【養護学校・交流,文化や芸術に関わる体験活動】 地域のよさ(自然や人,もの)を生かした体験学習 島根県立益田養護学校
学校の概要
- 学校規模
- 設置学部・学級数・在籍児童生徒数
- 小学部 9学級 14人
- 中学部 6学級 17人
- 高等部 6学級 26人
- 教職員数:62人
- 活動の対象学年:高等部 26人
- 体験活動の観点からみた学校環境
- 本校は,平成12・13年度盲・聾・養護学校等新教育課程推進実践研究の指定を受け,研究テーマとして【地域における特殊教育のセンター的機能を果たすために,どのような組織を作り実践していけばよいのか‐「教育相談活動」と「理解啓発活動」を二つの柱として‐】を設定し,研究に取り組んだ。
- 「教育相談活動」は教育相談部を中心に,「理解啓発活動」は各学部が中心となって地域の学校との交流学習やボランティア活動などに取り組み,教育課程に生かせる実践を行った。
- これらの活動により,地域の方々の養護学校や障害児(者)への理解が深められるとともに,本校の児童生徒の生活経験が広がり,豊かに生活していく契機になった。
- このことを踏まえ,今年度も活動を継続し,児童生徒の豊かな心情を育成していくとともに生活を豊かにしていきたいと考えている。
- 連絡先
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体験活動の概要
- 活動のねらい
- 地域の良さ(自然や人,もの)を生かして,それらに触れることにより,豊かな心情を養い,また地域の一員としての自覚を持ち,スムーズな社会参加ができ,豊かなつながりの中で,たくましく生きようとする児童生徒の育成をはかる。
- 地域で生活する一員として,地域の環境整備に関する活動をとおして,ボランティア意識を育てると共に,豊かな心情を養う。
- 文化芸術的な体験活動をとおして,豊かな心情や表現方法を養う。
- 地域の人たちとのふれあいをとおして,スムーズな社会参加をはかる。
- 「教育相談活動」は教育相談部を中心
- 活動内容と教育課程上の位置付け
- ボランティア活動など社会奉仕に関わる体験活動〈全学年〉
(総合的な学習の時間6時間)
- 文化芸術に関わる体験活動〈全学年〉
(特別活動、学校行事5時間)
- 交流に関わる体験活動〈高等部〉
(総合的な学習の時間24時間
《20時間:地域講師による学習会,4時間:地域の各施設との交流会》 (地域講師による学習会は,内容的には文化芸術に関わる体験活動にもなりうるものである。)
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1 活動に関する学校の全体計画
(1)活動のねらい
地域のよさ(自然や人,もの)を生かして,それらに触れることにより,豊かな心情を養い,また地域で生活する一員としての自覚を持ち,スムーズな社会参加ができ,豊かなつながりの中で,たくましく生きようとする児童生徒の育成をはかる。
- 地域で生活する一員として,地域の環境整備に関する活動をとおして,ボランティア意識を育てると共に,豊かな心情を養う。
- 文化芸術的な体験活動をとおして,豊かな心情や表現方法を養う。
- 地域の人たちとの触れ合いを通して,スムーズな社会参加をはかる。
(2)全体の指導計画
活動の名称 |
実施学年 |
活動内容 |
教育課程上の位置づけ |
期間 |
横田地区環境整備活動 |
全学年 |
横田地区の方たちとの花植、プランターの設置 |
総合的な学習の時間 |
6時間 |
ふるさと大学 |
高等部 |
地域講師による学習会 |
総合的な学習の時間 |
20時間 |
一日校長事業 |
全学年 |
地域の方が一日校長になり授業を実施 |
特別活動 (学校行事) |
5時間 |
交流教育 |
高等部 |
地域の各施設との交流 (保育所・作業所・老人施設) |
総合的な学習の時間 |
4時間 |
2 活動の実際
(1)事前指導・活動の展開<地域交流~ふるさと大学>(交流に関わる体験活動について)
ねらい
地域の自然や人との関わりを通して「知りたい」「調べたい」「やってみたい」「表現したい」生徒を育てると共に,自分たちの住んでいる地域のよさを認識する。
参加者:
本校高等部生徒,地域講師,地域住民
活動の状況
生徒たちのやってみたいという意見をしっかり取り入れ,5つのグループに分かれて学習を展開していくことにした。学習の流れは昨年度と同じようにすすめていくことで,より見通しを持って取り組めるようにした。
学習の流れ
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講師先生に連絡を取ろう |
どんなことが学びたいのかを考えよう |
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- ※1:希望調査やガイダンスを行った後、それぞれの班に分かれて学習を進める。
- ※2:グループ毎の活動を行った後は、校内での発表会をする。発表会では、他のグループがどのような学習を行っているのか情報を共有するようにしている。
活動の状況
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伝統芸能班 |
地域文化班 |
ダンス班 |
探検班 |
創作班 |
6月 |
和太鼓演奏1 |
昭和初期の暮らし |
ヒップホップ1 |
高津川の冒険 |
寿司に挑戦 |
7月 |
和太鼓演奏2 |
縄文時代の暮らし |
ヒップホップ2 |
海へ出かけよう |
和菓子に挑戦 |
12月 |
和太鼓演奏3 |
江戸時代の暮らし |
ヒップホップ3 |
山を歩こう |
わら細工 |
2月 |
公民館発表 ※3 |
- ※3:公民館発表では、地域の方々へ生徒のチラシを配り、有線放送などによる宣伝活動も行う。
<探検班:高津川を「棟梁」と舟で川下りをした。>
<伝統芸能班:1回目の発表会一人ひとりソロのパートを演奏した。>
<ダンス班:昨年より振りも音楽もグレードアップしている。>
(2)事後指導
この「ふるさと大学」は,高等部全体での取り組み(総合的な学習の時間)であるが,この活動での学習の流れを基盤に,各クラス単位での,総合的な学習の時間の取り組みとして,「近隣の保育所との交流」(4組)「地元の方との行事交流(節分会)」(3組)「作業所との交流」(4組)「高齢者施設との交流」(1組)などを実施することができるようになった。ふるさと大学でお世話になった地域講師の方との連携で新しい交流へと発展していった取り組みもある。「川遊び」「米作り」(2組)など地域講師との当日だけの,1回だけの交流ではなく,次へのつながりもできつつあるように思われる。
また,今年度は,文化祭(ますようまつり)では,地元の「柿本人麻呂」を題材に「ミュージカル」を行ったが,その事前学習として地域の神社や郷土資料館等へ調べ学習に出かけるなどして,自分たちで,「調べたい」「やってみたい」「調べたことを発表したい」という意欲的な活動に発展した。この調べ学習の成果からミュージカルへの取り組みも意欲的で,当日の発表も盛況であった。
3 体験活動の実施体制
(1)学校支援委員会の体制
ア 校内推進体制
本校では研究部の中に「豊かな体験活動推進事業」の窓口を設け,校内推進委員会として,校長・教頭・総務主任・教務主任・各学部主事・高等部教員担当者によって構成した。
- 全校体制で行う活動については,各学部の連携を図るために,計画,当日の運営については,「教務部」「総務部」など分掌の協力を得て活動することができた。
イ 学校支援委員会
地元公民館長(1名)地元自治会関係者(3名)シルバーボランティア(1名)校長,教頭,各学部主事(3名)教務主任,総務主任,研究主任により構成した。
- 「地域の人材や資源(もの)」の情報が具体的に得ることができるよう,構成メンバーを昨年とは若干変更したことで,教員の視点とは違ったとらえ方等様々な情報を得ることができた。また,活動の中心は高等部であったが,他学部教員にも地域の教育資源を提供できるよう各学部の主事も構成メンバーに加えた。
4 体験活動の評価の工夫と指導の改善
生徒自身による取り組みに対する評価
活動ごとに,感想文を書かせ,活動の目的をふまえて作業ができたか,どのようなことに気がついたか,気持ちに変化があったかなどを評価した。
生徒の活動に対する教員による評価
活動中は,参加の状況や会話などの観察,感想文,指導者からの感想,発表会(校内発表や公民館発表)などを基に,関心・意欲・態度,子どもたちの変容を評価してきた。
- 感想文は,自分の思いを文字にできない生徒,また,思いはあっても十分に文章表現できない生徒もおり,そこを教員側がどのように感じ取ることができるのか,理解できるのかが活動を評価する上で考えていかなければならないポイントだと思った。そのために,生徒の観察を丁寧にすることやさらにビデオや写真で記録することも大切だと考えた。
5 成果と課題
成果
生徒の感想・地域講師への礼状から
今年のダンス班はすごかったです。振りも音楽も去年よりすごいです。私は去年はダンス班だったけど、今年は伝統芸能を選びました。一人で演奏できるよう頑張ります。ダンスは、昼休みなどにダンス班の人に教えてもらいたいです。 |
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今日探検班で学校の近くの山に行きました。野いちごなどがあり食べながら登りました。夏には高津川に行って舟に乗ったけど水がすごくきれいでした。横田は、川もあり山もありいいところだと思いました。 |
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お元気ですか。この間はふるさと大学の講師としてお世話になりました。大将の寿司を巻く手はすごかったです。また教えてください。今ぼくたちはますようまつりにむけて頑張って劇の練習をしています。よかったら見に来てください。 |
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- 体験活動をとおして,地域の方との継続的なつがりをもつことができ,人との関わり方,いろいろな世代の人とのコミュニケーションの取り方などが上手にできるようになった。また,地域の方の養護学校への理解も深まりつつあり,お互いに声を掛け合う姿が見られるようになり,スムーズな社会参加がはかられているように感じられる。
調べ学習やふるさと大学のように地域の教育資源に触れることにより,自分たちの住んでいるふるさとへの興味を広げるきっかけとなっている。
- ボランティア活動をとおして,活動の広がりを見ると,地域の一員であるという自覚も育ちつつあると感じられる。
- 発表会を通して,友達の姿を見ることにより,自分から「やってみたい」「あんなふうになりたい」という活動に対する意欲が感じられるようになってきた。
- できることが増え,興味・関心が広がり,自分自身に自信が持てるようになってきた。
課題
- 今回の豊かな体験活動推進事業は,主に,高等部を中心に取り組んできたが,この成果をふまえ,今後は,全校体制で取り組んでいくことも考えていきたいと思う。その場合本校の児童生徒の実態やニーズの把握を十分に行っていく必要があると考える。
- 主に「総合的な学習の時間」という位置づけで取り組んできたが,今後も生徒の自主的な活動を期待して,生徒達のニーズの把握と共に,興味関心を持たせるための学習や社会体験の場を確保する必要を感じた。