3‐1‐2 企業のボランティア支援に対する今後の期待

  これまでの企業のボランティア支援に関する事例及びヒアリング等を踏まえ、企業自体さらにはそこに帰属する社員のボランティア活動の気運を一層向上させるために、企業に期待されることを以下に整理する。

(1)企業が社会貢献活動・ボランティア活動を積極化するための課題-経営戦略の一環としてのコーポレートシチズンシップの確立-

  今回調査したいずれの企業においても、社会貢献事業またその一環としてのボランティア活動は、企業が地域社会から信頼を得ること、すなわちコーポレートシチズンシップがこれからの企業の成長に不可欠であるいという認識から展開されていた。
  広く企業に対してボランティア活動を普及するには、こうしたコーポレートシチズンシップを不可欠の経営戦略として明確化していくことが必要であり、そのための方策を講じていくことが求められる。
  例えばヒアリングでは、企業格付けの材料として社会貢献の充実度を用いる旨の提案がなされた。また現在、持続的で賢明な経済社会発展を達成するため、法令遵守、環境配慮や地域貢献等の社会的責任を果たす企業に対して応援の意図を込めて投資を行う「社会責任投資」の試みも始まっており、投資の有効性(例えば、社会貢献企業の平均株価は全上場企業の平均株価以上である)も実証されつつある。こうした経済市場における企業成長の支援と社会貢献の取り組みを連動させる環境を積極的に整備することで、コーポレートシチズンシップは、経営戦略の一環として一気に拡大していく可能性も出てこよう。

(2)従業員のボランティア活動に対する関心・意欲を高めるための課題

1 企業トップの理解と社員へのメッセージ伝達

  社員のボランティア活動に対する理解と関心の向上は、企業トップの理解と積極性が不可欠である。企業トップは、企業市民としての考えと社会貢献の重要性とボランティアの推進を、何らかの機会(社内イベントや社内報、社内WEB等)を通じて社員に伝えていく努力が求められる。
  社長は社員の強力なオピニオンリーダーであるとともに、社員にとっては企業の社会貢献が積極的に正当化される中で、企業従業員のミッションの一つとして自らもボランティア活動に関心を向けることが考えられる。こうした関心の高まりに対応してボランティアに参加する契機を付与することが、その後の継続的なボランティア活動への呼び水として有効であろう。

2 WEB等を通じた積極的な情報発信

  今回ヒアリングを行った企業に限らず、社会貢献を行う企業はいずれもWEBによる情報発信が活発である。企業の社会的信用を得るためには、IR(インベスターリレーションズ)のみならず、CR(コミュニティリレーションズ)が重要であるとの意識がある。
  WEBによる情報発信は、自社構成員のボランティア活動への意欲喚起に向けても有効であり、その充実が望まれる。

(3)地域における体制づくり

  先にも述べたが、企業がボランティア活動を行うときには、ボランティア活動の場を得たり、有効な活動をするために、地域の行政、市民団体や福祉施設等との連携の下に実施するケースが多い。また、社内での社会貢献・ボランティア支援の担当者のノウハウを高めていく意味でも、連携体制づくりは重要である。
  これも先に触れたことであるが、特に中小諸都市では、個々の企業単体で有効な活動を行うことは難しく、地域社会に根づく、様々なプレーヤー相互の連携が不可欠である。
  ボランティア活動活性化の観点からは、(ヒアリングでも聞かれたように)新たな連携先として学校や、ボランティアに関する様々な情報とノウハウを持つボランティア支援機関との連携等、これまで企業の連携先として視野から外れがちであった対象を含め、より幅の広い連携体制を構築することが望まれる。
  また、「さがみはら企業の社会貢献推進会議」のように、地域リーダーとなる地域企業や市民団体、行政が目的を共有して集うことによって、さらには地域社会に向けたイベントやWEBによる情報発信等を行うことにより、ネットワーク自体が身近な地域社会全体のボランティア推進をリードする象徴的な存在となり、社会的気運醸成を促進する効果が期待できる。

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生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --