11.特定非営利活動法人 足利水土里探偵団

分野:環境保全

  • 足利市の学校、企業、行政などと連携し、EM菌(有用微生物群)を利用した生ごみの堆肥化や河川浄化など地域の環境改善に取り組む事例である。
  • 学校教育分野における積極的な連携・協働や、循環型社会づくりを通じて地域のまちおこしを図っている点などが特徴である。

1.主体活動団体

  特定非営利活動法人 足利水土里(みどり)探偵団

2.関係者・関係団体・活動場所

協力者・協力団体

  栃木県、足利市、足利商工会議所、とちぎボランティアNPOセンター、NPOコンソーシアム足利、NPO地球環境共生ネットワーク

ボランティア参加者・参加団体

  幼稚園、小・中学校、大学などとの協働の活動体。具体的には、東光寺幼稚園、毛野小学校、葉鹿小学校、協和中学校、足利工業大学、民間企業など

活動場所

  足利市民活動センター、市内公民館、エコ・サロン、市内小学校、市内河川(渡良瀬川、矢場川、彦谷川)など

3.活動のきっかけ・問題意識

発足の背景・経緯

  事務局長の中庭氏は、自宅のある群馬県太田市で地塾(つちじゅく)という家庭菜園グループの代表として活動している。未利用の土地を活用して野菜などを栽培していたが、あるとき連作障害が起きてしまった。その時に、土は微生物が住む場所であり、土づくりではなく微生物づくりが大切なのではないかと考えるようになった。ちょうどその頃(1994年)、本でEM菌(有用微生物群)のことを知り、土壌改良に利用するようになった。
  その後、EMは環境浄化にも役立つことに着目した中庭氏は、当時の勤務先があった足利市に対し、「EMで渡良瀬川をきれいにしよう」と働きかけを行った。この働きかけが行政の理解を得るまでに至ったこともあって、足利商工会議所から声がかかり、商工会議所が推進している「まちおこし探偵団」の8番目として、1995年2月に「足利EM普及探偵団」が設立された。2001年、栃木県コミュニティ協会のふるさとづくり賞最優秀賞を受賞したことを契機に、翌年4月にNPO法人に改組し現在の名称に変更した。

活動のねらい

  土壌や水質の浄化などに有用性が認められるEMを活用して、身近な環境の浄化を行ったり、生活の中から排出される生ごみなどの不要物を社会に役立つものに変えたりといったことが主な活動である。その上で、次の世代を生きる子どもたちに豊かな自然に関わりあう機会を持ってもらうことや、循環型社会づくりに多くの人に参加してもらい地域のまちおこしに一役買うことを活動の理念としている。

4.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

連携・協力

  足利商工会議所とは、「まちおこし探偵団」の1つとして同法人が生まれた経緯もあり、様々な協力関係にある。設立時から2004年12月までは、事務局を商工会議所内に置いてEM資材販売などの活動を支援してもらっていた。活動の拡がりとともに事務局業務が多忙となったため、中庭氏は企業ボランティアとして出向し、それと同時に発足した商工会議所リサイクル研究会などと連携して研究や事業を行っている。
  また、足利市とも深い連携関係にある。1996年度には、EMストッカー(生ごみ処理容器)の設置費補助金交付制度を創設して普及をバックアップしてもらった。また2000年からは、後述するように同法人のケナフの栽培活動を契機に、市内の全公立小中学校の卒業証書をケナフ和紙に変更している。

募集方法

  初めは、事務局長の中庭氏の知人で、小学校に勤務されている方にお願いをし、活動に参加する小学校を紹介していただいた。また、市内小学校の校長会でEMによる環境浄化について話をする機会をつくってもらうことができ、情報発信を行った。校長会でこのような場が設けられるのは珍しいことだという。
  同法人の会員については、子どもから活動の話を聞いて会員になる親も多い。

活動資金・資材の確保

  活動資金は、同法人の会員から2,000円の年会費を徴収している。このほか、エコ・サロンにおいてEM関連商品の販売を行っており、この売上も資金としている。

5.活動の概要(活動段階)

(1)家庭の生ごみの堆肥化

  台所からEMを普及させようと、まずはEMによる生ごみの堆肥化に取り組んだ。堆肥づくり説明会(EMサロン)を地域で開催していき、市内にEM生ごみ活用菜園「愛菜園」が誕生した。
  また、主婦を巻き込むにはその子どもを切り口にしたほうがよいと考え、小学校の総合的な学習の時間を活用させてもらえないか提案した。市内の葉鹿小学校では月に一回、子どもに家から生ごみを持ってきてもらい、EM発酵により堆肥化する。それを使って花の苗を育成し、各家庭に配付している。このように循環を図ることで、関わった子どもも大人も環境問題意識が高まるのではないかと考え先生と一緒に取り組んでいる。
  そのほか、家庭から持ち寄った廃油を使って子どもたちが石けんをつくり、家庭に持ち帰ったりエコ・サロンで販売したりしている。

(2)ケナフの栽培

  ケナフは成長が非常に早く、シー オー ツーをたくさん吸収する植物である。小学校では給食の残渣でつくった堆肥を利用して、花壇や学校農園でケナフを栽培し、最終的にはケナフ和紙を作成している。
  小学校でのEM導入及びケナフ栽培は1998年に始まり、翌年には市内の38の全小中学校で行われるようになった。足利市ではこの流れを受け、2000年から市内の全公立小中学校の卒業証書をケナフ和紙に変更している。

(3)プールのビオトープ化

  家庭で出る米のとぎ汁をEMで発酵させると、環境を浄化する資材となる。それを、秋から春まで使われない学校のプールに投入してビオトープ化する試みが行われた。投入後10日ほどで、大量のプランクトンが発生し、そこにメダカを入れるとトンボなど様々な生き物が住みつく結果となった。また、水も臭くなくなり、ぬめりも少なく掃除が楽になった。

(4)矢場川浄化

  市内を流れる矢場川の生態系を取り戻すことを目的に、EMによる浄化作戦を産官学連携によって実施した。地元企業(株式会社紅三)がEM活性液の製造やEM培養装置の設置、足利工業大学が水や土の検査・測定、協和中学校が観察・記録、そしてこれらを同法人がコーディネートしていった。

(5)彦谷川浄化

  矢場川よりも小さめの川で、成果がすぐ見えるところで浄化活動をしようということになり、渡良瀬川の支流である彦谷川が選ばれた。ここでは大学・中学校・小学校・幼稚園との連携が行われ、主に葉鹿小学校の児童が中心となって活動は進められた。葉鹿小学校ではこの活動開始の2年前から彦谷川の生態調査をしており、合流した形になった。川には米のとぎ汁EM発酵液とEM団子(EMを含んだ土を丸めたもの)の両方が投入され、EM団子は小学生と幼稚園児(東光寺幼稚園)が共同で作成した。また、子どもたちの提案により、上流域の清掃も行った。この結果、ヘドロが除去され、川にシジミが戻ってくるなど大きな成果があがった。

(6)排水路浄化

  住宅地を流れるある排水路は、上流に豚舎があるため臭気とヘドロで住民からのクレームが多かった。そこで、行政と共同で1年間の浄化実験に乗り出し、期待通りの成果をあげることができた。今後は同法人の事業として継続していきたいと考えている。
  このほか、EMによる稲作栽培、講演会・講習会の開催、ショッピングセンターや銀行の待合室などでの活動内容の展示なども行っている。

6.事業の成果

  一連の活動によって、最大の目的である地域環境の浄化・改善がなされたことはもちろんだが、地域社会にもたらした波及効果も非常に大きい。特に、小学校の総合的学習の時間にEMを取り入れてもらったことにより、子どもたちの環境に対する意識変化など教育効果が大きく見られる。また、世界水フォーラムや講演会・講習会などでの発表を通して、子どもたちが大きく成長しているとの話を聞くが、これも成果の1つである。
  市も同法人の活動を理解し、支援や関連施策の展開などを行って活動の全市的広がりをバックアップしている。現在EM普及の動きは足利周辺の市町村にも広がっているほか、全国から活動の視察団が頻繁に訪れるようになり、全国的に波及してきている。

7.活動にあたって留意したこと

参加・運営に関して

  会員から2,000円の年会費を徴収しているが、そのお金を利用して年に6回情報誌「水土里」を発行し情報提供を行っており、また、EM情報誌「えむえむ関東」の提供も加えると実質的には金銭負担がほとんどないような形をとっている。
  EMサロン、エコ・サロンなど、活動にサロン的な雰囲気を導入して、地域の人々が気軽に参加しやすいような場をつくるようにしている。また、外部で研修会や交流会を開くなどして、広報活動も活発に行っている。
  最初の頃、活動に協力してもらう小学校として、3年生までが通う分校(毛野小学校大久保分校)を選んだ。この選択は結果的に正解であり、3年生くらいまでの子どもはやることの1つ1つに感動し、「楽しい」の循環となるため、彼らから周りの人に活動の話をすることで非常に効果的な情報発信となった。

活動内容に関して

  子どもたちにも役割を分担し、できるだけ体験的な活動を多く取り入れるように心がけている。また、講演会や講習会などでは、子どもたちが活動内容を発表する場を必ず設け、彼らの成長を促すようにしている。これは学校の先生からも、人前で発表するとその回数分児童が成長するので、と発表の場づくりを依頼されている。エコ・サロンでも環境学習活動の発表を定期的に行なう予定である。

安全面に関して

  足利市の社会福祉協議会の保険に加入している。これは同法人の活動全体にかけているものである。

8.活動後の評価・今後の課題・展開など

運営上の課題

  資金の調達方法が、現在は会員の年会費とEM関連資材や商品の販売しかなく、十分な活動資金が賄えない状態にあることが最大の課題である。

活動上の課題

  小学校や幼稚園などに比べ、中学校・高校へのアプローチが困難なため、まだ活動に参加してもらっている例は少ない。
  同法人は2002年4月にNPO法人化したが、行政もNPOが何なのかまだ理解しきれておらず、NPOとの協働に抵抗を持っているように感じる。

今後の展開

  足利市には渡良瀬川に注ぐ16本の一級河川があるため、河川浄化については彦谷川での取り組みをこれらの河川にも展開する場合の支援も行いたいと考えている。
  また、新しい活動として、河川のヘドロをEMで浄化して土にし、それを利用して花の街づくりを展開していこうと構想中である。足利三代将軍足利義満が京都の北山荘に行き来した牛車(御所車)をモチーフに取り入れた、平安文化の趣の花づくりを提案していきたいと考えている。連携としては、土の浚渫や土壌づくりを建設会社とのタイアップによって行い、花の管理は市内の高校生や企業・ボランティア団体などと行い、協働の関係づくりになればと考えている。この活動は、循環型社会づくりの実践の一つでもあるが、花を植えることで街中が明るくなり、賑わいが出てくることで町並みがお化粧を始める。明るく笑顔の溢れるまちからは犯罪はなくなるといわれ、また観光客の増加にもつながるなど、好循環のスタートが期待できる。
  活動内容をさらに充実させて企業の財団支援も受け、健全な活動体とNPOのあるべき姿の追求もしていこうとしている。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --