【高等学校職業・就業にかかわる体験活動,社会奉仕にかかわる体験活動等】 自己のあり方・生き方をみつめる体験活動 宮城県立飯野川高等学校

学校の概要

  1. 学校規模
    • 学級数:9学級
      (普通科6学級,生活福祉科3学級)
    • 生徒数:245人
    • 教職員数:27人
    • 活動の対象学年:1年生
      (普通科38人、生活福祉科35人)
  2. 体験活動の観点などからみた学校環境
    • 本校が位置する河北町は石巻市の北に隣接する。町の主産業は稲作や施設園芸を中心とした農業,長面浦の牡蠣養殖及び北上川内水面のしじみ漁やさけ漁などの漁業といった一次産業である。また,町としては企業誘致や地元企業の育成にも積極的に取り組むとともに,スポーツや文化活動等の生涯学習,情報関連施設等も推進している。さらに,自然環境にも恵まれ,東北随一の大河である北上川(追波川)や,日本の音風景100選に指定された北上川のヨシ原,天然記念物である翁倉山のイヌワシ等は有名である。
    • 生徒は主に河北町を中心とした近隣1市7町から通学しており,通学圏内には体験活動に適した教材や活動の場として利用できる施設・設備が多く,比較的恵まれた環境といえる。
  3. 連絡先
    • 〒986‐0101
      宮城県桃生郡河北町相野谷字五味前上40番地
    • 電話:0225‐62‐3065
    • FAX:0225‐62‐2247
    • ホームページ:http://iikou.myswan.ne.jp
    • 電子メール:iinoga_h@sn.myswan.ne.jp

体験活動の概要

  1. 活動のねらい
    • 本校の教育課程は,普通科に類型別学習(2年生より3類型:進学教養・商業メディア・地域産業),生活福祉科に訪問介護員2級の資格取得と連結した福祉科目を導入している。生徒は性格的に明るく素直な者が多く、学習面で目的意識をもち、各種資格取得に積極的に取り組む者も増加している。しかし,基礎学力や自分を客観的にみる力が不足する者,生活体験に乏しく明確な目標をもてない者,さらに生活規律の面で問題を抱える生徒が混在する。進路希望状況は,就職希望者が多くを占めるが,社会情勢の変化により就職率は低下傾向である。また,就職後の定着率もあまりよいとはいえない。そこで,本校1学年「総合的な学習の時間」では生徒の望ましい勤労観・社会観を培うとともに,学校生活及び地域社会における自己のあり方・生き方について考える姿勢をもたせ,主体的に進路選択や進路設計する能力の育成をねらいとした。
  2. 活動内容と教育課程上の位置付け
    • 【職業・就業にかかわる体験活動】は,主に第1学年「総合的な学習の時間」普通科「ガイダンス」で展開し,その他の体験活動も含めると,総授業時数は40時間となった。
    • 【ボランティアなど社会奉仕にかかわる体験活動】および【交流にかかわる体験活動】は,おもに第1学年「総合的な学習の時間」生活福祉科「ボランティア活動」で展開し,その他の体験活動を含めると,総授業時数は36時間となった。
      ※ 前年度は,主に【自然にかかわる体験活動】を実施した。

1 活動に関する学校の全体計画

(1)活動のねらい

  本校は前年度,理科及び地歴公民科の横断的・総合的な学習を効果的に進めるために,地域の自然環境や産業等を教材とした体験活動を積極的に導入した。具体的な成果としては,学習活動に対する意欲喚起を促すことができ,総合的にものを見たり,考える力が身に付いたことである。また,校外の方々と接することは,社会人としてのあり方や生き方について考えるきっかけを充分に与えることができることもわかった。本年度はこれらのことをふまえ,第1学年次「総合的な学習の時間」において,積極的に体験活動を取り入れ,本科目の目標とする生徒の育成を目指し,事業を展開した。

(2)全体の指導計画

ア 活動の名称(教育課程上の位置づけ)と実施学年(平成15年度)

  第1学年「総合的な学習の時間」(2単位時間:毎週金曜日5・6校時に展開)
  普通科「ガイダンス」(校内通称),生活福祉科「ボランティア活動」(校内通称)

イ 活動内容(平成15年度)

  普通科「ガイダンス」の年間計画は「自己理解」,「学習計画」,「職業理解」,「地域理解」,「進路選択」の5項目,生活福祉科「ボランティア活動」では「自己理解」,「勤労・奉仕」,「介護・福祉」,「進路選択」の4項目で構成している。この年間計画のなかで各項目に応じた,さまざまな体験活動を展開した。

ウ 年間指導計画(平成15年度)

普通科 総合学習「ガイダンス」 生活福祉科 総合学習「ボランティア活動」
項目 内容 項目 内容
4 自己理解 総合学習開講式・プロジェクトアドベンチャー ※
進路選択 職業を調べる・進路適性検査 勤労・奉仕 ボランティア ボランティア活動とは
5 学習計画 類型科目説明会・類型登録1 リサイクル作品づくり
校内パソコン実習 ◆フラワーボランティア【2】
進路選択 職業理解 職場インタビュー事前学習 ◆地域の清掃活動【2】
6 ◆職場インタビュー【2】 介護・福祉 施設実習事前学習
職場インタビュー事後学習 ◆福祉施設での活動1【2】
進路選択 ◆上級学校見学会【6】 ※   
適性検査結果分析・類型登録2 介護・福祉 ◆救急救命法講習会【2】
地域理解 ◆地域の清掃活動【6】 ※            ◆フラワーボランティア【2】
8 自己理解 高校生活について考える ※
9 進路選択
(発表)
学習計画
地域理解
就職について考える 研究発表 飯高祭展示発表準備1
進学について考える 飯高祭展示発表準備2
飯高祭発表準備 介護・福祉 ◆キャップハンディ体験1【2】
10 ◆類型コース別体験活動【4】 ◆キャップハンディ体験2【4】
◆郷土理解学習1(北上川)【2】 保育所訪問準備
◆郷土理解学習2【4】 ◆保育所訪問【4】
学習計画 類型登録3・体験活動のまとめ ◆福祉施設での活動2【2】
11 職業理解進路選択 職場体験実習事前学習 ◆高齢者の介護【2】
◆職場体験実習【16】  
自己理解
進路選択
(発表)
学習計画
ライフプラン作成1 ※
ライフプラン作成2 ※
1 ライフプラン作成3 ※
ライフプランクラス発表準備 ※
ライフプランクラス発表会 ※
2 「私のライフプラン」発表会 ※
総合学習閉講式・2年生へむけて(類型・専門科目オリエンテーション)※
  体験学習総授業時数 40時間 体験学習総授業時数 36時間

〈注意〉
◆は体験活動を示し【 】の数字は活動に要した時間を示す。
※印の活動は、普通科・生活福祉科合同の活動を示す。

2 活動の実際

(1)事前指導

  第1学年「総合的な学習の時間」の指導は,ホームルーム正・副担任によるTTで実施している。年間計画では体験活動実施前に事前指導の時間をできるだけ設定し,活動の目的や留意事項を浸透させるよう配慮した。しかし,限られた時間内では不充分な場合もあり,関連教科の授業時間やLHRを積極的に利用して事前指導を行うこともあった。また,事前指導の一部は,体験活動と結びつけた製作活動などに取り組み,体験活動がふくらみを増すよう配慮した。

(2)活動の展開

  年間を通して複数回にわけて体験活動を実施した。学習プログラムによっては,特別時間割を編成し,まとまった時間数を確保した。一部の活動では,生徒の興味・関心に応じたコース別体験活動とするなど展開方法に工夫を凝らした。また,体験活動の指導者はできるだけ2名以上とし,生徒の体験活動への積極的な参加および学習への取り組みを支援した。教材は,生徒の発達段階や学習内容に応じて担当教員が自主教材を作成した。また,連携事業所から補足資料などをいただき活用することもあった。

(3)事後指導

  毎回の体験活動終了後には,使用したワークシートや活動報告書,感想のまとめ等を課題として提出させた。まとめに要する時間確保が困難な場合は,事前指導と同様の方法で指導をしてきた。活動によっては,生徒並びに受け入れ先事業所に活動に関するアンケート調査等も実施し,自己評価と客観的評価の内容を照らし合わせ,その結果を生活指導にも活かせるよう配慮した。

