1.地域間交流体験活動の基本的考え方

(1)子ども達の体験をめぐる現状

  近年の都市化や少子化、家庭や地域における教育力の低下、情報化の進展等により、子どもを取り巻く環境が大きく変わる中、子どもの直接体験は減少傾向にあると言われている。特に、子ども達が自らを取り巻く地域社会との関わりをもつ機会が乏しくなってきており、そのことが、子ども達の他者や地域に対する関心の低下の原因となっていることが指摘されている。
  従来、子ども達は身近な地域の中で、豊かな自然や地域の人々との触れ合いを通して、創造する、工夫する、困難を克服するといった機会を得ていた。また、子ども達は、屋外で遊ぶ際に自ら遊びを考案したり、遊びのルールを友達同士で取り決めたりする経験を重ねるなかで、周囲と協調することや規範意識を遵守することの重要性を直接学んでいた。しかし、子ども達の直接体験が不足することで、このような創意工夫や協調性をはぐくむ機会が減少していることが懸念されている。
  これらのことは、これまでも度々指摘されてきたことであるが、子どもの直接体験の減少は、一般的に体験活動の場や機会が不足していると思われがちな都市部のみの傾向ではないことに留意する必要がある。地方部の子どもについても、体験活動の場や機会は希薄であるとの指摘もあり、全国の各学校や地域がそれぞれの実情に応じた体験活動の充実を図っていく必要がある。

(2)地域間交流体験活動の基本的視点

  こうした状況を踏まえ、本研究会においては、都市部から農山漁村や自然が豊かな地域に出かけて農林漁業体験や自然体験を行ったり、農山漁村の子どもたちが都市部において都市生活や職業等の体験を行ったりするなど、異なる環境における豊かな体験活動を「地域間交流体験活動」としてとらえることとした。また、地域間交流体験活動を推進する意義として、以下の点を基本的な視点としてとらえ、その推進方策や留意点等について検討を加えることとした。

  1. 児童生徒にとって、地域間交流体験活動は、学校を離れ地域やそこに住む人々との交流を通じて、豊かな人間性や社会性をはじめ、様々な力をはぐくむことができる重要な機会である
  2. 学校にとって、地域間交流体験活動は、学校が活用可能な教育資源を充実させるものであるとともに、日頃の教育活動の充実・改善に資するものである
  3. 地域にとって、地域間交流体験活動は、地域の有する多様な教育力の活性化を通じて、特色ある地域づくりに資するものである
  4. 家庭にとって、地域間交流体験活動は、親と子のコミュニケーションを深める契機となるとともに、子どもの成長を実感することができる重要な機会である

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初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --