2.「地域間交流推進事業」における取り組みについて

(1)地域間交流推進校における取り組み

  各地域間交流推進校においては、各学校のねらいに基づいて、多様な地域間交流にかかわる体験活動が行われている。ここでは、各学校における地域間交流体験活動の取り組みや、各教育委員会におけるプログラムの開発に資するため、

  1. 日頃経験することのできないような環境のもとで体験活動を行うもの(事例1,2,3)
  2. 多様な人々と交流するもの(事例4,5,6)

  の2つの観点から、「地域間交流推進校」におけるいくつかの実践例を紹介する。

1.日頃経験することのできないような環境のもとで体験活動を行うもの

事例1:東京都渋谷区立中幡小学校の例

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  中幡小学校においては、飯田市に出向き、電気やガスのない廃村の民宿に分宿して、普段の生活と離れ、自分たちで薪を割って竈や囲炉裏で火をおこして食事を作る活動を実施。また、現地で採取したどんぐりを学校に持ち帰って発芽させ、1年後に育てた苗木を後輩たちが飯田市で植樹するなどの活動に取り組んでいる。
 こうした活動によって、友だちとの協力なしには生活できない状況を経験することにより、協調性や自らの力で生活する力が養われるなどの効果が見られている。

<学校データ>

  児童生徒数 ・・・ 330人
  実施学年 ・・・・ 6年生
  実施時期(長野県飯田市に出向いての交流活動) ・・・・ 10月(2泊3日)
  教育課程への位置づけ ・・・ 総合的な学習の時間

事例2:静岡県静岡市立安東小学校の例

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  安東小学校においては、都市部での生活経験が多い児童の状況を踏まえ、従来の東京への修学旅行から、観光地化されていない自然を有する三重県鳥羽市の神島への自然体験教室へ切り替えてきた。その中では、現地の小学校の児童との交流や、島内の自然観察、魚釣り、太鼓演奏の交流等の活動を行っている。
  これらの活動を通じて、児童にとって自然の厳しさや人々の心の温かさを深く理解することができるとともに、これまでの学習の成果を振り返る貴重な体験となった。

<学校データ>

  児童生徒数 ・・・861人 実施学年 ・・・・ 6年生
  実施時期(三重県鳥羽市に出向いての交流活動) ・・・・ 6月(2泊3日)
  教育課程への位置づけ ・・・ 特別活動

事例3:長野県長野市立若槻小学校の例

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  若槻小学校においては、これまで農地や山林の多い地域の環境を生かし、農業や林業に関する体験活動を中心に行ってきている。こうした活動を通じて、農業・林業を営む人々との交流も行ってきたが、県内に海がないため、特に海洋漁業については、調べ学習が中心となっていたことから、日本海に面し、漁業を中心的産業とする新潟県能生町に出向いて、魚の水揚げやせりの様子の見学や地引網体験、現地の漁師へのインタビュー等を行うほか、受け入れ地域の住民の指導の下、魚の種類、漁法等について学んでいる。
  海沿いにおける充実した活動を通じて、これまでの調べ学習の定着が図られるとともに、児童の視野を広めることができた。

<学校データ>

  児童生徒数 ・・・ 660人 実施学年 ・・・ 5,6年生
  実施時期(新潟に出向いての交流活動) ・・・・
  5年生 7月(1泊2日)
  6年生 8月(1泊2日)
  教育課程への位置づけ ・・・
  5年生 社会、国語、総合的な学習の時間
  6年生 特別活動

2.多様な人々と交流するもの

事例4:茨城県日立市立水木小学校の例

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  水木小学校においては、以前からPTA活動を軸とした同県金砂郷町の小学校との交流を進めており、年1回希望者による日帰りの交流会を行ってきた。さらに、両校の交流を深めるとともに、体験活動を一層充実するため、隣接する里美村で「そばづくり」を計画した。地元の方々の指導・支援のもと、種まきから刈り取り、そば打ちまで、年間を通したそば作りに取り組んでいる。
  こうした取り組みにより、交流先の人々との関わりが深まるとともに、児童が人と人とのかかわりの大切さを実感し、自分たちのくらしをよりよくしていくとともに、自分たちの地域を大切にしていこうとする心がはぐくまれている。

<学校データ>

  児童生徒数 ・・・ 443人
  実施学年 ・・・・ 5年生
  実施時期(茨城県久慈郡里美村に出向いての主な交流活動) 10月(1泊2日)
  教育課程への位置づけ ・・・ 道徳、家庭、特別活動、総合的な学習の時間