3 体験活動の実施体制

(1)学校支援委員会の体制

  「総合的な学習の時間」の企画・運営は,第1学年所属教員,教務部員,進路指導部員,普通科類型担当者及び生活福祉科代表者からなる推進委員会が主幹となり行った。生徒に対して直接的な学習指導・支援を行うのは第1学年所属教員であるので,学年会議などを通じて連絡を緊密にして運営した。また各家庭に対しては,保護者会や生徒向け新聞などを通じて活動のねらいや活動内容を説明した。保護者の中には本校の教育活動に理解を示し,積極的に協力して下さる方もいた。活動の場や事業所の選定,外部指導者の確保は,主に学校支援委員(学校評議員)や関連機関による照会,地域の広報誌やインターネットによる検索を活用して行った。なお,学校支援委員会は年間2回程度開催しているが,ほとんどが同窓生ということもあって,非常に参考になるアドバイスをいただくことができたことも本研究の大きな成果といえる。

(2)配慮事項等

  体験活動の内容によっては,事故に対する安全意識を事前にもたせることに努めた。自分自身が安全に活動するとともに,他者に対しても配慮を怠ることのないように活動することは,体験活動の内容を問わず重要なことである。また,借用物品についても取り扱いに関する注意を促した。生活福祉科「ボランティア活動」では,高齢者および幼児の心理的・身体的特徴についての学習も同時に行ったり,普通科「ガイダンス」における自然体験活動では複数回にわたる実地踏査を実施し,当日の天候変化などにも注意を払う等して安全確保に努めた。

4 体験活動の評価の工夫と指導の改善

  体験活動の評価は,事前指導や体験活動当日,事後指導の各段階において,指導者間で共通した観点(関心・意欲・態度,聞く力,まとめる力,発表する力)をもって行ってきた。また,毎時間の学習シートには自己評価欄を設け,生徒自身による評価を参考にしたり,体験活動ではとくに外部指導者の評価も参考にしている。活動の評価が低い生徒については,その後の活動で役割をもたせる等して,生徒全員が何らかのかたちで力を発揮できるよう配慮した。一部の体験活動では関連の外部指導者に対して,学習プログラムの運営や教育上の成果に関するアンケート等も行っており,反省点を把握し次年度以降の改善に活かすようにした。中には,本校生徒の実態をふまえて事前指導や事後指導のあり方について前向きな助言をして下さる方もいた。

5 活動の成果と課題

(1)成果

  普通科「ガイダンス」では,年間計画の項目にしたがった様々な学習活動をとおして,進路選択の手立てや2年生からの類型別学習,職業や地域社会に対する理解を深めることができた。多くの生徒は,外部指導者との交流を通して社会人としてのあり方や生き方について考える姿勢をもつとともに,進路設計(ライフプラン作成)に積極的に取り組み,高校生活に見通しや新たな目標をもつことができた。また,生徒の中には,自分なりに考えた勤労観や職業観をライフプランに綴る者もいた。一方,生活福祉科「ボランティア活動」では,年間を通して様々な学習活動に取り組むことで,学校や家庭,社会においてより良く過ごすためにどうあるべきか考える姿勢が見られ,ボランティア精神の涵養を図ることができたと思われる。そして,介護・福祉に関する専門的要素を含んだ活動を取り入れたことで,訪問介護員2級の資格取得に対しての意欲喚起につなげることもできた。さらに,普通科と同様の学習活動も導入していたことから,高校生活についてより深く考え,主体的に進路設計することもできた。いずれの科目でもこのような成果が見られたのは,年間計画の中に体験活動を導入したことが大きく影響したものと思われる。理解力や生活体験に乏しい本校生徒の実態をふまえると,主体的に目で見て,手で触れ,確かめることのできる体験活動は,新たな発見や感動をもたらすと同時に,実体験を伴った知識の定着と自己啓発を図るのに非常に効果的であることが,前年度の実績と合わせていうことができる。

(2)課題

  今後は,第1学年「総合的な学習の時間」の学習内容を,その後の高校生活にどのように発展させていくかを考えた学習プログラムを検討していきたい。また,並行して小・中学校における「総合学習」との関連もふまえた教材研究や,本年度までの連携事業所とさらに連絡を緊密にし,より良い体験活動のあり方を模索することも必要であると考えられる。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

-- 登録:平成21年以前 --