【地域間交流に関わる体験活動】 環境保全に関わる林業体験活動 愛媛県宮窪町立宮窪中学校

学校の概要
  1. 学校規模
    • 学級数:5学級(内特殊学級1学級)
    • 生徒数:108人
    • 教職員数:14人
    • 活動の対象学年:1年生・29人
  2. 体験活動の観点などからみた学校環境
    • 人口3,000人余りの水産業・石材業・農業を主産業とした町にある。また,毎月第1日曜日には『漁師市』,第3日曜日には『百笑市』,週末には『潮流体験』に訪れる観光客も多い。
    • 町は瀬戸内海の中央の大島にあり,海の自然に恵まれている。古くは,瀬戸内海交通の要衝として村上水軍が活躍し,近年は四国の水辺88カ所に選出されるなど,豊かな自然が残る水軍の里としても知られている。今後更に,歴史と文化と観光の町としての発展が期待されている。
    • 学校教育に対して保護者や地域の方々のほか,関係機関も大変協力的であり,地域に根ざした体験活動を実施するうえで恵まれた環境にある。
  3. 連絡先
体験活動の概要
  1. 活動のねらい
    • 久万町は宮窪町とは対照的な山間地域であり,生活や気候条件,産業において海と山との典型的な違いをもっている。地域に根ざした体験活動だけでなく,このような異なった環境の中での自然体験や林業体験を充実させることにより,生徒たちに豊かな人間性や社会性を育てることをねらいとしている。
  2. 活動内容と教育課程上の位置付け
      (単位時間数・日数)
    • 自然体験・林業体験(2泊3日)
         (特別活動12単位時間・2泊2日)
         (総合的な学習の時間6単位時間)
    • 浜地区の産業(漁業)の体験活動
         (総合的な学習の時間6単位時間)
    • 能島の歴史を学ぶ活動
         (総合的な時間6単位時間)
    • 環境保全活動
         (総合的な学習の時間4単位時間)
    • 福祉体験活動
         (総合的な学習の時間4単位時間)
    • 高齢者介護教室
         (総合的な学習の時間2単位時間)
    • 四阪島について学ぼう
         (総合的な学習の時間6単位時間)
    • 手話教室
         (総合的な学習の時間4単位時間)
    • ふるさと史跡めぐり
         (総合的な学習の時間6単位時間)

1 活動に関する学校の全体計画

(1)活動のねらい

  校区の宮窪町は,瀬戸内海の中央の大島にあり,海の自然に恵まれた町であり,水産業・石材業・農業を主産業としている地域である。交流地域である久万町は,宮窪町とは対照的な山間地域であり,生活や気候条件,産業において海と山との典型的な違いをもっている。特に,林業や農業などは瀬戸内海の島しょ部では,その違いを実際に目にすることはできない。
  地域に根ざした体験活動だけでなく,このような異なった環境の中でのさまざまな体験活動を充実させることにより,生徒たちに豊かな人間性や社会性を育てることをねらいとしている。

(2)全体の指導計画(※受入地域での活動)

第1学年 時間 教育課程上の位置づけ 関連教科等
5 自然体験・林業体験
  • (1)石鎚登山
  • (2)マスのつかみ取り
  • (3)飯盒炊飯
  • (4)キャンプファイヤ-
18
   (12)

   特別活動
 
  • (5)林業体験 ※
(6) 総合的な学習の時間
  • 理科:植物の生活と種類(1年5月)
  • 理科:自然と人間の共生(3年1月)
  • 国語:森は海の恋人(3年7月)
7 浜地区の産業の学習
  • (1)心肺蘇生法の実習
  • (2)郷土料理の実習
  • (3)ロ-プワ-ク
  • (4)櫓漕ぎ体験
6 総合的な学習の時間
  • 国語:かけがえのない地球(1年7月)
  • 国語:里山を歩く(1年7月)
  • 保体:人工呼吸法(3年7月)
  • 理科:生物の細胞と成長(2年3月)
  • 家庭:地域の食材を使った調理 (1年7月)
能島の歴史を学ぶ活動
  • (1)能島の歴史を学ぶ活動
  • (2)能島城跡の除草と見学
  • (3)潮流体験
6 総合的な学習の時間
  • 理科:植物の生活と種類(1年5月)
  • 社会:身近な地域の調査(1年10月)
環境保全活動 4 総合的な学習の時間
  • 理科:自然と人間の共生(3年1月)
  • 国語:森は海の恋人(3年7月)


 
3 ふるさと史跡めぐり 6 総合的な学習の時間
  • 道徳:二つの故郷(1年3月)
合計 56  

2 活動の実際

(1)事前指導学年主任が事前に愛媛県林業センタ-を訪問し,職員の方々と林業体験活動の目的や活動計画・活動内容についての細かい打ち合わせを行った。
  生徒たちは林業についての知識がきわめて少なく,林業体験は全く初めてであるため,林業センタ-でいただいた資料をもとに,森林のはたらきや林業に関する基礎知識,体験活動時の安全等について事前指導を行った。

