【中学校・社会奉仕,就業に関わる体験活動】 「21世紀のまちづくり」をめざした体験活動 長崎県平戸市立南部中学校
学校の概要
- 学校規模
- 学級数:7学級(内特殊学級1学級)
- 生徒数:173
- 教職員数:17人
- 活動の対象学年:全学年
- 体験活動の観点からみた学校環境
- 平戸市は,人口約2万4千人,長崎県北部に位置し,平戸大橋で本土と結ばれた島である。修学旅行生など年間100万人以上の観光客が訪れ,歴史とロマンの島として,観光産業を中心に漁業・農業なども盛んで自然豊かな町である。
- 学校は,その名の通り,平戸市の南部に位置し,校区は分校を含む5つの小学校区からなる。学校のすぐ側には,川が流れており,そこから海が広がっている。周囲には山もそびえ,緑豊かな自然に囲まれた環境の中で,生徒は「長崎県一のあいさつ校」を目指し,生徒会を中心にあいさつ運動などに積極的に取り組んでいる。
- 南部地区から市の中心部まで,車による移動で30分以上はかかる。高校卒業後は市外や県外へと出て行く者が多く,市全体としても高齢化が進んでいる。これからの平戸市を考えるとき,地元での雇用問題をはじめ,高齢者問題など,様々な課題がある。
- 連絡先
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体験活動の概要
- 活動のねらい
《体験活動のねらい》
- 郷土の自然や社会とのふれあい,様々な体験活動を通して主体的に課題解決する能力や態度の育成を図る。
《総合的な学習のねらい》
- 様々な体験活動を通して課題を解決する能力や態度を養う。
- 郷土の自然や社会とのふれあいを通して,他者を思いやり感謝する心や進んで奉仕する態度を育成する。
- お互いの個性を認め合い,共によりよく生きていこうとする心情・姿勢を育成する。
- 活動内容と教育課程上の位置付け
- 1年生:ボランティア体験
「環境」をテーマとした奉仕活動 (総合的な学習の時間35時間)
- 2年生:職場体験
(総合的な学習の時間35時間)
- 3年生:ボランティア体験
「福祉」をテーマとした奉仕活動 (総合的な学習の時間35時間)
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1 活動に関する学校の全体計画
(1)活動のねらい
本年度は,昨年度行った「豊かな体験活動推進事業」における取組を「総合的な学習の時間(本校ではNCTと名称づけている)」として完全実施することになった。そのため,活動のねらいは,14年度に設定したものを,15年度の総合的な学習のねらいに組み込む形となった。
《平成15年度総合的な学習のねらい》
- 様々な体験活動を通して課題を解決する能力や態度を養う。
- 郷土の自然や社会とのふれあいを通して,他者を思いやり感謝する心や進んで奉仕する態度を育成する。
- お互いの個性を認め合い,共によりよく生きていこうとする心情・姿勢を育成する。
(2)全体の指導計画
1.活動の名称
(総合学習のテーマ)
『21世紀のまちづくり』
(各学年のテーマとねらい)
1年 |
2年 |
3年 |
ふるさとを知る -とりまく環境を通じて- |
ふるさとの産業を知る -職場体験を通して- |
ふるさとの未来を考える -ボランティア活動を進めていく中で- |
- 生まれ育った郷土の現状(環境)を知り,郷土を愛する心を育てる。
- 体験活動を通じて,よりよい環境の創造のため,主体的に取り組む心を育てる。
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- 生まれ育った郷土の現状(産業)を知り,ふるさとに貢献する心を育てる。
- 職場体験や修学旅行など社会の実際を知ることにより,地域や社会との関わりについて考えを深め,よりよく生きていこうとする態度を育てる。
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- ふるさとの人々との交流を図り,将来にわたる「共生」についての感性を磨いていく。
- ボランティア活動を通して,奉仕の精神や思いやりの心を育てる。
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- 学び方の基礎を培い,自ら課題を見つけ,解決していく力を育てる。
- 協力して研究を進めることで,個性を出し合い,共に学び合う態度を育てる。
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2.実施学年
全学年(第1学年:55人,第2学年:52人,,第3学年:66人)
3.活動内容
※( )総合的な学習の時間数
学年 |
体験活動の種類・内容 |
単位 |
教育課程上の位置付け |
時間数 |
1年 |
ボランティア体験(環境美化・浄化活動) |
35 |
総合的な学習の時間 |
(70) |
2年 |
職場体験 |
35 |
総合的な学習の時間 |
(100) |
3年 |
ボランティア体験(福祉体験) |
35 |
総合的な学習の時間 |
(100) |
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2 活動の実際
事前指導,活動の展開,事後指導
(第2学年 指導計画)
学期 |
月 |
過程 |
学習活動の流れ |
教師の支援・指導上の留意点 |
1学期 |
4月 (4) |
ふれる |
- オリエンテーション(1時間)
- テーマとまとめの形態について(1時間)
- 問題提起「私たちの住む南部地区に未来はあるのか-10年後の南部地区と私-」(2時間)
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- 学習が生徒自身の自主的な学習であることを理解させ,NCTのねらい(めざす力)を確認させる。
- 3年間の系統性をふまえ,2年生のテーマとその位置づけを確認できるようにする。また,発表の仕方をふくめ,まとめの形態についてもあらかじめ例を提示して参考にさせる。
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5月 (11) |
つかむ |
- 班編成(1時間)
- 職業調べ〔リストアップ〕(4時間)
- 小集団編成(2時間)
- 活動計画立案・作成(2時間)
- 事前学習・準備(2時間)
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- 学級ごとに5,6人の班を編成する。
- ブレーンストーミングの手法を使って,思いつくままできるだけ多く調べる。
- 小集団編成に関して,お互いのことを考えて,みんなが気持ちよく学習・活動できるよう事前指導を行う。
- 自ら活動計画を立てることで,研究の見通しを立てさせる。※研究仮説を立てさせる。
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6月 (12) |
行動する |
- 体験依頼・事前打合せ(2時間)
- 第1回 職場体験(職場見学)-見てみよう-
第1日(6時間) 第2日(4時間)
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- 事前に南部地区(各事業所)には案内を配付し,活動への理解を求める。
- 第1回のしおりは,教師の方で原稿を準備する
- 活動の様子を写真やビデオに記録しておく。
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7月 (9) |
- 礼状作成(下書き・清書)・持参(4時間)
- 職場体験の反省〔自己評価〕(2時間)
- 工場見学 事前学習・準備(3時間)
※夏休みの課題:職場訪問・取材
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- 手紙の書き方等も指導する。
- 第2回目につなげるように評価項目等を設定する。
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2学期 |
9月 (10) |
ふかめる |
- 工場見学 事前学習・準備 (4時間)
(修学旅行)
- 工場見学のまとめ(6時間)
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- 事前に工場で何をみてくるのか,その視点を明らかにさせる。
- 見学前と見学後の違いなどをまとめる。
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10月 (14) |
- 中間発表 準備(6時間)
(文化祭)
- 職場体験希望調査・職場決定(2時間)
- 職場体験準備〔しおり作成〕(4時間)
※ 小集団は第1回に同じ
- 体験依頼・事前打合せ(2時間)
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- 第1回職場体験や修学旅行の工場見学についてまとめ,分析を含めた中間発表となるように指導する。
- しおり作成のために実行委員等を組織する。
- 生徒自身が事業所と連絡をとり,職場体験の依頼を行い,承諾をもらうことができるよう支援する。
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11月 (18) |
活かす |
- 第2回 職場体験-やってみよう-
第1日(6時間)
第2日(6時間) 第3日(6時間)
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12月 (9) |
まとめる |
- 礼状作成(下書き・清書)・持参(4時間)
- 職場体験の反省〔自己評価〕(2時間)
- 職場体験のまとめ〔実践報告作成〕(3時間)
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- 感謝の気持ちを込めて,丁寧に書かせる。また,次年度へつなげていくことを意識させる。
- 各班で原稿を作成し,冊子にまとめさせる。冊子は各事業所へも生徒により配付させる。
- ビデオを鑑賞することにより,それぞれの活動の様子を振り返ることができるようにする。
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3学期 |
1月 (5) |
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- 仮説の検証を行い,研究のまとめをするように指導する。
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2月 (6) |
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- 班ごとに発表の形態を選択し,まとめたことを発表する。
- 職場体験でお世話になった事業所の方へも発表会の案内を生徒により作成・配付させる。
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3月 (2) |
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合計 |
100時間 |
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3 体験活動の実施体制
(1)学校支援委員会の体制
昨年度,はじめて取り組んだ職場体験学習を実施するにあたっては,事業所の確保が大きな課題であった。他に,ボランティア体験に関しても,地域の福祉施設等の協力を得るため,学校支援委員会を設立し,支援体制を整備した。その構成は,地区から農協,漁協,郵便局,商店街共同組合,PTA,地区長の各代表,そして,学校から校長,教頭,教務主任,研究主任,事務職員の計12名である。
また,職場体験の事業所確保については,公民館を通じて地域の全世帯へ取組の案内と協力依頼を行い,学校においては生徒を通じて,保護者へ事業所紹介の協力を依頼した。その結果,昨年度は23事業所の協力を経て,職場見学や職場体験を実施した。
(2)配慮事項等
職場体験の実施にあたっては,生徒の安全面はもちろん職場における事故等に備え,体験期間中は損害保険へ加入した。また,合わせて各事業所や保護者へは,万一の場合,学校の教育課程行事として「独立行政法人日本スポーツ振興センター」適用の対象になることも案内の中に明記した。損害保険の諸経費については,本事業の予算の中に必須項目として計上した。
4 体験活動の評価の工夫と指導の改善
○ 活動の成果をまとめるにあたって,様々な体験活動を具体的にどのような方法で評価するかが大きな課題であった。昨年度は,活動を計画し,実践することに終始した感が強い。そのため,生徒・職員による自己評価及び生徒へのアンケートによる意識調査等,限られた資料をもとにした評価・考察となった。
本年度は,総合的な学習の評価とも関連づけ,体験終了後の感想やまとめ・自己評価以外に,総合的な学習で身につけさせたい力をもとに教師側で項目を設定し,実際の活動において観察法による評価にも心がけた。
○ 昨年度は,教師の方で計画したものを生徒が実践するという傾向が強く,生徒が主体的に課題を解決するという点では,活動のねらいが十分に達成できなかった。
本年度は,計画の段階で,企画から生徒自身に取り組む機会を設定し,できる限り生徒が立てた計画のもとに活動できるよう支援・指導に努めた。
5 活動の成果と課題(昨年度の考察から)
○ 地域の自然や社会とのふれあいの中で,様々な体験活動が,生徒にとって地域を見つめなおす機会となり,地域の人と交流を深めることにつながったといえる。また,生徒が自ら学ぶきっかけをつくることできたことが,成果として挙げられる。
○ 昨年度は,「体験活動」そのものに価値がある体験と「体験活動」を計画したり,準備したりすることに価値がある体験の区別が,私たち自身,わかっていないところがあった。さらに,「その体験活動で生徒に何を学ばせたいのか」という視点が明確でなかったことも反省として挙げられる。今後は,準備や計画,研究の進め方等,総合的に見直しを行い,3年間の学習活動が系統性のあるものにしていきたい。