事例5:群馬県黒保根村立黒保根小学校の例

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  黒保根小学校においては、総合的な学習の時間において国際理解教育を実施しており、外国人を含めた多様な人々とかかわることができるようにするため、東京都港区の西町インターナショナルスクールの子ども達との交流体験を実施している。小学校の児童が西町を訪問して街の探検活動を行うとともに、西町の子ども達が黒保根村を訪れ、小学校の保護者の家にホームステイを行っている。
  本活動を実施する際には、小学校や西町インターナショナルスクールの職員とPTA、教育委員会や受け入れ地域の農業関係者などが組織する学校支援委員会の協力を得ているとともに、小学校の児童が班別行動で西町を訪問する際には、安全面を考慮して、各班に小学校職員と保護者が複数付き添い、携帯電話で連絡をとり合うなどの配慮をしている。
  こうした計画的な活動を通じて、児童が地域や文化の違いを理解するとともに、多様な人々とのかかわりについて理解が深まるなどの効果が見られている。

<学校データ>

  児童生徒数 ・・・ 134人
  実施学年 ・・・・ 6年生
  実施時期(東京都港区に出向いての交流活動) ・・・・ 1月(1泊2日)
  教育課程への位置づけ ・・・ 総合的な学習の時間

事例6:香川県立聾学校の例

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  香川県立聾学校は、近隣は交通網が整備され、商店等も立ち並ぶ利便性に富んだ地域に位置しているが、児童の視野を広め、普段の生活環境と異なる地域に住む人々の知恵や工夫を深く学ぶとともに、充実した実体験の場や機会とするため、同県の島部に位置する直島町の人々等との交流体験を実施し、自然や史跡に触れる体験、地引き網やつり体験、リサイクル企業等の訪問等を行っている。
  こうした地域の人々との交流を深める活動を通じて、児童が主体的に活動し、積極的にコミュニケーションを図れるようになるなどの効果が見られている。

<学校データ>

  児童生徒数 ・・・ 51人
  実施学年 ・・・・ 中学部1~3年生
  実施時期(香川県直島町に出向いての交流活動) ・・・・ 10月(1泊2日)
  教育課程への位置づけ ・・・ 総合的な学習の時間

(2)各都道府県教育委員会におけるプログラム開発の取り組み

  各都道府県教育委員会において開発が進められている地域間交流プログラムについては、主に、以下の点などについて検討が進められているところである。

  • 各県の地域的な状況の分析
  • 地域間交流体験活動を通じて県として目指す方向性の検討
  • 小中高等学校を通じた地域間交流体験活動の在り方
  • 地域間交流体験活動を通じた関係機関や地域との連携の在り方
  • 県外の学校等の地域間交流体験活動にかかわる受け入れ状況
  • 地域間交流体験活動を実施する際の留意点
  • 地域間交流体験活動を推進するための情報収集とデータベースの作成
      (フィールドマップ、施設一覧、人材派遣バンクや関係機関の連絡先 等)
      また、各都道府県教育委員会が推進する体験活動の充実のための方策と地域間交流体験活動を関連づけて、地域の特色を生かしたプログラム開発を進めている取り組みも見られる。
      こうした、各県の実情を踏まえた取り組みにより、各学校・地域において役立つ実践的なプログラムの開発が期待されるところである。ここでは、プログラム開発の取り組みの例として、山形県教育委員会及び岐阜県教育委員会の例を紹介する(事例7,8)。

事例7:山形県教育委員会の取り組み

  山形県教育委員会の「地域間交流プログラム開発委員会」では、「研究」「開発」「促進」をねらいとし、各種事業を行っている。そのひとつに、義務教育課(事務局)と社会教育課・政策企画課・農政企画課・観光振興課が連携し、各課関連事業を「地域間交流体験」に生かすため、情報の一元化を図っている。この連携は、関係各課には地域間交流の意義や学校のニーズを理解し施策に生かす機会となっている。
  また、プログラム委員会の委員には、本事業推進校及び県内の実践校の先生6名に依頼し、「山形らしい地域間交流」のあり方について、情報交換や協議を重ねている。特に、山形県教育委員会では「社会力を育成する」というねらいから、地域に根ざした体験活動を推進しており、訪問先での体験活動と同様、受け入れにおける体験活動のプログラムも検討されている。
  今年度は、県内の情報収集を行い、地域間交流を周知するため学校むけのリーフレットを作成した。2年次は、地域間交流の意義をふまえ、それぞれの学校のねらいに応じたプログラムを作成するための教員を対象にした研修会を開催し、その成果を集約・発信する予定である。

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事例8:岐阜県教育委員会の取り組み

  岐阜県教育委員会においては、「豊かな体験活動推進事業(地域間交流の実施)」の実施に際して、県の取り組みである「ハートフル体験活動推進事業」における、異年齢集団による2泊3日以上の宿泊体験活動のプログラム開発の成果を生かし、取り組みを進めている。
  平成15年度、地域間交流プログラム開発委員会においては、「豊かな体験活動推進事業(地域間交流の実施)」と「ハートフル体験活動推進事業」の推進校の実践事例をまとめ、事例集『今こそ、感動的な体験を!』を作成し、県内の学校に配付して啓発を図ることとしている。

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お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --