。

6  担当者連絡先
 江津市教育委員会生涯学習課 河野裕光
 〒695-8501 江津市江津町1525番地
 電話  0855-52-2501   FAX  0855-52-4369

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