(2)活動の展開

  • 〔オリエンテーション〕
        最初に,交流先にあるふるさと旅行村で,林業センターの織田研修課長さんから林業体験活動の目的や活動日程,活動内容等について,ビデオを視聴しながら説明を受けた。
  • 〔講話〕
        織田研修課長さんから『森林と私たちとの関わり』についての講話をしていただいた。生徒たちは最初,全員が,木を切ることは悪いことだと考えていたが,講話を聞いた後では,木を切ることはやり方次第では悪いことではなく,森林環境を守るためにも必要であるという考え方に変わっていった。
  • 〔森林についての学習〕
        生徒たちはふるさと旅行村から森林へと歩いて移動した。西原主任さんから『樹木の仕組み』について,パネル等の資料を使いながら分かりやすく講話をしていただき,樹木の自然界での働き,人間の生活との関わり,よい森林の見分け方などを学んだ。
  • 〔昼食〕
        生徒たちは木々の間から射してくる日射しを見つけ,思い思いの場所で伐木などの椅子を探し,森林の中の心地よさを味わいながら昼食をとった。
  • 〔伐木体験〕
        林業センタ-の職員の方々の伐木の仕方を見学した後,林業センタ-の職員の方々の指導を受けながら,樹齢40年ほどの杉3本と檜1本の伐木体験を行った。樹木へのロ-プの掛け方や倒し方,チェンソ-の使い方,倒す方向,安全確保の仕方など,聞くこと・見ること・することすべてが生徒にとっては初めての経験であったが,感動的な体験活動が実施できた。最後に,生徒たちは実際にチェンソ-を使って木の輪切りを体験し,それを記念に持ち帰った。驚きと感動がいっぱいの林業体験は,生徒たちにとって大変貴重な体験となった。

杉の伐木体験をする生徒
〔杉の伐木体験をする生徒〕

(3)事後指導
  事後指導では,林業体験の取組についての自己評価をさせた後,体験を通して学んだことや感想を各自まとめさせた。また,参観日や全校集会で学習発表を行うため,班ごとに林業体験についてトリノコ用紙に分かりやすくまとめ,効果的な発表方法についても話し合う時間を設定した。
  7月には地域の海の環境を守る活動の一環として環境保全活動を行ったが,林業体験で学んだことと合わせて環境保全について考えさせた。また,他教科等との指導の関連も図りながら,自然を愛する心や環境保全に取組む態度を育てる指導を行った。

3 体験活動の実施体制

(1)学校支援委員会の体制

  地域に根ざした様々な体験活動や山間地域での林業体験を実施していく上で,保護者や地域の方々,教育委員会や関係諸機関との連携は不可欠である。そのため,関係諸機関や施設,活動の指導者については,年度当初に依頼をするとともに,指導者については学校支援委員会の構成委員になっていただいた。
  学校の推進体制としては,全教職員で構成する事業推進委員会で,体験活動の事前の計画・事後の反省について話し合う機会を持つようにしているが,学校支援委員会の方々には,活動前に事前打合せを行い,体験活動の目的や活動日程,活動内容等について十分話し合うようにしている。また,活動実施後は次年度に向けての改善点を話し合うようにしている。どの方々も学校教育に大変協力的であり,体験活動が円滑に実施できている。

(2)地域間交流プログラム開発委員会との連携

  8月に開かれた委員会において,取組状況等について報告を行った。協議の場において委員から,本校が実施している多様な体験活動を環境の観点から整理してみると,活動全体のまとまりが一層明確となり,他校の参考になりやすいのではないかとの助言を得た。

(3)配慮事項等

  必要に応じて事前に活動現場の下見を行い,安全指導面での指導の徹底を図るとともに,実際に活動する際にも生徒の安全確保に努めている。また,調理等を伴う活動においては,食材に火を通すことを活動の前提としている。
  学校支援委員会の方々に指導を依頼する場合にも,前もって活動の計画を提示し,事前打ち合わせ段階で,体験活動を行う上での安全面での配慮をしてもらうようにお願いをしている。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

  体験活動を実施した後,体験を通して学んだことや感想をまとめさせるだけでなく,活動のねらいに照らした生徒一人一人の取組について自己評価させるようにしている。
  また,学校支援委員会の方々や校内での事業推進委員会で事後の話し合いの場をもち,次年度に向けての改善点を話し合い,指導の改善に生かすようにしている。

5 活動の成果と課題

成果

  • 浜地区の産業(漁業)の体験活動,能島の歴史を学ぶ活動,宮窪瀬戸での潮流体験等,地域に根ざした豊かな体験学習を通して,ふるさとのよさを再発見し,ふるさとを大切にする心が育ってきている。
  • 高齢者介護教室や手話教室等の社会奉仕体験活動を通して,人を思いやる心が育ってきている。
  • 面河村での自然体験,地域の海の環境を守る活動や久万町での林業体験を通して,自然を愛する心や海や森林の環境保全に取組もうとする態度が育ってきている。
  • 保護者や地域の方々の協力を得ながら,地域に根ざした体験活動を毎年継続して実施することにより,学校と地域の一体化が図られ,体験活動にも深まりがでてきた。

課題

  • 総合的な学習の時間や特別活動の中で行った体験活動と各教科や道徳との関連を図った指導をより一層充実させ,相互に補完し合えるような指導のあり方を検討していく必要がある。
  • 体験活動が単なる体験だけに終わることなく,生徒達に豊かな人間性や社会性を育てる体験活動となるよう事前・事後の指導の充実を図るとともに,指導の改善を図る必要がある。
  • 指導に生かす体験活動の評価の在り方について,今後更に検討していく必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --